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新刊紹介 (53巻4号(211号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

飛田良文・村山昌俊著『世界商売往来用語索引』

 『世界商売往来』は,明治6年,日本で小学校が創設された当時の教科書に指定されたものである。特徴としては,初等教育の語彙を知るうえで欠くことのできない文献であること,頭書に英語と日本語との対訳があること,また絵を入れたことで語彙を視覚的に理解できるようにしたことにある。開化期の言語の実態や訳語を知るという観点からも興味深い資料と言える。本書は,『世界商売往来』(正編から追加編までの5編)のすべての用語を検索できるようにしたもので,構成は本文編・索引編・研究編から成る。索引編は国語索引・英語索引があり,研究編は伝記・著作目録・書誌・校注・英語正誤表から構成される。

(2000年9月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 604ページ 15,000円)

つくば言語文化フォーラム編『「た」の言語学』

 1995年の研究会における口頭発表・議論を元に,その後の研究成果を加えてできた論文集である。各章の内容を以下に示す。

(2001年10月15日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 296ぺージ 3,800円)

マーシャル・アンガー著・奥村睦世訳『占領下日本の表記改革 忘れられたローマ字による教育実験』

 著者は,現在米国オハイオ州立大学東アジア文化学科に所属,日本語教育・日本語の起源の研究,先端的教育用コンピュータPLATOの日本語機能開発などに従事している。本書は,1945年から51年にかけて占領下におかれた日本において占領軍により行われた,ローマ字教育実験を取り扱ったもので,全体で6章と付録(実験関係資料4点),および人名・事項索引からなる。1章では実験の概説を,2章では終戦時に日本語表記改革が必要であったことを,3章では実験前後の日本人による表記改革の歴史を,4・5章では日本語ローマ字化の活動と,それが阻害されたいきさつを,6章では表記改革の結末とそれを導いた政治的要因,および日本語表記改革の研究の必要性を述べている。

(2001年10月31日発行 三元社刊 A5判横組み 212ぺージ 2,500円)

室山敏昭著『アユノカゼの文化史 ―出雲王権と海人文化―』

 本書は,筆者が「生活語彙論」を基礎論として拓きつつある「文化言語学」の,『「ヨコ」社会の構造と意味 ―方言性語彙に見る―』(2001,和泉書院)につづく,第二の実践というべきものである。本書のねらいは,漁業社会の老年層の記憶にいまだ鮮明に残されている「風位語彙」のデータをできる限り精確で豊かな形に整序して示すこと,さらにその構造分析と構造比較を通すことによって,今まで誰の手によっても検証されることのなかった,言語記号(漁業社会の風俗語彙)を基盤とする「日本文化の多元性・混成性」という「自文化の再発見」にある。

(2001年12月25日発行 ワン・ライン刊 B6判横組み 248ページ 1,810円)

音声文法研究会編『文法と音声〈3〉』

 10年目を迎えた音声文法研究会の論文集である。全体は4部に分かれている。詳細は以下の通りである。

(2001年12月30日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 294ぺージ 3,500円)

遠藤和夫著『定家仮名遣の研究』

 本書は,文献学的研究を行ってきた著者による,「定家仮名遣」についての研究をまとめたものである。筆者は定家仮名遣とは〈藤原定家〉によって認証された〈同音語を別のかなによって書き分ける方法〉であるとする。このような一つの体系をもつ仮名遣いがどのようにして生み出されるに至ったか,その過程を追うものである。全体は,酒井憲二氏による「くちがき」を冠し,序論(「定家仮名遣」の定義,「仮名遣」制定の背景,現在までの研究の概観),本論「第一篇 所謂『下官集』系統の研究」(『下官集』の諸本,『辟案』の内容についての考察,『土左日記』における書き改め,『下官集』の「嫌文字事」についての考察),「第二篇 定家仮名遣の実際」(『定家本土左日記』における仮名遣,『明月記』の仮名遣,『拾遺愚草』の仮名遣),「第三篇 『竹苑抄』付載『文字仕』の研究」(『文字仕』の内容についての考察,伝統と独創,『文字仕』と『下官集』),注,参考文献一覧,及び「あとがき」からなる。

