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新刊紹介 (51巻3号(203号)掲載分)

「新刊書目」の一部について、簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

名古屋・ことばのつどい編集委員会編『日本語論究6 語彙と意味』

 『日本語論究5 敬語』に続く「名古屋・ことばのつどい」の論文集。収録された論文等は以下の通りである。

(横組み論文)

(その他)

(縦組み論文)

(1999年12月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 344ページ 11,000円)

木部暢子著『西南部九州二型アクセントの研究』

 本書は、西南部九州二型アクセントの基本的性質(一般複合法則、アクセントと韻律単位の関係、文末詞の音調について)を考察し(第1章)、その成立過程について従来の説に修正を加えたものである(第3章)。その際、18世紀初頭の薩摩の漂流民であるゴンザが残した資料から、当時の薩摩語のアクセント体系を明らかにし(第2章)、それを考察の材料としている。なお、第4章はトカラ列島の方言を記述したものである。

(2000年2月28日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 454ページ 16,800円)

 ◆54巻1号(212号)に書評を掲載

井上史雄著『東北方言の変遷』

 本書は、東北方言(特に山形県庄内方言を中心とする)の歴史的変遷に関する著者の30年にわたる研究をまとめたものである。(元になった論文には大幅に加筆している。)27章を4つの部に分けている。第1部「東北方言史概要」では、東北方言史を考古学や歴史学の成果を利用して概観している。第2部「東北方言の語彙の変遷」と第3部「東北方言の音韻と文法の変遷」では、方言自体の変化に関わる現象を扱っている。第4部「共通語化のプロセス」では、近代に起きた共通語化の現象を扱っている。全体を通してみると、歴史言語学の多用な研究法の具体例を示したとも言え、言語史再構成の理論面にも寄与する面があると思われる。

(2000年2月29日発行 秋山書店刊 A5判横組み 612ページ 13,000円)

進藤咲子著『研究資料 『文明論之概略』草稿の考察』

 本書は、『文明論之概略』の推敲過程を残している草稿を調査し、それを資料として提示しようとするものである。第2篇「『文明論之概略』草稿の考察一」が中心となっている。これらの推敲を修辞の面から考察したのが、第3篇「『文明論之概略』草稿の考察二」である。なお、この2・3篇は東京女子大学の論集に発表したものがもとになっているとのことである。他に、第1篇「草稿の形態について」、第4篇「短い語句の修正」、第5篇「推敲から見た「第六章智徳ノ弁」の成立」の各篇を収める。

(2000年3月15日発行 社団法人福沢諭吉協会刊 A5判縦組み 408ページ 非売品)

加藤知己・倉島節尚編著『幕末の日本語研究 W.H.メドハースト英和・和英語彙 ―複製と研究・索引―』

 本書は、『幕末の日本語研究 S.R.ブラウン会話日本語 ―複製と翻訳・研究―』に続くものである。これまで紹介されてはいたものの原本を手にすることが難しかったメドハーストの語彙集を複製し、さらに「序文」の日本語訳を付け、「『英和・和英語彙』について」「『英和・和英語彙』の英和の部について」「『英和・和英語彙』の日本語」の各章で、著者・この本の書誌・特徴についての考察などが書かれている。なお、巻末に英和・和英の見出し語索引を付す。

(2000年3月30日発行 三省堂刊 A5判横組み 482ページ 12,000円)

国立国語研究所編著『国立国語研究所報告116 日本語基本語彙―文献解題と研究―』

 本書は、大正以来の、語彙表を持つ基本語彙研究文献を調査・研究・分析したものである。第1章「研究の目的と方法」に続いて、第2章「基本語彙研究文献解題」で122編の文献について、その結果が示されている。さらに、第3章「各文献からとらえた基本語彙研究」では、上記文献を研究目的・領域別に分類し、注解を記している。また、第4章では、第2章で取り上げなかった文献について、その理由を中心に解説している。

(2000年3月31日発行 明治書院刊 B5判横組み 340ページ 9,800円)

