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新刊紹介 (53巻1号(208号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど、雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

国立国語研究所編
『新「ことば」シリーズ13 「ことば」を調べる考える』
『新「ことば」シリーズ14 言葉に関する問答集 ―よくある「ことば」の質問―』

 『「ことば」を調べる考える』は,「言葉の研究」というものがどのようなものなのかを概説したものである。総論を兼ねた座談会(木村義之,福田邦夫,宮沢清治,鷲津名都江,甲斐睦朗)と解説6編を収める。解説の題名・執筆者は以下の通りである。

『言葉に関する問答集』は,国立国語研究所に寄せられた質問などをもとに,日常の言語生活の中で疑問となることについて、一問一答形式で記述したものである。言葉の歴史の項目には,「船の名につく「丸」の由来は?」という質問,敬語の項には「こちらからの手紙を「お手紙」と言っていいか」などの質問が見られる。

(2001年3月発行 国立国語研究所刊 A5判縦組み 94ページ 360円 ISBN 4171962137)
(2001年3月発行 国立国語研究所刊 A5判縦組み 94ページ 360円 ISBN 4171962145)

平山輝男ほか編著『岩手県のことば』

 『現代日本語方言大辞典』を基礎として,さらに各地の方言を詳述しようとする「日本のことばシリーズ」の第3巻である。章立て・内容は以下のようになっている。

  1. 総論
     ※位置と区画,岩手県の方言の特色などについて述べる。
  2. 県内各地の方言
     ※盛岡市方言・一関市方言など各地域の方言について述べる。
  3. 方言基礎語彙
     ※全国的に調査した項目を取り上げ,それに対応する岩手県盛岡市でのことばについてまとめた辞書的記述である。共通語形・方言形・音声表記・品詞・意味説明・用例を記す。
  4. 俚言
    「俚言の意味分析」について述べた論と,『岩手県方言研究集 第3集 岩手方言語彙』(小松代融一)などを元にした俚言の小辞典である「俚言の世界」の項が含まれる。

なお,3は大野真男・森下喜一,それ以外は,斎藤孝滋による執筆である。

(2001年6月15日発行 明治書院刊 A5判横組み 212ページ 2,800円 ISBN 4-625-62301-4)

真田信治著『関西・ことばの動態』

 関西およびその周辺での調査から得られたさまざまなデータをもとに,ことばの動態的な変遷のプロセスを紹介したものである。章立て・内容は,以下のようになっている。

なお,本書は大阪大学創立70周年記念出版実行委員会編の「大阪大学新世紀セミナー」シリーズのうちの1冊である。また,本書の内容は部分的に大阪大学での社会言語学講義および方言学講義に基づいている。

(2001年6月20日発行 大阪大学出版会刊 A5判縦組み 96ページ 1,000円 ISBN 4-87259-109-7)

国立国語研究所編『国立国語研究所報告117 教育基本語彙の基本的研究 ―教育基本語彙データベースの作成―』

 これまでに国内で刊行された7種の教育用の基本語彙を比較対照するために一覧表を作成したもの。これにより,ある単語が教育の基本語彙に入っているか否か,どの学習段階に位置づけられたものかといったことがすぐにわかる。7種の基本語彙とは,阪本一郎『教育基本語彙』(牧書店1958),阪本一郎『新教育基本語彙』(学芸図書1984),田中久直『学習基本語彙』(新光閣書店1956),池原楢雄『国語教育のための基本語体系』(六月社1957),児童言語研究会『言語要素指導』(明治図書1962),中央教育研究所『学習基本語彙』(中央教育研究所1984),国立国語研究所『日本語教育のための基本語彙調査』(秀英出版1984)に掲載されたものである。付属CD-ROMには,国立国語研究所で作成した6種の語彙表(幼児語彙,絵本語彙,作文語彙,教科書の用語,など)を収める。

(2001年6月25日発行 明治書院刊 B5判横組み 558ページ 15,000円 ISBN 4625433096)

