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新刊紹介 (52巻3号(206号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

安田敏朗著『近代日本言語史再考―帝国化する「日本語」と「言語問題」―』

 本書は,著者の先行4著書と異なり,論文集である。既出のものには加筆訂正を加えており,初出を巻末に示している。全10章はおおまかに3部に分けられている。第1部「帝国日本と言語政策」は,自然的な存在である言葉がいかにして政策という人為的な行為の対象になったのか,帝国拡大期当時の多言語性がどのように捉えられていたのか,などの問題を取りあげている。第2部「「異なれるもの」とのむきあい方」では,日本語論のなかのアジア像,「方言」の語り方,などの問題を論じている。第3部「言語論の受容と帝国日本」では,「唯物論言語学と「普遍」に抗する言説」のほか,「「主体」言語論の陥穽―時枝誠記再論」で,『国語学』第197集(1999年6月)の鈴木広光氏の書評に応えて,言語過程説に踏み込んだ形の「時枝誠記論」を展開している。

(2000年9月20日発行 三元社刊 B6判縦組み 395ページ 3,300円)

日本国語大辞典第二版編集委員会 小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』

 本書は歴史主義をとる最大級の国語辞典である。1972年から1976年に出版された第一版(45万項目,75万用例)をもとに,用例の再検討・増補などを経て,2000年より第二版(50万項目,100万用例,全13巻)の刊行が始まることとなった。新しい試みとしては,出典に成立年または刊行年を記したこと,近年の研究成果を反映した「語誌」欄を新設し用法・語形の変遷について述べたこと,平安時代から明治期までの様々な辞書類に見られる漢字表記を示したこと,上代特殊仮名遣いについて(その該当する語の仮名については)甲乙いずれかの情報を付したことなどが挙げられる。用例の質・量の充実,方言語彙の強化,意義用法の記述の吟味など,旧版をさらに上まわる充実を見せている。第1巻には別冊付録があり,主要出典一覧,方言資料および方言出典番号一覧などが収められている。

(第1巻 あ−いろこ 2000年12月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1421ページ 15,000円)
(第2巻 いろさ−おもは 2001年1月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1438ページ 15,000円)
(第3巻 おもふ−きかき 2001年2月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1469ページ 15,000円)
(第4巻 きかく−けんう 2001年3月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1453ページ 15,000円)
(第5巻 けんえ−さこい 2001年4月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1469ページ 15,000円)
(第6巻 さこう−しゆんひ 2001年5月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1485ページ 15,000円)
(第7巻 しゆんふ−せりお 2001年6月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1453ページ 15,000円)
(第8巻 せりか−ちゆうは 2001年7月20日発行 小学館刊 B5判縦組み 1485ページ 15,000円)

藤田保幸著『国語引用構文の研究』

 本書は現代語を主とした日本語の引用表現を文法研究の立場から考究したものであり,引用研究に一貫して取り組んできた著者の成果をまとめたものである。第1章「序論」で,文法論の対象となる「引用」とは何かを論じ,以後の論の前提を固めた後,第2章「総論」において,「〜ト」の位置づけの問題(被引用語句が文にどのように組み込まれてどのように機能しているかの問題)と話法の問題(文法論的な話法は伝達のムードとの関連で捉えるべきこと,話法の問題と話法を越える問題との区別をつけること)について述べている。第3章「各論1―引用構文の諸問題―」では,引用構文のタイプ分けの問題が詳しく説かれ,様々な述語における表現が検討される。第4章「各論2―引用研究の諸問題―」では,「トイウ」「トイウト」などの複合辞の問題,連体修飾とのかかわり,引用の周辺に関する問題についてなどが検討されている。第5章「結論―本論文の位置―」では,研究史上における著者の研究の位置づけについて述べられている。なお,本書は大阪大学に提出され1999年に博士学位を授与された学位請求論文に一部加筆訂正をして公刊したものである。

(2000年12月25日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 660ページ 18,000円)

