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新刊紹介 (52巻4号(207号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。(価格は本体価格)

城生佰太郎著『アルタイ語対照研究 ―なぞなぞに見られる韻律節の構造―』

 本書は,トルコ語とモンゴル語のなぞなぞ(それぞれ20例,100例)を分析し,音韻・音声的特徴を記述・分析したものである。「序論」では著者のプロソディー研究に影響を与えたヤコブソン流の視点について述べる。また,対象になぞなぞを選んだ理由として,口承性により,長い時間をかけて外形の構造に整合性が具備されていると期待されること,ディスコースの単位としてひとまとまりであることなどをあげている。本論は,第1章「方法論」,第2章「トルコ語のなぞなぞ分析」,第3章「モンゴル語のなぞなぞ分析」,第4章「考察」,第5章「脳波を用いた母音調和の認知に関する実験研究試論」から構成される。第4章「考察」では,橋本文法の「文節」について,韻律的特徴を考慮に入れた言語学的単位として再評価し,「韻律節」というものを提唱している。なお,第5章「脳波を用いた母音調和の認知に関する実験研究試論」は電気生理学的実験方法により,音の受容・認知レベルの研究をしようとする試みである。

(2001年2月9日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 523ページ 27,000円)

陳力衛著『和製漢語の形成とその展開』

 和製漢語の誕生とその展開を,具体的な語の歴史も交えつつ,総合的に記述したものである。序章「和製漢語の概念とその問題点」では,和製漢語の位置づけ・分類,漢語研究史における和製漢語の捉え方や問題点などについて述べる。第1章は,和製漢語の形成基盤を探った「和製漢語発生の素地」。第2章は,音韻との関わりで変化した和製漢語(たとえば「化粧」など)の形成類型を概観した「音韻変化による表記の変容」。第3章「語構成による和製漢語の産出」では,語構成の観点から作られる際の類型特徴を指摘する。さらに,第4章「近代における和製漢語の生成」,第5章「現代中国語における和製漢語の受容」,終章「和製漢語の行方」が続く。付表として,「中・日現代漢語対照語彙表にある「日本の文献を出典とする語」一覧」,「『漢語百科大辞典』にある和製漢語一覧」,「『三省堂国語辞典』(第4版)ラ行における和製漢語一覧」があり,巻末には「語彙索引」がある。

(2001年2月28日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 448ページ 12,000円)

 ◆54巻1号(212号)に書評を掲載

築島裕編『東大寺諷誦文稿総索引』

 本書は古典籍索引叢書の第8巻であり,鵜飼徹定師・佐藤達次郎氏旧蔵本『紙本墨書華厳文義要決 巻第一 一巻』(戦災により消失。コロタイプ版が残存)の紙背に書かれた文献を『東大寺諷誦文稿』と題して,影印・翻刻し,読み下し文・漢字索引・仮名索引を作成したものである。また,参考のために,『華厳文義要決影印』(訓点記入の最も初期の段階を示す資料)も併載している。この資料の研究は,難読箇所も多く困難も多いとされてきた。従来の研究は,中田祝夫氏の『東大寺諷誦文稿の国語学的研究』により大きく進展したが,本書における読みの確定作業と索引自体の価値により,さらに進展すると 思われる。

(2001年3月15日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 386ページ 15,000円)

山口明穂・秋本守英編『日本語文法大辞典』

 本書は『日本文法大辞典』(1971)の成果を受け継ぎつつ,この30年間の研究の進展を反映した新しい内容を盛り込んだ辞典として出版された。旧版と同様,日本語文法に関する主な術語・事項と,文法上重要な働きをする語の意味・用法を,50音順に並べるという体裁は変わらないが,収録項目・語彙には内容・収録数に違いが見られる。術語・事項では「意味範疇として「意志・受身・打消・婉曲」などの項目が立てられていること,語については活用・用例などが見やすくなっていることなども,旧版と異なる点である。付録には「日本語文法の概要」が収められている。

(2001年3月15日発行 明治書院刊 B5判縦組み 974ページ 30,000円)

