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新刊紹介 (51巻1号(201号)掲載分)

「新刊書目」の一部について、簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

吉水蔵聖教調査団編『青蓮院門跡吉水蔵聖教目録』

 天台密教の法流を継承してきた青蓮院門跡に伝わる吉水蔵聖教(経典・論疏・儀軌等)の目録である。吉水蔵聖教には,経典自体の資料的価値,天台密教の経典史の史料的価値,高僧の筆跡の文化史的価値のほか,ヲコト点や仮名を記した加点本の国語史的価値も高い。目録に掲載する情報は,箱番号,文献の名称,員数,書写年代,筆者,装幀,料紙,法量,界線,表紙の形状,印記,訓点,書入,附物,記事,外題,内(首)題,尾題,奥書,特記事項など。ほかに,書名索引・事項索引,青蓮院門跡歴代系譜,解説,調査経過,を収める。解説は,「青蓮院門跡吉水蔵聖教について」(山本信吉),「吉水蔵の古訓点本について」(築島裕),「吉水蔵の九世紀・十世紀の訓点」(小林芳規)の3編。

(1999年3月31日発行 汲古書院刊 A5判縦組み p749 30000円)

生塩睦子著『沖縄伊江島方言辞典』

 本書は沖縄本島北部の西方に位置する伊江島(世帯数およそ2000)の方言を収録したものである。調査は1964年から1999年まで行われた。得られた語の中で沖縄本島や標準語の影響を受けていない純粋の伊江島方言をこの辞書の収録語とした。本編と索引編の2冊からなる。本編には語を五十音順に収録している。索引編には共通語引き索引と意味分野別索引,さらに付録として子守歌や地名・屋号一覧などを載せる。なお,著者は広島出身とのことである。

(1999年3月31日発行 伊江村教育委員会刊 A5判横組み2冊 本編p456・索引編p401 非売品)

音声文法研究会編『文法と音声II』

 音声と文法を分けて考えるのではなく,一方を考慮してもう一方を論じたり,その関わりを追究したりすることは重要である。しかし近年まで正面からこの問題を扱うことは少なかった。本書に集められた論文は,そのような問題意識を持つ研究者が集まってできた音声文法研究会の例会において発表・議論されたものをもとに執筆されたものである。「第1部 談話と音声」には「1.自然な談話における「繰り返し応答」のパタンとタイミング」(杉藤美代子・Nagano-Madsen,Yasuko・北村美穂」をはじめ4編,「第2部 韻律の記述」には「5.韻律解釈における基本単位 ―音声文法構築へ向けて―」(Nick Campbell)など4編,「第3部 語とアクセント」には「9.アクセントを合成するとは何をどうする行動か」(定延利之)など4編,「第4部 うたと音節」には「13.歌謡におけるモーラと音節」(窪薗晴夫)など3編を収める。なお,「第2部 8.〈用語解説〉旧情報と新情報」(定延利之・熊谷吉治・苅田修司)に,「旧情報」と「新情報」という用語に対する解説があるが,これらの語が様々な意味で使われてきたことを考えると,今後の研究に有益であろう。

(1999年6月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み p319 3500円)

堀孝彦・遠藤智夫著『『英和対訳袖珍辞書』の遍歴 ―目で見る現存初版15本―』

 最初の英和辞書とも呼ばれる堀達之助編『英和対訳袖珍辞書』の初版(200部だけ印刷)の消息を調査(25本の消息を確認)し,そのうちの現存15本について書誌的研究を行ったものである。外装・状態を初めとして,蔵書印・書き込みなどさまざまな情報を記す。また,刊行後の遍歴についての探索・文化史的考察もなされ,同時に印刷された本が,どのような運命を辿ったか,どのような人がどのような思いでそれを手にしたか,そしてどのような影響を後世に与えたのかなどについて述べる。英学史や訳語研究などの基礎的資料の一つと言える。第1部「『英和対訳袖珍辞書』のABC」,第2部「それぞれの出会い」,第3部「遍歴の諸相 ―所蔵者たちにみる近代日本文化史の断面―」の三部構成。写真を豊富に掲載する。