 ◆53巻3号(210号)に書評を掲載

岡本真一郎著『言語表現の状況的使い分けに関する社会心理学的研究』

 本書は日本語の要求表現(「〜て」「〜てください」「〜てくれませんか」「〜ていただけるとありがたいんですが」)と関与表現(平叙文の文末形式「よ」「ね」など)の使い分けに関わる要因を,モデルを立てて,心理学的実験によって検討していこうとしたものである。そして,そのような議論を踏まえて,日本語の対人配慮による使い分けの様相・丁寧さの原理(いわゆるポライトネス)について考察している。章立ては以下のようになっている。序章「本研究の背景」(「コミュニケーションの効率と表現」「丁寧さの理論」「日本語の待遇表現」など),第1章「要求表現」(「要求表現の特徴」「使い分けに関する先行研究」「明示的形式の使い分け」「勧め表現」など),第2章「情報への関与と文末形式」(「情報のなわ張り理論」「なわ張り理論の問題点」「モデルの提案」「関与度と聞き手への配慮」「モデルの検証」など),第3章「総合的考察」(「丁寧さの理論:従来の理論の再検討」「丁寧さの理論:日本語に関するモデルの提案」「終わりに:今後の課題」)。なお,本書は博士論文をほぼそのままの形で出版したものである。

(2000年12月25日発行 風間書房刊 A5判横組み 223ページ 7,800円)

草薙裕編『現代日本語の語彙・文法』

 草薙氏の退官に際し,その教えを受けた人の論文を集め,氏の編集で一書にまとめてはどうか,という企画に基づいて作られた論文集である。「饅頭考」(周錦樟),「複文構造における節の主語と接続表現の関係について」(長谷川守寿),「授受動詞の意味分析―「もらう」と「受け取る」を中心に―」(金珉秀),「日本語における共感覚の比喩―言語文化の視点から―」(中園篤典),「「数量詞+も」とそれに対応する中国語の表現」(楊凱栄),「名詞の意味素性と動詞の意味記述」(呉凌非),「「ト思う」と「ト思っている」について」(小野正樹),「談話構造とコ・ソ・ア」(長谷川重和),「ナルの文の発話と対人行為」(佐藤琢三),「状態述語文の他動化と使役化―意味的特徴を中心に―」(金熹成),「価値動詞の語彙と文法的特徴」(山岡政紀)の計11編の論文を収める。

(2000年12月29日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 239ページ 4,200円)

室町時代語辞典編修委員会編『時代別国語大辞典 室町時代編 5』

 1985年の第1巻出版から15年を経て,『時代別国語大辞典 室町時代編』が完結した。最終巻としての第5巻は「へ」から「ん」の項を収録してある。「あとがき」(安田章)に,この辞典の姿勢・主義(資料と見識をめぐる問題等)が記されている。時代別国語大辞典の企画からは60年,室町時代に関しては1955年に再開,1965年に原稿が渡されるようになり,それから第1巻が出るまでさらに20年かかるという息の長い作業であったということも記されている。

(2001年1月1日発行 三省堂刊 B5判縦組み 891ページ 40,000円)

金田一春彦著『日本語音韻音調史の研究』

 本書は,雑誌・紀要等に発表された論文を集めたものである。学界の定説となった「日本四声古義」をはじめとして,音韻・アクセントの論文が収録されている。発表年代は1942年の1987年のものまでと幅広い。全体は4編に分けられている。第1編「音韻・アクセント史と平曲・声明」には「平曲の音声」「音韻史資料としての真言声明」,第2編「アクセント史と文献資料」には「契沖の仮名遣書所載の国語アクセント」「類聚名義抄和訓に施されたる声符に就て」「金光明最勝王経音義に見える一種の万葉仮名遣について」「日本四声古義」「平声軽の声点について」,第3編「アクセントの歴史」には「国語アクセント史の研究が何に役立つか」「古代アクセントから近代アクセントへ」「国語アクセントの時代的変遷」,第4編「音韻・アクセント史の周辺」には「連濁の解」「奈良・平安・室町時代の日本語を再現する」「方向観による平安朝アクセント」が収められている。

