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新刊紹介 (200集掲載分)

「新刊書目」の一部について、簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

蒲谷宏・川口義一・坂本恵著『敬語表現』

 敬語に関する形と意味の結びつきだけではなく、敬語が使われている表現全体を視野に入れなければ、実際のコミュニケーションにおいて敬語を適切に使用することはできない。このことは従来も指摘されてはいたが、待遇表現としての敬語表現について、理論的であるとともに実際の表現にも役立つような本は少ない。本書では、この点に十分に配慮しつつ、敬語表現を考える際の新しい枠組みを提唱することに主眼が置かれている。構成は次のとおり。第I章「「敬語表現」を考えるための枠組み」、第II章「「敬語」の基本的な性質と機能」、第III章「「丁寧さ」の原理」、第IV章「適切な「敬語表現」にするために」。第I章では、表現主体・人間関係、表現の場・表現形態・題材・内容など、敬語表現の基本の整理を行い、第II章では「おっしゃる」「もうしあげる」などの語や「お…になる」などの基本的形式を取り上げ、その性質・機能を説明している。第III章では、「行動」「決定権」「利益」などの枠組みを用意し、「忠告・助言表現」「勧誘表現」「依頼表現」などの「行動展開表現」について考察し、「丁寧さ」の原理に関する考えを提出している。第IV章では、問題表現を、前章までに述べた観点から説明する事例研究となっている。

(平成10年10月15日発行 大修館書店刊 B6判縦組み p236 2200円)

近藤政美・池村奈代美・濱千代いづみ編『天草版平家物語語彙用例総索引』

 本書は、天草版『平家物語』(大英図書館蔵本)の全語彙の文脈付き索引である。1影印・翻字篇、2索引篇上〔自立語・あ〜と〕、3索引篇中〔自立語・な〜を〕〔助動詞〕、4索引篇下〔助詞〕の四冊からなる。影印・翻字篇では、天草版『平家物語』の影印と翻字とを見開き二頁に対照して示し、巻末に、翻字注記と近藤政美による解説「天草版『平家物語』の翻字に関する諸問題―語彙用例総索引の作成に関連して―」を付す。索引篇は、翻字を本文として、該当の語に前四語と後五語とを付した用例を掲出し、最終冊の巻末に、二つの解説(濱千代いづみ・近藤政美「天草版『平家物語』の語彙の特色」、池村奈代美・近藤政美「天草版『平家物語』の語法の特色」)と、「扉・序・目録の索引」を付す。

(1999年2月25日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 第1冊p886、第2冊p828、第3冊p760、第4冊p934 セット価格80000円)

齋藤由美子著『沙石集の語法論攷』

 著者が昭和52年から平成9年までに発表してきた、主として『沙石集』の文法・文体・表現に関する論稿を集めたもので、次の13編からなる。「語法資料としての特性」、「主格助詞「ガ」の発生」、「接続助詞「ガ」の確立」、「蔑称の「ガ」について」、「助動詞「キ」」、「末尾文の「コソ」」、「説教台本としての沙石集―広本から略本へ―」、「説教の構成と内容」、「説教の表現と手法」、「辯説考」、「オノマトペ」、「直喩表現」、「信州の地名「今講」「ハツスヘ」」。

(1999年2月25日発行 おうふう刊 A5判縦組み 15000円)

国立国語研究所編『テレビ放送の語彙調査III ―計量的分析―』

 『テレビ放送の語彙調査I ―方法・標本一覧・分析―』(平成七年発行)、『テレビ放送の語彙調査II ―語彙表―』(平成九年発行)につづく、三冊目の報告書で、本冊をもって完結する。本書は、これまでに得られた各種のデータについて計量語彙論的な分析を行い、五編の報告としてまとめたものである。中野洋「高頻度語彙から見たテレビ放送語彙の特徴」、山崎誠「用語類似度による標本(番組)分類」、石井正彦「番組ジャンルの特徴語とジャンル間の関係」、大島資生・小沼悦「話者の属性から見た特徴語」、石井正彦・小沼悦「語形の変異とその使用」を収める。