(2002年1月15日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 397ぺージ 11,000円)

佐藤喜代治編『国語論究 第9集 現代の位相研究』

 「現代の位相研究」というテーマを設定した論文集である。収録された論文は以下の通りである。

(2002年1月30日発行 明治書院刊 A5判縦組み 401ぺージ 18,000円)

山東功著『明治前期日本文典の研究』

 本書は平成11年度に大阪大学へ提出された博士(文学)学位論文に、その後の研究成果をふまえた上で加筆・修正を行ったものである。内容は,明治前期日本文典を通じて,序「日本語学史研究方法論序説」では研究史とは何をなすべき研究か,また研究史自体の歴史性をどのように扱うべきかという研究方法論の提唱をする。第1部「明治前期日本文典の諸相」では文典の内実に触れ,文法研究の歴史性自体を示す典型例としての位置付けを行うよう指摘する。さらに第2部「物集高見の日本語学史的研究」では当時の文法研究者,物集高見の研究を追い,研究内容を明らかにしている。以上のことから,本書を明治前期の文法研究に対する総合的分析であると結論付けている。また,古田東朔氏による序文,参考資料『小学詞遣』影印,人名索引を付す。

(2002年1月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 345ぺージ 10,000円)

仁田義雄・益岡隆志編集 野田尚史・益岡隆志・佐久間まゆみ・田窪行則著『日本語の文法4 複文と談話』

 単文を超える問題領域として,複文・談話・テクスト・文章を扱う。

なお,「日本語の文法」のシリーズ全4巻は,本書をもって完結した。

(2002年1月29日発行 岩波書店刊 A5判横組み 227ぺージ 3,400円)

大橋純一著『東北方言音声の研究』

 本書は,東北方言の音声に関する徹底した調査に基づいて分析・総合を行ったものである。序説で東北方言の特性は音声面によく表れることを指摘し,音声を研究する意義について述べる。そして東北諸方言音声の発音実相(発音原理),地理的状況,年代的状況,およびそれらの通時的展開などを研究の目的として挙げ,さらに特定方言の音声に関しての現状と通時的展開を明らかにするとしている。続いて方法論,調査概要についての説明をする。第1章「母音」では,単母音/i//e/,子音後接母音/si//su/,連母音等について論ずる。第2章「子音」は,語中尾無声子音の有声化,唇音等について述べる。第3章「拍」では,シラビーム現象について,その実態を究明する。また,特殊音節とそれに関連した現象について論ずる。なお,本書は東北大学に提出された博士学位論文に修正・削除を加えて公刊したものである。

(2002年1月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 469ページ 16,000円)

森田良行著『日本語文法の発想』

 日本語は日本人のものの見方・考え方,あるいは日本文化の特質を反映しており,それ固有の特徴がある。このような認識に基づき,本書では,まず,序章「日本語から見た日本人の発想」で,日本語の現象に通底する発想の特徴を述べ,以下の第1章〜第22章で,連体修飾・連用修飾・形容詞・動詞・副詞・使役・受身・受給・否定・条件など様々な文法項目と,そこに見られる(あるいはそれを支えている)発想について述べる。形式が単に形式として存在しているのではなく,見方・発想に支えられて生まれ発達してきたということを種々の表現のなかに見いだしている。最後の「あとがきに代えて 私の研究史」は,著者の日本語観,研究の哲学,どのような時期にどのような関心を持ち研究を進めたのかなどを述べる。著者のこれまでの著書・論文を読むうえで,参考になると思われる。

(2002年1月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 387ぺージ 3,200円)

筑波大学現代言語学研究会編『事象と言語形式』

 諸言語間の類似点・相違点を探り,その類似・相違がどのような関係にあるかを明らかにしていこうとする方向性を持った研究グループの論文集である。

(2002年2月11日発行 三修社刊 A5判横組み 316ページ 12,000円)

