日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (55巻3号(218号)掲載分)

新刊紹介 (55巻3号(218号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

近代語学会編 『近代語研究11 ―松村明教授追悼論文集―』

 近代語学会による論文集の第11集である。巻頭に松村明教授年譜や執筆目録を収載する。論文は計31編にのぼる。以下に題名の一部(鍵語)と筆者名を挙げる。抄物「サテ」=坂詰力治,イソガシ・セハシ・アワタタシ=小林賢次,撥音・天草本伊曽保=柳田征司,国字本伊曽保・心話文=阿部八郎,『大かうさまぐんき』=小林千草,近世節用集・価格=佐藤貴裕,夢酔独言・合拗音=神戸和昭,江戸語・男性係助詞ハ=小松寿雄,馬琴・口語語彙=鈴木丹士郎,可能・訓読形式=斎藤文俊,「塵一つ落ちていない」=中野伸彦,「ゐる」「ゐず」=鈴木博,ローマ字=杉本つとむ,『訳和蘭文語』=古田東朔,「死ぬ」「死す」=鈴木英夫,明治・漢訳語=松井利彦,てよだわ言葉=土屋信一,矢野文雄・文章観=進藤咲子,アイヌ語地名・漢字=鏡味明克,京都町屋・性向語彙=寺島浩子,「伊吹島」アクセント=山口幸洋,「ている・てある」受身文=森田良行,否定条件句=田中章夫,談話・人称制限=南不二男,存在表現=金水敏,テレビドラマ名=杉本妙子,井伏鱒二・うやむや表現=中村明,語感=宇野義方,現代日本語・漢字=森岡健二,人間一心覗替操総索引=山口豊,『日国』2・初出文献・改訂=宮島達夫。

なお,収録された論文は以下のとおりである。

(2002年12月15日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 644ページ 18,000円+税 ISBN 4-8386-0205-7

申鉉竣著 『近代日本語における可能表現の動向に関する研究』

 17世紀初頭から現代にいたる可能表現の様相,推移を扱ったものである。第1章「はじめに」に続き,第2章「可能表現の意味分類」では,能力可能と状況可能を中心として,可能の意味による用例分類を行う。第3章「可能表現に用いられる動詞とその性格」では,可能を表す動詞が意志的なものであることを確認し,第4章「可能表現における否定(不可能)主導」では,可能表現が否定形に多く現れることを扱っている。第5章「人称と可能表現」では,可能表現が動作主非明示の1人称である場合に多く使われることを明らかにしている。第6章「「〜コトガデキル」による可能表現」では,「〜コトガナル」との競合・消長について述べる。第7章「可能動詞による可能表現」,第8章「可能の助動詞「レル」/「ラレル」による可能表現」でそれぞれの可能表現を,第9章「可能不可能を意味する周辺の表現」で「〜ニクイ」「〜ヅライ」など広義の可能表現を扱う。第10章「むすび」はまとめである。なお,本書は学位論文に加筆・訂正を加えたものである。

章立ては以下のようになっている。

第1章 はじめに
第2章 可能表現の意味分類
第3章 可能表現に用いられる動詞とその性格
第4章 可能表現における否定(不可能)主導
第5章 人称と可能表現
第6章 「〜コトガデキル」による可能表現
第7章 可能動詞による可能表現
第8章 可能の助動詞「レル」/「ラレル」による可能表現
第9章 可能不可能を意味する周辺の表現
第10章 むすび

(2003年2月17日発行 絢文社刊 A5判縦組み 365ページ 3,810円+税 ISBN 4-915416-08-9

小林千草著 『清原宣賢講「日本書紀抄」本文と研究』

 清原宣賢講「日本書紀抄」の諸本の中で代表的なものである,『神代上下抄』(京都建仁寺両足院蔵)の本文を翻刻し,校注を加えたものである。(=本文・校注編)。また,清原宣賢が著述あるいは講述した「日本書紀抄」にどのようなものがあるかについての全体像を示し,その中で今回翻刻した『神代上下抄』がどのような位置を占めるかについて述べる。そして,諸本成立,本文の性格,注の性格,講義での利用などについて,文献学的に解説する。(=解説・研究篇)。なお,底本に関しては『両足院蔵日本書紀抄』(伊藤東慎・大塚光信・安田章編 臨川書店 1986年)という形で影印が出されている。