西田直敏著『日本語史論考』

 本書は,言語生活史的な観点から日本語史を捉えていこうとする著者の論文・用語解説・書評などを一書にまとめたものである。全体は5部に分かれる。「1 日本語史研究への新視角」には,「敬語史研究の一構想敬語 ―コードの変遷という視角から―」「日本人の文字生活史序章 ―漢字の伝来と定着(奈良時代まで)―」などの論文を収める。「2 日本語史研究の諸問題 ―中世を中心に―」には,『往生要集』の研究や,『源氏物語』や『平家物語』の敬語運用についての研究などの論文を収める。「3 現代の文章・文体・敬語」には,「文体・表現 ―現代日本語論への新しい視点―」「文章・文体(現代) ―国語学の五十年―」などの論文を収める。「4 用語解説」は,日本語史,文章・文体,敬語等について辞書等に執筆したものを収める。「5 書評・追悼論文」には,「石坂正蔵先生の国語学」などがある。なお・巻末に初出一覧および著者著述目録(『文章・文体・表現の研究』(和泉書院・1992年)所収の「著者著述目録」の続編)がある。

(2001年3月15日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 389ページ 11,000円)

国立国語研究所編『日本語とフランス語 ―音声と非言語行動―』

 「日本語と外国語の対照研究シリーズ」の9として出版された本書は,国立国語研究所日本語教育センター第二研究室で1995年から4年間行われた「日本語とフランス語の音声」の成果報告書である。全体は3部に分かれている。第1部はフランス語の音声面の特徴と,フランス語話者の日本語学習において生じる音声面の問題点・その解決法などを考察する。「Across-language approach to prosodic parameters of French」(ダニエル・ハースト,アルベール・ディクリスト,西沼行博),「フランス語のイントネーション」(郡史郎)を含む5編の論文を収める。第2部は主にフランス語の非言語行動について論じたもので,「コミュニケーションにおけるジェスチャーの重要性」(ジャック・モンルドン)を含む3編の論文を収める。第3部は,音声教育用教材の開発に関するものと文献解題であり,「フランス語リズム・イントネーション学習用マルチメディア教材の開発」(田中幸子,田村恭久,姫田麻利子)と「フランス語音声教育関係文献解題」(井上美穂,鵜沢恵子,竹内京子,山崎俊明,田中幸子)の2編を収める。

(2001年3月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 232ページ 3,800円)

国語語彙史研究会編『国語語彙史の研究 二十』

 国語語彙史研究会の論文集である。今回は20集記念および前田富祺教授退官記念号となっている。以下に,収められた論文の一部を挙げる。「母音連続の融合と非融合 ―−a+e,V+格助詞「へ(エ)」,V+格助詞「を(オ)」の場合―」(柳田征司),「意味変化の形態的指標となるもの」(小野正弘),「語彙史の時代区分・文学史の時代区分」(乾善彦),「上代形容詞の語構成」(村田菜穂子),「一次的ケシ型と二次的ケシ型」(蜂矢真郷),「地名(歌枕)の語構成 ―連体助詞「の・が」をめくって―」(糸井通浩),「平安仮名文における「対面」」(中川正美),「モダリティ形式の連体用法 ―『枕草子』を資料として―」(高山善行),「古代和歌における指示副詞「かく」」(半沢幹一)。これらを含めて合計26編の論文を収載している。巻末に「前田富祺教授著書・論文目録」(内田宗一編)を付す。

(2001年3月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 426ページ 11,000円)

秋永一枝編 金田一春彦監修『新明解日本語アクセント辞典』

 『明解日本語アクセント辞典』(初版1958年,第2版1981年)を改訂したもの。実質的には同辞典の第3版にあたるものであるが,今回,名称を新たにして出版された。現代に使われている話し言葉のほか,地名・人名・新語など約7万5千語を収録し,東京で広く行われているアクセントを示している。なお,アクセントの選定にあたっては,その語になじみがある人の意見を重く見るという方針を採っている。また,変化が生じたものについては《古は…》,《新は…》などの注記を付している。

(2001年3月20日発行 三省堂刊 B6判横組み 931ページ 3,600円)

前田富祺先生退官記念論集刊行会編『前田富祺先生退官記念論集 日本語日本文学の研究』

 大阪大学大学院で教えを受けた門下生による記念論文集。なお,大阪大学国語国文学会の『語文』,国語語彙史研究会の『国語語彙史の研究 二十』にも退官記念特集があるが,それとは別の私的な論集という趣旨であるという。収録された論文は,以下の論文を含む25編である。「現代語訳を通して見た中古助動詞「ぬ」の表現意義」(重見一行),「古語辞典の記述・用例について ―「あざむく」・「になひいだす」・「かきかぞふ」・「あたたけし」を例として―」(堤和博),「寛仁二年頼通大饗屏風詩歌の整理 ―古筆切の再検討を中心に―」(田島智子),「藤原清輔の「ながひこ」詠をめぐって」(佐藤明浩),「保昌と袴垂の話について ―相手を見抜く武者―」(大村誠一郎),「「をこ」系の語彙について(その1) ―「をこ」と「をこなり」―」(大谷伊都子),「中世後期の時を表す語彙(二) ―『太平記』の「昨日」「明日」をめぐって―」(玉村禎郎)。