(1999年6月30日発行 辞游社刊 A5横判横組み p212 4500円)

NTTコミュニケーション科学基礎研究所監修『日本語語彙大系CD-ROM版』

 書籍版の『日本語語彙大系』全5冊(岩波書店・1997)のすべてのデータを1枚のCD-ROMに収めたもの。CD-ROM本体と取扱説明書からなり,CD-ROMには,意味属性3000種,語彙数30万,用言6000語に付した日英文型パターン対数14000件を持つ日本最大のシソーラスを収める。「編集方針」と「意味属性体系図」は「Adobe Acrobat Reader4.0」により表示,データは,付属する「ことといLight」で検索するようになっている。検索例として,「見出し語検索」,「単語体系検索」(読み・品詞・意味属性などから検索),「構文体系検索」(用言文型パターンから検索),「メニュー検索」(一覧表示からクリックにより検索)などがある。

(1999年9月24日発行 岩波書店刊  60000円)

安岡孝一・安岡素子著『文字コードの世界』

 本書は,文字コードの基礎およびいろいろな文字について述べ,コードの実際を示したものである。「第1章 文字コードとは何か」で,文字コードについて説明し,「第2章 世界の文字コード」で,日本・ヨーロッパ・ベトナム・タイの文字コードの実際を述べ,「第3章 漢字コード」では,日本・中国・台湾・韓国の漢字コードについて,性格・対応など基本的な事項を扱っている。「第4章 UnicodeとISO 10646」では,Unicodeにおけるラテン文字・タイ文字・ハングル・ひらがな・カタカナ・漢字について述べ,「第5章 常用漢字と漢字コード」では,日本・中国・台湾・韓国の常用漢字の字体表と主要なコードの番号を載せる。なお,添付CD-ROMには第5章に挙げられている漢字表(日本の常用漢字表・日本の人名用漢字別表・中国の現代漢語通用字表・台湾の常用国字標準字体表・台湾の次常用国字標準字体表・韓国の基礎漢字)が収録されている。

(1999年9月30日発行 東京電機大学出版局刊 B5変判横組み p207 3600円)

川島正平著『言語過程説の研究』

 本書は,時枝の理論を批判的に継承したという三浦つとむの言語理論を是とする立場から,(三浦が述べた)言語過程説を整理・検討したものである。第1章「言語本質論とソシュール」では,言語本質論とは何か,どのように論じられてきたか,などについて述べる。第2章「言語表現の過程的構造について」では,ソシュール・橋本・時枝・三浦の言語論が検討される。第3章「言語過程説の基本概念」では,「1 言語表現と非言語表現」「2 言語規範」「3 客体的表現と主体的表現」「4 主体的立場と観察的立場」の4つの節に分け,言語過程説の基本的な概念について述べる。第4章「言語学上の幾つかの問題」では,2・3章を受けて,「1 言語学の対象」「2 シーニュの恣意性」「3 〈意味〉と〈意義〉」「4 文法について」の各問題の検討が行われる。第5章「時枝誠記の「国語」政策論について」は,「1「時枝誠記と『国語』の時代」」「2 『群像』選評」「3 安田敏朗著『植民地のなかの「国語学」』」からなり,時枝の戦中期の国語政策論の政治性への批判を問題にする。

(1999年10月27日発行 リーベル出版刊 A5判縦組み p378 2800円)

田島毓堂著『比較語彙研究序説』

 本書は,著者がこれまで進めてきた比較語彙研究についての基本事項を総合し,今後の研究の礎石とするべく書かれたものといえよう。
 「序章 「比較」「語彙」という用語について」「本章 比較語彙研究のあらまし」「付章 第1:集団的規範と個別的実現及び語彙元素論と語彙総体論,第2:語の単位と定義,第3:意味構造分析法とコード付けについて,第4:なぜ比較語彙研究か ―なぜ語彙研究は未開だったか,なぜ必要か―,第5:語彙論のための用語解説」の3章からなる。序章では,本書が主題とする「比較」「語彙」を中心に,語彙論の用語の定義を問題にする。本章では,比較語彙研究の目的・対象・方法等を述べる。付章では,本章で使った用語や概念(意味構造の分析・意味のコード・コード付けの実際など)について,詳しく説明する。