章立ては概略,以下のようになっている。

本文・校注篇
解説・研究篇
清原宣賢系「日本書紀抄」総説と両足院蔵『神代上下抄』(本抄)の位置

(2003年3月30日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 346ページ 10,000円+税 ISBN 4-585-03098-0

文化庁文化部国語課編 『日本人の国語力―世論調査報告書 平成14年度 国語に関する世論調査―』

 日本人の国語意識についてアンケート調査をした結果をまとめたものである。元の調査は,平成14年11月に全国16歳以上の男女個人3000人(層化2段無作為抽出法による)に対して面接聴取法により行われた(有効回答数2200人)。調査項目は,言葉の乱れに関わる国民の意識,日本人の国語力についての課題や読書の現状に関する国民の意識,慣用句の認知・理解・使用の実態,外来語の定着度などであり,継続項目となっているものに関しては,これまでの調査との比較もしている。日本人の国語力における課題については,「考えをまとめ文章を構成する能力」が選択肢の中で1位になっている。また1か月の読書量については,「全く読まない」が37.6%,「1〜10冊」が58.1%,というようなことが明らかにされている。

章立ては以下のようになっている。

1 調査の概要
2 調査結果の概要
3 調査票
4 標本抽出方法
5 集計表

(2003年6月30日発行 国立印刷局刊 A4判横組み 97ページ 1,000円+税 ISBN 4-17-196057-6

吉川武時編 小林幸江・柏崎雅世(執筆)代表 『形式名詞がこれでわかる』

 「もの,こと,よう,ところ,わけ,はず,つもり」(形式名詞)を含む表現を取りあげ,その意味,用法などについて詳しく記述したものである。これらの形式は文法や日本語教育上の問題であるが,助詞・助動詞など伝統的な研究で論じられてきた形式とは違って,論の積み重ねが十分ではない。ここでは形式を軸として整理し,談話機能に注意しつつ,用法,例文,解説を述べる。さらに,まとめ,理解確認問題,練習問題を付し,教育の用途に便宜を図っている。「もの」についての一例を挙げると,「ものだ」という形式を「Vるものだ,Vたいものだ,Vたものだ,Vるものではない,Vたものではない」などの諸形式に分け,記述している。また,「ものの」という形式の用法についても扱っている。なお,本書は東京外国語大学留学生日本語教育センターの教員が姫野昌子・吉川武時両氏の退官を機に編んだものである。

章立ては以下のようになっている。

もの
 1.ものだ
 2.ものの
こと
 1.ことだ
 2.ことがある
 3.ことにする
 4.ことになる
よう
 1.ようにする
 2.ようになる
ところ
 1.ところだ
 2.V1ところ+助詞+V2
 3.Vところ(+助詞)など
わけ
 1.わけだ
 2.「わけ」とともに用いられるその他の複合述語
はず
 1.はずだ
 2.「はず」を含むその他の形
つもり
 1.つもりだ
 2.「つもり」を含むその他の形

(2003年8月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 215ページ 2,800円+税 ISBN 4-89476-191-2

築島裕・坂詰力治・後藤剛編 『最明寺本往生要集 索引篇』

 『最明寺本往生要集 影印篇』(1988年),『同 訳文篇』(1992年)に続く,索引篇である。最明寺本は,往生要集の完本としては現存最古(平安時代後期写)であり,さらに訓点も平安時代後期の朱点,院政時代の墨点が施されているなどの特徴がある。本索引は訳文篇での訳文に基づき,和訓,漢字音について,50音順索引と,訓点を付けられた漢字の索引を作成して公刊したものである。部立ては,「和訓索引」と「漢字音索引」に分かれており,それぞれに,漢字部首引検字表,索引本文があるような構成になっている。巻末には,訳文篇についての正誤表を載せる。