(2001年3月24日発行 前田富祺先生退官記念論集刊行会刊 A5判縦組み 240ページ 非売品)

中右実教授還暦記念論文集編集委員会編『意味と形のインターフェイス』上・下巻

 中右実氏の還暦を記念して東京学芸大と筑波大での教え子85名が寄稿した論文を出版したものである。上下2巻からなり,内容によって,7つの部に分けられている。「1. 言語の意味と構文」には,「発話行為動詞と二重目的語構文」(明石博光),「内容節をとる名詞の意味的特徴について」(天川豊子)を含む21編を収める。「2. 文の構造と意味機能(1)」には,「発生構文と語順 ―日韓対昭を中心に―」(安平鎬),「感情表出構文としてのget受動文と完了概念 ―意味の拡張と慣習化の間―」(岩沢勝彦)を含む23編を収める。以下は下巻に収録されている。「3. 文の構造と意味機能(2)」には,「Plurals in Classifier Languages」(Shinobu Mizuguchi),「疑似二重主格構文と関係節化現象について」(山田圭吾)を含む5編を収める。「4. 生成統語論」には,「Bare Output Conditions and Language (Im)perfections」(Jun Abe),「Ellipsis Scope in Japanese」(Daisuke Inagaki)を含む17編を収める。「5. 談話文法と語用論」には,「時間と空間認知に基づく接続表現 ―now that/in that節と「ので」節の意味と機能」(大竹芳夫),「Japanese Ga-clefts in Discourse: A Relevance-theoretic Approach」(Masahiro Kato)を含む5編を収める。「6. 音韻論・形態論」には,「混成語考」(太田聡),「新しい古英詩韻律論の構想」(岡崎正男)を含む10編を収める。「7. 英語教育・言語習得・言語処理」には,「日本人EFL学習者の読解ストラテジー使用に関する考察」(飯島博之),「Multilingual Text Processing: Its Requirements and a Mixed-Language Document Handling System」(Tomoko I. Kataoka)を含む4編を収める。巻末に「中右実教授 ―履歴と業績」がある。

(2001年3月25日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 上下巻合計1051ページ 各3,800円)

川瀬生郎著『日本語教育学序説』

 本書は,日本語教育についての概説(第1部)と日本語教育に関する研究(第2部)から成り,日本語教育に関わる幅広い内容を提示している。第1部は,外国語としての日本語教育,日本語教育の教育・学習史,日本語教育の現状と課題を扱った3章から成り,通覧すれば日本語教育の大まかな全体像が掴めるようになっている。第2部は各論にあたる部分で,文法・文型,聴解・読解,教材研究,日本語教育者・教育機関の歴史,日本語教育の将来に関する展望,の各分野に関する論文を収録している。なお,第2部については,巻末に初出一覧がある。

(2001年3月31日発行 日本図書刊行会発行・近代文芸社発売 A5判横組み 390ページ 3,000円)

柴田武監修 武藤康史編『明解物語』

 本書は,いわゆる明解系国語辞典の歴史・特色や,編者の姿・編纂事情をまとめるとともに,当事者などのインタビューを交えて多方面から変遷の事情・事実を掘り起こそうと試みたものである。第1章「「明解」系国語辞書六十年小史」は,三省堂の『明解国語辞典』について説明し,さらにそれがなぜ2つに分裂し『新明解国語辞典』(山田忠雄主幹)と『三省堂国語辞典』(見坊豪紀主幹)が生まれたのか,これらの辞典はどのような関係にあるのか,その関係はどのように変わってきたのかをまとめたものである。第2章「『明解国語辞典』の誕生」は,1990年に行われた見坊氏へのインタビューである。辞書の編者が語る「歴史」として貴重である。第3章「見坊豪紀と山田忠雄」は,柴田武・金田一春彦・市川孝・倉持保男・酒井憲二各氏へのインタビューをまとめたものである。第4章「物語余話」は,編集者や家族へのインタビューである。なお,第3・4章の取材は1999―2000年にかけて行われたものである。