渡辺実著『国語意味論 ―関連論文集―』

 構文論,平安朝文章史の探究に続き,著者の関心が向かったのは,構文論では扱わなかった「意味」の探究であった。本書は意味に関わる既発表論文を中心とした論文集である。第1章「意義の構造」は,総論である。第2章「日本語の意義傾向」は,言葉に対象的意義と主体的意義があること,「ひとごと・わがこと」の概念などについて述べる。第3章「用語と表現」では,言葉を手がかりにして文学の表現に迫ろうとする。和歌の表現,堀辰雄の『風立ちぬ』に見られる「ひとごと」風記述についての論などがある。第4章「意義記述」は,具体的な意義記述。指示語,不快語彙,心情語彙,時の「さき」などを扱う。第5章「副用語への試行錯誤」は,程度副詞を扱った章であり,これをどのように体系化するかという課題に取り組んだ軌跡が示される。第6章「副用語の振舞い」は,評価系の副詞を扱う。錯綜した意味を通時的視点も取り入れて整理する。

(2002年2月2日発行 塙書房刊 A5判縦組み 392ぺージ 8,000円)

高山善行著『日本語モダリティの史的研究』

 本書は中古語を中心としたモダリティの史的研究をまとめたものである。序章で研究史と今後の研究の方向性とについて述べる。全体は,総論である第1部「文とモダリティ形式」と,各論にあたる第2部「モダリティ形式の特性」に分かれる。第1部の第1〜4章では,文の「構造」とモダリティの関係(承接,従属節との関係,係り結び,階層構造)を論じ,第5〜8章では,文の「表現」とモダリティの関係(疑問,仮定,否定)を論じる。第2部の第1〜3章では「ナリ」の問題(終止ナリと連体ナリに関わる論争の学史的意義,両者の差異の探究など),第4〜8章では推量の助動詞(ベシ・メリ・ム・マシ・ラム・ザラム・ジ・マジなど)の問題を扱う。最後の付章「叙法副詞の構文機能と意味」では副詞「カナラズ」の構文機能と意味について考える。なお,本書は,大阪大学に提出された博士学位論文の内容をもとにしている。

(2002年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判縦組み 334ぺージ 12,000円)

塚原鉄雄著『国語構文の成分機構』

 本書は,平成5年12月に逝去された著者の,昭和31年から昭和54年までの文法関係の遺稿をまとめた論文集である。著者の『国語史原論 ―日本国語の史的展開―』(塙書房)に「言語が、本質的に可易である、その根柢を、更に深層にまで穿抉するとき、不易性の存在することを、否定できない」という言語の本質についての記述がある。国文法において、何が不易で、何が可易なのか。本書は、そのような観点からのものであるとする。内容は,「第一部 構文の基礎」(主述の関係,修飾の関係,連接の関係,補助の関係),「第二部 構文と文脈」(会話の引用,鎖型の構文,文体の融合,観点の転換),「第三部 表現の構成」(論理と文脈,挿入の構造,挿入の修辞),「第四部 共通の原理」(構文と視点,解釈と文法,文脈と文法)の4部からなる。また,資料と索引,および神尾暢子・小松光三氏による,「塚原鉄雄先生文法関係論文・参考資料(抄)」と解説とを付す。

(2002年3月20日発行 新典社刊 A5判縦組み(索引のみ横組み) 350ぺージ 8,600円)

国語語彙史研究会編『国語語彙史の研究 二十一』

 国語語彙史研究会による,論文集の第21集。以下の15編の論文を収める。

なお,人名・書名・事項索引を付す。

(2002年3月30日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 278ページ 8,500円)

近代語研究会編『日本近代語研究 3』

 近代語研究会による,論文集の第3集。以下の27編の論文を収める。

また,事項・語句・人名・書名索引を付す。

(2002年3月23日発行 ひつじ書房刊 A5判縦組み 592ページ 48,000円)

