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新刊紹介 (55巻1号(216号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

真田治子著 『近代日本語における学術用語の成立と定着』

 井上哲次郎編『哲学字彙』(1881)に含まれる学術漢語がその後の文献にどう現れるかを調査し,計量的な手法を用いて考察したものである。「第1章 論文の目的と背景」に続き,「第2章 『哲学字彙』の学術漢語について」で基本的考察を行う。約2000の漢語を抽出し,漢語表を作成する。「第3章 外国語辞書にみられる学術漢語」では,宮島達夫「現代語いの形成」(『国立国語研究所論集3 ことばの研究』秀英出版(1967)所収)のデータをPiotrowskiカーブにあてはめ,さらに上記漢語との比較を行う。「第4章 学術漢語と各種語彙表採録単語との比較研究」および「第5章 学術漢語語彙と各種語彙表の再録語彙との複合的比較研究」では,夏目漱石等の小説用語索引,国立国語研究所の『中央公論』調査(1906〜1976間を扱ったもの)調査を利用した比較を行う。「第6章 シナジェティック(協同的)言語学理論による学術漢語の分析」では,ドイツのケラーによる理論(自己組織化に関する理論で,特に言語内の自己調節能力を体系化しようとするもの)に学術漢語の現象を当てはめて,適合するかどうかを調査する。「第7章 各種基本語彙表における学術漢語の採用」では,阪本一郎『新教育基本語彙』学芸図書(1984),国立国語研究所『日本語教育のための基本語彙調査」秀英出版(1984)に,学術用語がどの程度採用されているかを調査する。「第8章 結論」はまとめを述べたものである。付表として「西周の公刊/未公刊著作におけるルビ付き訳語」(pp.196-332),「『哲学字彙』初版・二版・三版訳語変動表」(pp.333-475)を載せる。なお,本書は2000年9月に学習院大学に提出された博士学位請求論文に加筆・訂正したものである。

目次は以下のようになっている。

第1章 論文の目的と背景
第2章 『哲学字彙』の学術漢語について
第3章 外国語辞書にみられる学術漢語
第4章 学術漢語と各種語彙表採録単語との比較研究
第5章 学術漢語語彙と各種語彙表の再録語彙との複合的比較研究
第6章 シナジェティック(協同的)言語学理論による学術漢語の分析
第7章 各種基本語彙表における学術漢語の採用
第8章 結論

(2002年2月28日発行 絢文社刊 A5判横組み 488ページ 4,858円 ISBN 4-915416-04-6

神尾暢子著 『伊勢物語の成立と表現』

 著者の還暦を機に,既発表論文をまとめて一書にしたものである。著者のあとがきには「論点は,表現論的立場からの作品研究であること,伊勢物語の変調表現には,体制批判と批判を韜晦する表現との二重性があることの二点である」と記してある。つまり,伊勢物語に関して,どのような素材をどのように表現したかを論じ,基調となっている一般的な表現からはずれた表現(変調表現)があれば,それはなぜなのかを追究していくという方法をとっているということである。構成は,総論的な内容を含む「伊勢物語の表現特性―成立段階と変調表現」を置き,成立論との関わりで「歌がたりと歌物語―「語り」形式と「物語」形式」を含め3編を収める。次に,源融章段・老翁章段・行平章段・有常章段などにわけ,「批判」に関わる計8編の論文を収める。さらに付録として散文と和歌,伊勢物語の語彙体系などについての論文を3編載せる。

内容は以下のようになっている。

伊勢物語の表現特性―成立段階と変調表現―

歌がたりと歌物語―「語り」形式と「物語」形式―
「歌を語る」と「歌語り」―語る内容と語る話題―
三次成立と指示表現―指示語「こ」系と「そ」系―

勢語本文と後人補入―源融章段と体制批判―
老翁章段と体制批判―批判表現と韜晦表現―
行平章段と体制批判―史的事実と勢語規定―
有常章段と体制批判―惟喬親王と後見有常―
天皇章段と体制批判―清和天皇と後宮女性―
春日斎女と伊勢斎宮―奈良春日と体制批判―
洛外空間と体制批判―皇位継承の勝敗対応―
暦日映像と体制批判―時点規定の正月十日―