太田紘子著『二葉亭四迷『あひゞき』の語彙研究 ―『あひゞき』はどのように改訳されたか―』

 『二葉亭四迷『あひゞき』の表記研究と本文・索引』(和泉書院 1997年)に続く,『あひゞき』研究の語彙編である。二葉亭訳『あひゞき』には,明治21年の『国民之友』所載の訳文と明治29年『片恋』所収の訳文があるが,この両訳の違いを主に語彙調査(全体量・品詞構成・語種・多用語)に基づいて明らかにし,この作品の語彙の特徴・作者の個人的特性を捉えようとしている。さらに,旧訳文から削除された語や新訳文で添加された語の特徴などを考察している。章立ては,「1章 序論」「2章 本論」「3章 結論」「付章 『あひゞき』の冒頭」となっている。

(2000年3月31日発行 和泉書院刊 B6判横組み 230ページ 3,800円)

室山敏昭編『方言語彙論の方法』

 本書は、室山敏昭氏の還暦を契機にして、方言語彙論の方法と実践の拠点を構築するという趣旨のもとに編まれた論集である。地域文化学に発展していく要素を持つ方言研究を「原論」「方法論」「記述」の3つの観点から総合的に考察している。目次は以下の通りである。

【原論】

【方法論】

【記述】

(2000年3月31日発行 和泉書院刊 A5判横組み 379ページ 10,000円)

国立国語研究所編『新「ことば」シリーズ11 豊かな言語生活のために』 『新「ことば」シリーズ12 言葉に関する問答集―言葉の使い分け―』

 これまで文化庁によって編集されてきた「ことば」シリーズ(1973〜1993)、それに続く、新「ことば」シリーズ(1994〜)の最新刊。今回からは国立国語研究所の編集となった。従来からの、広く国民に関心を持たれている諸問題に対して専門家が解説を加えるという枠組みを踏襲しつつ、日常生活の中で言葉について話し合う機会を広げていくことを目指して編集されている。『豊かな言語生活のために』は「解説編」であり、「座談会 豊かな言語生活のために」(内田信子・陣内正敬・橋元良明・甲斐睦朗)のほか、「言葉って何だろう―人間にとって、人間の生活にとって―」(相沢正夫)、「「ことば」のしくみについて考える」(井上優)、「文字と暮らし」(横山詔一・笹原宏之)、「日本語の中の多様性」(三井はるみ)、「教室の談話」(当真千賀子)を収める。『言葉に関する問答集―言葉の使い分け―』は「問答編」で「「手紙」「文」「書状」「書簡」「レター」「メール」などは、どのように使い分けられていますか。」などの30の問いとそれに対する答えが収められている。なお、問答のほか、巻末にこれまでのシリーズに載せられた表記・国語施策・調査研究の総索引があり,利用の便をはかっている。また,参考資料として,国立国語研究所が関わった調査の結果(既発表)の一部も紹介されている。

(11・12ともに:2000年3月発行 国立国語研究所発行/大蔵省印刷局印刷 A5判縦組み 94ページ 360円)

木村義之・小出美河子編『隠語大辞典』

 本書は,さまざまな隠語辞典を集め,それらを改編した近代隠語のデータベースである。各文献の見出し語を50音順に並べ,同一語の項では時系列順に並べているので,各文献の特徴や影響関係などを考えることができるなどの利点もある。例えば,「あいさつ」の項を引くと,『かくし言葉の字引』『モダン隠語辞典』など計6冊の辞典から,「あいさつ」の項の記述が抜き書きされているのが一覧できる。辞典編のほか,資料編(元の文献が辞書形式ではない資料,本書の形式になじまず辞典編に入れていない資料などを一括して示したもの),解説編(「隠語とは何か」「隠語辞典の実際」「隠語の造語法」など隠語についての概説,辞書編収録文献解題,明治以降隠語関連文献目録などの情報が収められている),索引編(位相別(地域別・使用集団別)の語彙索引,辞典編の書名・人名索引・資料編(語句・書名人名)の各種索引)がある。