(1999年10月30日発行 笠間書院刊 A5判横組み p189 4200円)

佐佐木隆著『萬葉集と上代語』

 前著『上代語の構文と表記』(1996)以後に執筆された,著者の27編の未発表論文に,2編の既発表論文を加えてまとめられたものである。1部「上代語の表現とその構文」は,「連用中止法の機能と時制」「連用形と否定表現との呼応」など,10章を収める。2部「上代語の構文と和歌の解釈」では,「訓には問題はないがその構文をどのようなものだと理解すべきかに問題がある」歌を,11章に分け,具体的に検討している。3部「上代語の構文と和歌の訓義」は,具体的な訓の問題を扱った8章からなる。巻末に引用歌索引を付す。

(1999年10月30日発行 ひつじ書房刊 A5判縦組み p558 22000円)

 ◆52巻4号(207号)に書評を掲載

橘豊著『日本語表現論考』

 本書は著者のこれまでの文章研究・文体論・表現論をまとめたものである。第1部「表現分析の基礎となる日本語の音韻・語彙・語法についての考察」には,文体論・表現論の基礎となる音韻・語彙・語法などについての論考を集めている。第2部「日本語の表現分析」は,日本語表現研究の方法論を開発し具体的成果を提示しようと,作品の表現の具体的分析を行った論考を収めている。第1部は,「S・マーチンの日本語研究」「「重箱読み」と「湯桶読み」」「禅宗の伝来に伴う漢語の輸入」「正法眼蔵の語彙」「語に対する価値意識の変化に関する調査」「連用形中止法」「連体詞・副詞と他品詞との関係」「古文における「は」「も」の機能」「国語国字問題について」「書札礼概説」の10章からなる。第2部には,「日本語の比喩」「文章読本」「推理小説の表現」「梶井基次郎の文体」「安部公房の文章表現」「太宰治の文章表現」「渡辺淳一の文章表現」の7章を収める。

(1999年11月20日発行 おうふう刊 A5判縦組み p439 28000円)

村木正武・岩本遠億編『Linguistics : In Search of the Human Mind ― A Festschrift for Kazuko Inoue』

 井上和子氏に捧げられた記念論文集。主に英語と日本語を扱った,言語学のさまざまな分野の33編の論文を収載する。以下に,その一部を挙げる。
On Association of Quantifier-like Particles with Focus in Japanese (Hiroshi Aoyagi) (日本語の「も」「ばかり」「さえ」などを扱う)/The Syntax of Resultatives (Nobuko Hasegawa)(結果の修飾などを扱う)/Featural Sympathy: Feeding and Counterfeeding Interactions in Japanese (Junko Ito and Armin Mester) (Optimary TheoryのSympathy constraintsに関する論考)/On Double-O Constraint (Chisato Kitagawa)(「を」の制約について述べる)/Notes on So-Called Head-Internal Relative Clauses in Japanese (S.-Y.Kuroda)(「雨がザーザー降っていたの(+が/を/に)などの節について論じる」)/Pragmatic and Discourse Functions of the Rhetorical Negative Question Form, Zyanai desu ka (Naomi Hanaoka McGloin)(「じゃないですか」について論じる)/Wh-NPs and Wh-Adjuncts in English and Japanese (Masatake Muraki)(2種のWhについての論)/Definiteness and Bare Noun Phrases in Japanese (Wako Tawa)(名詞句の限定性について述べる)/On the Metaphorical Mapping of Image Schemas and the Emergence of Subjective Meanings (Masa-aki Yamanashi)(イメージスキーマをめぐる論)/ Categorial Status of the Question Morpheme Ka in Japanese and Bare Phrase Structure (Miyoko Yasui)(「か」について扱う)
 巻頭に「井上和子先生業績一覧」を冠する。業績一覧のみ日本語。他は英語。