沈国威・内田慶市編著『近代啓蒙の足跡 ―東西文化交流と言語接触:『智環啓蒙塾課初歩』の研究―』

 『智環啓蒙塾課初歩』は,1856年香港の英華書院より出版された初級の英語教科書である。この書ははやくから文化交流史の見地から注目されていたものであるが,一方,近代語彙の観点から研究に利用されてきたものでもある。本書全体は,研究編が第1章「中国の『智環啓蒙塾課初歩』」,第2章「『智環啓蒙塾課初歩』の訳語」,第3章「日本に渡る『智環啓蒙塾課初歩』」,終章「『智環啓蒙』から見る近代への異なる道程」からなり,これに語彙索引,大英図書館所蔵の中国初版の影印本文を付す。

(2002年3月31日発行 遊文舎刊 A5判横組み 334ページ 4,000円)

西崎亨編『枳園本節用集索引』

 本書は,語彙研究を試みる一環として,節用集の語彙索引を公にして来た(国会図書館蔵岡田希雄旧蔵『節用集』(葉山書院刊),玉里文庫本『節用集』(西日本国語国文学翻刻双書刊行会刊)),その編者によるものである。本索引の底本である枳園本は,印度本系のもので,さらに弘治二年本類,永禄二年本類,枳園本類と分けられるうちの枳園本類の一本である。また,森枳園の旧蔵書であったことから橋本進吉博士により名付けられたものである。また当該枳園本は『天理図書館善本叢書節用集二種』に易林本と共に収載されている。全体は,「序」,「枳園本節用集索引のために」,「枳園本節用集索引」,そして「あとがき」からなる。

(2002年2月28日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 239ぺージ 9,000円)

伊藤雅光著『計量言語学入門』

 まえがきによると,計量言語学という学問分野は「むしろ衰退しつつある」という。量的な法則性を追うために数理統計学の知識が必要である。また,言語調査の具体的な方法もなかなか広まらなかった。そうしたことが研究者を遠ざける結果を生み出してしまった。この現状を打破すべく,計量言語学がいかなる分野であり,どのようなことをして,どんな結果を出すものなのか,平易な記述で概説している。全体は3部に分かれる。第1部は理論編である。語彙調査の前に知っておかなければならない基礎概念について解説する。第2部は実践編である。パソコンを使って,プレインテキスト形式から語彙表の作成に至るまでを演習として行うようになっている。パソコンを使った実習用のテキストとしても使えるようになっている。第3部は分析編である。(品詞構成比率の)分布傾向から法則を見つけ,数式化するという流れを実例を使って解説している。

(2002年4月1日発行 大修館書店刊 A5判横組み 285ぺージ 2,200円)

J.V.ネウストプニー・宮崎里司編著『言語研究の方法 ―言語学・日本語学・日本語教育学に携わる人のために―』

 言語を研究するときに,どのような方法で行うのかについて,その手法・技術・注意点について述べたものである。

(2002年4月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 267ぺージ 1,800円)

町田健編・井上優著『日本語文法のしくみ』

 日本語の文法とはどのようなものか,日本語を分析的に見るとはどういうことかを,Q&A方式で話を進めながらつかんでもらおうとする書物である。第1章「「文法の研究」って何?」では「Q1「文法の研究」ってどんなことをやるんですか?」,第2章「ことばに「パターン」を見る」では「Q4「は」って何を表すんですか?」,第3章「文の「構造」を考える」では「Q7日本語の文ってどのようにできているんですか?」,第4章「意味に「形」を与える」では,「Q10探し物を見つけたときに「あ,ここにあった!」のように言うのはなぜですか?」,第5章「他のことばと関連づけて考える」では方言や他言語に関わる質問など,合計14の質問にそって,説明が展開される。なお,本書は「シリーズ日本語のしくみを探る」の第1巻として出版された。本シリーズは既に第5巻『認知意味論のしくみ』(籾山洋介著),第3巻『言語学のしくみ』(町田健著),第4巻『日本語学のしくみ』(加藤重広著)が出版されている。

(2002年4月25日発行 研究社刊 A5判縦組み 193ぺージ 2,000円)