大坪併治著『石山寺本四分律古点の国語学的研究』

 『石山寺本四分律』の原典を調査して,その現存59巻中,平安初期の白点を持つ9巻を解読し,これを基礎資料として国語史的な立場から紹介・解説したものである。従来研究されてきた『願経四分律』の古点とは直接関係がなく,『平安時代訓点本論考』(築島裕 汲古書院1986年)に本資料のヲコト点や仮名字体表が載せられているものの,まとまった資料として研究されてこなかった資料である。訓点資料としての価値のほか,コの甲乙の残存,サ変動詞としての訓読例が多いなどの特徴があり,国語史的な資料としての価値がある。 章立て・内容は,以下のようになっている。

なお,巻末に語彙索引がある。また,本書は,大坪併治著作集の第8巻にあたる。

(2001年6月30日発行 風間書房刊 A5判縦組み 630ページ 17,000円 ISBN 4-7599-1267-3)

 ◆54巻1号(212号)に書評を掲載

辻幸夫編『ことばの認知科学事典』

 「認知と言語に関連する認知科学的諸研究の概観と今後の展望,そして「事典」と「辞典」を兼ね備えるレファレンスとしての内容」(「はじめに」より)をそれぞれの分野の専門家が執筆したものである。1章「言語と認識」では,哲学や言語学で言語と認識の問題がいかに扱われてきたか,今後の展開はどうかについて述べる。2章「認知と言語の基盤」では,それらの神経学的基盤と記号的過程について述べる。3章「言語の理論」では,一般的な言語学の基礎論と生成文法・認知言語学など近年の代表的な言語理論について述べる。4章「言語と認知の発達」では,心理学,言語習得,手話などさまざまな分野を扱う。5章「言語の産出と理解」では,言語の障害,対話の研究などのほか,意味づけ論,関連性理論,メンタルスペース理論について述べる。6章「言語と思考」では,推論,メタファーなどについて述べる。7章「言語と記憶」は,認知心理学の立場からの叙述である。8章「社会,文化から見た言語と認知」は,社会言語学,社会心理学などの立場からの叙述である。9章「言語と認知のモデル」は,計算モデル,人工知能,アフォーダンスについて述べる。10章「認知の理論」は,現在までの認知科学的研究の理論的枠組みを再考し,認知言語学における理論的枠組みの重要性と期待が表されている。

各章・各節の目次は以下のようになっている。

(2001年7月1日発行 大修館書店刊 B6判横組み 561ページ 3,600円 ISBN 4-469-01269-6)

日野資成著『形式語の研究 ―文法化の理論と応用―』

 名詞が形式名詞になったり,動詞が補助動詞になったりする,いわゆる文法化の現象が起きるときに,どのような意味変化をしているかを歴史的に捉え,そこからさらに意味変化のパターンについてのモデルについて論じていこうとする試みである。 第1章「導入」では,目的・方法論について述べる。 第2章「抽象化」では,意味変化の方向について,名詞の場合には「もの→空間」に変化し,そこから「こと,時間,質」のそれぞれに変化すること,動詞の場合には「物理的→心理的」に変化することが示される。 第3章「抽出化」では,変化が起きるとき,元の意味ABからBだけが抽出され,Aが失われる現象を「上がる」などを例にして説明する。 第4章「意味の希薄化」では,「よく考えたうえで返事します」などの「うえ」などの例を挙げ,意味変化において元の意味を失うタイプの文法化を扱っている。意味的な機能を失い,文法的機能(たとえば,文と文をつなぐ機能)や表現的機能(たとえば,批判・譲歩など)を担うことが示されている。 第5章「文法化の制約」では,文法化における形態統語論的制約について,さらに意味論的制約について述べる。 第6章「結論」では,新たに示されたことを8つの発見という形でまとめている。 なお,本書は,2000年3月にハワイ大学大学院言語学部に提出された博士論文( Grammaticalzation of Japanese Pseudonouns and Auxiliary Verbs ― A Morphosyntactic and Semantic Approach )を日本語に訳したものである。

(2001年7月10日発行 九州大学出版会刊 A5判横組み 124ページ 2,800円 ISBN 4-87378-690-8)