(2000年4月15日発行 皓星社刊 B5判縦組み 辞典編など1488ページ 索引編205ページ 28,000円)

藤原与一著『続昭和(→平成)日本語方言の総合的研究 第5巻 日本語方言文法』

 シリーズの第5巻目は「文法」を扱っている。首篇では、会話の諸相を、第1〜3篇では、文法書のような枠組み(「名詞」「数詞」「代名詞」…)のもとで各地域の様々な言い方を記述している。第4篇では、単語より上位の単位で考えられるべき表現を扱っている。目次は以下の通り。
序説「方言語法 方言文法 方言表現法」 首篇「方言生活相」  第1章「方言会話」  第2章「会話(という「ことばの生活」)でのあいさつ〜あいさつのことばでの方言文法〜」  第3章「会話〜方言生活〜での音声面」 第1篇「実詞」  第1章「名詞」〜第8章「用言の接辞」 第2篇「助辞」  第1章「助詞と助動詞」〜第6章「助動詞」 第3篇「本体詞」 第4篇「表現の世界」

(1999年4月20日発行 武蔵野書院刊 A5判横組み 928ページ 25,000円)

佐佐木隆著『上代語の表現と構文』

 『上代語の構文と表記』(ひつじ書房1996)、『萬葉集と上代語』(ひつじ書房1999)に続く万葉集を中心とした上代語の読み(訓読)に関する論考である。前著同様、文献上の事実を尊重し、より深い文学的な解釈の前提として語学的に確実と言える点を築こうという姿勢をとっている。第1部「歌の構文と表記」では、第1章「大和の国は押しなべて…」を含め、全7章からなり、訓読には問題がないが、解釈に問題がある歌を扱う。第2部「歌の構文と表記」は第1章「我許背歯告目」を含め、全8章からなり、原文あるいはその訓読に問題があり、その点を整備した後で解釈に踏み込んで行かなければならない部分についての考察である。第3部「『古事記』の表現と構文」は『古事記』神話の、訓読に問題があると言われている箇所を適切に訓読しようとする試みである。

(2000年4月25日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 339ページ 10,000円)

 ◆52巻4号(207号)に書評を掲載

山梨正明著『認知言語学原理』

 本書は、言語主体の感性・身体性を基盤とした認知的能力の観点から言葉と人間の知に迫っていこうとする研究のあり方を提示したものである。第1章「認知言語学と言葉の世界」は、認知言語学の言語観・科学観・経験的基盤などについての総論である。第2章「認知言語学の基本的枠組」では、具体的な認知図式を提示し、文法現象の過程について述べる。第3章「言葉と認知のダイナミックス」では、より一般的な知覚と言葉の関係を論じ、第4章「外界認知と言葉の身体性」では空間・身体感覚・運動感覚・イメージスキーマと言葉とについて論じている。第5章「カテゴリー化の能力と拡張のメカニズム」では、スキーマ・プロトタイプと拡張・多義・言葉の創造性などが取りあげられている。第6章「一般的展望」は、対抗理論との違いや、歴史的経過を含む認知言語学の位置づけを述べ、これからの方向性について展望を示している。

(2000年4月25日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 310ページ 2,800円)

影浦峡著『計量情報学 図書館/言語研究への応用』

 専門用語の造語法・語構成研究において「ある程度一般的な語構成要素あるいは関係の数量的傾向から、標本を増やしたときに現われうる要素あるいは関係の予測を行うというかたちの問題」(序文)を設定し、それに枠組みを与えるべく様々な問題を考察している。著者はさらに「本書の課題は、計量的データの統計的性質が現象の解釈に課す制約のもとで、計量的研究に何ができるかについて、一つの可能な道筋を素描することである。」(5ページ)と述べ、また、具体的には、「本書は,計量情報学(広く計量書誌学と計量言語学を含むものと考える)の最も基本的な対象である,著者とその執筆論文数,雑誌とそこに掲載される特定主題分野の論文数,あるいは,単語とその出現頻度などの,いわゆる頻度データに対する計量的研究を巡る論考である。」(序文)と記している。全体の構成は、「計量情報学の基本問題」「壷のモデルとLotka型データ」「統計量 の標本量依存性」「解釈を巡る考察」「標本量に依存しない尺度の利用」「動的分析(1):成長率とランダム・サブサンプリング」「動的分析(2):二項補間・補外」「動的分析(3):LNREモデル」「おわりに」の8章からなる。