(1999年4月発行 大日本図書刊 B5判横組み p222 5000円)

 ◆51巻3号(203号)に書評を掲載

仲宗根政善、高崎正秀監修『宮良當壯全集 第3巻 日本方言彙編(3)』

 『宮良當壯全集 第2巻 日本方言彙編(2)』(昭和五十九年発行)につづくもの。本巻は、生原稿「日本方言彙編 採訪主要方言語彙類編並文例」を底本として、「語彙編」I 名詞、(乙)人間界(7人事・8職業)、(丙)名詞雑、II 代名詞、III 数詞、IV 形容詞、V 動詞、VI 副詞、VII 接続詞、VIII 助詞、IX 感動詞、X 接頭語、XI 接尾語、XII 助動詞、XIII 短文及雑句、について、忠実な翻刻を行っている。

(1999年6月22日発行 第一書房刊 A5判縦組み p698 19000円)

鈴木泰著『改訂版 古代日本語動詞のテンス・アスペクト ―源氏物語の分析―』

 平成四年刊の初版から改訂された大きな点として、まず、新たに第七章「会話文における基本形のアスペクト的意味」が加えられたことがあげられる。通達・移動動詞以外の会話文の基本形のアスペクト的意味について概観しているが、基本形全般のアスペクトについての見通しが不十分ではないかという点からの措置という。次に、各章節ごとのまとめと、現在の著者の立場から妥当と思われる説明が付け加えられた。さらに、校正ミス、記述の不足や混乱、わかりにくい箇所を修正してある。

(1999年7月30日発行 ひつじ書房刊 A5判縦組み p416 5000円)

松村明著『近代日本語論考』

 江戸時代中期から明治初期へかけての文献を資料として取り上げた著者の既発表論文一一編をもとに、加筆・修正・増補を施してまとめたもの。「新井白石と外国語・外来語の片仮名表記」、「オルコック『日本語日常会話篇』とその日本語」、「明治初年の洋学会話書における助動詞「です」とその用法」、「『語學獨案内』における打消の助動詞「ない」「ぬ」とその用法」、「近世のオランダ語学−青木昆陽以前の一、二の問題−」、「青木昆陽とその蘭語学書」、「大槻玄澤と『蘭學階梯』」、「『折りたく柴の記』とその白石自筆本」、「『西洋紀聞』とその白石自筆本」、「蘭学と国語学 《付》西洋語学書略書目」、「鶴峯戊申『語學新書』とその背景」からなる。巻末に索引を付す。

(1999年9月10日発行 東京堂出版刊 A5版縦組み(索引のみ横組み) p378 10000円)

 ◆51巻3号(203号)に書評を掲載

山田俊雄著『詞苑間歩 移る時代・変わることば 上・下』

 著者が俳句雑誌『木語(もくご)』に十九年間連載した、ことば詞に関する随筆の全集成。各三〜四頁の二二八編からなる。『詞林逍遙』『詞林間話』(角川書店)、『ことばの履歴』『ことば散策』(岩波新書)に収められたものも一部再録されている。本書の目的の一つを、「現代日本語の辞典に語の実用例を掲げる場合に幾分か役立つ例證を記録しておきたい」としており、下巻末に「本書で話題にした語の索引」を付す。

(上:1999年9月10日発行 三省堂刊 四六版縦組み p406 3700円/下:1999年9月30日発行 三省堂刊 四六版縦組み(索引のみ横組み) p456 3900円)

宮地裕著『敬語慣用句表現論 ―現代語の文法と表現の研究(二)―』

 本書は、「敬語表現・受給表現および慣用句の表現を主な内容とする」著者の既発表論文を、部分的に訂補して集録したもの。なお、『文論』(明治書院)に集録していたが、『新版文論』(明治書院)に入れずに訂補しようと考えていた三編も集録。第一章「敬語表現」、第二章「受給表現」、第三章「慣用句の表現」、第四章「倒置表現」、第五章「順接・逆接の表現」の構成で、計一八編の論考からなる。「事項索引」を付す。