(2001年4月1日発行 三省堂刊 B6判縦組み 388ページ 3,400円)

野田尚史・迫田久美子・渋谷勝己・小林典子著『日本語学習者の文法習得』

 本書は第2言語としての日本語習得における文法の問題をいろいろな角度から扱ったものである。1999年に麗澤大学で行われた日本語教育学会のシンポジウムを出発点とし,そのときのパネリストの中の,専門を異にする4人(野田=現代日本語文法,迫田=習得研究,渋谷=社会言語学,小林=日本語教育)が議論を積み重ねて作り上げたものである。全体の構成は以下の通りである。第1章「学習者独自の文法」(迫田久美子),第2章「学習者の文法処理方法」(迫田),第3章「学習者独自の文法の背景」(野田尚史),第4章「誤用の隠れた原因」(小林典子),第5章「学習者の母語の影響」(渋谷勝己),第6章「文法項目の難易度」(野田),第7章「文法の理解と運用」(野田),第8章「効果的な練習の方法」(小林),第9章「文法の習得とカリキュラム」(小林),第10章「教室での習得と自然な習得」(渋谷),第11章「母語の習得と外国語の習得」(迫田),第12章「習得研究の過去と未来」(渋谷)。

(2001年4月1日発行 大修館書店刊 A5判横組み 243ページ 2,200円)

水谷信子著『続 日英比較 話しことばの文法』

 文の単位ではなく,ディスコースの単位を中心とした見方により,文法に関わるいくつかの題材について日英語の対照・分析を行ったものである。1985年の『日英比較 話しことばの文法』のあとがきに今後の課題としてあげていた項目を扱った著書だと考えることができる。序章「文とディスコース」で「主語」や「時」などに関して日英語の違いの見通しと各章の要約を述べ,第1章「主語とディスコース」で,「主語」について,日英語の論説体・会話体を対照させ,英語の主語は文単位で,日本語の主語はディスコース単位で捉えるべき対象であることを確認している。第2章「補助動詞から見た日英の対照」は,「ていく,てくる,ておく,てみる,てしまう,てある,てもらう,てあげる,てくれる」が英訳されたときに訳出されるか否かを調べ,日本語が補助動詞で表している内容は単文の対応だけを考えると説明しにくいことを述べる。第3章「条件表現に関する比較」は,「ば,と,たら,なら」と「if,when,命令形+and」などを取り上げ,英訳・和訳の場合に,各表現がどのような言い方に移し換えられているかについて述べる。第4章「接続表現に関する比較」では,「から・ので類」と「because類」の対応,「けど・が類」と「but類」の対応について述べている。第5章「ディスコースから見た発想の日英比較」では,招待表現や経験談の流れを通して,日英語の発想を比較する。

(2001年4月2日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 167ページ 2,200円)

渡辺実著『さすが!日本語』

 「せっかく」「どうせ」などの副用語を取り上げ,それらがどのような働きをしているかを通して,日本語が持つ性質を味わおうとするものである。著者は「副用語の中身は,話者の心のはたらかせ方そのものですから,とても複雑です。」(234ページ)と述べる。その複雑さに分け入り,「副用語にこめられた,日本語の心のあり方を,一つ一つの語に即して解明して」(234ページ)行こうとしている。その語が使われる種々の構文と意味の関係を分析し,日本語を使う人の現実の捉え方・ものの見方と向き合いながら,その言葉のあり方が腑に落ちるまで考える姿勢が示されている。扱われた語は,上記の語のほか,「いっそ」「せめて」「とても」「もっと」「よほど」「多少(けっこう)」「もう」「まだ」「いま(こんど)」「さっき」「つい(ついに・ついぞ)」「ずいぶん」「なかなか」「さすが」である。以前に論文で扱った題材でも,対象読者の違いによって,あるいは,その後の研究の進展に伴って,以前の論文とは記述内容に差が見られる場合がある。また,論文では書かれないようなことが記されている所もある。何が書かれており,何が書かれていないかを読んでいくのも興味深いのではないかと思われる。

(2001年4月20日発行 筑摩書房刊 新書判縦組み 234ページ 680円)