散文表現と和歌表現―力学的な均衡関係―
期間規定と時点規定―「ついたち」と「つごもり」―
伊勢物語の語彙体系―主題語彙と類縁語彙 ―

(2003年1月28日発行 新典社刊 A5判縦組み 285ページ 7,200円 ISBN 4-7879-4145-3

山田政通著 『The pragmatics of negation ―Its functions in narrative―』

 日本語の「語り」における「否定」の機能について語用論的に考察したものである。実例をもとに述べた点に特徴がある。第1章で,研究の動機や目的を述べ,第2章で先行研究の整理をし,第3章で定義と方法について述べる。「第4章 Negation as Denial」では,明示的な否認と非明示的な否認を区別し,後者の場合について背景にある期待との関連を調べる。「第5章 Negation as Contrast」では,否定の対比機能について述べる。内容の繰り返しを構成する際の働きなどを分析する。「第6章 Negation as Evaluation」は,否定の評価機能について述べる。また,評価についての新しいカテゴリーを提案する。第7章では,ラボフのモデルを基に否定の機能を検討する。第8章では,別角度から否定の機能を検討し,問題指摘・話題転換などの機能を指摘する。第9章はまとめを述べる。なお,本書は,2000年にジョージタウン大学に提出された博士学位論文がもとになっている。(英文)

各章の名称は以下のようになっている。

Chapter1 Introduction
Chapter2 Review of Literature on the Pragmatics of Negation
Chapter3 Definitions and Methods
Chapter4 Negation as Denial
Chapter5 Negation as Contrast
Chapter6 Negation as Evaluation
Chapter7 Negation in Narrative Components : the Labovian Model
Chapter8 Negation in Narrative : Storyline and Interactional Functions
Chapter9 Conclusion

(2003年3月28日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 448ページ 4,800円 ISBN 4-89476-189-0

彭飛著 『外国人を悩ませる日本語からみた  日本語の特徴 ―漢字と外来語編―』

 中国人学習者が日本語を学ぶとき,難しいと感じる部分について述べ,指導・習得に役立つ情報を提供しようとするものである。本書では「漢字と外来語」に話を絞っている。「第1章 漢字指導」では,漢字指導の留意点(発音・同形異義など)を初めとして,日中両語で食い違いがあるため理解しにくい「役職名」や,誤りやすい「字形」・「意味」などについて説明する。「第2章 外来語指導」では,日本語学習者向けの外来語指導の注意点を述べた後,「アイディア」と「考え」,「アドレス」と「住所」など,「外来語」と「和語・漢語」で類義関係にある語の意味の違いを挙げ,さらに外来語を使用するのはどのようなときなのかについて述べる。

目次は以下のようになっている。

第1章 漢字指導
 第1節 中国人学習者向けの漢字指導の留意点
 第2節 学習者の頭を悩ませる日本の「役職名」―日本語と中国語の漢字表記の「役職名」の違い
 第3節 「裏」という漢字を指導する方法の検討(Q&A 14)
 第4節 漢字「字形」指導のポイント―中国人学習者の漢字書き方トレーニング12―
 第5節 漢字の意味指導の注意点―中国人学習者が間違いやすい漢字55例―

第2章 外来語指導
 第1節 日本語学習者向けの外来語指導の注意点
 第2節 日本語の「外来語」と「和語・漢語」の意味の違い―中国人学習者が理解しにくい46例―
 第3節 外来語はどういう場合によく使われるのか

