日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (54巻3号(214号)掲載分)

新刊紹介 (54巻3号(214号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

南芳公著 『中古接尾語論考』

 本書は筆者の接尾語をめぐる一連の研究をまとめたものである。全14章は以下の5部に分けられている。1部「序説 中古接尾語の認定」では,古語辞典や索引(竹取・伊勢・土佐など主要作品の索引)で,どのようなものを接尾語としているかを調査・観察する。2部「各説 中古の動詞構成接尾語」では,源氏物語を資料として,ダツ・メク・ム・ルの機能・語性について考察する。3部「中古接尾語研究史」では,接尾語について源氏物語古注にどのような記述があるかなどを調べる。4部「付説 中古複合動詞の後項と補助動詞」では,源氏物語の「〜ワタル」,古今和歌集の「〜カヘル」などをめぐる問題を扱い,さらに補助動詞の認定について考える。5部「資料篇」では,大槻文彦『言海』の用例(接尾語・接頭語・発語)について整理する。

(2002年10月20日発行 おうふう刊 A5判縦組み 358ページ 16,000円)

定延利之編 『「うん」と「そう」の言語学』

 関西言語学会第26回大会(2001年10月)のワークショップ「デキゴトとしての文」での発表をもとにまとめられた4編の論文に,2編の論文を加えて一書としたものである。書名にある「うん」あるいは「そう」が全編を通してのキーワードとなっている。収められたものは以下の通りである。

(2002年11月7日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 157ページ 1,800円)

柴田武・山田進編 『類語大辞典』

 見出し語総数7万9千を擁する大型の類語辞典である。意味分類で,類語が近くに来るようになっており,その細かな意義の差異が明らかになるように意を用いている。また,用例は一文主義をとっている。意義記述・用例の点からは,形を変えた国語辞書という考え方もできる。分類を大きい順に示すと、以下のようになっている。単語などを100のカテゴリーに分けるー小分類に分けるー品詞別に細分―いくつかの小見出しに分ける。―個々の見出しー最初の部分の見出しは,たとえば、「生きる・死ぬ(生死)」の項の「生きる」であり,「生きる,生活する,生存する,自存する,…」等の各語には,表記,読み,意味,(原則としてフルセンテンスの)用例が記され,また,必要に応じて対義語,注記などが付けられている。一般的な使い方としては,本編の前のガイド(五十音順索引)を利用し,分類番号をもとに,語に辿り着くという方法をとる。

(2002年11月19日発行 講談社刊 A5判横組み 1495ページ 6,500円)

中井幸比古編著 『京阪系アクセント辞典』

 京阪系アクセントの全貌を明らかにし,その記述・解説を記したものである。4編から成る。1「解説編」では,京阪系アクセントに関する一般的な説明を行う。2「語彙編」では,2万項目についてアクセントを示す。排列は体言・動詞・形容詞・姓名・数詞・付属語と用言の活用形の順とし,それぞれ「読み,漢字仮名交じり表記,意味の注記,文例,アクセント」(すべての項目があるわけではない)を記す。アクセントは近畿中央部のほか,必要に応じて周辺部のものが付されている。なお,アクセントは網羅的記述のため数字と記号による表記を使用している。3「CD解説編」は別売りCD-ROM(「京阪系アクセント辞典 データCD-ROM」勉誠出版 10,000円)の解説である(なお,この別売りCD-ROMは,テキストの部と,音声ファイルの部からなっている)。4「考察編」には,本辞典にもとづく考察・研究の一端を掲げる。

(2002年11月20日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 611ページ 25,000円)