(2001年1月1日発行 吉川弘文館刊 A5判縦組み 412ページ 11,000円)

今野真二著『仮名表記論攷』

 本書は将来描かれるべき表記史の基礎を固める作業として,和歌・連歌にかかわる人々の残した資料を中心に,仮名の表記についての記述・分析を行ったものである。序章「仮名表記史記述の試み」では,『土佐日記』の根幹諸写本を資料とし,いくつかの事柄を採り上げて,それが史的な見通しの中でどのように観察されうるかについて述べている。第1章「平安時代末期から鎌倉時代初期の諸相」では,定家関連の仮名表記に重点が置かれた従来の分析から,さらなる広がりをもった研究への展開を図るために,いくつかのしかるべき資料を選んで分析を試みている。第2章「仮名文字遣」では,「書記の単位」や「中世の仮名文字遣の諸相」について述べる。第3章「中世のかなづかい」では,鎌倉・室町時代のかなづかいを見るために,尊経閣文庫蔵『閑居友』・連歌書のかなづかい,などについて検討している。第4章「表記の層」では,「慶應義塾図書館蔵『横笛物語』の表記をめぐって」「平仮名による振仮名」などを収める。附章「臨摸本における本文転化」では,「書陵部蔵本『遺塵和歌集』」,「『六条院宣旨集』と『躬恒集』」について,本文転化の現象を検討している。なお,所収論文の初出一覧は「あとがき」に見えるが,一書となすにあたり,可能な限り手を入れる道を選んだとのことである。

(2001年1月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 666ページ 15,500円)

田中章夫著『近代日本語の文法と表現』

 著者の「文法・近代語史」に関わるこれまでの論文(および講座類・事典の執筆項目)を,加筆訂正のうえ,一書にまとめたものである。第1章から第5章までが文法,第6章から第9章までが近代語史となっている。各章は以下のようになっている。第1章「「文法」をめぐって」では,「文法と日本人」「論理と表現」などを扱い,第2章「文の構成」では,かかりうけや構文のタイプなどについて論ずる。第3章「文の表現」では,命令表現や接続表現を,第4章「「語」の性格と用法」では,直示と接続,用言と補助用言などを扱っている。第5章「助動詞と助詞」は,助詞助動詞の用法の記述である。第6章「近代の敬語と敬語意識」では,敬語および敬語意識の変化を,第7章「近代語の表現」では,近代語の特徴と成立を扱っている。第8章「近代語表現の諸相」では,完了・否定・当為などの表現について述べ,第9章「近代の文体」では,デアル,デアリマス,デスの文体について考察している。なお,図表一覧が巻末にあり,この項目をもとにして本文の内容を手繰っていくこともできよう。

(2001年1月30日発行 明治書院刊 A5判縦組み 792ページ 24,000円)

塚田浩恭著『日英語の主題,主語そして省略―体系機能文法的アプローチ―』

 英語を題材としたハリディの体系機能文法の観点から出発して,日本語,特に主題・主語・省略という題材について考えることによって,日本語にふさわしい体系機能文法の枠組みを作っていこうとする試みである。全体は2部に分かれる。第1部「日英語の主題と主語」(1〜3章)では,主題と主語の問題が扱われる。第2部「日英語の省略」(4〜7章)では,省略の問題が扱われる。章立ては以下のようになっている。第1章「ハリディの機能文法における‘主題’とは」,第2章「日英語の主題―「有標」主題と「無標」主題―」,第3章「日英語の主語」,第4章「日本語の省略―省略の定義とそのアプローチの仕方―」,第5章「日英語の動詞群省略―定性と法性を中心に―」,第6章「日英語の名詞群省略」,第7章「日英語の節省略の比較―体系文法と語用論的アプローチ―」。

(2001年1月31日発行 リーベル出版刊 A5判横組み 129ページ 1,800円)