(1999年9月20日発行 明治書院刊 A5版縦組み p391 11000円)

佐藤武義編『語彙・語法の新研究』

 本書は、佐藤武義氏の東北大学退官を機に企画された論文集で、編者に縁のある研究者による、国語史・現代語・方言などにわたる語彙・語法を対象とした研究成果を収めている。安部清哉「古代日本語における古い語彙・音韻と新しい語彙・音韻の比較研究の可能性」、村上雅孝「国語学から見た『訓訳示蒙』と『訳文筌蹄』」、佐藤武義「歌語「風立つ」考」、彦坂佳宣「九州における一・二段活用の五段化―『口語法』からGAJへ」、半沢幹一「方言比喩語の動機付けの傾向―馬鈴薯・どくだみ・すみれ・春蘭を例として―」、石井正彦「阪倉篤義の「語構成」論」、斎藤倫明「語構成要素の多義性と語の多義性(2)」など、計三十編からなる。

(1999年9月20日発行 明治書院刊 A5版縦横組み p438 18000円)

田中章夫著『日本語の位相と位相差』

 日本語の位相について、語彙に限らず、発音・語法・文章・文体・言語生活・言語行動・言語意識など、多様な差異や対立を、多面的に観察しようとする書物である。第一章「位相と位相差」、第二章「性差と世代差」、第三章「社会階層によることばの違い」、第四章「社会分野によることばの特殊性」、第五章「心理的要因によることばの違い」、第六章「表現様式・伝達方式によることばの違い」、第七章「多人数向けのことば」、第八章「位相論の課題」からなる。巻末に、図表一覧・参考文献・索引・英文目次を付す。

(1999年9月20日発行 明治書院刊 A5版縦組み(図表一覧以下横組み) p352 12000円)

 ◆53巻2号(209号)に書評を掲載

文化庁文化部国語課編『明朝体活字字形一覧(上)(下)―1820年〜1946年―』

 本書は、国語審議会の参考に資するために、「(1)現存する活字の総数見本帳を用いて、明治以来の我が国で実際に使われていた明朝体活字の字形とその異同を明らかにする。(2)上記(1)とかかわって、第21期国語審議会審議経過報告「II 表外漢字字体表試案」に示されている「いわゆる康煕字典体の字形を具体的に確認する」ことを目的に作成されたものである。資料には、佐藤タイポグラフィ研究所が所有する一八二〇年から一九四六年までに印刷刊行された二三種の活字総数見本帳を用い、明朝体活字字形の歴史的な変遷を字種ごとに一覧できるようにしたものである。

(1999年9月発行 大蔵省印刷局刊 A5判横組み p723 9000円)

齋藤孝滋編『地域言語調査研究法』

 論文編と演習問題からなり、「並行して読み・解いて行けば、終了した時点で現代日本語・地域言語に関する学術論文を独力で読み進めることができると思われる」とする。論文編は、I 「音韻・アクセント編」、II 「文法・語彙編」、III 「表現編」の三編に分かれ、齋藤孝滋「富山県砺波市における母音体系及び音声の世代的変容」をはじめとする、十三の論文を掲載する。演習問題編は十回分あり、それぞれ、論文関連・専門知識・統計などから構成されている。

(1999年9月30日発行 おうふう刊 A5判横組み p191 2400円)