(2003年3月31日発行 凡人社刊 A5判横組み 217ページ 2,300円 ISBN 4-89358-537-1

国語語彙史研究会編 『国語語彙史の研究 22』

 国語語彙史研究会の論文集である。今回は特集「語彙資料の再検討」に関する論文と,一般の論文から構成されている。特集論文は,「意味変化研究と語彙資料―漢字文字列を視点として―」(小野正弘),「語彙層別化資料としての今昔物語集―二字漢語サ変動詞を例として―」(田中牧郎)など,計9編を収める。小野論文は,意味変化研究の前提として語形・音形・表記形の整理をし,各時代語との資料を意味変化として扱う際にどんな問題があるかを考察したもので,田中論文は『今昔物語集』の二字漢語サ変動詞を取りあげ,それらが日本語語彙への浸透する様相を見ていったものである。一般論文は,「条件表現史研究が抱える問題」(矢島正浩),「古代語形容詞の語構造分析についての一考察」(村田菜穂子)など計6編を収める。矢島論文は,松下大三郎・阪倉篤義・小林賢次の条件表現を比較・検討し,用語・定義等の違いがどこに存するかを探ったもので,村田論文は,上代作品・八代集・中古散文の形容詞を分析したものである。

論文のリストを挙げると,以下のようになっている。

●「特集 語彙資料の再検討」の論文
意味変化研究と語彙資料―漢字文字列を視点として―(小野正弘)
語彙層別化資料としての今昔物語集―二字漢語サ変動詞を例として―(田中牧郎)
院政・鎌倉時代加点の表白文における施注漢語の性格(山本真吾)
明恵談義資料の語彙―鎌倉時代の和語と漢語―(山内洋一郎)
花山院本伊呂波字類抄の価値(高橋久子)
御巫本日本書紀私記の複数訓の性格(山口真輝)
近世中期節用集の意義分類をめぐって(米谷隆史)
『大成無双節用集』の成立(佐藤貴裕)
「言海採収語…類別表」再読(岡島昭浩)

●特集以外の論文
条件表現史研究が抱える問題(矢島正浩)
古代語形容詞の語構造分析についての一考察(村田菜穂子)
森鴎外「舞姫」に見える「食店」考―鴎外の漢語―(浅野敏彦)
語幹を共通にする形容詞と形容動詞(蜂矢真郷)
諸論考の取上げた抄物の語詞(1991年〜2001年)(柳田征司)
京阪方言にみられる動詞打消形式の差異と成立事情(岸江信介)

(2003年3月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 292ページ 9,000円 ISBN 4-7576-0211-1

望月通子著 『日本語教育学の新視座―日本語教育・国語教育・英語教育のインターフェイス―』

 日本語教育学について,いろいろな角度から論じたものである,全体は4部に分かれる。「第1部 言語政策・日本語教育史」には,「序章 日本語教育学事始め」,「第1章 外国人受け入れ政策と第2言語教育」,「第2章 教育制度の中の言語教育」を収める。序章は,キリシタンの日本語教育・学習を描いたもので,第2章は日本語教育,国語教育・英語教育の連携とその課題について書いたものである。「第2部 ことばの習得」には「第3章 第1言語習得と第2言語習得」,「第4 誤用分析と中間言語」を収める。「第3部 学習者論と学習法」には,「第5章 学習者論」,「第6章 コミュニカティブ・アプローチの再考」を収める。第5章は学習者要因や動機付けについて,第6章はその教授法の特徴について述べる。「第4部 教材論」には,「第7章 リスニング教材の開発」,「第8章 日本語クリニック,個別学習計画の必要性」を収める。

各章をまとめて表示すると以下のようになる。

第1部 言語政策・日本語教育史
 序章 日本語教育学事始め
 第1章 外国人受け入れ政策と第2言語教育
 第2章 教育制度の中の言語教育
第2部 ことばの習得
 第3章 第1言語習得と第2言語習得
 第4 誤用分析と中間言語
第3部 学習者論と学習法
 第5章 学習者論
 第6章 コミュニカティブ・アプローチの再考
第4部 教材論
 第7章 リスニング教材の開発
 第8章 日本語クリニック,個別学習計画の必要性

