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新刊紹介 (52巻2号(205号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

橋本万太郎著作集刊行会編『橋本万太郎著作集第3巻 音韻』

 本書は,中国語を専門とした橋本万太郎氏の論文や著書を著作集の形にしたものである。第1巻(言語類型地理論・文法),第2巻(方言)に続く第3巻は,おもに音韻について書かれた論文を収録している。中古音について8編,パスパ文字資料について3編,西夏語音韻論について5編,声調とアクセントについて5編,北京語音韻論・その他について7編の論文などが収められている。巻末に,略年譜・著作目録がある。

具体的な論文名等は以下の通りである。

(2000年10月10日発行 内山書店刊 B5判横組み 530ページ 20,000円)

河原修一著『日本語心象表現論』

 本書は,心の中のおもいはどのようにしてことばになるのか(感情・思考から言語表現にいたるプロセスと枠組)を解明しようと,現時点での認知科学や精神医学,心理学,言語学などの到達点(成果)をできる限り援用して,様々な角度から考察をくわえる。「序論 こころのなかの言語形象」では,言語現象の3つのレベルについて述べる。第1章「感情・思考の言語化へのプロセス」では,2〜6章の要約を示し,第2章「気分・感覚と言語」,第3章「感情と言語」,第4章「思考と言語」,第5章「精神と言語」の4つの章で心象群構成およびそこから言語記号に変換されるプロセスと枠組について具体的に論じる。第6章「内言」は内言研究の方法に言及し,日本語の内言の特色について記す。第7章「日本語におけるカテゴリー区分」では,西洋語の心象語彙の区分(気分・感覚,感情,思考,精神に分ける)に従って来たが,むしろその区分が不可能であることを示そうとする。なお,巻末に関連する論文の初出一覧がある。

(2000年10月20日発行 おうふう刊 A5判縦組み 557ページ 36,000円)

青木三郎・竹沢幸一編著『空間表現と文法』

 本書は、空間的な概念が個別言語の文法にどう現れているか、あるいは、言語一般の文法とどう関わっているかを論じた論文集であり、文部省科学研究費基盤研究「空間表現の文法化に関する総合的研究」の研究成果報告書(1999年3月)をもとに、加筆・訂正、2編追加などの大幅な変更を加えて成ったものである。「「から」受動文と移動動詞構文」(杉本武)、「方向のヘト格」(矢沢真人・安部朋世)、「ヘ格およびニ格相当の無助詞名詞句の発生と展開―方向・着点を表す名詞句を中心に―」(沼田善子)、「〈ところ〉の文法化」(青木三郎)、「空間から時間へのメタファー―日本語の動詞と名詞の文法化―」(砂川有里子)を含む合計11編の論文が収められている。

(2000年10月20日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 318ページ 4,200円)

レズリー・ミルロイ著 太田一郎、陣内正敬、宮治弘明、松田謙次郎、ダニエル・ロング訳『生きたことばをつかまえる ―言語変異の観察と分析―』

 本書は、社会言語学(言語変異研究)の実践的な方法論を提示したものである。言語変異理論の概説書として読むこともできる。著者は「(本書の目的は)言語行動の変異データをできるだけ現実に即した形でモデル作りができるよう言語を観察し、分析し、そして解釈するための方法や問題を探ることにあった。」(293ページ)と述べている。1章「フィールド言語学:モデルと方法」2章「話者の抽出」3章「話者:データ収集におけるいくつかの問題」4章「方法論の原理とフィールドワークのストラテジー:二つのケーススタディ」ではデータの収集の問題を、5章「変数データの分析:話者変数」6章「音韻的変異の分析」7章「統語的変異の分析」8章「スタイルシフトとコード切り替え」ではデータの分析と解釈の問題について主に扱っている。9章「社会言語学:その実践的応用」では相互作用の社会言語学、教育システム、形式的言語評価を取り上げ、社会言語学的方法の応用に関して論じている。