(2003年9月3日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 723ページ 20,000円+税 ISBN 4-7629-3284-1

西山佑司著 『日本語名詞句の意味論と語用論―指示的名詞句と非指示的名詞句―』

 名詞句の意味解釈の問題を,意味論・語用論の区別を前提にしたうえで,その両方の観点から検討したものである。名詞句に関する「変項名詞句」,「指示的名詞句」,「非指示的名詞句」,「飽和名詞」,「非飽和名詞」などの概念が,「〜は〜だ」,「〜が〜だ」,「〜は〜が〜だ」などの構文の分析に重要な役割を果たすことが主張されている(同時に従来の分析に対する批判,たとえば,各構文に対する諸説への批判,「主題」に関する諸説への批判などを展開している)。そして,単純な形の背後に複雑で深い構造があることを論じていく。このような議論を通して,英語の疑似分裂文,日本語の「は」と「が」の問題,変項名詞句の問題,コピュラ文の曖昧性の問題が深いところで互いに結びついていることを示している。

章立ては以下のようになっている。

第1章 名詞句の意味と解釈
第2章 指示的名詞句と非指示的名詞句
第3章 コピュラ文の意味と名詞句の解釈
第4章 「象は鼻が長い」構文の意味解釈
第5章 「鼻は象が長い」と「魚は鯛がいい」構文の意味解釈
第6章 カキ料理構文と非飽和名詞
第7章 ウナギ文と措定文
第8章 倒置指定文と有題文
第9章 名詞句の解釈と存在文の意味

(2003年9月12日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 442ページ 4,700円+税 ISBN 4-89476-180-7

佐佐木隆著 『上代語構文論』

 前著『上代語の構文と表記』(ひつじ書房 1996年),『万葉集と上代語』(ひつじ書房 1999年),『上代語の表現と構文』(笠間書院 2000),『万葉集構文論』(勉誠出版 2001年)に続き,その後に疑問に思ったこと,自説に対する異論をめぐって考えたこと,新たに明らかにしたことなどをまとめたものである。全体は7部に分かれる。第1部「歌の構文」では,第1章「〈豊旗雲尓伊理比沙之…〉―「見し」説は成り立つか―」ほか,全7章を収める。第2部「歌句の承接関係」では,第1章「「秋山の黄葉を茂み迷ひぬる…」―順次的承接―」ほか,計4章を収める。第3部「古代歌謡の表現」には計3章,第4部「長歌の表現」には計2章,第5部「已然形の用法」には付章を含め計5章,第6部「語の意味」には計3章,第7部「歌の表記」には付章を含め計3章を収める。

章立ては以下のようになっている。

第1部 歌の構文
第2部 歌句の承接関係
第3部 古代歌謡の表現
第4部 長歌の表現
第5部 已然形の用法
第6部 語の意味
第7部 歌の表記

(2003年9月24日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 428ページ 13,000円+税 ISBN 4-8386-0209-X

杉崎夏夫著 『後期江戸語の待遇表現』

 後期江戸語資料として『浮世風呂』,『浮世床』,『春色梅児誉美』,『春色辰巳園』を選び,それらに出てくる対称詞の特徴を分析したものである。分析の主眼は,それらの対称詞がどのような待遇意識のもとで用いられていたかを考察することにある。章立ては,第1部として「滑稽本編」を設け,そこに『浮世風呂』研究,『浮世床』研究を配する。第2部として「人情本編」を設け,そこに『春色梅児誉美』研究,『春色辰巳園』研究を配する。そしてそれぞれの作品に多く見られる語を作品別に取り扱っている。たとえば,「『浮世床』研究」では「おまへ」,「おめへ」,「おめへがた」,「おめへたち」,「おまへさん」,「てめへ」,「おめへさん」,「うぬ」,「ぬし」,「われ」が扱われている。