藤原与一著『続昭和(→平成)日本語方言の総合的研究 第6巻 日本語方言での特異表現法』

 全国を見渡したときに,変わっている表現だと思われるものを「特異」表現と捉え,感謝・呼びかけなど種々の表現において各地域にどのような特異な言い方が見出されるかを記したものである。「特異」も日本語の特性に基づくものであり,その広がりと深みを示すものであると言う。第1章から第23章までに取り扱われた項目を列挙すると,「感謝,呼びかけ,朝のあいさつ,晩のあいさつ,人の家に行ってのあいさつ,子どもが店に買い物にはいる時のことば,婚礼の宴に招かれてのあいさつ,人の来訪を受けてのあいさつ,別辞,応答,説明,判断,所懐,意志,抗弁,想像,問尋,勧誘,命令,勧奨,依頼,制止,感嘆」などとなる。

(2001年4月20日発行 武蔵野書院刊 A5判横組み 566ページ 16,000円)

山中桂一・石田英敬編『言語態の問い』

 「言語態」とは,ことばの実践の総体をゆるやかに規定した用語であり,自然科学的アプローチとは異なる,文化・社会・メディアを対象としてきた諸学が学際的に共有できる領域として設定されたものである。本書は,シリーズ言語態の第1巻にあたり,序「〈言語態〉とは何か」(石田英敬)で「言語態」「言語態研究」の定義やその意義,言語科学との違いなどについて述べる。本編は大きく3部に分かれている。第1部「「言語の世紀」の次へ」には,「「言語の世紀」と言語態の問い」(石田英敬),「ロシア・フォルマリズムの〈文学性〉の外部」(桑野隆),「ソシュールの受容と構造主義」(山中桂一)など,計5編の論文を収める。第2部「言語の知の新しい地平」には,「クレオールを語る」(西谷修/石田英敬),「中国語における文法化 ―方言文法のすすめ―」(クリスティーン・ラマール),「文字から文体へ ―漢字と言語的近代―」(イ・ヨンスク)など,計6編の論文を収める。第3部「言語態批判の方位」には,「文学的国民 ―翻訳と国民文化の表象―」(酒井直樹〈工藤晋訳〉)など,計3編の論文を収める。「シリーズ言語態」は全6巻で,さまざまな角度から言語活動の諸相を論じていく。2巻以下は『創発的言語態』『書物の言語態』『記憶と記録』『社会の言語態』『間文化の言語態』となっている。

(2001年4月25日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 342ページ 3,800円)

坪井美樹著『日本語活用体系の変遷』

 本書は,活用体系の変化に関わる要因と変化の実態について述べたものである。全体は4部に分かれる。第1部「動詞活用体系の変遷」では本書の中心主題である,古代〜近代における活用体系の変化(終止形と連体形の合流,二段活用の一段化)がなぜ起きたか,起きた結果をどう考えるか,について述べる。さらに,上代音韻体系に見られた甲類乙類の差異消滅と活用体系がどのように関わり合っているのかについての問題や,平安時代における「命令形」の成立について述べる。第2部「音便形と活用体系」では音便に関わる問題を扱い,音便が活用体系においてどのような機能を持つかについて述べる。第3部「〈オホ〜〉の意味と形態の分化をめぐる諸問題」では「大・多」に関わる形態音韻論的問題を考える。第4部「助動詞の語形変化と活用形」では,中世末期の助動詞を例にして,動詞とは微妙に異なる活用上の形態変化について述べる。

(2001年4月30日発行 笠間書院刊 A5判横組み 222ページ 3,800円)

迫野虔徳編『筑紫語学論叢 ―奥村三雄博士追悼記念論文集―』

 本書は奥村三雄氏(1998/4/19逝去)の追悼記念論文集である。氏ゆかりの筑紫国語学談話会を中心にしてまとめられた。冒頭の「特殊形アクセント」について(奥村三雄)は,遺された論文草稿である。以下,今回集められた論文は,4部に分けて収載されている。「1 音韻・表記」には,「半濁音名義考」(岡島昭浩),「連濁の音声学的蓋然性」(高山倫明)を含む計6編を収める。「2 文章・語法」には,「『竹取物語』の用語と表現 ―「敬語」「和文語」「漢文訓読語」をめぐって」(関一雄),「源氏物語の段落構成と指示語「かの」」(西田隆政)を含む計8編を収める。「3 語彙」には,「形容詞語彙から見た仮名文書 ―頻度数・異なり数・高頻度語の使用傾向から―」(辛島美絵),「外来語成分を含む混種語について ―その造語実態と構成要素を中心に―」(林慧君)を含む計6編を収める。「4 方言・アクセント」には,「勧奨文「雨が降っているから傘を持って行きなさい」の韻律的特徴と分布 ―福岡県グロットグラム調査から―」(杉村孝夫),「中種子町方言のアクセント ―助詞・助動詞―」(木部暢子)を含む計7編を収める。