(1999年11月10日発行 開拓社刊 A5判横組み p799 12000円)

埋橋徳良著『日中言語文化交流の先駆者 ―太宰春台,阪本天山,伊沢修二の華音研究』

 前著『伊沢修二の中国語研究』(銀河書房1991)に加除修正・補完を為して,新しい書として出版したものである。太宰春台,阪本天山,伊沢修二の三者が,荻生徂徠を源流とする日本の華音(中国語)研究の主要な流れを形成すると見ている。「第1章 太宰春台」では唐音直読論などについて述べる。「第2章 阪本天山の華音研究と西遊事跡」では「九経全文音釈」について記すとともに,天山が中国語の実力を試したり見聞を広めるために長崎に行ったことなど伝記的な内容を叙す。「第3章 伊沢修二の中国語研究と伊沢式中国語表音字母の成立過程」では,表題に挙げられた内容の他,辞典等の編集,中国語での出版事業,韓国語の研究,台湾語の研究教育などについて述べる。序章において伊沢の業績を「1 近代教育の開拓 2 台湾教育,台湾語の教育 3 視話応用中国語表音字母の制作 4 楽石社による吃音矯正及び外国語発音教育 5 泰東同文社による中国向け図書の制作出版事業」とまとめているが,近代教育を除く項目が本書で扱われていることになる。

(1999年11月15日発行 白帝社刊 A5判縦組み p161 3600円)

森田良行教授古稀記念論文集刊行会編『日本語研究と日本語教育』

 森田良行氏の古稀を記念して編まれた,研究・教育上,氏に縁の深い27人による論文集。「サ変動詞の構造」(野村雅昭),「通時的考察における漢字字体の扱いについて」(岩淵匡),「日本語構文にみられる連続性」(田山のり子),「視覚動詞を中心とした接続表現について」(松木正恵),「〈言語=行為〉観」に基づく日本語研究の構想 ―序論―」(蒲谷宏),「「坊っちゃん」対話録」(中村明),「いくつかの主題・立場を表す表現について ―日本語学習者の視点から―」(北條淳子),「明治期の日本語教科書の「文型」」(吉岡英幸)など,計27編を収める。

(1999年11月19日発行 明治書院刊 A5判横組み p405 15000円)

中山緑朗著『動詞研究の系譜 ―研究と資料―』

 本書は,『研究資料日本文法』全10巻(明治書院)に発表した著者の論考,およびその発展として既に発表された論文を中心に,一部書き下ろしをまじえてなったものである。第1部「研究編」は,日本語文法を概説した第1章「概説日本文法」と,動詞研究に限定してさまざまなテーマを扱った第2章「動詞研究の系譜」に分かれる。第2章は,「近世以前の動詞研究の歴史 ―活用表の成立と展開を中心に―」「『名語記』の文法意識」「動詞の基本形をめぐる認識とその変遷 ―用言研究史の一側面―」「幕末・維新期のてにをは研究」「幕末・維新期の文法研究 ―「下一段活用」をめぐって―」「鈴木朖『活語断続図譜』における「蹴る(下一段活用)」の扱いをめぐって」「幕末における日本語文法研究の一潮流 ―大國隆正・海野幸典の用言研究―」「〈自・他〉論の富樫広蔭「属詞」への継承と展開」の8節からなる。第2部「資料編」では,近世以前の文法書から動詞研究に関わる部分を抄録し,解説を付している。

(1999年11月20日発行 明治書院刊 A5判縦組み p480 15000円)

鎌田良二編著『兵庫県の方言地図』

 本書は,甲南女子大学方言研究会報告1「兵庫県言語地図」(1993)をもとに解説をつけたものである。この言語地図のもとになったデータは,1977年度の卒業生による全県調査(淡路島を除く)で,以後も部分的に再調査をしてきたものである。調査項目は,「I 動作・人体」「II 状態・数量」「III 日時・天気」「IV 植物」「V 動物」「VI 道具・生活」の各分野にわたる約100の語彙項目。調査地点は,兵庫県とその近辺の120カ所である。