章立ては以下のようになっている。

第1部「滑稽本編」
 1『浮世風呂』研究
 2『浮世床』研究
第2部「人情本編」
 1『春色梅児誉美』研究
 2『春色辰巳園』研究

(2003年9月25日発行 おうふう刊 A5判縦組み 260ページ 12,000円+税 ISBN 4-273-03274-0

宮城信勇著 『石垣方言辞典 本文編/文法・索引編』

 八重山方言の中で使用話者が多い石垣方言について,著者の母(1891-1990)が使用していた,あるいは知っていた語彙を主として編集された辞典である。収録語数は17600,見出し(片仮名表記),音声IPA表記,品詞名,活用の種類,意味記述,用例,参考資料について,適宜,記述している。本文編の巻頭には,「凡例」,「石垣方言の音韻の特徴」を置き,次に方言の50音順に辞書記述が始まる。文法・索引編については,文法編(3〜122ページ)で,品詞ごとの概説を述べる。たとえば,名詞の場合には,普通名詞,転成名詞,親族名称(呼称)のような記述があり,数詞の場合には,何をどのような単位で数えるかについて述べ,動詞の場合には,未然形,志向形,否定形などの形式ごとにその用法を述べる。活用語に関しては,活用表を載せる。索引編は共通語から石垣方言が検索できるようにしたものである。なお,著者によるカード読み上げ,加治工真市(監修者)による録音および音声記述というような作業過程があり,読み上げの際の音声は保存されているという。

(2003年9月30日発行 沖縄タイムス社刊 B5判横組み 本文編1231ページ/文法・索引編344ページ 23,000円+税 ISBN 4-87127-163-3

 

山口堯二著 『助動詞史を探る』

 広義の推量の助動詞を中心とした,助動詞についての通史的な論考である。第1章「「まし」の意味領域」では,出発点として,古代語についての共時論を展開する。第2章「推量体系の史的変容」は推量表現に関する通史的な展望を行う。第3章「助動詞の伝聞表示に関する通史的考察」では「終止形+なり」の形式を,第4章「「べし」の通時的変化」では「べし」の形式を,形態や意義の分布推移から分析する。第5章は「べし」の後身,第6章は,『天草版平家物語』の「まじい」と「まい」を扱い,第7章は「まい」,第8章は「やうなり>やうだ」の通時的変化,第9章は「はずだ」の成立を扱う。第10章「勧誘表現の通時的変化」では,相手本位の勧誘表現が「む→ん→べし→したがよい→したらいかが」のように変遷する様子を見ていく。第11章「完了辞・過去辞の通時的統合―「たり>た」への収斂―」では「ぬ・つ・てけり・たり・た」などの形式を扱い,第12章「完了辞の統合にかかわる補助動詞の関与」では「てある・てゐる」や「はつ・すます・てしまふ・てのける」などの形式を扱う。第13章「「である」の形成」では「にてあり→である→だ」の形成過程を,従来のような外形重視の方法によらず,意味・働きを中心に考える。

章立ては以下のようになっている。

第1章 「まし」の意味領域 
第2章 推量体系の史的変容 
第3章 助動詞の伝聞表示に関する通史的考察 
第4章 「べし」の通時的変化 
第5章 中世末期口語における「べし」の後身―『天草版平家物語』の訳語による― 
第6章 『天草版平家物語』の「まじい」と「まい」―原文との対照から見た打消推量の助動詞統合の歩み― 
第7章 「まい」の通時的変化 
第8章 「やうなり>やうだ」の通時的変化 
第9章 「はずだ」の成立 
第10章 勧誘表現の通時的変化 
第11章 完了辞・過去辞の通時的統合―「たり>た」への収斂― 
第12章 完了辞の統合にかかわる補助動詞の関与 
第13章 「である」の形成 

(2003年9月30日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 305ページ 9,000円+税 ISBN 4-7576-0230-8