(2001年4月30日発行 風間書房刊 A5判縦組み 540ページ 15,000円)

室山敏昭著『「ヨコ」社会の構造と意味 ―方言性向語彙に見る―』

 方言に見られる性向語彙(対人評価や行動規範語彙)を分析し,それが社会のあり方や成員の価値観(横並びを基準とし,協調的な関係を大切にする)を反映したものであることを述べたものである。着想先行の文化論ではなく,言葉を丁寧に分析することによる着実な文化論を構築しようとしている。対象とされるのは中国地方の方言である。第1章「方言性向語彙(対人評価語彙)の発見」,第2章「方言性向語彙と「世間体」」,第3章「方言性向語彙の構造と意味」,第4章「方言性向語彙の展開」と続き,第5章「性向語彙の基本特性と「ヨコ」性の原理」で,方言性向語彙にヨコ一線社会の指向という特徴を取り出し,従来の日本文化論の鍵概念が地域社会における理想的な人間像の中に包含されることを指摘する。第6章「地域文化としての方言性向語彙」では,ヨコ社会が持つ協調的な関係主義を共生の原理として生かしていくべきだとする。第7章「方言性向語彙の変容」では,性向語彙の構成要素が各地域により異なる姿を見せることを取り上げ,その変容の実態・傾向を明らかにし,将来像を展望している。付章「「仕事の遅い人」を表す名詞語彙の生成と意味構造 ―岡山県浅口郡鴨方町方言の場合―」は,単語・地域を限定した個別研究である。巻末に「資料 広島県比婆郡東城町川東大字川東方言の性向語彙」がある。

(2001年5月10日発行 和泉書院刊 A5判横組み 314ページ 3,500円)

中村捷・金子義明・菊地朗著『生成文法の新展開 ―ミニマリスト・プログラム―』

 本書は,生成文法理論の解説書であり,主に高度な専門書読解の際に役立つことを目的としている。全体は,4章に分かれているが,第4章がミニマリスト・プログラム(以下,MPと略記)の解説で,それ以前の章が,第4章を理解するために必要なそれまでの理論の概説となっている。第1章「生成文法理論の目標」では,生成文法理論が何をめざしているか,基本的な考え方がどうなっているのかを概説する。第2章「統語論の基礎」は,標準理論の概説である。句構造と句構造規則,変形規則とその適用条件などが説明されている。第3章「GB理論」では,GB理論の特徴をそれ以前の理論と対比しながら述べ,さらにX'理論など個々の理論について述べる。第4章「ミニマリスト・プログラム」では,MPの解説を(主にGB理論と対比しながら)する。第1節でGB理論までの展開を振り返り,第2節でMPの大まかな枠組み・特徴を述べる。第3節以下では語彙目録・最小句構造・領域・照合理論など主要なポイントについて説明する。なお,第1〜3章は『生成文法の基礎』(1989)に基づいているが,加筆・訂正がなされている。巻末には参考文献として,1950年代からの主要な研究論文・著作物を挙げ,その意義に関して簡潔なコメントを付けている。

(2001年5月15日発行 研究社出版刊 A5判横組み 297ページ 3,000円)

渡辺富美雄編『新潟県方言辞典 下越編』

 本書は,上越編,佐渡編に続く『新潟県方言辞典』の第3冊目として出版されたものである。基礎になっているのは1970年代半ばの調査(採集対象者は主に50歳以上の非移住者)だが,『現代日本語方言大辞典』(平山輝男他編,明治書院,1992年)の「方言基礎語彙」に挙げられた2300項目を加え,さらに下越地方の方言地図作成のための228項目の調査語彙も加えたという。記述項目は,見出し(語構成・活用語幹を示す),アクセント(数字で表す),品詞,意味,採集地域であり,さらに用例,語源や語形の変化についての解説,同義語,類義語,反対語などが付いているものがある。記述例を挙げると次のようになっている。

「ごうぎ [1](形動)(1)必要以上にお金をかけること。ぜいたく。(2)たくさん。物があまり過ぎたこと。例 ばかごうぎなことしなさった。〈ばかにぜいたくなことをした。〉(新潟市古町)(3)ひどいこと。例 とんでもねえごうぎなことするな。(粟島浦村釜谷)」

