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新刊紹介 (199集掲載分)

「新刊書目」の一部について、簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

張勤著『比較言語行為論 ―日本語と中国語を中心に―』

 本書は、一九九五年九月に神戸大学大学院文化学研究科に提出された博士学位論文「言語行為論に基づく中国語と日本語の対照言語論」に加筆修正を加えたものである。言語行為論を中国語・日本語のような東洋の言語にも適用できるように修正して、言語の実際の使用に即した言語行為の遂行と理解のモデルを構築すること、そして、そのモデルにもとづき、通時的・共時的に中国語と日本語の言語行為を比較対照することを目的としている。第1章「言語行為の研究」、第2章「言語行為の主観性」、第3章「言語行為発話への名付け」、第4章「言語行為の体系 ―伝達機能によるアプローチ」、第5章「言語行為のグループ」、第6章「言語行為の階層性」、第7章「言語行為の表現と情報構造」、第8、「中国語と日本語の通時的比較」、第9章「中国語と日本語の共時的比較」、第10章「結語」からなる。

(1999年3月31日発行 好文出版刊 A5版縦組み p196 4200円)

『森重先生喜寿記念 ことばとことのは』刊行会編『森重先生喜寿記念 ことばとことのは』

 森重敏氏の喜寿を記念する、国語国文学の論文集。蜂矢真郷「ラカ型語幹の構成」、内田賢徳「存在詞アリの意味と述語性」、大鹿薫久「「べし」の文法的意味について」、井上博嗣「古代語の陳述副詞について ―「ゆめ」「ゆめゆめ」「ゆめに」「ゆめにだにも」「ゆめにても」「ゆめにも」「ゆめばかり」の場合―」、宮川久美「「朝日さす」と「朝日照る」」、堀勝博「「おしてる難波」考」、桑原祐子「正倉院文書に於ける同名異表記 ―「ウマカヒ」の場合―」、坂本信幸「「うらま」か「うらみ」か」等、一八編を収録。巻末に「森重敏先生略年譜」「同著書論文目録」を付す。

(1999年3月31日発行 和泉書院刊 A5版縦組み p420 15000円)

郡司隆男・坂本勉著『現代言語学入門1 言語学の方法』
窪薗晴夫著『現代言語学入門2 日本語の音声』

 言語に関する身近な問題を実際に分析する力の養成を目的とした、言語学、特に言語の理論的研究に関する解説書(全五巻)。読者として想定されているのは、主に大学の学部学生、中学・高校以上の言語に関する教育の現場にいる人々である。第一巻『言語学の方法』では、言語学の研究内容や目標について全体像を示すとともに、現象の把握・仮説の設定・仮説の検証という一連のプロセスについて、実験的手法も視野に入れて具体的に解説している。また、日本語の音声を扱った第二巻『日本語の音声』では、日本語音声に関する素朴な疑問に答えながら、音声を理論的に分析する音韻論の基本的な考え方と分析方法を解説している。本シリーズは今後以下の三巻の刊行が予定されている。『3 単語と文の構造』(田窪行則・郡司隆男)、『4 意味と文脈』(金水敏・今仁生美)、『5 言語とコンピュータ』(橋田浩一・宇津呂武仁)。

(『日本語の音声』1999年4月21日発行/『言語学の方法』1999年5月27日発行 岩波書店刊 A5判横組み p246 3000円)

日本放送出版協会編『CD-ROM版 全国方言資料 全十二巻』(ハイブリッド版)

 昭和47年に刊行、昭和56年に復刊された『全国方言資料』(全十二巻)の全ページの画像データと、約30時間分の音声資料をデジタル化し、PDFファイルとして収録したもの。全国141地区について、「自由会話」と、朝・夕・祝儀など八つの場面での「あいさつ」が収録してある。CD-ROMは、『序・索引編』、『東北・北海道編』、『関東・甲信越編』、『東海・北陸編』、『近畿編』、『中国・四国編』、『九州編』、『辺地・離島編I 東北・関東』、『辺地・離島編II 北陸・近畿・中国・四国』、『辺地・離島編III 九州』、『琉球編I』、『琉球編II』の計十二巻からなる。Windows 95/98(日本語版)/Macintosh 対応。