(2000年4月28日発行 丸善刊 A5判横組み 182ページ 2,600円)

沖森卓也著『日本古代の表記と文体』

 「日本語表記の発生と、上代における展開を中心とした論文」で構成された本書は、著者が東京大学に提出した学位申請論文のうち、1章分を割愛したものであるとのことである。第1章「日本語表記の創造」は、「日本語表記の黎明/訓の成立と音仮名の展開/音訓の交用/万葉仮名と文章文体」の各節からなる。第2章「上代表記体の成立」は「和文の成立/万葉仮名交り文の成立/宣命体の成立/万葉仮名文の成立」の各節からなる。第3章「上代における表記と文体の交渉」は「古事記における字順と用字/万葉集における動詞活用語尾の表記/風土記の文体について/文体の史的研究に関する覚書」、第4章「宣命・祝詞の文体と表現」は「続日本紀宣命の用字と文体/続日本紀宣命の表記と文体―称徳期について―/平安初期宣命の文辞について/延喜式祝詞の表現とその形成」の各節からなり、具体的な考察が示されている。既発表の論文との関連はあとがきに示されている。

(2000年5月10日発行 吉川弘文館刊 A5判縦組み 335ページ 9,800円)

 ◆53巻3号(209号)に書評を掲載

赤祖父哲二他編『日・中・英言語文化事典』

 本書は日本語・中国語・英語に関して,言語に現れた文化を比較したものである。内容は614項目からなり,日本語の50音順に各項目が並べられている。試みに「こ」から始まる見出しを列挙すると,「恋人・蝙蝠・越える・肥える・こおる・苔・心・腰・乞食・こそあど・こだわる・御馳走・事・言葉・胡麻・ごみ・こらっ・懲りる・凝る・殺す・転ぶ・根・こんにちは」となっている。各々の項目に関して3言語の共通点と相違点が明らかになるよう配慮されている。また,平面的に同一項目の対応語を挙げているのではなく,文化としての対応と影響関係にも留意し,記述されている。各項目を見ると,まず,最初に比較のまとめが書かれており,その後,日・中・英のそれぞれについての記述が見られる。巻末に日・中・英の索引・参考文献が挙げられている。

(2000年5月15日発行 マクミランランゲージハウス刊 A5判横組み 1713ページ 18,500円)

国語文字史研究会・前田富祺編『国語文字史の研究5』

 国語文字史研究会の第5巻目の論文集。収録された論文は以下の通りである。

なお、巻末に、書名、人名、用語、語彙、仮名、漢字、の各索引を付す。

(2000年5月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 298ページ 8,000円)

大野晋著『日本語の形成』

 本書は、日本語と日本の文明の形成について、著者の構想する4つの段階(1 オーストロネシア語の段階、2 タミル語受け入れの段階、3 古代朝鮮語受け入れの段階、4 漢語受け入れの段階)のうち「タミル語の受け入れ」について比較言語学的手法により実証を行ったものである。第1部は「日本語の系統」で、「研究の課題と方法/音韻の比較/単語の比較/文法の比較」の各章からなる。タミル語との間には「1 約500語におよぶ単語の対応例がある。2 文法形式が類型学的にほぼ同一である。3 文法的morpheme〈中略〉の中の使用度数の極めて多いものの中に音韻・用法にわたって対応する例が20語以上ある。」(699ページより)という共通性を指摘している。第2部は「和歌の系統」で、「サンガムと和歌の比較/サンガムと和歌の韻律の比較」の各章からなり、タミル文学の最古の歌集サンガムと和歌には5-7の形式という面で共通性があることを述べている。

(2000年5月30日発行 岩波書店刊 A5判横組み 767ページ 18,000円)

