日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (52巻1号(204号)掲載分)

新刊紹介 (52巻1号(204号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

日本コミュニケーション学会 橋本満弘・北出亮・会沢まりえ編著
『日本コミュニケーション学会創立30周年記念論文集 第1巻 日本のレトリックとコミュニケーション』

日本コミュニケーション学会 橋本満弘・北出亮・会沢まりえ編著
『日本コミュニケーション学会創立30周年記念論文集 第2巻 日本社会とコミュニケーション』

 日本コミュニケーション学会の創立30周年を記念して編まれた2巻の論文集である。第1巻では,日本社会におけるレトリックから見たコミュニケーションの様態について,第2巻では,社会成員の実践生活におけるコミュニケーションとコミュニケーション教育について論じている。論文集ではあるが,一書とするにあたって,章・節の編成にしている。第1巻は,第1章「日本人のコミュニケーションの素性」(第1節:北出亮,第2節:田所信成),第2章「日本の知識人のレトリカル・コミュニケーション ―天は人の上に人を造らず―」(平井一弘)をはじめとして,第7章「日本の演説とレトリック」(橋本満弘)まで,合計10編の論文を収める。第2巻は,第1章「社会生活とコミュニケーション」(第1節:池田理知子,第2節:中沢美依,第3節:今井千景,第4節:前田尚子),第2章「性差(ジェンダー)コミュニケーション」(高橋良子)をはじめとして,第6章「日本社会とコミュニケーション研究の課題」(橋本満弘)の合計12編の論文を収める。

(第1巻 2000年6月20日発行 三省堂刊 A5判横組み 127ページ 2,300円)
(第2巻 2000年6月20日発行 三省堂刊 A5判横組み 129ページ 2,300円)

李 麗燕著『日本語母語話者の雑談における「物語」の研究 ―会話管理の観点から―』

 タイトルにある「物語」とは,日本人の雑談の中に現れる「過去に発生した出来事の報告」のことである。本書は,その「物語」の開始・展開・終了にどのような言語行動が見られるかを会話管理の観点から分析したものである。筆者の博士論文(1998年5月 名古屋大学)を加筆・修正したもので,女性の日本語母語話者の雑談(30〜45分程度)15本を文字化し,観察・分析するという帰納的方法を採っている。章立ては「第1章 研究の枠組」,「第2章 研究方法」,「第3章 物語の開始と発話順序」,「第4章 物語を開始するための言語行動」,「第5章 物語を終了するための言語行動」,「第6章 物語を再開するための言語行動」,「第7章 物語を持続するための言語行動」,「第8章 結論」となっている。なお,本書の一部は既発表の論文(『日本語教育』(日本語教育学会)92・96・103号,『世界の日本語教育』(国際交流基金日本語国際センター)7・9号に掲載)がもとになっている。

(2000年6月20日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 260ページ 3,800円)

田村すず子著『The Ainu Language』

 本書は,『言語学大辞典 第1巻 世界言語編(上)』(三省堂 1988年)の「アイヌ語」の項目を英訳したものである。従来,日本でのアイヌ語研究の積み重ねが,英語で発表されていないが故に,海外の言語学で参照されることが少ないなどの問題があったが,その欠を補う意味もあり,少数言語に関する研究文献を英訳するICHEL Linguistic StudiesのVol.2として出版された。(このシリーズは,東京大学大学院人文社会系研究科附属文化交流研究施設東洋諸民族文化部門の企画である。したがって,他の巻が三省堂から出版されているとはかぎらない。)自ら調査を行っている研究者による詳細な記述文法として,世界の言語学に貢献すると思われる。章立ては,「1 Introduction」「2 History of Ainu Studies」「3 Phonology」「4 Syntactic Elements and Syntax」「5 Word Formation」「6 Methods of Expression」「7 Vocabulary」「8 Place Names」「9 Literature」「10 Anotated Bibliography」となっている。

(2000年7月10日発行 三省堂刊 A5判変型横組み 292ページ 3,000円)

山口明穂著『日本語を考える ―移りかわる言葉の機構―』

 本書は,順接と逆接,「き」,「けり」,などいくつかのテーマについて,それがどのような意味か,どのような変遷をしたか,それを引き起こした発想はどのようなものなのかということを論じたものである。著者は「おわりに」で「それぞれの言葉にこめた作者の心を考える,それが読む楽しさであると思った。古典をそのように楽しみたい,書いた当時の人たちと近い思いで味わいたい,そのために古典の語法を明らかにし,日本語の本質に迫る,それが本書を書くに至った思いである。」(265ページ)と記している。章立ては以下の通りである(第3章以下は,副題のみ記す)。第1章「灯暗うして数行虞氏の涙,夜深うして四面楚歌の声 ―「数」はいくつか」,第2章「家離りいます吾妹子を止めかね山隠しつれ心どもなし ―動詞の用法(已然形の意味)」,第3章「順接と逆接の論理」,第4章「係結びの発生と変遷」,第5章「時の助動詞「き」の意味」,第6章「時の助動詞「けり」の働き」,第7章「時の助動詞「た」の役割」,第8章「助動詞「らん」の変化」,第9章「助詞「が」の機能(主格とは?)」