(1999年11月25日発行 神戸新聞総合出版センター刊 B6判縦組み p224 1400円)

半田一郎編著『琉球語辞典』

 那覇・首里を中心とする沖縄本島南部広域共通語としての琉球方言に準拠した辞典。大きく,「琉和辞典の部」と「和琉辞典の部」に分かれ,巻頭に「琉球語について」「文字と表記法」「発音について」「文法の要点」「琉歌について」「参考文献(抄録)」「凡例」,付録に「固有名詞の共通語・現地音索引」「動詞の用法便覧」「琉球史略年表」「年中行事風物暦」「琉球音楽の特色」「地図」を付す。「琉和辞典の部」の見出しは,12000余項目で,配列はローマ字ABC順。事典的な項目も取り入れ,下欄に諺・民謡などからの引用文例を配するなど,文化を感じ取ることができるような配慮もなされている。また,必要に応じて語源についての注記もある。「和琉辞典の部」は,琉和辞典の索引として作成されたもので,見出しはローマ字ABC順で5200余項目。

(1999年11月30日発行 大学書林刊 A5判横組み p968 30000円)

西條美紀著『談話におけるメタ言語の役割』

 本書は,話者が自分の談話の中でその内容に対してコメントすること(=メタ言語の使用)がその談話にとってどのような影響があるかを,調査実験によって明らかにしようとしたものである。具体的には,メタ言語が実際の談話の中でどう使われているか,談話の展開と理解に役立つのか,教授可能なものなのか,という3点を解決すべき問題として設定し,実証をし,それに対する考察と結論にいたるという構成になっている。なお,本書における「談話」は,「文よりも大きな言語単位」と定義されており,音声談話と書記談話の両方を含んでいる。章立ては,「第1章 序論」「第2章 メタ言語の機能」「第3章 聴解におけるメタ言語の有用性」「第4章 接触場面におけるメタ言語的方略の有用性」「第5章 弁証法的作文過程におけるメタ言語使用の有用性と教師による支援」「第6章 総合的考察」となっている。

(1999年11月30日発行 風間書房刊 A5判横組み p135 5800円)

京都大学文学部国語学国文学研究室編『ヴァチカン図書館蔵『葡日辞書』』

 『葡日辞書』(Vocabulario da lingua Portugueza)は,ヴァチカン図書館本が現在知られている唯一の伝本である。東京大学史料編纂所にマイクロフィルムが所蔵されているが,公刊されるのは今回がはじめてで,高田時雄氏所蔵のマイクロフィルムによる。本書の構成は,「はしがき」(木田章義),「序文」(高田時雄),「本文影印」,「本文翻刻」(岸本恵実),「索引」(岸本恵実),「解説」(岸本恵実)となっている。「本文影印」には,『葡日辞書』全文とシーボルトが書いた付属のカードを収める。「本文翻刻」は,ポルトガル語部分は単語で区切り,日本語部分は文節で区切った翻刻と,付箋や書き入れについての注記からなる。「索引」は,本文中の日本語についての,自立語・付属語索引。見出しはアルファベットだが,日本語の翻字を付す。なお,本書は京都大学文学部国語学国文学研究室とヴァチカン図書館の共同出版。

(1999年11月30日発行 臨川書店刊 A5横判横組み p479 12700円)

佐藤和之・米田正人編著『どうなる日本のことば ―方言と共通語のゆくえ』

 1994年秋から翌春にかけて全国14地点で2800名を対象に行われた言語意識調査に基づき,方言観・方言の将来・方言と標準語の関係について,人々の意識とその地域差・年代差などについて,まとめたものである。「序 20世紀の方言論」「1 あなたは共通語が好きですか」「2 共通語って何?」「3 言語意識と言語行動」「4 方言のゆくえ」「5 〈地域別〉方言の独自性」と,6つのコラム(「日本で一番〈早口な〉方言は?」など)からなる。わかりやすい形式の図表が豊富に用意されている。関連する書に,『変容する日本の方言』(月刊『言語』1995/11別冊 大修館書店)がある。