高見健一・神尾昭雄・John Whitman 編『 Syntactic and Functional Explorations In Honor of Susumu Kuno 』

 本書は、久野暲氏に捧げられた記念論文集である。久野氏が扱った分野に関連して、広い分野の論文が寄せられている。巻頭に久野暲氏の業績目録がある。本編は、日本語を中心とした第1部とそれ以外の言語を扱った第2部とに分かれる。目次は以下のようになっている。一部の論文については[ ]でその論文のキーワードまたは関連語を示す。

  1. STUDIES IN JAPANESE
    • Graphic Specification of Kanji (Osamu Fujimura)[漢字構造・形態認識]
    • On the Semantic Nature of Subjacency in Japanese (John Haig)
    • On Licensing of SIKA-NPIs in Japanese (Keiji Konomi)[「しか」と「は」の近接性より、「しか」と「も」の近接性が高い]
    • Function and Structure: Japanese Causatives (S.-Y. Kuroda)[使役]
    • On Niwa ... teiru Constructions (Heizo Nakajima)[「には…ている」、locative constructionとの対応]
    • On the Categorial Status of Japanese Zero-Form Pronouns: A View from Referentiality Hierarchy (Tomiko Narahara)[省略に関わる諸条件]
    • Japanese Negative Polarity Items wh-MO and XP-sika Phrases: Another Overt Movement Analysis in Terms of Feature-Checking (Nobuaki Nishioka)[「疑問語+も」と「しか」、チョムスキーChecking theory]
    • Japanese Benefactive Constructions: Their Cognitive Bases and Autonomy (Masayoshi Shibatani)[「てやる」など、意味も含めた認知的説明]
    • An Operator-Subject Analysis of Japanese Sentences and Noun Phrases: LF Representations of Wa, Mo, Ga and No (Shigeo Tonoike)[「は・も・が」主語、三上章]
    • Bare Subject Inversion Constructions in Japanese (Atsuro Tsubomoto)[連体構造]
  2. STUDIES IN ENGLISH AND OTHER LANGUAGES
    • Anatomy of a Generalization (Luigi Burzio)
    • Sentential Negation and 'Because'-Clauses (Javier Martin- Gonzalez)
    • Whether to Agree or Not: The Syntax of Inalienable Possession (Joan Maling)
    • Korean Benefactive Constructions: An Empathy Phenomenon (Grace Moon and Sook Lee)
    • Secondary Syntactic Effects of Case (Lynn Nichols)
    • Subordinate Clauses in Old English with Special Reference to p〓t Clauses (Masayuki Ohkado)
    • Right Dislocation in English and Japanese (John Whitman)

なお、久野氏に捧げられた記念論文集としては、この他にJohn Benjamins 社刊のAkio Kamio and Ken-ichi Takami編『 Function and Structure : In Honor of Susumu Kuno』(1999) がある。

(2000年6月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 484ページ 5,400円)

佐治圭三教授古稀記念論文集編集委員会編『日本と中国ことばの梯 佐治圭三教授古稀記念論文集』

 佐治圭三氏の古稀を記念した論文集である。氏の研究を反映し、1 日本語学、2 日本語教育、3 日本語と中国語の対照研究、の各分野にわたる論文を収めている。目次は以下の通りである。