(2000年10月20日発行 松柏社刊 A5判横組み 343ページ 3,500円)

草川昇編『五本対照類聚名義抄和訓集成(1)〜(3)』

 本書は,図書寮本・観智院本・蓮成院本(鎮国守国神社蔵本)・高山寺本・西念寺本の『類聚名義抄』における和訓をすべて抜き出し,50音順に対照配列したものである。従来,図書寮本・観智院本の総索引,高山寺本の部分的な索引はあったが,蓮成院本,西念寺本の索引はなかった。本書によって五本の索引が整備されたことになる。また、諸本の和訓が対照一覧化して提供することによって検索の利便性を高めた点も特徴であろう。全4巻で,第1巻はア−カ,第2巻はキ−タ,第3巻はチ−ヒを収める。第4巻は未刊。

(第1巻 2000年10月30日発行 汲古書院刊 B5判縦組み 700ページ 16,000円)
(第2巻 2000年12月27日発行 汲古書院刊 B5判縦組み 611ページ 16,000円)
(第3巻 2001年4月5日発行 汲古書院刊 B5判縦組み 572ページ 16,000円)

鎌倉時代語研究会編『鎌倉時代語研究 第23輯』

 小林芳規博士古希記念并終刊記念特輯号である。「小林芳規博士略年譜」「同研究業績目録」を収録。また,従来と同様,鎌倉時代語研究集会記録や第1輯からの目次が巻末に記されている。

収められた論文は,以下の通りである。

(2000年10月31日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 925ページ 28,000円)

佐藤稔ほか執筆 秋田県教育委員会編『秋田のことば』

 本書は,秋田県教育委員会が秋田方言の収録を目的として1997年7月から2000年9月までにわたって実施した「秋田の方言収録事業」の成果である。佐藤稔主任収録委員・小林隆収録委員・日高水穂収録委員による方針決定・計画立案・調査票などの作成,面接調査の実施・集計・分析(面接調査は調査員28名,さらに調査回答者の協力があった),執筆などを経て成立した。構成は3編からなる。「第1編 概要編」には「秋田のことば 概説」「秋田のことばの現在・過去・未来」「方言書目」(佐藤稔),「秋田方言の音韻・アクセント」(大橋純一),「秋田方言の文法」(日高水穂)を収録。「第2編 語彙編」の中心は,「語彙集」である。名詞・動詞・形容詞その他にわけて,見出し語4500,変異形などを含め8411語についての記述がある。それぞれの記述は,見出し語・その変異,県内分布,標準語訳・解説・別語形,用例,全国分布(その語が全国的に見て,どのような広がりを持つかを『日本方言大辞典(全3巻)』徳川宗賢監修 尚学図書編 小学館1989年の情報を利用して示したもの)などとなっている。語彙総索引があり,方言形・標準語形からひけるようになっている。「第3編 秋田県言語地図」は,「第1図 カボチャ」から「第100図 昔話の終わりのことば」まであり,単語・文法・あいさつことばなどが各地域においてどのような形式で表されているかを言語地図で表している。

(2000年10月31日発行 無明舎出版刊 A5判横組み 961ページ 2,800円)

原田信一著 福井直樹編『シンタクスと意味 ―原田信一言語学論文選集―』

 1978年に30歳で世を去った著者の代表的な論文(多くは統語論・意味論関係のもの)をまとまった形で出版したものである。編者は,真に洞察力がある論文はそれ以上の洞察力を持つ論文によって止揚されるまで価値を失うことはなく,その意味で著者の論文を手に入れやすい形で出版できたのは意義深いことだとしている。全体は4部にわかれている。第1部は英文の論文,第2部は和文の論文,第3部は著者が残した解説・エッセイ・インタビュー等を収録している。第4部は,「Shinの思い出」(藤村靖)などの随想と,現在の生成文法理論の観点から著者の業績を検討し,その学説史的意義について論じる解題からなる。

具体的な論文名等は以下の通りである。

(2000年11月10日発行 大修館書店刊 A5判横組み 843ページ 10,000円)