(2003年3月31日発行 関西大学出版部刊 A5判横組み 189ページ 2,800円 ISBN 4-87354-374-6

田島毓堂・丹羽一弥編 『日本語論究7 語彙と文法と』

 名古屋ことばのつどいを中心とした論文集である。「新世紀の言語学をリードする比較語彙論」(田島毓堂)以下,各々のテーマに比較語彙論・意味分野別構造分析法を使用したものや,各言語の比較を行ったものが半数以上を占める。いくつか例を挙げると「日韓比較語彙研究における意味の問題について」(宋永彬),「語彙史研究の一方法を提案する」(広瀬英史),「比較語彙研究のための多言語シソーラスの構築研究」(韓有錫),「日本語と韓国語の反復形オノマトペ」(李殷娥),「日本語の漫画と文学作品のオノマトペのインドネシア語訳実態」(ディア シャフィトリ ハンダヤニ)などである。ほかに,文法的な内容では,「統辞論からみた日本語の丁寧表現」(丹羽一弥),「空間における文法格「を」の意味分析」(菅井三実),「奈良時代期におけるニアリからナリへの形態変化と意味変化」(釘貫亨)などがある。

論文等一覧は以下のとおりである。

新世紀の言語学をリードする比較語彙論(田島毓堂)
比較語彙論〈参考文献抄〉(田島毓堂)
日韓比較語彙研究における意味の問題について(宋永彬)
語彙史研究の一方法を提案する(広瀬英史)
比較語彙研究のための多言語シソーラスの構築研究(韓有錫)
同一内容の言語資料の語彙を対象とした意味分野別構造分析の方法について(申玟澈)
使用頻度“1”の語の分析―意味分野別構造分析法を用いて―(李庸伯)
日韓小説語彙の比較研究―意味分野別構造分析法による考察を中心に―(金直洙)
天声人語にみる戦後日本語の語彙の変化(宋正植)
日本語と韓国語の反復形オノマトペ(李殷娥)
日本語の漫画と文学作品のオノマトペのインドネシア語訳実態(ディア シャフィトリ ハンダヤニ Diah Syafitri Handayani)
日本語とベトナム語におけるオノマトペ―その音韻要素と表現力―(グェン アイン フォン Nguyen Anh Phong)
連用形名詞(金美淑)
雑誌『日本文摘』からみた台湾の中国語における新外来語―日系外来語を中心に―(鍾季儒)
日中同形語研究の応用の可能性―日中の対訳辞典と翻訳小説を例にして―(林玉惠)
近代日本語の成立が近代中国語の成立に与えた影響―化学用語を中心に―(蘇小楠)
日韓比較語彙研究―語幹の結合形式からみた「体言型」と「用言型」―(朴大王)
明治期「読売新聞」にみられる意味を示すふりがな(鈴木希依子)
統辞論からみた日本語の丁寧表現(丹羽一弥)
空間における文法格「を」の意味分析(菅井三実)
正宗文庫本『節用集』にみえる《オ段長音の開合》標示の偏向―字音語・サ行拗音について,大谷大学本との対照から―(樋野幸男)
藤原為房妻書状にみる実用文の書記システムと仮名文モデル(加藤良徳)
高校入試(国語)での日本語の聞き取り試験―音声言語教育との関わりと実施結果の分析―(寺井一)
古代和歌における呼びかけ表現の変化―希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって―(新沢典子)
江戸時代における中国白話小説の翻訳と過去・完了の助動詞―「通俗物」の系譜―(斎藤文俊)
奈良時代期におけるニアリからナリへの形態変化と意味変化(釘貫亨)