(1999年12月1日発行 大修館書店刊 B6判縦組み p274 1800円)

蘇培成・尹斌庸編 阿辻哲次・清水政明・李長波編訳『中国の漢字問題』

 本書は,蘇培成・尹斌庸編『現代漢字規範化問題』(1995)を原書とし,さらに導入部「1 21世紀の漢字文化圏を考える(阿辻哲次)」を付け加えて一書としたものである。原書は,現代中国の漢字簡略化の歩み・方法・現状について詳述したものである。導入部に続いて,「2 文字改革の歩み」,「3 漢字簡略化の理論と実際」,「4 暮らしの中の簡体字」の3つに分け,以下の18編の論文を収めている。「漢字簡略化の過去と現在」「繁体字と簡体字について」「漢字の簡略化について」「漢字の簡略化と漢字教育」「漢字の規範化問題について ―繁体字と簡体字,および異体字について」「漢字整理事業におけるいくつかの有益な歴史的経験」「漢字簡略化の必然的趨勢と効果的な簡略化の原則について」「漢字研究四題」「漢字簡略化の諸問題 ―漢字簡略化事業での十種の関係を如何に処理すべきか」「台湾の学生は大陸の簡体字をどれほど読めるか」「社会での文字使用の管理を強化し,言語と文字の規範化を促進せよ ―社会での文字使用管理現場会議における総括発言」「切っても切れない漢字との関係 ―整理か混乱か」「『漢字簡化方案』の推進成果」「当面の繁体字使用の問題について」「書家と簡体字」「書道芸術と漢字の規範化」「『人民日報』海外版の繁体字から簡体字への変更」「もうこれ以上誤ってはいけない」。

(1999年12月1日発行 大修館書店刊 B5判縦組み p309 2500円)

井手至先生古稀記念会編『井手至先生古稀記念論文集 国語国文学藻』

 井手至氏に教えを受けた研究者による古稀記念の論文集。「日本語の文の基本的展開 ―対話伝達と主張伝達―」(小松光三),「「よろしい(よい)」と「結構」 ―評価の質と待遇性―」(大槻美智子),「北海道・東北北部以外のアイヌ語起源の地名とその日本語化」(鏡味明克),「形容詞語幹の用法」(蜂矢真郷),「副詞ナホの関係構成と訓詁」(内田賢徳),「上代における不可能を表す接尾動詞 ―アヘズ・カヌ・カツ+否定辞―」(吉井健),「上代の「ねば」の表現について」(徐一平),「戯書の定位 ―漢字で書くことの一側面―」(乾善彦),「蜻蛉作者の疎外意識 ―身体的規定「身」を契機として―」(神尾暢子),「源氏物語の「人笑へ」の諸相 ―親子関係を軸として―」(朝日眞美子),「源氏物語の段落構成と「か」系の指示語 ―「かく」「かう」を中心に―」(西田隆政),「定家の表記意識 ―「なほ」を「猶」と書くことの意味―」(遠藤邦基),「「化粧」の意味変遷」(陳力衛),「注釈と古辞書 ―「いささめ」の周辺―」(寺島修一),「契沖における「『まこと』と『いつはり』」(井野口孝)など,32編の論文を収める。「井手至先生略歴・主要著書論文目録」を付す。

(1999年12月10日発行 和泉書院刊 A5判縦組み p612 16000円)