 巻末に「新潟県下越地方の方言の概観」と「共通語引き索引」がある。

(2001年5月24日発行 野島出版刊 A5判縦組み 231ページ 8,000円)

久島茂著『《物》と《場所》の対立 ―知覚語彙の意味体系―』

 本書は,〈物〉と〈場所〉の対立が知覚語彙を体系化する原理として有効だということを意味の分析をもとに主張したものである。序文(影山太郎)では,「希少性,独創性,説明・分析のわかりやすさ,幅の広さ,研究姿勢の柔軟さ」などの点を挙げつつ,本書の特徴を簡潔に整理している。第1章「量を表す形容詞の体系(《物》と《場所》の個別的分析)」では,「大きい・長い」,「広い・高い」を扱い,《物》の量を表す語彙の体系化,《場所》の量を表す語彙の体系化を行う。第2章「量を表す形容詞の体系(《物》と《場所》の総括的分析)」では,「縦・横」「まっすぐ・たいら」の意味を分析し,最終的には《物》の量を表す語彙体系と《場所》の量を表す語彙体系が同一の原理に基づくことを主張する。第3章「明度・色彩形容詞の体系」では,「白い・黒い」が《物》の明度を表し,「明るい・暗い」が《場所》の明度を表すことを論じる。第4章「温度を表す形容詞の体系」では,「冷たい・あたたかい」が《物》の温度を表し,「寒い・涼しい」が《場所》の温度を表すことを主張する。第5章「《物》の形を表す形容詞の体系」では,第1章の議論からの関連で,形を表す語彙「細長い・平たい・まるい・四角い」を取り上げ,どのように体系化されるかについて述べる。第6章「《面上の回転》を表す動詞の体系」では,第1章の議論からの関連で,形を表す語彙の体系がどのように別の語彙体系と関連しているかを「転がる・倒れる・起きる」を取り上げ,分析する。なお,既発表論文と本書の関係は巻末に記してある。

(2001年6月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 237ページ 3,800円)

 ◆54巻1号(212号)に書評を掲載

尾上圭介著『文法と意味 I 』

 本書は,既発表論文と公開講演会の発表資料を収録したものである。テーマ別・時代順となるように構成するとともに,各章の冒頭には,その論文が如何なる問題を扱ったものなのか,その問題を扱った研究の流れおよび著者自身の研究の流れにおいてどのような位置づけがなされるのかに関する解説が付されている。これにより,同様のテーマを扱った他の研究との違い,著者の研究における問題意識のあり方が明らかになっている。第1章「文の意味の成立,喚体と述体」には,「文核と結文の枠 ―「ハ」と「ガ」の用法をめぐって―」など11編を収める。第2章「陳述論,それに関係する学史」には,「文法論 ―陳述論の誕生と終焉―」など6編を収める。第3章「述語の形態と意味,モダリティ・テンス・アスペクト」には,「スル・シタ・シテイルの叙法論的把握」,「動詞終止形と不変化助動詞の叙法論的性格」,「叙法論としてのモダリティ論」など6編を収める。巻末に既発表論文等の初出が記されている。なお,引き続き第2巻が刊行予定となっており,その目次が予告されている。

(2001年6月15日発行 くろしお出版刊 A5判縦組み 490ページ 5,400円)

佐藤亮一著『生きている日本の方言』

 本書は,方言に興味を持つ人のために,方言学で扱われているテーマのいくつかを選んでそれについて述べたものである。第1章「現代方言のさまざまな姿」では,基本的な用語解説,世代差と場面差,東京語の地理的背景,東京語のゆれ,方言の表現とその発想について,などが扱われる。第2章「伝統的方言の分布をさぐる」では,国立国語研究所『日本言語地図』のデータをもとに,東西対立分布(例:イル対オル,ショッパイ対カライ,ヒコとヒマゴ,など)とその成因,方言周圏論の有効性と限界,語史研究において方言研究と古文献の両者が必要なこと,方言の誕生(混交,複合,民衆語源,音位転倒,類音牽引,過剰修正,同音衝突,意味の分担)について述べる。また,生活に密着した表現(あいさつ,作物名など)について述べる。最後に方言の将来について述べる。

(2001年6月20日発行 新日本出版社刊 B6判縦組み 190ページ 1,900円)