  佐治圭三先生略歴・著作一覧

  1. 日本語学
    • 有契化と無契化 --音象徴語の語形(その2)--(玉村文郎)
    • 自然会話における音素の添加、縮減と融合(朱春躍)
    • 人を表すことば --その類義語的考察--(遠藤織枝)
    • 「ヒト」の指示用法に関する一考察(大西智之)
    • 「慮外」の意味変化について(欒竹民)
    • 「しきりに」と「ひっきりなしに」の意味・用法について(李志華)
    • 「はなやか」と「みやびか」について(劉力)
    • 和漢同形自動詞についての一考察(盧濤)
    • 「という」が「ガノ交替」に与える影響について(干振領)
    • 名詞文の主題構造(砂川有里子)
    • 助動詞タの意味の一つである「変化」の特徴について(孫敦夫)
    • 日本語受動文の真性動作主マー力ーについて(張麟声)
    • 談話における「トイウカ」の機能(寺井妃呂美)
    • 話しことばにおける男女差としてみた「〜んだ」(谷部弘子)
    • を好きだ/嫌いだ」という表現について(山崎恵)
    • コ・ソの文脈指示について --発話内容が先行表現となっている場合--(路玉昌)
    • 虚辞助語 惜しむらくは通じ難し --黄遵憲の日本語論(張偉雄)
  2. 日本語教育学
    • プレースメントテストの開発にかかわる問題の一考察(小山宣子)
    • 中級学習者のための談話構成練習を考える(清水昭子)
    • 日本語初級学習者による学習過程の認知とマクロタスクの設定(浜田麻里)
    • 「日本語教育史」指導の意義について(水野マリ子)
    • 日本語教育における「現場の知」(由井紀久子)
  3. 日本語と中国語の対照研究
    • 料理動詞「焼く」と“”について(袁偉)
    • 鏡像語を作る2,3の要因(中川正之)
    • 日中両語の「充電」の比喩的用法について(兪鳴蒙)
    • 日中言語対照の諸問題(王建康)
    • 「そうだ」「ようだ」「みたいだ」「らしい」の相違と中国語への訳し方(志強)
    • 否定表現の日中対照 --「まだVしない」と「不V」--(黄麗華)
    • 日本語受動文の三類型と中国語の受動文(周啓虹)
    • 日本語の「た」と中国語の「了」との相違(張継英)

(2000年6月12日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 375ページ 3,800円)

国立国語研究所編『日本語教育年鑑』(2000年版)

 新たに国立国語研究所編による『日本語教育年鑑』が創刊された。「第1章 日本語教育の動向と展望」は,創刊号ということで,戦後からの日本語教育における出来事・現状・21世紀への展望などが記されている。「第2章 国内外の日本語教育」では,国内と海外の日本語教育の動向として,日本語教育に関わってきた関係機関による活動報告を収録している。「第3章 日本語教育文献」は,1998年1月〜1999年3月までに発表された,日本語教育に関する論文一覧・図書一覧を載せる。執筆者・題名などのほか,「キーワード」もしくは「章立て」が情報として載せられている。「第4章 資料」には,国内・海外の関連機関・団体一覧,日本語基本語彙研究文献一覧,「今後の日本語教育施策の推進について」などを収録している。

(2000年6月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 517ページ 4,200円)

杉本つとむ編著『洋学資料文庫1 蛮語箋』

 本書は、18世紀末の日蘭対訳語彙集『蛮語箋』の影印とそれに対する解説と総索引を収めたものである。『蛮語箋』は『類聚紅毛語訳』の改題本で、編者は熊秀英(=森島中良)、意義分類で「天―ヘーメル」「日―ゾン」のような記述が多数を占める語彙集である。解説では、中良の実兄である桂川甫周の『北槎聞略』との関係や、後世の『何々箋』という類の語彙集の淵源に位置することに関する注意などを載せる。総索引には日本語の部と蘭語の部がある。なお、洋学資料文庫は近世の希覯資料を影印あるいは翻刻の形で刊行し、洋学の基本資料を提供する目的であるとのことである。近刊としては『日本洋学小誌』『杉田玄白・杉田成卿集』『坪井信道集』などが予定されている。

(2000年6月15日発行 皓星社刊 B6判縦組み 324ページ 3,800円)

仁田義雄・益岡隆志編集/森山卓郎・仁田義雄・工藤浩著『日本語の文法3 モダリティ』

 日本語の文法シリーズ全4巻のうち第3巻目にあたるのが、本書「モダリティ」である(第1巻は「文の骨格」、第2巻は「時・否定と取り立て」、第4巻は「複文と談話」)。この巻は以下のような3つの章から構成されている。モダリティの概要・研究史と問題点に触れた後、基本叙法・付加形式などの区別をはじめとして、広くモダリティに関わる現象を扱った第1章「基本叙法と選択関係としてのモダリティ」。認識に関わる様々な形式に関して、具体例を検討し、分析・記述を試みた第2章「認識のモダリティとその周辺」。「述語と副詞的成分とがどのように役割を分担し、文全体の組み立てに協力しているかを、おもに副詞的成分の方に重点を置いて考察」したという第3章「副詞と文の陳述的なタイプ」。