半藤英明著
『係結びと係助詞―「こそ」構文の歴史と用法―』
『係助詞と係結びの本質』

 係助詞の存在様式のひとつのありようとして係結びを捉えようというのが著者の立場である。その本質理解の手がかりとして,過去に係結びに関わり,かつ現存している「こそ」の諸特性を論じようとするのが,『係結びと係助詞―「こそ」構文の歴史と用法―』である。ここでは,「こそ」をいろいろな角度から見ていき,「取り立て」という基本的性質を持つこと,そこから強調や感動用法のような用法の広がりが生まれたことなどが論じられる。

 一方,より一般的に広く係助詞や係結びについて論じたのが,『係助詞と係結びの本質』である。従来の研究が,係助詞あるいは係結びに重点を置いたものであり,その接点について未だ十分ではないとしたうえで,それぞれについて論じていく。第1章「係助詞の本質」では,「取り立て」の機能について主に現代語を対象にして述べる。第2章「係結びの本質」では,主に古典語を対象にして論を進めていく。

章立ては以下のようになっている。

『係結びと係助詞―「こそ」構文の歴史と用法―』
第1章 係助詞の捉え方(総論)
第2章 「こそ」の「取り立て」
第3章 「こそ」の強調
第4章 「こそ」構文の感動性
第5章 「こそ」構文の省略形式
第6章 「もこそ」用法の成立
第7章 慣用句の「こそ」
第8章 現代語「こそ」の用法
『係助詞と係結びの本質』
第1部 係助詞の本質
 第1章 係助詞・副助詞のカテゴリーの有効性
 第2章 「取り立て」の規定と「は・も・こそ」の表現性
 第3章 「は」構文の成立条件
 第4章 「二分結合」をめぐる「は・も・こそ」と「が」
 第5章 「取り立て」の図形的モデル
第2部 係結びの本質
 第1章 「は・も・こそ」の歴史と係結び
 第2章 「こそ」構文の変遷と係結び
 第3章 係結びの強調
 第4章 「か・や」構文の意味と意義
 第5章 新たなる係結び論の構築

(2003年9月30日発行 大学教育出版刊 B6判縦組み 149ページ 1,800円+税 ISBN 4-88730-544-3
(2003年9月19日発行 新典社刊 A5判縦組み 197ページ 5,300円+税 ISBN 4-7879-4153-4

本間猛・岡崎正男・田畑敏幸・田中伸一編 『A New Century of Phonology and Phonological Theory―A Festschrift for Professor Shosuke Haraguchi on the Occasion of His Sixtieth Birthday―』

 原口庄輔氏の還暦を記念して編まれた論文集である。巻頭に同氏の業績一覧・履歴を収載する。内容は5部に分かれる。第1部「Formal Analysis」は,プロミネンスを扱った「Japanese Grammar in the General Theory of Prominence(注:副題略)」(Shin-ichi Tanaka)を含む7編の論文,第2部「Vowels and Consonants」は,オノマトペを扱った「Reduplicants and Prefixes in Japanese Onomatopoeia」(Akio Nasu)を含む11編の論文,第3部「Prosody」は,アクセントを扱った「Accent of Alphabetic Acronyms in Tokyo Japanese」(Haruo Kubozono)を含む14編の論文,第4部「Production and Perception」は,認知を扱った「Spoken Word Recognition and Word Play in Japanese」(Takashi Otake)を含む6編の論文,第5部「Syntax and Semantics」は,うなぎ文を扱った「Eel Sentences in Japanese and English」 (Hisao Tokizaki)を含む2編の論文を収録している。

収められた論文は以下のとおりである。

●Part 1 Formal Analysis
No Opacity in OT (Haruka Fukazawa and Mafuyu Kitahara)
Are You Sympathetic to Sympathy Theory? (Ayako Hashimoto)
Weak Layering and Word Binarity (Junko Ito and Armin Mester)
Anything Goes (Alan Prince)
A Reanalysis of Similitude in Phonology (Yukio Takahashi)
Japanese Grammar in the General Theory of Prominence: Its Conceptual Basis, Diachronic Change, and Acquisition (Shin-ichi Tanaka)
Chain Shifts in Intervocalic Stops in Japanese (Noriko Yamane-Tanaka)