(2003年3月31日発行 和泉書院刊 A5判横組み 615ページ 12,500円 ISBN 4-7576-0210-3

山梨正明他編 『認知言語学論考―No.2 2002―』

 6編を収める論文集である。「明示的提喩・換喩形式をめぐって」(森雄一)は,「AはBの代名詞」,「AはBの顔」,「AはBのシンボル」という形式の用法や,比喩諸形式の中での位置づけについて考える。「メタファーと意味の構造性―プライマリー・メタファーおよびイメージ・スキーマとの関連から―」(鍋島弘治朗)は,メタファーに関する先行研究を検討し,認知言語学理論への新たな提案を行う。「存在構文に基づく日本語諸構文のネットワーク―日本語文法論への存在論的アプローチ―」(岡智之)は,山田孝雄,川端善明,尾上圭介の論を参照しつつ存在構文を中心に諸構文のつながりを示す。「生態学的知覚論,心の理論,属性描写文の認知意味論」(坂本真樹)は中間構文とTough構文を,ギブソンのアフォーダンスの論や,心の理論などの面から見ていく。「共同注意の統語論」(本多啓)は,共同注意(=三項関係,第二次間主観性)が文法構造の成立に果たす役割を検討。一語文,連体修飾構造,現象描写文,左方転位,無助詞格成分などを扱う。「ジョイントアテンション/予測と言語―志向性をそろえるメカニズム―」(宇野良子・池上高志)は相互作用における志向性の一致のしくみを扱う。

論文等一覧は以下のとおりである。

明示的提喩・換喩形式をめぐって(森雄一)
メタファーと意味の構造性―プライマリー・メタファーおよびイメージ・スキーマとの関連から―(鍋島弘治朗)
存在構文に基づく日本語諸構文のネットワーク―日本語文法論への存在論的アプローチ―(岡智之)
生態学的知覚論,心の理論,属性描写文の認知意味論(坂本真樹)
共同注意の統語論(本多啓)
ジョイントアテンション/予測と言語―志向性をそろえるメカニズム―(宇野良子・池上高志)

(2003年3月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 274ページ 3,800円 ISBN 4-89476-184-X

浜田敦・井手至・塚原鉄雄編著 『国語副詞の史的研究―増補版―』

 論文集である。各論文は,ある語を取りあげ,その語の歴史を追うという内容になっている。1991年に出た旧版との違いは,吉井健の論文が追加されているという点である。内容は,「「やうやう」から「やっと」へ―語の意味の変化の一例として―」,「あながち・に」(以上:浜田敦),「「なかなかに」から「なかなか」へ」,「「なかなか」の史的展開」,「部分否定と全面否定―土左日記の「かならずしも」を契機として―」,「土左日記の「必ずしも」」(以上:塚原鉄雄),「「せめて」について」,「「もっとも」の語史」(以上:井手至),「しひて」(大槻美智子),「とても」の語史(吉井健)となっている。なお,旧版については,『国語学』168集の新刊紹介に記載がある。

目次は以下のようになっている。

「やうやう」から「やっと」へ―語の意味の変化の一例として―(浜田敦)
「なかなかに」から「なかなか」へ(塚原鉄雄)
「せめて」について(井手至)
「あながち・に」(浜田敦)
「なかなか」の史的展開(塚原鉄雄)
部分否定と全面否定―土左日記の「かならずしも」を契機として―(塚原鉄雄)
土左日記の「必ずしも」(塚原鉄雄)
「しひて」(大槻美智子)
「もっとも」の語史(井手至)
「とても」の語史(吉井健)