(1999年4月25日発行 日本放送出版協会刊 CD-ROM12枚+解説書1冊(A4判横組み、p34) 98000円)

文化庁文化部国語課編『世論調査報告書 国語に関する世論調査 平成10年度 敬語・漢字・外来語』

 「国語をめぐる現代の社会状況の変化に伴う、日本人の国語意識の在り方について調査し、今後の施策の参考とする」ためにおこなわれた世論調査の報告書。今回は、平成十一年一月八日から二二日にかけて、全国一六歳以上の男女個人三千人を対象として、「敬語や言葉遣いに関すること」、「漢字の字体に関すること」、「外来語などの理解度など」について調査がおこなわれた。本報告書は、「調査の概要」、「調査結果の概要」、「調査票」、「標本抽出方法」、「集計表」からなり、「調査結果の概要」では、各項目ごとに、総合的な考察、地域・性・年齢別の分析などが記述されている。

(1999年4月30日発行 大蔵省印刷局刊 A4版横組み p178 1360円) 

国立国語研究所編『方言文法全国地図4』

 第一集「助詞編」、第二集「活用編I」、第三集「活用編II」に続き、第四集からは「表現法編」となる。第四集では、否定表現、条件表現、可能表現、過去・回想表現、アスペクト表現が扱われており、調査項目にあたる言い方が全国八〇七地点でどのような語形で表現されるかを、最大六色の記号を使って地図に表している。地図五五枚のほか、別冊として「方法」「各図の解説」「資料一覧」からなる解説書を付す。

(1999年4月発行 大蔵省印刷局刊 地図55枚 解説B5版横組みp747 42600円)

 ◆52巻4号(207号)に書評を掲載

重見一行著『助動詞の構文機能研究 ―時枝詞辞論からの脱出―』

 中古語を中心とした助動詞に関する諸論をまとめたもの。著者の『助詞の構文機能研究』(和泉書院)と対になるものであり、『日本語の文法を考える』(和泉書院)における体系化への思考の過程が表れているものという。本書の結論は、「助動詞は動詞の複語尾(乃至それに準ずるもの)であり、動詞の一部(乃至それに準ずるもの)として種々の構文機能を担う」ということである。第一章「「連体なり」の構文的意義」、第二章「助動詞の構文的機能」、第三章「助動詞の「意味」的機能」、第四章「助動詞と周辺の応用的考察」からなる。

(1999年5月20日発行 和泉書院刊 A5版縦組み p368 10000円)

佐藤亨著『国語語彙の史的研究』

 本書は「国語の歴史的研究という観点に立って、上代・中古の語彙を中心にまとめたもの」である。「I 序説」「II 上代語論」「III 中古語論」「IV 語誌・方言論」の四つに大きく分かれており、合わせて十四章からなっている。Iでは、「漢語・漢字が国語の語彙体系といかような関わりをもったかを素描」している。IIでは、上代・中古における、基本的な親族語彙や花をさす語彙の変遷推移を明らかにしている。IIIでは、『日本霊異記』の和訓に関する論考のほか、『源氏物語』の複合語・派生語を中心に語彙の造語性を明らかにした論考などを収めている。IVでは各時代の「愛」「恋」とその類義語についての考察や、『岩手方言集』の「旧南部方言」から見た方言の語彙構造と語彙の性格についての考察を収めている。

(1999年5月25日発行 おうふう刊 A5版縦組み p399 28000円)