●Part 2 Vowels and Consonants
Tonkawa Vowel Alternations as Alignment(Diana Bennett Archangeli)
Verner's Law (Morris Halle)
Revisiting English Vowel Shortening (Yukiko Kazumi)
Evidence for a Rule-based Derivation of Irregular Verb Forms in English (Wayne P. Lawrence)
Nasal Vowels and Liaison in French (Takeshi Nakamoto)
Reduplicants and Prefixes in Japanese Onomatopoeia (Akio Nasu)
Counter-feeding Opacity in the Mitsukaido Dialect of Japanese (Kan Sasaki)
Vowel Devoicing of Ainu --How It Differs and Not Differs from Vowel Devoicing of Japanese-- (Hidetoshi Shiraishi)
Optimality Theory and High Vowel Devoicing in Japanese (Akira Tanaka)
Are Borrowed Morphemes Always Foreign? (Koichi Tateishi)
East Meets West: Rendaku Voicing in Japanese and Linking Segments in Dutch Compounds (Jeroen van de Weijer)

●Part 3 Prosody
The Footing of Dactylic Sequences in American English (Stuart Davis)
English Stress Variants and Branching Constraints (Noriko Hattori)
The CodaMax Approach to the English Stress (Takeru Honma)
Dutch Syllable Structure Meets Government Phonology (Harry van der Hulst)
English Word Stress and Japanese Learners: Acquisition as a Reranking Process (Itsue Kawagoe)
Accent of Alphabetic Acronyms in Tokyo Japanese (Haruo Kubozono)
The Entering Tone and the Zhongyuan Yinyun (Xunning Liu)
The Structure of Eddic Poetry (Masao Okazaki)
Japanese Compound Accentuation: An Analysis without 'Foot' (Koji Ono)
Remarks on Recessive Accent in Ancient Greek (Toshiyuki Tabata)
Why Is Montana Cowboy the Most Unlikely Stress Pattern? (Shoichi Tanaka)
Problems with Optimality Theory Analysis of English Subsidiary Stresses (Eiji Yamada)
Asymmetric Distribution of the Two High Vowels (Yuko Z. Yoshida)
Suffixes and Stress/Accent Assignment in English and Japanese: A Survey (Hideki Zamma)

●Part 4 Production and Perception
Some Effects of Prosody on Articulation in American English (Donna Erickson)
Essay on Acoustic Correlates of Prosodic Typology (Masahiko Komatsu)
The Perception and Retention of English Words Relative to Boundaries (June-ko Matsui)
Spoken Word Recognition and Word Play in Japanese (Takashi Otake)
Voicing Features of Initial-Stop Consonants: A Review (Katsumasa Shimizu)
Notes on Comparative Analysis of Speech Errors in English and Japanese (Yasushi Terao)

●Part 5 Syntax and Semantics
Contour Templates in Syntax? --A Note on the Spreading of (In-)definiteness-- (Henk van Riemsdijk)
Eel Sentences in Japanese and English (Hisao Tokizaki)

(2003年10月10日発行 開拓社刊 A5判横組み 581ページ 10,000円+税 ISBN 4-7589-2112-1

朱京偉著 『近代日中新語の創出と交流―人文科学と自然科学の専門語を中心に―』

 日中語彙交流史の一環として,日本語から中国語に入った借用語について研究したものである。語誌的研究ではなく,どのような語がどれだけあるかを記述することを中心としている。序章「近代日中の語彙交流と借用語の研究」で,この分野における研究史のあらましについて述べる。続く第1章「『哲学字彙』初版の訳語とその性質」,第2章「『哲学字彙』再版と三版の増補訳語」,第3章「哲学辞典から見る近代哲学用語の成立」までが,哲学用語編である。第4章「近代音楽用語の成立と伝播」,第5章「西洋楽器名の中国語訳の形成」,第6章「中国における西洋音楽家の人名翻訳」までが,音楽用語編である。第7章「蘭学書『植学啓原』と洋学書『植物学』の語彙」,「第8章 明治期における近代植物学用語の成立」,第9章「清末の在華宣教師と植物学用語の翻訳」,第10章「中国における日本製植物学用語の受容」,第11章「中国における日本製植物学用語の定着」までが,植物学用語編となっている。巻末に語彙索引がある。なお,本書は関西大学に提出され受理された学位請求論文を刊行したものである。