(2003年4月16日発行 新典社刊 A5判縦組み 348ページ 9,000円 ISBN 4-7879-4148-8

東辻保和・岡野幸夫・土居裕美子・橋村勝明編 『平安時代複合動詞索引』

 平安時代の文献において使われている複合動詞を,公刊された索引に基づいて集め,索引の形に編んだものである。これにより,複合動詞構成要素から,どのような複合動詞の一部であるか,どの索引に出てくるかを一覧することができるようになった。依拠した索引によって,複合動詞認定基準に違いがあるため,それをどのように処理したかについては,凡例に注記がある。なお,巻末に別表として,「ジャンル別複合動詞語数一覧」(物語・日記等のジャンルに分けて,更に文献作品ごとの複合動詞数を示す),「前項率・後項率一覧」(前項あるいは後項になる率が高い要素,上位50語を挙げ,その数と率を示す),「見出し語一覧」(見出し語ごとに前項後項のどちらでどのくらい使われているかを表にしたもの),「構成複合動詞数一覧」(要素をもとに複合動詞の数の多いもの順に50位までを示したもの)がある。

(2003年4月30日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 464ページ 13,000円 ISBN 4-7924-1375-3

町田健編,猪塚元・猪塚恵美子著 『シリーズ・日本語のしくみを探る2 日本語音声学のしくみ』

 興味深い現象やテーマに関する話題をQ&A形式を取り入れながら展開する音声学入門書である。読んだり,自分で考えたり,発音したりするうちに,基本的な知識や考え方が身につくように工夫されている。「第1章 五十音図と仮名文字」では,音を考える以前に,音の単位と一般にはとらえられがちな仮名と,それを整理した五十音図がどういうものかを確認する。「第2章 音声現象を理解する」では,「なぜ拗音は「シャ」のように二つの文字で表記するのですか?」などの質問をきっかけに,子音や母音,調音点,調音法などの話を展開する。「第3章 比較して考える」では,類似音の各言語別の切り分け方の違いや,近接音の関係,促音や長音などについて,「第4章 発音の変化と変遷」では,シラビーム方言とモーラ方言,無声化,唇音退化,外来語の音規則などについて述べる。「第5章 日本語のアクセント」では,アクセントのほか,イントネーションなどに触れる。

(2003年5月10日発行 研究社刊 A5判縦組み 193ページ 2,000円 ISBN 4-327-38302-3

ジェフリー=K=プラム・ウイリアム=K=ラデュサー(Geoffrey K.Pullum and William A.Ladusaw)著 『世界音声記号辞典』

 現代あるいは過去の著書・論文などで見かけるような音声記号について,その一般的知識を教えてくれるハンドブックである。内容は,音声記号とその名称を挙げ,それについて,IPAの用法,アメリカの用法,その他の用法,解説,由来,を記す形式となっている。(各記号にすべての項目があるわけではない。)また,音声記号のほか,補助記号についても項目が立てられている。取りあげられている記号はIPAを初めとして,各言語研究者にある程度一般的に使われる記号を網羅している。見慣れない記号が出てきたときに調べる,あるいは研究者によって違う使い方をしている記号なので混乱した,というような場合に参考なる。簡単な用語解説と,子音や母音についての各流派の記号表が巻末に付いている。なお,原題は,PHONETIC SYMBOL GUIDE (Second Edition) で,訳者は土田滋・福井玲・中川裕である。

(2003年5月12日発行 三省堂刊 A5判横組み 347ページ 2,100円 ISBN 4-385-10756-4

北原保雄監修 『岩波日本語使い方考え方辞典』

 項目別に解説を施した事典である。単語別に使い方等を記した辞書ではない。日本語の使い手が疑問に思うようなこと(表記・外来語・誤用か否かなど)についての背景知識を提供するという目的のもと,それにふさわしい項目を選び,それについて記述している。一例として,ヤ行に配された項目を挙げると,「湯桶読み,良い(「よい」と「いい」),拗音,横書き,横書きの句読点」であり,ラ行に配された項目は,「ら抜き言葉,略字,類義語,類語辞典,歴史的仮名遣い,連声,連体形,連濁,連用形,ローマ字つづり」となっている。記述量は各項目によって違うが,平均して2ページ程度となっている。なお,執筆者は,伊坂淳一・氏原基余司・大倉浩・小川栄一・島田康行・白川博之・須賀一好である。