 ◆51巻3号(203号)に書評を掲載

望月郁子著『仏教界に辞書は在ったか ―古辞書の新研究』

 本書は、仏教界で生まれた辞書を、宗教上の必要があって作られたものという観点から見直したもので、「言語理解の為の辞書という観点だけからのアプローチでは接近できない問題を、宗教を視野に入れて文献毎に考察するとどうなるかの試論」である。前著『類聚名義抄の文献学的研究』(笠間書院)で解決しきれなかった「最大の問題に解釈(第八章)を与えることが出来た」という。第一章「文字に対する信仰と字書 ―平安鎌倉仏教で成立した字書研究の原点―」、第二章「東大寺と『篆隷萬象名義』」、第三章「図書寮本『類聚名義抄』の成立と仏教界の史的背景」、第四章「字書発達史上の世尊寺本『字鏡』の位置 ―心篇基礎字彙とその注文の検討―」、第五章「世尊寺本『字鏡』(心篇)の標出漢字の字形について ―世尊寺本『字鏡』によって漢籍・仏典が読めたか―」、第六章「平安時代・鎌倉初期の〈読むための辞書〉の再検討」、第七章「『新撰字鏡』における「東倭音訓」 ―昌住が大切にしたもの―」、第八章「観智院本『類聚名義抄』の宗教上のねらい ―図書寮本対応和訓の配列順序をてがかりに―」の各章からなる。

(1999年5月25日発行 笠間書院刊 A5版縦組み p239 4800円)

安田敏朗著『〈国語〉と〈方言〉のあいだ ―言語構築の政治学―』

 『植民地のなかの「国語学」』(三元社)、『帝国日本の言語編成』(世織書房)など、言葉とそれをめぐる権力やイデオロギーの問題を考察してきた著者は、本書では、標準語と方言の関係・価値付けなどの問題に注目した。「「方言」の語り方の歴史、そしていま語っているその語り方にひそむ思惑、そして語っている側である学問の来歴を、できる限り明らかにしていくこと、それが本書の課題である」という。序章「排除と包摂のなかの「方言」」、第一章「近代国民国家形成と「方言」 ―「国語」の通時性と共時性のはざまで」、第二章「「帝国」日本と「方言」」、第三章「「新生」国民国家日本と「方言」」、終章「「方言」のゆくえ」。なお、巻末に「方言学・言語学に関する諸制度と関連著作年表」がある。

(1999年5月30日発行 人文書院刊 四六版縦組み p412 3000円)

鎌倉時代語研究会編『鎌倉時代語研究第二十二輯』

 シリーズ第二十二輯は、平成十年夏の第二十三回鎌倉時代語研究会における口頭発表に基づく論考を中心に編集された。小林芳規「奥書より観た院政期の天台宗訓読の特色」、木田隆「「ヤヲラ」と「ヤハリ」」、原卓志「「都合」の意味・用法について」、花野憲道「広島大学蔵『聲明集』解説並びに影印」、広島大学学校教育学部日本語史研究会「専修寺蔵『善信聖人親鸞傳絵』翻刻並びに索引」、李京哲「東京大学国語研究室蔵『佛母大孔雀明王經』の分韻表」など、計十五編を収める。

(1999年5月31日発行 武蔵野書院刊 A5版縦組み p531 14000円)

安達太郎著『日本語疑問文における判断の諸相』

 本書は、一九九五年三月に大阪大学に提出された博士学位論文「日本語疑問文における判断の諸相」に加筆修正を加えたものである。主として、「傾き」を有する疑問形式(否定疑問文、「のではないか」)と確認要求形式「だろう」「ではないか」をとりあげ、話し手の主観的な判断が疑問文にどのように反映しており、またそれが伝達の様相にどのような影響を与えるのかという問題について考察したものである。以下の三部八章からなる。第I部「序論」(本書の目的といくつかの前提、形式についての概観)。第II部「「傾き」と関連現象」(否定疑問文における「傾き」について、疑問文による情報要求と情報提供、「のではないか」による不確かさの表現)。第III部「確認要求と関連現象」(確認要求と疑問文の条件、「ではないか」による聞き手の知識の活性化について、「だろう」における判断から伝達へのレベルの移行)。

(1999年6月1日発行 くろしお出版刊 A5版縦組み p229 3800円)