福島直恭著 『〈あぶない〉が〈あぶねえ〉にかわる時―日本語の変化の過程と定着―』

 言語変化とはどのようなものか,その変化の過程はどうかなどの問題を,連接母音の長母音化を中核にして述べたものである。全体は3部に分かれている。第1部は,定義,問題の整理,変化の原動力について述べる。言語変化研究の課題について述べたあと,「なぜ言語は常に変化しているのか」という問題をアイデンティティー管理を主要概念として説明する。社会言語学的な変異の分布モデルについても述べる。第2部では,変化の過程(方向性と帰着点)を具体的に検討する。『浮世風呂』やそれ以前の洒落本を検討し,変化の問題には,外部の多様な要因を考慮する必要があることを述べる。第4・5章では,長母音化という変化のその後を検討する。第3部は言語の体系や言語変化というものについての著者の考えを述べたものである。体系的要因という説明原理の適用対象に関する問題,「言語体系」の概念,複雑系などの開放システムの言語への適用について論じている。

(2002年11月30日発行 笠間書院刊 A5判横組み 189ページ 1,800円)

三上章著 『構文の研究』

 1959年に執筆され,東洋大学に提出された博士学位論文「構文の研究」を新たに公刊したものである。本論文は,存在は知られていたが,実際に目にする機会はなかなかなかった。この出版により,三上章のその時点でのまとまった考えを見ることが容易になった。解題(執筆:益岡隆志)では,本書の特色を「意味の問題を排除しない構文研究であること」,「体系的であること」(一般に三上の研究は体系化されていないと思われているが,そうではないと指摘。)という点に見ている。さらに続けて,「コトとムウド」「係り係られ」が,その体系性を考える上での鍵ではないかと指摘している。全体の構成は,「序論」で「文法の単位」(センテンス,単語,品詞分類)と「活用形」について述べ,「本論」で「コトの類型」「題述関係」「ムウド」「テンス」「スタイル」「係り係られ」「引用法」「間投法など」の各部分に分けて論述している。

(2002年12月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 260ページ 2,800円)

天野みどり著 『文の理解と意味の創造』

 文の意味には,表現したい内容が先にあり,それが諸要素の意味を決定・付与していくという側面がある。本書は,その過程を明らかにするとともに,名詞句の意味的関係性の創出について述べたものである。具体的には,典型的ではない構文を取りあげ,類推によってそれに対応する基本的な構文と同様のものと理解されていることを指摘する。また,要素同士の関連性もそれに対応して作り出される面があることを指摘する。第1章「総論」で全体の見通しと重要な概念について述べたあと,第2〜6章で,無生物主語のニ受動文,無生物主語の尊敬文,多主格文,状態変化主主体の他動詞文,について検討する。第7章では,受動文・受益文などを取りあげて,「基準的意味」という概念を前提にすれば,これらの構文の意味的密接性の説明ができることを示す。第8章では「基準的意味」等の概念と,認知言語学等の「プロトタイプ的意味」「カテゴリー化」の概念との異同について述べる。

(2002年12月16日発行 笠間書院刊 A5判横組み 206ページ 2,200円)

大堀寿夫著 『認知言語学』

 認知言語学に興味がある人向けに,その基本的な内容,基礎的な概念を,分かりやすく解説したものである。教科書として使われることも想定している。これまでにこの分野について出されてきた疑問点を踏まえて書かれていること,日本語の例を多く取りあげていること,類型論の成果にも目配りしていることなど,深い理解にいたるように配慮されている点に特徴がある。なお,目次は以下のようになっている。

  1. 認知言語学とは何か
  2. 認知能力と言語
  3. カテゴリー化(1):プロトタイプ
  4. カテゴリー化(2):基本レベル
  5. メタファー
  6. 事象構造
  7. 構文知識(1):基本的枠組み
  8. 構文知識(2):「主語」と「受動態」
  9. 文法化
  10. 談話・認知・文化
  11. 言語の発達
  12. 今後の探究に向けて

(2002年12月16日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 283ページ 3,000円)