滝沢貞夫編『新後拾遺集総索引』

 本書は江戸初期の写本である河野美術館蔵本『新後拾遺集』(函架番号101・682)のすべての語を検索することができるようにという目的で編集された総索引である。本文の翻刻,歌語索引,仮名序詞書左注索引,人名索引の4つの部分からなる。活用語は活用語尾別に分類されていること,複合語の後項からも検索可能なことなど,ことばの研究への配慮もなされている。

(2001年2月20日発行 明治書院刊 A5判縦組み 264ページ 12,000円)

庵功雄著『新しい日本語学入門―ことばのしくみを考える』

 本書は,現代日本語の文法を中心とした日本語学の内容を解説することを通して,言葉に関する研究の見方・考え方を示そうとしたものである。述語には各所で定義・解説があり,記述も簡潔を旨としている。文法に関する比較的新しい標準的な知識が見やすくまとめられている。章立ては以下の通りである。§1「言語学の1分野としての日本語学」,§2「音声・音韻」,§3「形態論(1)―形態素,語,品詞―」,§4「形態論(2)―活用―」,§5「格」,§6「文の構造と文法カテゴリー」,§7「主題と主語」,§8「ボイス(1)―受身と使役―」,§9「ボイス(2)―授受―」,§10「自動詞と他動詞」,§11「時間を表す表現(1)―テンス―」§12「時間を表す表現(2)―アスペクト―」,§13「モダリティ」,§14「とりたて」,§15「複文(1)―単文と複文―」,§16「複文(2)―因果関係―」,§17「名詞修飾」,§18「「のだ」」,§19「「は」と「が」」,§20「談話・テキスト」,§21「敬語」,§22「方言」,§23「さまざまなバリエーション」。

(2001年2月26日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 336ページ 1,800円)

永田高志著『第三者待遇表現史の研究』

 書名中の「第三者」とは,敬語論で一般に言う「話題の人物」に相当する。著者は,その「第三者」に対する待遇表現体系の歴史的変遷,とくに絶対敬語から相対敬語への変化の実態を探るべく,各時代の文献などを調査・分析している。第1章「はじめに」で待遇表現の概要,使い分けの決定要因などの問題,場面を重んじた社会言語学的アプローチの必要性などについて述べる。以下は次のようになっている。第2章「「源氏物語」に見る第三者待遇表現」,第3章「「平家物語」に見る第三者待遇表現」,第4章「「虎明本狂言」に見る第三者待遇表現」,第5章「「捷解新語」に見る第三者待遇表現」,第6章「前期上方語における第三者待遇表現」,第7章「後期江戸語における第三者待遇表現」,第8章「江戸後期庶民語における第三者待遇表現」,第9章「明治前期における第三者待遇表現」,第10章「現代敬語における第三者待遇表現」,第11章「方言に見る第三者待遇表現」,第12章「結論」。

(2001年2月28日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 300ページ 10,000円)

 ◆54巻1号(212号)に書評を掲載

八坂書房編『日本植物方言集成』

 本書は,日本に自生する種子植物・シダ植物・コケ類・キノコ類・藻類,および主な作物・園芸植物を含む2000種あまりを標準和名の50音順に配列し,各項に方言名(およそ4万語)とその使用地域を並べたものである。さらに方言名から標準和名を引けるようにした索引がある。項目の例を挙げると,「シロツメクサ クローバー」の項は,「あめふりばな 青森,いじんばな 長野(北佐久),いずみぐさ 山形(飽海),うしくわず 岡山(御津),うしばな 山形(鶴岡市),うまごやし 岩手(二万・紫波…〈以下省略〉」のようになっている。もともと(社)日本植物友の会の会員によって全国から集められた語をもとにできた『日本植物方言集〈草木類篇〉』(1972)があり,その内容を参考にしつつ,それに近世以来の文献(資料文献一覧はviiiページにあり)を加えてできたものであるという。

(2001年2月28日発行 八坂書房刊 A5判横組み 946ページ 16,000円)