章立ては以下のようになっている。

序章 近代日中の語彙交流と借用語の研究

哲学用語編
 第1章 『哲学字彙』初版の訳語とその性質
 第2章 『哲学字彙』再版と三版の増補訳語
 第3章 哲学辞典から見る近代哲学用語の成立

音楽用語編
 第4章 近代音楽用語の成立と伝播
 第5章 西洋楽器名の中国語訳の形成
 第6章 中国における西洋音楽家の人名翻訳

植物学用語編
 第7章 蘭学書『植学啓原』と洋学書『植物学』の語彙
 第8章 明治期における近代植物学用語の成立
 第9章 清末の在華宣教師と植物学用語の翻訳
 第10章 中国における日本製植物学用語の受容
 第11章 中国における日本製植物学用語の定着

(2003年10月22日発行 白帝社刊 A5判横組み 542ページ 9,500円+税 ISBN 4-89174-668-8

辛島美絵著 『仮名文書の国語学的研究』

 古文書は日本語史の研究資料として有用だが,実際にはあまり利用されてこなかった。本書は鎌倉時代の仮名文書(古文書のうち漢字専用書きではない文書)を取りあげ,その日本語資料としての総体的把握,および研究資料としての位置付けを行おうとしたものである。序章では古文書研究の歴史,研究方法が述べられる。第1章では仮名文書が持つ「実用的対話性」について,尊敬用法の「る・らる」や,「かしこし,〜がたし」などの例をもとに実証する。第2章では「口頭語的表現」について述べる。扱う題材はオ段長音の開合,四つ仮名などの混乱例,シシ語尾の形容詞,ナ変動詞の四段化,二段活用動詞の一段化,口語的要素の強い語彙などである。第3章では実用文としての形式や,古くからの表現の継承という問題を取り扱う。「明白なり」,「ながし」,「つくしがたし」などの用語・用法について述べる。終章では全体のまとめを行う。巻末には別表があり,調査の結果が示されている。通説で誤りが引き継がれている資料に関する訂正情報も記されている。なお,本書は九州大学に提出された学位論文を改編したものである。

章立ては以下のようになっている。

序章 国語資料としての仮名文書研究について
第1章 仮名文書の言語における〈実用的対話性〉について
第2章 〈実用的対話性〉による口頭語の反映について
第3章 実用文としての仮名文書言語の特色
終章 各仮名文書類の国語学的特色と今後の研究の方向

(2003年10月30日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 485ページ 12,000円+税 ISBN 4-7924-1379-6

藤井俊博著 『今昔物語集の表現形成』

 『法華験記』が『今昔物語集』に与えた影響について実証的に研究したものである。また,『今昔』に見られる独特な表現の特徴について述べたものである。序章「今昔物語集の表現研究」で,従来の研究の概要とこの研究の目的を述べる。第1章「今昔物語集の表記・語彙の形成」では『法華』に目立つ漢語が『今昔』にどう現れるか,あるいは,『今昔』に高頻度で現れる用語に関して『法華』からの影響を見ていく。第2章「今昔物語集の表現の形成」では「更ニ無シ」,「事无限シ」,「此ヲ見テ」など,慣用的な表現をいくつか取りあげて,『法華』との関わりを探る。第3章「今昔物語集の叙述と視点」では,文章の叙述方法について論じる。さらに,指示語と視点の問題などを考える。結章では,全体のまとめをする。