黒田成幸・中村捷編『ことばの核と周縁 ―日本語と英語の間―』

 本書は、東北大学大学院に関係のある日本語学・英語学の研究者が、互いの交流を進め言語という共通の対象の研究を促進させようという考えを共有しつつ書いた論文を集めたものである。核と周辺を区別せず実証的研究を進めると同時に文法理論の観点からその二つを整理することも大切であるという。中村捷「はしがき」に各論文の紹介、黒田成幸「序」には、生成文法での日本語研究と日本での日本語研究などの区別、あるいは日本語学と英語学の乖離は望ましくないということが述べられている。齋藤倫明「語の周辺的意味と語構成−「つら(面)」を構成要素とする複合名詞を対象として−」、黒田成幸「主部内在関係節」「トコロ節」、北原博雄「日本語における動詞句の限界性の決定要因−対格名詞句が存在する動詞句のアスペクト論−」、小川芳樹「日本語アスペクト動詞の自動性・他動性」、佐藤直人「日本語における付加詞からの摘出」、小林隆「種子島方言の終助詞「ケル」」、中村捷「英語の不定詞補文動詞の意味構造と推論規則」、金子義明「英語法助動詞の意味解釈−語彙特性、語用論、叙述様式のインターフェイス−」、島越郎「付加詞併合の非循環適用」、平野日出征「英語/l/,/r/の変動と最適性理論」の各論文を収録。

(1999年10月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み p419 4200円)

鈴木孝夫著『鈴木孝夫著作集 第1巻 ことばと文化、私の言語学』『鈴木孝夫著作集 第5巻 日本語と外国語』

 言葉と人間・言葉と社会の関係を追究し、柔軟な視点から新鮮な題材を扱ってきた(論点を掘り起こしてきた)著者の著作集(全8巻)の刊行が開始された。第1巻は、「I ことばと文化」、「II 私の言語学」、「III 親族名称による英語の自己表現と呼称」とからなる。I II については著者による解説を巻末に付してあり、これを読めば、著者がどのような経過をたどって現在のような流儀を獲得したのか、その一端をうかがうことができる。第5巻は、I「日本語と外国語」、II「言語文化学覚え書」からなる。I は巻末解説に、II は各論文の冒頭に解説を付し、I の解説には「ことばというものを出来るだけ多面多角的に捉えて、その隠れたしくみや面白さを、何とか浮彫りにしたい」、「厳密な科学的手法で対象の一側面だけを集中的に、しかも整然と記述していくことをせず、至るところで普通の言語学が扱う範囲や常識を逸脱しながら、同時並行的にいろいろな事象を取り上げることになる」などと、著者の姿勢を示している。著作集の全体の構成は、第1巻・第5巻のほか、第2巻『閉ざされた言語・日本語の世界』、第3巻『日本語は国際語になりうるか』、第4巻『武器としてのことば』、第6巻『教養としての言語学』、第7巻『日本人はなぜ英語ができないか』、第8巻『人にはどれだけのものが必要か』となっている。

(第1巻:1999年10月6日発行 岩波書店刊 B6判縦組み p363 3500円)

(第5巻:1999年11月5日発行 岩波書店刊 B6判縦組み p346 3700円)

黒須重彦著『『楚辞』と『日本書紀』―〈こえ〉から「文字」へ―』

 「文字を持とうとしなかった民族が、本来他国語を表記するために作られた文字を以て、自国語を表記しなければならない、しかも相手の文字国との間に密接な国際関係を維持しなければならない道を辿る場合には、どういう面倒な手続きが必要になるか。また、逆に〈こえ〉伝承の世界に生産されたものが、文字文化の世界に内在化してゆく時、どういう事象が見られるか。」という点に関心を持つ著者による、『楚辞』と『日本書紀』の成立論である。序、第一章「『日本書紀』成立の経緯―「日本記などは、かたそばぞかし」」、第二章「『楚辞』は、いかなる作品群か―文辞並発、故世伝楚辞」、結びの章、からなる。

(1999年10月14日発行 武蔵野書院刊 B6判縦組み p241 3800円)