影山太郎編『日英対照 動詞の意味と構文』

 本書は,動詞の意味と構文に関する最近の研究の成果を取り入れた動詞の入門書である。専門家と一般読者の橋渡しを目指しているという。英語を中心に日本語との比較を交えながら,内容を展開。全体は大きく4部に分かれる。第1部「動詞の意味を探る」(1〜3章)では,代表的な動詞グループを取りあげ,その意味と構文についてまとめる。第2部「構文交替のメカニズムを探る」(4〜6章)では,同じ動詞が異なる構文で使われる現象を取りあげ,構文の異なりがどのように意味の異なりと結びついているかを扱う。第3部「主語の特性を探る」(7〜8章)では,中間構文など通常とは異なるタイプの構文について考える。第4部「動詞の造語力を探る」(9〜10章)では,複合語・派生語の意味と用法を扱っている。章立ておよび執筆者は以下のようになっている。序「動詞研究の現在」(影山太郎),第1章「自動詞と他動詞の交替」(影山太郎),第2章「移動と経路の表現」(上野誠司・影山太郎),第3章「心理動詞と心理形容詞」(板東美智子・松村宏美),第4章「壁塗り構文」(岸本秀樹),第5章「二重目的語構文」(岸本秀樹),第6章「結果構文」(影山太郎),第7章「中間構文」(松瀬育子・今泉志奈子),第8章「難易構文」(三木望),第9章「名詞+動詞型の複合語」(杉岡洋子・小林英樹),第10章「複雑述語の形成」(由本陽子)。なお各章は,0.基本構文を挙げる → 1.なぜ(問題の提起)→ 2.〜とは(定義)→ 3.代表例 → 4.問題点と分析 → 5.まとめ → 6.さらに進みたい人のための参考文献,という流れになるよう構成されている。

(2001年3月1日発行 大修館書店刊 A5判横組み 317ページ 2,500円)

湯沢質幸著『古代日本人と外国語―源氏・道真・円仁・通訳・渤海・大学寮・リンガフランカ―』

 本書は主に8世紀から9世紀の日本にはどんな外国語が来ていたのか,外国語学習はどのように行われていたのかなど,外国語と日本のかかわりの諸側面について書かれたものである。たとえば,源氏物語の桐壺の巻で,光源氏・右大弁と高麗の相人が会い,「言い交わしたる」という記述がなされている場面がある。この場面について,湯沢氏は,紫式部は何語を使ってどのような方法で(口頭か筆談か,口頭なら直接か通訳付きか)交流をしたと想定していたのだろうかと考える。このような話題を初めとして,中国語学習が必要であった儒学における漢籍の読みの問題,教育を行っていた大学寮とはどのようなところか,儒学者や中国に留学した僧はどの程度中国語の会話能力があったか,当時の東アジアの外交上の言語の実態はいかなるものか,当時の通訳の待遇はどうだったか,などの話が展開される。

(2001年3月1日発行 勉誠出版刊 B6判縦組み 233ページ 2,400円)

石綿敏雄著『外来語の総合的研究』

 先行研究と著者による研究とを総合的に記述した書である。外来語に関する主要なテーマが網羅的に扱われており,この分野についての幅広い内容に触れることができる。序章「外来語について」に続き,第1章「現代日本語のなかの西洋外来語」では,現代日本語に見られる西洋外来語の計量的実態,日本語に取り入れられる際の音の変化,表記,近現代における変遷,流行語の中の外来語,などの話題が扱われている。第2章「日本語のなかの西洋外来語の歴史」では,南蛮船時代の外来語,その当時の日・葡・西などの言語状況,キリシタン用語,通商一般用語,江戸時代文学における西洋外来語,オランダ語系外来語リスト,などについて述べられる。第3章「外来語の対照言語学的研究」では,日本語の中の東洋外来語(漢語)の問題と,英語の中のフランス語ラテン語の問題とを対比。そこから意味・用法の変容の対照研究に移り,最後に世界の言語に対する英語の影響について考えている。

(2001年3月9日発行 東京堂出版刊 A5判横組み 360ページ 7,000円)

 ◆53巻3号(209号)に書評を掲載