章立ては以下のようになっている。

序章 今昔物語集の表現研究
第1章 今昔物語集の表記・語彙の形成
第2章 今昔物語集の表現の形成
第3章 今昔物語集の叙述と視点
結章

(2003年10月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 356ページ 9,000円+税 ISBN 4-7576-0234-0

岡野信子著 『屋号語彙の総合的研究』

 屋号を,その発生・実態・社会的状況の関連などの面から,記述・分析したものである。民俗学的観点からも興味深い題材だが,言語学的観点からは,語彙・意味(命名・造語など),文字・表記(漢字使用),社会言語学などの諸分野にかかわる研究であると言える。全体は4部に分かれる。第1部「屋号語彙の生成と機能に関する研究」では,成立・命名のパターン,地域社会における意識などについて述べる。第2部「屋号語彙の記述的研究」では,室町や江戸期の文献に見られる屋号,現代の諸地域の屋号の記述をしている。第3部「屋号語彙の社会言語学的研究」では農業社会と漁業社会の屋号比較や,商業社会の屋号を取りあげ,生活や社会との関連を考察する。第4部「屋号語彙の基本類型に関する研究」では,ある地域における分家屋号の語彙,先祖屋号からの展開の様相,あだ名屋号語彙,家印屋号について述べる。なお,結章「屋号語彙研究小史」として関連文献リストを付す。

章立ては以下のようになっている。

第1部 屋号語彙の生成と機能に関する研究
第2部 屋号語彙の記述的研究
第3部 屋号語彙の社会言語学的研究
第4部 屋号語彙の基本類型に関する研究
結章 屋号語彙研究小史

(2003年10月31日発行 武蔵野書院刊 B5判横組み 278ページ 5,000円+税 ISBN 4-8386-0210-3

笹原宏之・横山詔一・エリク=ロング著 『現代日本の異体字―漢字環境学序説―』

 国立国語研究所プロジェクト選書2として出版された本書は,漢字の異体字の調査・研究を通じて,漢字環境(漢字政策,漢字の出現頻度,漢字への心理などを含めた概念)の全体像を明らかにしようとしたものである。全体は4章に分かれる。序論「漢字環境学とは何か」で前置きや全体の見通しを述べたあと,第1章「異体字とは」で,異体字に関する基礎論を展開する。第2章「異体字の使用状況とその背景」では新聞や百科事典,地名の異体字について,使用実態の調査とそこから得られた結果,および考察が述べられる。第3章「異体字の認知科学」は認知科学的手法により,異体字に対するなじみや好みなどの調査,字体認識に関する説明モデル構築,頻度と意識の関連などを追究する。第4章「漢字の様々な集合とその字体」では,常用漢字・人名用漢字・JIS漢字など漢字使用の範囲に関する規格の事実的側面(解説)や政策的側面について見ていく。

章立ては以下のようになっている。

第1章 異体字とは
第2章 異体字の使用状況とその背景
第3章 異体字の認知科学
第4章 漢字の様々な集合とその字体

(2003年11月10日発行 三省堂刊 A5判横組み 318ページ 2,600円+税 ISBN 4-385-36112-6

Alexander Vovin著 "A Reference Grammar of Classical Japanese Prose"

 本書は10世紀から11世紀の古典日本語の散文と詩についての記述的文法書である。基本的に構造言語学的な枠組みにそったもので、従来の国文法的枠組みも考慮しながら穏当な体系として記述されている。第1章は、歴史的・文学的背景、第2章は、表記論と音韻論、第3章は語彙の概説である。第4章は名詞、代名詞、格助詞、数詞、第5章は動詞で、モード・アスペクト・ムード・ヴォイスの範疇、動詞の活用、接続助詞、敬語などを扱う。第6章は副詞、第7章は、接続助詞の一部、第8章はその他の助詞を扱う。係助詞はfocus particles、副助詞はrestrictive particlesとして扱われるなど新見が多い。英文で書かれた古典語の包括的文法書として注目すべきものである。

(2003年RoutledgeCurzon刊、A5判xviii+476ページ $85.00)