中川正美著『源氏物語文体攷 形容詞語彙から』

 本書は『源氏物語と音楽』(和泉書院)に続く、著者の二冊目の論文集である。語の使用の有無、使用の多寡という計量的な面を基礎とし、意味・用法の考察へと展開していく方法をとる著者は、語彙論を基礎とした文体論をめざし、形容詞の考察を通して、源氏物語の文体を研究している。序「文学作品の文体研究」、第一部「平安仮名文の文体」、第二部「源氏物語の文体」、「終わりに」、「補遺」からなり、第一部では、他作品との比較により源氏物語の文体的特質を表すキーワードを選び、第二部では、それらの考察を中心におこなって文体を論じている。第一部は、「和歌の文体」、「和文の文体」、「平安和文における源氏物語」をおさめ、第二部は、「和歌における「うし」」、「物語における「うし」」、「源氏物語における「うし」「心うし」」の各章に分かれる。

(1999年10月15日発行 和泉書院刊 A5判縦組み p324 9000円)

田中克彦著『クレオール語と日本語』

 本書は、岩波書店主催のセミナーでの講義をもとに、全面的に書き下ろしたもの。クレオール学の祖であるシューハルトの業績や十九世紀以後のクレオール諸言語の研究について述べ、日本語との関係を説く。「私にとっての最も深い関心は、クレオール語が、その構造について日本語に似ているという点です。こう言ったからとて、私は日本語の混質性だの日本語のクレオール的起源などについて説くつもりは全くありません。はっきりしていることは、クレオール語研究に手をそめた西洋語人がクレオール語を、かれらの母語と対等の言語として見ることはなかったけれども、日本人がクレオール語を見れば、そこに自らの母語、日本語のすがたを、別の形で再発見することになります。これが、私に、クレオール語への限りない親愛感を感じさせる理由です。」(p205)と述べる。第一講「ピジン語からクレオール語へ」、第二講「ピジン・クレオール語の分布」、第三講「パプアニューギニアのトクピシン」、第四講「クレオール語の文法」、第五講「フランス語から発生したクレオール語」、第六講「日本語人とクレオール語」、「むすび」からなる。

(1999年10月28日発行 岩波書店刊 B6判縦組み p229 2100円)

愛原豊著『日本語の機能構造』

 教員としてわかりやすい構文図を作ろうとしたことがきっかけで南不二男の論にであった著者は、その論に触発されて文の構造の研究を進め独自の説明を考案した。初期の研究は運用言語の連結構造(の一部)を論じたものであったというが、本書では資材言語の機能構造を論ずることを目標としている。内容は、著者がトラス型機能構造図と呼ぶ図により、言語単位、構文機能、活用形、品詞、文節、用言句、用言文節組成語、用言文の二系列の意味領域、などがそれぞれ説明され、その関連や重層性などについての論が述べられる。文の構造について、二系列四段階の計八段階に分かれ、階層構造をなしていると考える。構成は、序章「構文の重層性の研究」、第1章「言語単位体の機能構造」、第2章「機能分類と機能構造」、第3章「用言文節組成語の機能構造」、第4章「現代日本語の機能構造」となっている。

(1999年11月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み p486 4200円)