(2000年6月28日発行 岩波書店刊 A5判横組み 246ページ 3,400円)

 ◆52巻3号(206号)に書評を掲載

菅原範夫著『キリシタン資料を視点とする 中世国語の研究』

 本書は、国内資料の言語事象を検討し、そこからキリシタン資料の事象を位置づける視点と、逆に、キリシタン資料の事象を元に国内資料を検討する視点の両方から、中世国語の表記・文法・語彙・文体のいくつかの事実を解明しようとしたものである。目次は、序章、第1章「平仮名表記の規範」、第2章「表記に反映した筆記者の特性」、第3章「『平家物語』の接続詞とその継承」、第4章「推量表現の変遷」、第5章「助詞と文章表現」、第6章「キリシタン資料における漢語」、第7章「文献の性質と言語事象」、終章、となっている。既発表論文との関連は巻末に記してある。なお、本書は、博士学位論文(広島大学)に補訂を加えたものである。

(2000年6月30日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 464ページ 15,000円)

 ◆52巻3号(206号)に書評を掲載

小林賢次著『狂言台本を主資料とする 中世語彙語法の研究』

 筆者は本書を、「狂言台本を主資料とし、その他中世から近世にかけての口語文献を資料として、特に語彙・語法(文表現・敬語などを含む)の各方面から、近代語成立過程期における史的変遷の様相を考究しようとするものである。」(p1)と位置づけている。序章「狂言のことば―その特質と研究状況―」に続き、全体は3部に分かれている。「狂言台本の資料性の考察」部には、「言語資料としての天理本『狂言六義』」ほか2章、「狂言台本を対象とする語彙・語法の研究」部には「版本狂言記の言語」ほか4章は、「狂言台本その他を資料とする語史・語法史研究」部には「慣用表現の成立と展開」ほか3章がまとめられている。巻末に関連する既発表論文一覧がある。

(2000年7月20日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 457ページ 16,000円)

 ◆52巻2号(205号)に書評を掲載

山浦玄嗣著『ケセン語大辞典』

 岩手県気仙地方で使われている、いわゆるケセン語の辞典である。標準語と違う意味を中心とする方言辞典とは違い、ひとつの言語として辞典に記載されるような用法は収めるようにしたとのことである。上下の2巻に分かれており、上巻の巻頭には「文法編」が収録されている(約200頁)。辞典記述は、ケセン語をローマ字の見出しで掲げ、日本語で解説する方式で、品詞、意味、例文(ケセン語)、例文の意味、等を記す。下巻末に「地名・苗字・複合動用詞」(付録)、日本語―ケセン語索引、を収録している。

(2000年7月30日発行 無明舎出版刊 B5判横組み 上1445ページ 下1366ページ 上下揃38,000円)

小森陽一著『日本語の近代 日本の50年日本の200年』

 本書は、イヨンスク氏・駒込武氏・安田敏朗氏・長志珠絵氏・酒井直樹氏らの著書を踏まえ、近代日本語・近代文学についての「常識」の見直しを読者に提示しようとしたものである。著者は「日本語を論じることをとおして、「日本文化」や「日本人」の本質をとらえようなどという幻想的な欲望からは、いいかげんに解き放たれるべきだ。」(p305)と記している。目次は以下の通りである。1「「日本語」の発見」、2「近代国民国家と「日本語」」、3「天皇の「日本語」」、4「言文一致という幻想」、5「戦争と「日本語」」、6「植民地の領有と近代日本文学の成立」、7「「標準語」の制覇」、8「反復としての敗戦後」

(2000年8月25日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 309ページ 2,300円)