真田信治著 『方言の日本地図―ことばの旅―』

 本書は,地域言語地図のデータをもとに,日本語の地域的多様性とその背景,その活力について考えようとするものである。第1章「日本方言の分布パターン」では,方言地理学的考察を行う。いくつかの語の方言分布を地図で示し,そのパターンとそのようなパターンになる理由を考える。第2章「地図で楽しむ各地方言の旅」では,北海道,東北,関東…のように各地域に関するトピックをいくつか紹介する。第3章「老人,幼児,若者語,学校,コンビニ・ファミレス用語」では,位相語の地理的背景,普及の実態について図表で説明する。第4章「方言の底力を信じつつ」では,大阪弁を取りあげ,その動態を見ていく。また,方言消滅の危機について述べ,方言収集・記述上の留意点について触れる。

(2002年12月20日発行 講談社刊 新書判縦組み 214ページ 780円)

松井栄一著 『出逢った日本語・50万語―辞書作り三代の軌跡―』

 『日本国語大辞典』第2版(小学館)の完結を区切りとして,この辞書がここに辿り着くまでの経緯や編集の様子などを述べたものである。具体的には,この辞典の前身である『大日本国語辞典』を編集した祖父・簡治の周辺,それに協力した父・驥の横顔,『日本国語大辞典』初版や第2版ができるまでにどのような作業がなされたか,といった話題が取り扱われる。編集委員として中心的な位置にいた著者による記録・証言として貴重である。目次には,「松井簡治と『大日本国語辞典』」「松井簡治の日常こぼれ話」「『日本国語大辞典』(初版)の内側」「『日本国語大辞典』(第2版)をめぐって」「国語辞典の用例について」「用例資料にまつわる話」「松井驥の歩んだ道をたどる」「ピンチヒッター人生」「『近代国語辞書の歩み―余説第二章』について」のような内容が掲げられている。

(2002年12月20日発行 小学館刊 B6判縦組み 232ページ 1,800円)

佐藤喜代治編 『国語論究 第10集 現代日本語の文法研究』

 文法に関する論文集である。収録された論文題名・執筆者・内容は以下のようになっている。

(2002年12月20日発行 明治書院刊 A5判横組み 317ページ 18,000円)

岩下裕一著 『「意味」の国語学 ―松下文法と時枝文法―』

 文法体系と意味場面,さらに表現との関係をどのようなものとして把握すべきか,どのような位置づけをするかを,松下文法・時枝文法を参照しつつ検討したものである。また,後半では,個別の論が展開される。全体は2部にわかれる。第1部の「理論編」の第1章「意味と文法」では,文法が体系としてまとめられるとき,もとの事態が持っていった意味が捨象されるが,その部分をすくいとるとすれば,どのような点について考えておくべきかということについて述べる。第2章「松下文法と時枝文法」では,松下文法の用語を発想の時点に戻って考え直し,時枝の発想とどのように関係づけられるかを考える。第2部の「語誌編」では,第1章「動詞と格― 一字漢語サ変動詞を中心に」で「念ず」などの動詞を扱い,第2章「助詞の機能と表現効果」では,格助詞について論ずる。

(2003年1月25日発行 おうふう刊 A5判縦組み 380ページ 16,000円)

大橋勝男編著 『新潟県方言辞典』

 新潟県の主に現代の単語や慣用的な句などを五十音順に配列し,品詞・意義・用法・用例・使用地域(上越・中越・下越・佐渡)などを,記述したものである。例として「イー」という項を挙げると,次のようになっている。「イー(名)労力を交換すること 〔例〕『イーをなす(借りた労働を返す)。』「田植えのイー。」〈上・中・下・佐〉」。作成にあたっては,地域ブロック別の原案執筆者が候補単語等を選定し,その語義記述原稿を作成したあと,8人の統括編者が,取捨選択・記述加除訂正,品詞等の記入を行って一書としたとある。また,本書は大橋勝男著『新潟県言語地図』(高志書院1998),同『新潟県方言の記述的研究』と相補的性格を有するとある。

(2003年2月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 267ページ 4,500円)