近代語学会編『近代語研究 第十集』

 近代語学会のシリーズ第十集は、次の各編を収める。小林賢次「大蔵虎光狂言集の本文の異同について−待遇表現に関して−」、坂詰力治「意味の混同と語形の揺れ−『論語抄』に見える語をとおして−」、小林千草「天の甘味・甘露・値遇・ひとしく−『こんてむつすむん地』の用語より」、金田弘「仙台藩儒松本靖斎・桜田簡斎とその言語」、諸星美智直「『寛政重修諸家譜』における格助詞「の」「が」の待遇価値−幕府編纂書の文体をめぐって−」、阿部八郎「西鶴好色物の心話文−好色一代男・好色五人女の場合−」、鈴木丹士郎「近世における形容詞シシ語尾の展開」、神戸和昭「黄表紙会話文の口語性について−山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に−」、小松寿雄「浮世風呂における人称の階層差と男女差」、中野伸彦「江戸語における終助詞の相互承接」、渋谷勝己「文末詞「ケ」−三つの体系における対照研究−」、松井利彦「幕末の多字漢語」、佐藤貴裕「『合類節用集』『和漢音釈書言字考節用集』における版権問題」、鈴木博「語誌「五百八十年」」、進藤咲子「『文明論之概略』の推敲の考察−第六章を中心に−」、齋藤文俊「『佳人之奇遇』における形式名詞コトの用法」、佐藤武義「発音からみた夏目漱石の江戸語」、田中章夫「「新山の手ことばの性格」」、土屋信一「東亰京阪言語違のことば」、金水敏「近代語の状態化形式の構造」、林謙太郎「「レモンはビタミンCに富む」という表現をめぐって」、北澤尚「近代小説とアスペクト表現−島崎藤村の作品を資料として−」、山口豊「天道浮世出星操 総索引」、松村明「明治初年における曜日の呼称」。

(1999年10月30日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み p529 150000円)

佐藤武義・木村晟・山田瑩徹・古瀬順一・片山晴賢編『近世方言辞書 第4輯 筑紫方言/久留米はまおき/菊池俗言考/長崎歳時記/幡多方言』

 江戸時代の方言資料について「厳密で信頼のおける本文の刊行」をめざして、『近世方言辞書』全6輯の刊行が始まった。本シリーズは、原則として原本、それが不可能なら写本または版本を影印し、それも不可能なら活字本による、という方針を採っている。第4輯には、「筑紫方言」(筑紫方言の方言集、国立国語研究所蔵)、「久留米はまおき」(筑紫久留米藩を中心に広く九州一帯の方言を記した近世最大の九州方言集、久留米市図書館蔵)、「菊池俗言考」(熊本方言をイロハ順に配列、『国語学大系』所収本)、「長崎歳時記」(長崎の年中行事等を記した歳時記の中にある方言集、東北大学狩野文庫蔵)、「幡多方言」(高知県西南郡幡多地方の方言を書き留めたもの、浜田数義『「幡多方言」の研究』所収本)をおさめ、古瀬順一による解題を冠している。続刊の予定を記す。第1輯「仙台浜荻」、第2輯「御国通辞」「仙台言葉以呂波寄」「方言達用抄」「仙台方言」「荘内浜荻」「荘内方音攷」、第3輯「常陸方言」「訛語づくし」「加賀なまり」「尾張方言」「尾張俗言」、第5輯「倭語類解」、第6輯「琉球館訳語」「琉球訳」。本シリーズの中には、従来影印本がなかった「仙台浜荻」「仙台言葉以呂波寄」、近年発見された「方言達用抄」「荘内浜荻」「琉球訳」等も含まれている。

(1999年11月3日発行 港の人刊 A5判縦組み p313 9500円)

沈国威編著『『六合叢談』(1857-58)の学際的研究―付・語彙索引/影印本文』

 『六合叢談』は十九世紀中葉に中国の上海で出版された月刊誌である(全十五冊)。ロンドン伝道会の宣教師が編集長を務め、内容は人文科学、自然科学、宗教、各国近況など多岐にわたり、西洋各国に関する情報や近代文明の詳細を東洋に紹介したものである。日本にも送られ、世界に関する情報をもたらすものとして、幕末・明治初期の知識人に大きな影響を与えたという。本書は「研究編」「資料編」「復刻版『六合叢談』」の三部からなる。「研究編」には近代史・科学史・語彙史の観点から考察を行った研究論文として、「解題」、荒川清秀「『六合叢談』における地理学用語」、内田慶市「「黒茶」から「紅茶」へ−『六合叢談』に見える「紅茶」」、沈国威「訳語「化学」の誕生−『六合叢談』に見える近代日中語彙交流」、八耳俊文「自然神学と自然科学の間で−『六合叢談』の科学伝道」、王揚宗「『六合叢談』の科学知識と近代中国への影響」、周振鶴「『六合叢談』及びその書き手と用語」が収録されている。「資料編」には、八耳俊文編「19世紀漢訳洋書及び和刻本所在一覧」、熊月之編「墨海書館の出版書一覧(1844-1860)」、沈国威編「『六合叢談』全語彙索引」、「上海地図(1851・1853)」が収録されている。