(2000年9月20日発行 東京大学出版会刊 B6判縱組み 265ページ 2,800円)

 ◆53巻3号(210号)に書評を掲載

仁田義雄・益岡隆志編集/仁田義雄・村木新次郎・柴谷方良・矢沢真人著『日本語の文法1 文の骨格』

 本書は,日本語の文法シリーズ全4巻(このシリーズは,日本語の文の成り立ちを最近の研究の進展を踏まえ解説するとともに,特定の理論ではなく体系的な記述を目指すところに特色がある。)のうち第1巻目にあたる。内容は,4章に分かれており,第1章「単語と単語の類別」(仁田義雄)では,単語の規定,単語の語彙−文法的なタイプ,語彙的意味と文法的な振る舞いの相関などが論じられる。第2章「格」(村木新次郎)では,格や格形式について述べられ,いわゆる意味役割を〈叙述素〉という用語で捉え直すなどのことが論じられる。第3章「ヴォイス」(柴谷方良)では,日本語のヴォイスを他言語の現象と比べ,その個別的な面・普遍的な面を描き出している。第4章「副詞的修飾の諸相」(矢沢真人)では,情態の修飾成分の分析・記述を体系的に扱おうとしている。

(2000年9月27日発行 岩波書店刊 A5判横組み 247ページ 3,400円)

 ◆53巻3号(210号)に書評を掲載

井上史雄著『日本語の値段』

 一般言語学では,諸言語は平等であると言われているが,現実には社会的格差が存在し,劣位に置かれた言語の話者は不平等な扱いを受ける。言語のこのような側面を著者は「値段」という観点で捉えようとしている。全体は3部に分かれる。著者は「まえがき」で,以下のように述べている。「まず〈1〉でことばに値段がついて売り買いされているということを,身近な日本国内の外国語学習の資料で,明らかにする。またことばの知的価値以外に,情的価値という大切なものが存在することを指摘する。〈2〉では,日本語が国内でまた世界でどんな市場価値を持ってきたかを見直す。留学生数や,日本語の試験を考察する。また言語学習の投資効率に関わる要因として,日本語の難しさ(難易度)を測ってみる。〈3〉では,同じ日本語の中にも,別の形で値段が違うものが混じることをみる。英語をはじめとする外国語,ひいては外来語の値段が高く,日本語は低い。その中でも方言はさらに価値が低かった。その方言に最近価値の変化が見られることを指摘する。方言が娯楽の対象としてとらえられるようになり,新方言の誕生・普及が今なお観察される。」なお,本書のもとになった論文は『日本語学』『言語』などに発表されたが,本書では大幅な加筆・訂正(図などが最新のものになっている)がなされている。

(2000年10月1日発行 大修館書店刊 B6判縦組み 222ページ 1,600円)

西宮一民編著『上代語と表記』

 西宮一民氏の喜寿を記念した論文集である。表題を統一テーマとするが,各論文は各執筆者の問題意識のありかにしたがって書かれており,結果として上代語の語義についての論考も含まれている。古事記の表記と訓読(西宮一民),『風土記』の校訂私案(植垣節也),戸畔(トベ)考―女性首長伝承をめぐって―(溝口睦子),天安河のウケヒ小考―『古事記』上巻の物語の構想―(菅野雅雄),上代の雨の表記と表現(寺川真知夫),古事記・日本書紀の表記と成立過程―国生み,天の石屋,八俣の大蛇―(小谷博泰)などを初めとして,合計48編の論文を収める。なお,巻末に「西宮一民博士略歴及び著作目録」がある。

(2000年10月15日発行 おうふう刊 A5判縱組み 819ページ 22,000円)

江尻桂子著『乳児における音声発達の基礎過程』

 本書は,月齢7〜10か月の乳児に見られる規準喃語([mamama]などのようなCV構造音節の反復)とリズミカルな運動(手をばんばんと打ち付けるなど)の関連性について,実験的な手法(ビデオで乳児を観察するなど)で実証的なデータを積み重ね,その分析と考察を行ったものである。過去の研究や本書の立場について述べた第1章「音声発達過程の究明の開始」に続き,第2章「【研究1】規準喃語の出現とリズミカルな運動の発達的関連」,第3章「【研究2】規準喃語出現期における音声とリズミカルな運動の同期現象」,第4章「【研究3】音響分析による同期現象の適応的役割の検討」,第5章「【研究4】同期現象の発生メカニズムの検討―リズミカルな運動の質的分析から―」,第6章「【研究5】同期現象の発生メカニズムの検討―健聴児とろう児の比較から―」の5つの具体的な研究成果が示されている。第7章「総括的討論」では,第2〜6章を総括し,音声現象のメカニズムと,同期現象が音声発達において持つ意味とについて考察している。なお,本書は博士論文(1998年3月 お茶の水女子大学)を公刊したものである。

(2000年10月15日発行 風間書房刊 A5判横組み 139ページ 6,500円)