 ◆53巻4号(211号)に書評を掲載

河野六郎・千野栄一・西田龍雄編著『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』

 世界の文字(約300)を見出しとして立項し,それぞれについて分布・系統・歴史・文字構成・文字組織・研究史・資料などを記述したものである。単に文字を集めてその形を提示するというやり方ではなく,その文字を使っている言語体系との関係を配慮したうえでの取り扱いがなされている。日本語の文字の項の執筆者は笹原宏之、仮名の項の執筆者は築島裕・小松英雄となっている。付録には文字分布概略図・国別使用文字一覧がある。世界の文字を載せるということから印刷上の困難を伴ったであろうと思われるが,西洋言語学ではそれほどの考慮が払われない文字論に対する貢献という観点からこの別巻を捉える必要があるだろう。なお,この別巻をもって言語学大辞典のシリーズは終了となる。本シリーズが「言語」を扱う者に何を提示したのかを再び考え直す良い機会であると思われる。

(2001年7月10日発行 三省堂刊 B5判横組み 1222ページ 48,000円 ISBN 4-385-15177-6)

スーザンH.フォスター=コーエン著『子供は言語をどう獲得するのか』

 言語獲得には,普遍文法を軸にした論理的方法と,非普遍文法的観点を取る伝統的な経験的方法がある。本書はこの両者の橋渡しを行い,現象をよりよく説明できる方法を追究しようという姿勢で書かれた心理言語学的な著作である。言語獲得のほか,言語発達における個人差の問題,メタ言語的能力の問題などについても考察している。章立ては以下のようになっている。

(2001年7月10日発行 岩波書店刊 A5判横組み 314ページ 3,800円 ISBN 4-00-022814-5)

飛田良文編『異文化接触論』

 日本語教育の新しい流れについてまとめるとともに,日本語教育「学」という領域をより大きなものにしていこうという考えから,日本語教育学シリーズが編集された。本書はその巻頭にあたり,異文化関連の問題を扱ったものである。以下に,章立てと各々に付けられたキーワードを記す。

(2001年7月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 270ページ 2,500円 ISBN 4-273-03161-2)

神鳥武彦著『共時方言学攷 ―課題と方法―』

 共時態としての方言学の建設をめざして,共時論についての検討をするとともに,広島県の地域方言に関するさまざまな事象を論じたものである。章立てと内容は以下の通りである。

なお,著者の論文を元にした章には,章末ごとにその文献が示されている。

(2001年7月30日発行 清文堂出版刊 A5判横組み 600ページ 18,000円 ISBN 4-7924-1350-8)

賈恵京著『日韓両国語における敬語の対照研究』

 日韓両国語の敬語使用の実態をアンケートを行って調査するとともに,両語の特徴を記述・比較・考察したものである。第1章「序論」に続き,第2章「日韓両国語における人称代名詞の用法と比較」では,1988年に鳥取市と清州市で実施したアンケート(日韓とも10代・30代・50代の男女10名ずつ計120名が対象)をもとに,人称代名詞について比較・考察している。第3章「日韓両国語における敬語の比較」では,1999年に合計560名を対象にしたアンケートの結果と考察を述べる。第4章「総合考察」では,対照記述を行い,日韓で差があると思われる点については,その原因を考察している。最後に,第5章「結論」で,8項目のまとめを行っている。

(2001年8月1日発行 白帝社刊 A5判横組み 155ページ 2,400円 ISBN 4-89174-509-6)

日本国語教育学会編『国語教育辞典』

 変化する国語科に対応すべく,従来からの国語教育に関する項目に加え,周辺領域・関連諸科学の内容を盛り込んだ辞典である。中項目をアイウエオ順に並べ,それぞれを1ページ(ページ数が必要なものに関しては,2あるいは4ページ)で説明するという体裁をとっている。 なお,目次は,項目を分類・体系化した形にしており,以下のようになっている。(分野8のみ,やや詳しく記す。)

巻末には教育基本法・指導要領・国語教育史略年表などを付す。

(2001年8月10日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 468ページ 15,000円 ISBN 4-254-51023-3)

井上史雄著『日本語は生き残れるか ―経済言語学の視点から―』

 日本語の国際化について社会言語学・経済言語学の観点から論じたものである。章立て・内容は以下のようになっている。

(2001年8月30日発行 PHP研究所刊 新書判縦組み 207ページ 660円 ISBN 4-569-61727-1)