(2003年5月15日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 520ページ 3,000円 ISBN 4-00-080206-2

出雲朝子著 『中世後期語論考』

 中世後期語について,例を挙げながら検討したものである,全体は4部に分かれる。「第1部 『玉塵抄』についての研究」には「第1章 東大国語研究室蔵本の研究」,「第2章 叡山文庫蔵本におけるオ段長音の開合の混乱について」,「第3章 類義語・二重語の使い分けと表記」,「第4章 原典の漢文の訓読について―『毛詩』の場合―」,「第5章 会話文の考察」の各章を配する。第3章では「ウチ―ナカ」,「ウエ―カミ」,「オト―コエ―ネ」の使い分けの様相などを扱い,第5章では原典の会話相当句を口語訳した部分と,抄者の作成の会話部分を分けてそれぞれ特徴を対照する。「第2部 キリシタン用語についての研究」では,「免許」,「実」,「実もなし」,「城裡」を扱い,その用例・意味・成立について述べる。「第3部 絵巻の画中詞についての研究」では,「第10章 中世末期における東国方言の位相―『鼠の草子絵巻』の画中詞をめぐって―」,「第11章 『鼠の草子絵巻』諸本の画中詞における人称詞と敬語―性差の観点を中心に―」を収める。「第4部 通時的研究」には「第12章 ハ・バ・パ行音を頭音とする擬態語・擬音語の変遷」について述べる。

目次は,以下のようになっている。

第1部 『玉塵抄』についての研究
 第1章 東大国語研究室蔵本の研究
 第2章 叡山文庫蔵本におけるオ段長音の開合の混乱について
 第3章 類義語・二重語の使い分けと表記
 第4章 原典の漢文の訓読について―『毛詩』の場合―
 第5章 会話文の考察

第2部 キリシタン用語についての研究
 第6章 「免許」について
 第7章 「実」について
 第8章 「実もなし」について
 第9章 「城裡」について

第3部 絵巻の画中詞についての研究
 第10章 中世末期における東国方言の位相―『鼠の草子絵巻』の画中詞をめぐって―
 第11章 『鼠の草子絵巻』諸本の画中詞における人称詞と敬語―性差の観点を中心に―

第4部 通時的研究
 第12章 ハ・バ・パ行音を頭音とする擬態語・擬音語の変遷

(2003年5月20日発行 翰林書房刊 A5判縦組み 530ページ 12,000円 ISBN 4-87737-174-5

山田俊雄著 『日本のことばと古辞書』

 雑誌・月報に発表,あるいは口演などをもとにした文章を,一書にまとめたものである。扱われている対象は様々であるが,漢字・漢語の研究に関する問題点を指摘し,それらに対して研究者が注意すべき点に触れている。「闇」の訓について文献からどのようなことが言えるかを扱った「「闇から牛」―漢字とその訓についての話―」,『庭訓往来』を「ていきん(の)」の「の」を入れて読むかどうかを扱った「書名の読み方」,『竹取物語』の「なたね」,『今昔物語集』の「草馬」を扱った「日本のことばと古辞書」,いくつかの字や語を例として挙げつつ漢和や国語辞典について述べた「漢和といふこと―「聖」の字などについて」,「漢和辞典と国語辞典とのあはひ」,「国語辞典を読む―和漢洋にわたる語について」,漢文訓読について述べた「漢文訓読の入門」などを収める。

目次(内容)は以下のようになっている。

「闇から牛」―漢字とその訓についての話―
酉年のちなみに
明治初期の闕画
随想(退職に際しての口演)
(衣+上)(衣+下)」の話
ある擬製漢字についての所感―「裃」と「(衣+上)(衣+下)」と―
書名の読み方
梅の道地
日本のことばと古辞書
漢和といふこと―「聖」の字などについて
漢和辞典と国語辞典とのあはひ
国語辞典を読む―和漢洋にわたる語について
『兵員要語帖』といふ資料
明治五年の「学制」の「仰せ出され書」の本文について
漢文訓読の入門(その一〜七)