(1999年11月20日発行 白帝社刊 B5判横組み p781 18000円)

真田信治編著『展望 現代の方言』

 本書は、編者をはじめとする十一人の分担執筆による方言学の入門書であり、「日本語の方言に関心を持ち、その実態と研究方法を端的に知りたいと思う学生や社会人のために、状況のトピックスと研究の最前線を記述したもの」である。第1部「現代方言の様相」では、方言研究の流れ、事例を通しての方言の姿などを記す。第2部「方言の現在と研究方法」では、音声・アクセント、語彙・表現法、文法などの各面から方言の現状にせまるとともに、研究方法の状況について述べる。第3部「方言とその周辺」では、放送、演劇、口承文芸、言語習得、日本語教育、などの周辺領域と方言の関わりについて最近の状況が述べられている。

(1999年11月27日発行 白帝社刊 A5判縦組み p252 2200円)

宋敏著、菅野裕臣他訳『韓国語と日本語のあいだ』

 第1部「韓国語と日本語との比較の歩み」、第2部「韓国語と日本語との比較の試み」の二つに大きく分かれている。第1部には「韓日両国語比較研究史」「日本語系統論について」「最近の日本語系統論」、第2部には「韓国語と日本語の類似性」「高句麗語の語末母音消失について」「韓日両国語音韻対応試考」「韓日両語の比較について」の各論文を収める。また、付録として「韓日両国語語彙比較索引」がある。著者は「両言語のあいだには確かにただならぬ系統的関わりがある」のだが「両者の関係を言語学的に、しかも客観的に解明しようとした論議は少ない」と述べ、「比較の方法論とその過程に対する反省が必要」であり、それらをまとめておくことが、将来の研究のためにも重要と考えて、本書を公刊したとする。

(1999年12月15日発行 草風館刊 A5判横組み p265 4800円)

天野成昭・近藤公久編著 NTTコミュニケーション科学基礎研究所監修『NTTデータベースシリーズ 日本語の語彙特性 第I期』 全9冊

 日本語の単語と文字に関する主観的特性・客観的特性を収録したデータベースである。構成は、第1巻「単語親密度」、第2巻「単語表記」(二分冊)、第3巻「単語アクセント」(二分冊)、第4巻「品詞」、第5巻「文字特性」、第6巻「文字-単語」(二分冊)、CD-ROM、となっている。内容に関しては、以下のようになっている。第1巻から第4巻までは、『新明解国語辞典』第四版(三省堂)の見出し語に挙げられた単語を母集団として、それぞれの単語の親密度(なじみの程度)・表記妥当性・アクセント妥当性などの特性を実験・調査により導き、その値を収録している。第5巻は、文字の特性・漢字の読み・漢字の部首という三つの部分に分かれ、日本工業規格「情報交換用漢字符号」(JIS X0208-1990)を母集団として、第4巻までと同様の方法で掲出している。第6巻は、単語中の各文字の出現位置・そこでの読み方などの情報を示している。CD-ROMにはデータベース本体、音声ファイル、簡易検索プログラムを収める。日本語においてこのように大規模なデータは他に例がなく、認知科学・心理学・言語学・教育学の分野において、学術的研究の基盤を提供することになるであろう。なお、続巻として、単語や文字の出現頻度等の客観的特性値を中心とするデータベースを出版する予定であるという。

(1999年12月25日発行 三省堂刊 B5判縦組み全9冊(CD-ROM4枚)  セット価格180000円 分売不可)