大阪市立大学文学部創立五十周年記念国語国文学論集編集委員会編『大阪市立大学文学部創立五十周年記念国語国文学論集』

 大阪市立大学の国語国文研究室創設五十周年を記念して編纂された論文集。巻末には井手至「国文教室五十年」があり、研究室の歴史が簡潔に述べられている。収録された論文は多岐に渡る。増田繁夫「古今集の歌語と本文 ―「たたる・たてる」「あとらふ・あつらふ」「うらぶる・うらびる」―」、毛利正守「古今集における母音の在りよう」、吉井健「「と思ふ」を句頭にもつ歌」、乾善彦「宣命書きの成立をめぐって」、遠藤邦基「定家仮名遣いの世界 ―「つひに」を「つゐに」と書くこと―」、小松光三「単語の意味と表現映像 ―文法の拡大―」、丹羽哲也「対立的な並列を表す接続助詞「が」」、鏡味明克「奈良大阪府県境の言語地理学的研究」など、三十九編の論文を収録している。

(1999年6月6日発行 和泉書院刊 A5版縦組み p777 22000円)

言語学研究会編『ことばの科学9』

 言語学研究会が編集する論文集の第9集。収録されている論文は、かりまたしげひさ「音声の面からみた琉球諸方言」、佐藤里美「文の対象的な内容をめぐって」、彭広陸「複合連体格の名詞を《かざり》にする連語」、奥田靖雄「現実・可能・必然(下) ―しなければならない―」の四編で、まえがきで各論文の内容を解説している。

(1999年7月15日発行 むぎ書房刊 A5版横組み p261 5000円)

加藤秀俊・熊倉功夫編『外国語になった日本語の事典』

 日本語を起源とし世界各地で使われている単語のなかから、「五〇語をえらんで、これらの語彙の来歴と、どのような事情から外国へ「輸出」され、どのように使用されているかをしらべてみよう」という書物である。えらばれた語は「アイヌ」「生花」「浮世絵」「漆」「沖縄」「温泉」などで、語誌・事物誌・文化誌などの領域にわたる内容である。巻末に「本書で取り上げた言葉の各国辞書への収録状況」を付す。

(1999年7月28日発行 岩波書店刊 四六版縦組み p257 2200円)

工藤力男著『日本語史の諸相 工藤力男論考選』

 本書は、「主に古代から中世にわたる日本語に関する」著者の既発表論文を集めたものである。「複訓仮名」「上代形容詞語幹の用法について」「古代複合形容詞の一問題」「古代形容詞の形成に関する一つの問題」「上代における格助詞ニの潜在と省略」「格助詞と動詞との相関についての通時的考察」「言語資料としての和名抄郷名」「中世形容詞の終焉」「形状言による副詞句の形成」「古代文献における固有名詞の語形の変容」「旅という言葉」「古代日本語における畳語の変遷」「形状動詞の諸相」「動詞と形状言との対応」「象徴詞と接頭辞」の一五編を収める。各編は「初出の再現に努め」てあるが、「補記」として「執筆動機、後の経過、現在の見解」などが述べられている。巻末に索引を付す。

(1999年8月発行 汲古書院刊 A5版縦組み(索引のみ横組み) p321 3500円)

 ◆51巻3号(203号)に書評を掲載

ジョナサン・グリーン著・三川基好訳『辞書の世界史』

 本書は辞書編纂やそれに関わった人々に関する、紀元前二五〇〇年から現在に至るまでの歴史について書かれた本である。一九九六年にイギリス・アメリカで出版されて話題となった。膨大な資料と豊富なエピソードをもとに「文筆活動の一領域、言語学と文学の接点とも言うべき部分について、多くの人々に系統立った知識を提供しようという試み」である。序章のほか、「最初の編纂家と最初の「辞書」」「中世 ―順番を整えて」「ラテン語から自国語へ」「土俗語」「スラング その1」「十七世紀 ―難語」「十七世紀 ―多様多種」「十八世紀初頭」「サミュエル・ジョンソン ―大きな節目」「アメリカ ―ウェブスター以前」「アメリカ、ノア・ウェブスターとジョセフ・ウスター」「新しい文献学」「ニュー・イングリッシュ・ディクショナリー」「スラング その2」「現代」の十五章からなる。巻末に人名索引・書名索引を付す。

(1999年9月5日発行 朝日新聞社刊 A5版縦組み(索引のみ横組み) p599 6000円)