小泉保編『言語研究における機能主義 ―誌上討論会―』

 本書は1998年10月24日の「第6回体系機能言語学会」におけるシンポジウムに基づき,このシンポジウムにおいて十分に果たせなかったことを練り直してみようという試みである。第1部には,シンポジウムの講師の論として,「選択体系機能理論の構図 ―コンテクスト・システム・テクスト―」(山口登),「テーマ・レーマの解釈とスープラテーマ ―プラーグ言語学派から選択体系機能言語学へ―」(龍城正明),「ハリデー文法と認知言語学 ―中間表現を巡って―」(吉村公宏),「定冠詞の機能 ―関連性理論の視点から―」(内田聖二),「機能的構文論」(高見健一)の各論を収める。第2部には,ディスカッサントとコメンテーターの論述と,各講師の回答を,<ディスカッサントの論述と質疑応答>「文法化と日英語対照の立場から」(西光義弘),<コメンテーターの論述と質疑応答>「機能主義と形式主義」(児玉徳美)の2編として掲載する。第3部には,全体を見渡した解説として,「言語研究における機能主義」(小泉保)を載せる。

(2000年1月3日発行 くろしお出版刊 A5判横組み p300 3800円)

鎌田修著『日本語の引用』

 本書は,引用というものを単に以前の情報の引き写しではなく,新たな伝達の場においてそれにふさわしい表現を創造している営みであると考え,その観点から引用表現の構造・使用を考察したものである。序章「伝達のからくりと引用研究」では研究のねらいや基本的立場などが述べられる。第1章「引用,話法,「と」及び引用動詞」では引用と話法の違い,「と」に関する先行研究の説のまとめと検討などが扱われる。第2章「引用句創造説と直接引用」では本書の中心概念である引用句創造説が述べられる。第3章「間接引用」では,直接引用と間接引用の違いを「視点調整の原理」と「発話生成の原理」の素性の組み合わせから論じ,第4章「準間接引用:引用とモダリティ」と第5章「準直接引用,直接引用(再考)と衣掛けのモダリティ」では典型的な直接引用・間接引用とは異なる素性を持つ引用について述べる。第6章「マクロ的分析とまとめ 引用句総覧」では,前章までのミクロ的視点とは異なる方向からの分析と,全体のまとめを行っている。

(2000年1月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み p199 3200円)

 ◆53巻3号(210号)に書評を掲載

三保忠夫著『日本語助数詞の歴史的研究 近世書札礼を中心に』

 本書は近世の書札礼に見られる助数詞の記述を分析・検討し,当時における助数詞の全体像を明らかにしようとしたものである。第1部「助数詞研究資料と用例の収集」では,22の資料を挙げ,それぞれの資料の性質,簡単な書誌などを記し,助数詞に関する記述を翻字している。第2部「近世書札礼における助数詞の用法」では,第1部の資料を総覧し,「衣物類」「食物・容器」「住居・調度」「武具・馬具」「その他」に類別した上で,それぞれの助数詞について述べていく。また「助数詞索引・対象語索引」を収める。第3部「『都会節用百家通』における書札礼」では,当該資料の「書札認め方心得の事」を翻字し,当時の書札に関する規範の例を示す。

(2000年1月31日発行 風間書房刊 A5判横組み p578 20000円)

北原保雄・古田東朔編 島田康行解説『日本語文法研究書大成(第5回配本) 口語法 全』

北原保雄・古田東朔編 島田康行解説『日本語文法研究書大成(第6回配本) 現行普通文法改定案調査報告之一』

 過去の優れた文法研究書を復刻している『日本語文法研究書大成』のシリーズの第5回配本として『口語法 全』,第6回配本として『現行普通文法改定案調査報告之一』が出た。『口語法 全』は,大槻文彦を中心とした国語調査委員会が,初めて口語の規範を示した書として,1916年(大正5年)に出版されたものである(底本には1926年(大正15年)の第10版を使用)。『現行普通文法改定案調査報告之一』は,大矢透が提出した報告の一部で,明治のいわゆる普通文に関して,その文法上の裏付けを与えようとして,1906年(明治39年)に出版されたものである。

(『口語法 全』2000年2月25日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 本文p220,解説p16 5000円)

(『現行普通文法改定案調査報告之一』2000年2月25日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 本文p64,解説p21 2200円)