 ◆53巻3号(209号)に書評を掲載

野村真木夫著『日本語のテクスト ―関係・効果・様相―』

 本書は,現代日本語のテクストを対象にして,コミュニケーションの過程でそれがどのように組織化されているかについて考究を試みている。第1章「テクストにおいて問われるもの」では,テクストの組織理解にどのようなパラメーターが要求されるのかを整理している。第2章「コミュニケーションにおけるテクスト」では,テクストをコミュニケーションの中に位置づけることを理論および具体的なテクストから考察している。第1〜2章が理論的な方面の研究であるのにたいし,第3章以下では,テクストの具体的なまとまりかたや,表現類型に即した分析を試みている。第3章「テクストにおける関係性」では,テクストにおける関係性を考えるうえで3つのレベルを想定し,その中間段階の層の有効性を論証している。第4章「総称表現とテクスト」では,総称表現(一般的な知識を提示する表現。「〜は〜である」など)を取り上げ,その特徴,テクストにおける効果について述べている。第5章「描出表現とテクスト」では,「描出表現」を取り上げ,その特徴と,テクストにおいてそれがどのように理解されるかを考察している。

(2000年11月15日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 365ページ 4,800円)

佐藤喜代治編『国語論究第8集 国語史の新視点』

 国語史の新視点というテーマを中心に編集された論文集である。

収録された論文は,以下の通りである。

(2000年11月20日発行 明治書院刊 A5判縦組み 470ページ 18,000円)

仁田義雄・益岡隆志編集/金水敏・工藤真由美・沼田善子著『日本語の文法2 時・否定と取り立て』

 本書は,「日本語の文法」シリーズ全4巻のうち第2巻目にあたる。文の骨格を扱った第1巻に続き,文の階層においてモダリティ以前の段階の重要テーマとして,「時,否定,取り立て」の3つのテーマを扱っている。この巻は3つの章に分かれている。「はしがき」(益岡隆志)では,第1〜3章の概要・特色・簡明なまとめが記述されている。第1章「時の表現」(金水敏)では,時間制・時制性の区別から始めて,従来のテンス・アスペクト研究の展望・整理,疑問点,これからの方向についての示唆などが述べられる。第2章「否定の表現」(工藤真由美)では,否定が複合的な意味・機能領域であり,それらにどのような側面があるかということを述べ,日本語においては十分にその記述が進んでいないことを指摘している。そして,次の三点,つまり「不親切だ」のような語彙的否定形式と「親切ではない」のような文法的否定形式との違いについて,「けっして」などの陳述副詞と「半分も…ない」など数量に関わる形式の否定との関係について,否定といわゆるスコープとの問題について,というテーマに取り組んでいる。第3章「とりたて」(沼田善子)では,取り立ての統語論的・意味論的特徴,フォーカスなど基本的な事柄を述べたあと,「も」「さえ」「まで」などの各論に入り,つぎに取り立ての意味体系や用法の広がりについて述べている。

(2000年11月28日発行 岩波書店刊 A5判横組み 230ページ 3,400円)

 ◆54巻2号(213号)に書評を掲載

小林英夫編訳『20世紀言語学論集』

 20世紀の言語思想の発展を展望する目的で選ばれた論文のアンソロジーである。現代思想の原点という観点から出版された面があると思われる。巻頭の「『20世紀言語学論集』に寄せて」(田中克彦)には「ここにまとめられた論著は,言語学が,哲学,社会学,文芸学,美学などの人文学の中にしっかりと足を置きながら,これら隣接諸科学の中での独自性を主張してゆさぶりをかけ,そこからの反応を自らひきうけて展開して行った時代の,思想史的な記念碑である」と述べられている。内容は以下の通りである。