(2003年5月20日発行 三省堂刊 B6判縦組み 222ページ 2,100円 ISBN 4-385-36127-4

北原保雄監修 上野善道編 『朝倉日本語講座3 音声・音韻』

 音声・音韻に関する基本的な内容と研究の流れを扱ったものである。歴史的なものから現代語研究に至るまで,幅が広い。第1章は現代日本語の音声の記述。第2章は「濁音・母音連続・ア長音の機能」の面から音韻について考える。第3章は音便の発生と定着を中心に扱う。第4章はアクセントをどう捉えるべきかを考える。第5章は京阪アクセントの通史を扱う。第6章は広義イントネーションについて論じる。第7章は上代と現代の濁音機能の違いに触れ,機能負担量に対する疑問を呈する。第8章では「多様性」にを問題にする際の注意を述べ,北海道方言のガ行鼻音などについて見ていく。第9章は音声生理学概論,第10章は音声物理学概論。第11章は1950年以降の海外の音韻理論(最適性理論,韻律音韻論,自律分節音韻論,プロソディ音韻論,極小主義アプローチ)について述べる。第12章〜第15章は音韻・アクセントに関する研究動向と展望。

各章の題目,執筆者は以下のようになっている。

第1章 現代日本語の音声―分節音と音声記号(斉藤純男)
第2章 現代日本語の音韻とその機能(高山知明)
第3章 音韻史(柳田征司)
第4章 アクセントの体系と仕組み(上野善道)
第5章 アクセントの変遷(中井幸比古)
第6章 イントネーション(郡史郎)
第7章 音韻を計る(豊島正之)
第8章 音声現象の多様性(相沢正夫)
第9章 音声の生理(新美成二)
第10章 音声の物理(佐藤大和)
第11章 海外の音韻理論(高橋幸雄)
第12章 音韻研究の動向と展望1(文献中心)(高山倫明)
第13章 音韻研究の動向と展望2(現代語中心)(久保智之)
第14章 アクセント研究の動向と展望1(文献中心)(上野和昭)
第15章 アクセント研究の動向と展望2(現代語中心)(松森晶子)

(2003年6月1日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 287ページ 4,600円 ISBN 4-254-51513-8

国立国語研究所編 『国立国語研究所報告120 学校の中の敬語2 ―面接調査編―』

 『国立国語研究所報告118 学校の中の敬語1 ―アンケート調査編―』に続き,中・高の学生の敬語使用とその意識を面接調査により調査したものである。アンケート調査は量の確保などの面で長所はあるが,実際の使用場面を調べたわけではないという短所がある。そこで,より実際場面に近いデータを見るために面接調査という形をとり,その欠を補っている。調査年は1989-1991で,1年ずつ東京・大阪・山形で実施している。1グループ6人で,全57グループが対象である。1グループ6人をいろいろに組み合わせて,ある内容に沿った会話をしてもらい,それを観察するという方法である。調査項目は「1 相手による表現の違いを見る設問」,「2 場面(および相手)による表現の違いを見る設問」,「3 話題の人物(および相手)による表現の違いを見る設問」,「4 自分の家族を話題の人物としたとき,その表現の違いを見る設問」が主な内容である。結果として,目上と話すとき丁寧語の使用は多いが,尊敬・謙譲はそれほど多くないとか,先生に対し自分の母を「ハハ」と呼ぶのは4割前後であるとか,対称詞,応答詞,接続助詞(カラ・ノデ)における使い分けなど,いろいろな指摘がなされている。

(2003年6月20日発行 三省堂刊 B5判横組み 249ページ 11,000円 ISBN 4-385-36089-8