米川明彦編『集団語辞典』

 本書は隠語・業界用語を中心とした集団語を,用例とともに集めた辞典である。160の集団から得た約7300語と用例8500を収める。今も参考にされる楳垣実著『隠語辞典』には業界用語はほとんど扱われておらず,用例も掲出されていなかった。その点,本書は現代の業界用語を用例とともに集成しており,価値が高い。著者は『若者ことば辞典』を先に出しており,本書と併せて俗語の研究に基礎的な資料を提供したと言えよう。巻末に付録として集団語概説(集団語とは何か/集団語の生まれる原因/集団語の造語法/集団語の特徴)・隠語辞典一覧・意味別分類・参考文献を載せる。

(2000年2月29日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み p853 5800円)

国語語彙史研究会編『国語語彙史の研究 十九』

 国語語彙史研究会の19巻目の論文集。小特集「位相語」と題され,「オレ・ソチ・ソナタ・ワッチ・ワタイ ――明治東京語女性人称形成の一考察――」(小松寿雄),「副詞エの意味」(渋谷勝己),「「全国ダメ・アカン分布図」を読む ――不可能からよくない,さらに禁止・当為表現へ――」(松本修),「旧制高等学校の学生語」(米川明彦),「部分的宣命書きの機能」(乾善彦),「枕詞の変容 ――萬葉集から王朝和歌へ――」(白井伊津子),「みそかに」「しのびて」「しのびやかに」の語義と文章表現 ――源氏物語とそれ以前――」(大槻美智子),「カ・ヤカ・ラカ型語幹の語基」(蜂矢真郷),など17編からなる。

(2000年3月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み p342 9500円)

泉子・K・メイナード著『情意の言語学 「場交渉論」と日本語表現のパトス』

 人間の情的態度がいかに言語のストラテジーにより表現・解釈され,感じられるか,の解明を目的とする言語学を著者は「情意の言語学」と呼び,場から疎外された広義の形式理論主義的言語学とは違った言語学を指向している。そして,会話分析・語用論・社会言語学の分野に共通する言語分析の原理として言語の「場交渉論」を提唱する。「場交渉論」は著者によれば(p75)「<参加する主体>としての自己知識を大切にした,人間重視のモデル」であり,「従来の主体中心から人間関係重視のシフトを余儀なくする知のモデル」であると言う。序章「言語・情意・パトス」のほか,第1部「背景」,第2部「理論」,第3部「考察」,第4部「日本語表現のパトス」,第5部「展望」,あわせて17章からなる。

(2000年3月23日発行 くろしお出版刊 A5判横組み p415 3800円)

高橋忠彦・高橋久子編『真名本伊勢物語 本文と索引』

 本書は,寛永二十年板真名本伊勢物語影印本文,索引編,研究編の3部構成である。索引編は,単語索引と漢字索引からなり,研究編には「真名本伊勢物語の表記をめぐって」(高橋忠彦・高橋久子),「寛永二十年板真名本伊勢物語の本文の性格及び変字法就いて」(国領麻美)の二編を収める。巻末に「真名本伊勢物語研究文献目録」を付す。

(2000年3月27日発行 新典社刊 A5判縦組み p494 11800円)

定延利之著『認知言語論』

 本書は,「あの人は結局生涯で奥さんが3回変わりました」という文において,「妻は合計3人いた」という解釈がなされるのは何故か(3人なら,変わった回数は2回では?),など一見奇妙な言語現象に積極的に光を当て,それを通じてこのような現象を成立させる心のあり方を「スキャニング(走査)」という概念を中心に論じている。さらに,奇妙な現象を普通の現象と同時に説明できるようになるために,言語研究が持つべき前提についても論じている。第1章「序」,第2章「言語表現に関わるスキャニング」,第3章「表現と計算のミスマッチ?…『度数余剰』を中心に」,第4章「項と述語のミスマッチ?…『使役余剰』を中心に」,第5章「意味と形式のミスマッチ?…『分節ミスマッチ』を中心に」,第6章「まとめと補足」からなる。

(2000年4月10日発行 大修館書店刊 A5判横組み p222 2500円)