    • 神,憑神,神人,人間(Platon)プラトン
    • 個別者としての語(Hugo Schuchardt)シュッハルト
    • 個人主義(Hugo Schuchardt)シュッハルト
    • 言語の門口(Henri Delacroix)ドラクロア
    • 言語理論のきのう・きょう(Karl Buhler)ビューラー
    • 構造言語学(Viggo Br〓ndal)ブレンダル
    • 言語の幻影(Albert Sechehaye)セシュエ
    • いわゆる言語学上の第三公理(Jurius von Laziczius)ラジツィウス
    • 「言」と「言語」との区別(Alan Henderson Gardiner)ガーディナー
    • 言語機能の心理学的分析(Henri Delacroix)ドラクロア
    • 言語記号の性質(Emile Benveniste)バンヴェニスト
    • 記号の本質について:記号か象徴か(Eugen Lerch)レルヒ
    • 言語記号の性質(Eric Buyssens)ボイセンス
    • 言語記号の形態論的価値についての考察(Benvenuto A. Terracini)テラチーニ
    • 『言語史の原理』の序説(Hermann Paul)パウル
    • 言語史家はなにを以て歴史を編むか(Benvenuto A. Terracini)テラチーニ
    • 改新の原因としての言語間の相互影響(M. Bartoli, V. Pisani, B. A. Terracini, J. v. Ginneken)バルトリ,ピザーニ,テラチーニ,ヒネケン
    • 新言語学派と新文法学派(Matteo Bartoli)バルトリ
    • 記述的言語学と史的言語学との相即不離の関係(Walther von Wartburg)ヴァルトブルク
    • 共時態と通時態(Charles Bally)バイイ
    • 史的言語学と記述的言語学との関係についての考察(Walther von Wartburg)ヴァルトブルク
    • 有機的進化と偶然的進化(Albert Sechehaye)セシュエ
    • 静態言語学の課題について(Joseph Vendryes)ヴァンドリエス
    • 「経済に話す」(Joseph Vendryes)ヴァンドリエス
    • 物と語(Hugo Schuchardt)シュッハルト
    • 女語意考(Holger Pedersen)ペーデルセン
    • 観念論的統辞論の方向に(Eugen Lerch)レルヒ
    • 統辞論序説(Eugen Lerch)レルヒ
    • ロマン語統辞論の課題(Eugen Lerch)レルヒ
    • 言語における強制的なものと自由なもの(Eugen Lerch)レルヒ
    • 文体論序説(Jules Marouzeau)マルーゾー
    • 文体論と理論言語学(Albert Sechehaye)セシュエ
    • 『フランス語の文体』の序(Fritz Strohmeyer)シュトローマイヤー
    • 語詞芸術と言語学(Leo Spitzer)シュピッツアー
    • 言語学と語詞芸術(Leo Spitzer)シュピッツアー
    • 文体論を介しての国民性論(Eugen Lerch)レルヒ
    • 音韻法則について少壮文法学派を駁す(Hugo Schuchardt)シュッハルト
    • 音韻法則の省察(Joseph Vendryes)ヴァンドリエス
    • 音韻法則(Giulio Bertoni)ベルトーニ
    • 現代の音韻論(Nikolai S. Trubetzkoy)トルベツコイ
    • 「形態音韻論」について(Nikolai S. Trubetzkoy)トルベツコイ
    • 『思想と言語』序説(Ferdinand Brunot)ブリュノ
    • 方言採集体験余録(Paul Scheuermeir)ショイアーマイヤー
    • デュルケムとソシュール(Witold Doroszewski)ドロシェフスキー
    • 『一般言語学講義』にたいする解説と批判(Amado Alonso)アマド・アロンソ
    • メネンデス・ピダルとスペイン言語学(Damaso Alonso)ダマソ・アロンソ
    • 言語科学史におけるフォルトゥナートフ(Lev Vuladimirovic Scerba)シチェルバ
    • 言語学と文学史(Leo Spitzer)シュピッツアー
    • バイイ氏の学説について(Marguerite Lips)リップス

(2000年12月8日発行 みすず書房刊 A5判横組み 800ページ 25,000円)