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新刊紹介 (『日本語の研究』第1巻1号(通巻220号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

上野智子著 『地名語彙の開く世界』

「生活語彙の開く世界」シリーズの第2巻である。地名は、生活や文化を窺い知るための資料として、地理・歴史・民俗など諸学で問題となってきた。本書は言語学的立場から行った調査研究とその考察をまとめたものである。全体は5部に分かれている。第1部「地名の海へ」は地名調査とはどのようなものかを概説し、地名研究の流れを紹介する。第2部「地名のレトリック」は、数量、比喩、伝説などのテーマ別に地名との関わりを見ていく。第3部「地名と方言」は、入道雲、岩礁、などが各地域でどのように名付けられているかを調査・考察している。第4部「地名の周辺」では、海岸部の地名と、色名・人名にちなむ地名などを扱う。第5部「地名の総合学を」は、命名視点、命名心理についての考察をし、まとめとして地名研究の問題点、研究の枠組みに関する論を展開する(なお、本書の基になった論文はp.25にまとめられている)。

(2004年1月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 245ページ 2,800円+税 ISBN 4-7576-0240-5

松田文子著 『日本語複合動詞の習得研究―認知意味論による意味分析を通して―』

田中寛著 『統語構造を中心とした日本語とタイ語の対照研究』

許明子著 『日本語と韓国語の受身文の対照研究』

シリーズ言語学と言語教育の第1〜3巻として出版されたものである。

第1巻(2004年2月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 242ページ 7,000円+税 ISBN 4-89476-204-8

第2巻(2004年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 733ページ 19,000円+税 ISBN 4-89476-205-6

第3巻(2004年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 266ページ 6,000円+税 ISBN 4-89476-206-4

小林英樹著 『現代日本語の漢語動名詞の研究』

漢語動名詞(「する」を付けると、いわゆる漢語サ変動詞になる名詞)を、文中での統語的な振る舞いを視野に入れて分析したものである。従来、漢語語構成の研究は内部構造の分析に集中しており、文中の他の要素といかなる関係を持つのかという点に関しては等閑視されてきた。その視点を重視し、新聞社説7年分のデータを基に論じている。全体は5部に分かれる。第1部「動詞のタイプと非対格性」では語彙概念構造を用いて、動名詞の意味を考え、「〜する」とは言えるが「〜をする」とは言えない動名詞の分析をする。また、自他両用の二字漢語動名詞がどのような意味分布を示すかを調べる。第2部「二字漢語動名詞」では、動詞要素+名詞的要素のタイプ、動詞要素+動詞要素のタイプのそれぞれについて、項の取り方や意味関係をもとに下位分類をする。第3部「三字漢語動名詞」、第4部「四字漢語動名詞」についても二字の時と同様の分析を進める。第5部「おわりに」ではまとめと今後の課題を述べる。なお、本書は学位論文(2001年に大阪大学に提出)を基に出版したものである。

(2004年2月15日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 369ページ 6,000円+税 ISBN 4-89476-199-8

坂梨隆三著 『近世の語彙表記』

近世を中心とした表記・語彙に関する既発表論文などをまとめたものである。全体で24編を収める。主な内容は以下のとおりである。近松の四つがな、接尾語「ずくめ」の仮名遣、曽根崎心中の仮名遣い(「は」と「わ」、「い・ひ・ゐ」、「う・ふ・む」、「え・へ・ゑ」、「お・ほ・を」)、「ふ」を「ム」とよむこと、堀川波鼓の表記、浄瑠璃本の半濁音符、かなづかいの変遷、三馬の白圏、江戸期戯作の片仮名、近世のカとクヮ―擬声語の場合―、明恵上人伝記の表記・文体、平家物語の「さぶらふ」、下学集で「日本俗」などの注記のある語、アンドンとアンドウ、『ヅーフハルマ』の方言、ベッドとベット、最近の外来語のアクセント、などの問題を扱っている。

(2004年2月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 519ページ 15,000円+税 ISBN 4-8386-0211-2

田中寛著 『日本語複文表現の研究―接続と叙述の構造―』

日本語教育の実践の立場から、複文における接続と叙述の様相を用例に基づき分析したものである。序章「日本語複文表現の記述的研究・序説」で目的・構想を述べ、また、複文についての考え方を述べる。本論は5部に分かれる。第1部「条件表現の諸相」はト、バ、タラ、ナラの諸形式やトイウトなどの周辺形式を扱う。第2部「条件表現の周辺」では、テハ、テモ、ノニなどを扱う。第3部「原因理由と目的の表現」では、カラ、ノデ、コトデ、コトカラ、タメニ、ヨウニなどを扱う。第4部「形式名詞と後置詞の表現」では、トコロ、ウエ、動詞テ形(ニヨッテ、ニタイシテ等々)を扱う。第5部「補文節、連体節と複合辞の表現」では、補文節、内容節の接続機能、および、動詞述語・形容詞述語との意味関係、名詞の接続的な成分(〜際、〜折など)について述べる。

(2004年2月27日発行 白帝社刊 A5判横組み 691ページ 8,800円+税 ISBN 4-89174-640-8

小林隆著 『方言学的日本語史の方法』

日本語史の研究に方言学の視点を導入することにより従来の中央語文献中心の記述を見直し、史的研究の新たな可能性を提示しようとしたものである。全体は3部に分かれる。第1部「理論・方法編」では、方言学的日本語史の目的設定、方法論の考察などが行われる。さらに、資料拡大のため、近世の農書に注目するなど地方文献の開拓を論じ、日本語史のための(つまりは現状調査のためではない)通信調査法や全国方言調査の試みについて述べる。第2部「中央語史編」では、中央語を中心とした語史の見直しを主題とする。まず、「頬」を取りあげ、文献による語史と方言から見た語史の食い違いについて検討する。そこで不一致の要因を指摘し、研究上留意すべき点を明らかにする。他に、「顔」、「眉毛」、「踝」、「薬指」、「コマ(駒)」、「雄馬」、「一昨日」、「旋毛」、格助詞「へ」などを扱う。第3部「方言史編」では、方言史の構築を主題とする。中央語起源の語の流入から定着まで、周圏分布と再生現象、東西対立などの問題を論じ、方言形成モデルの作成を行う。なお本書は2004年度の新村出賞を受賞した。

(2004年2月27日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 737ページ 18,400円+税 ISBN 4-89476-200-5

小松英雄著 『みそひと文字の抒情詩―古今和歌集の和歌表現を解きほぐす―』

旧著『やまとうた―古今和歌集の言語ゲーム―』(講談社 1994年)を全面改稿したものである。それに伴い、イントロダクション、巻末の「『やまとうた』その後」などが加えられ、また、本論に「さつき待つ花橘」(夏・139)が加えられている。それ以外は、旧著の構成を踏襲している。全体は、序論と本論からなる。序論「和歌表現解析の基礎」では、古今集が、藤原定家など後世の人によって、編纂当時の理解の仕方とは違う解釈をされており、後の歌学の伝統に沿った解釈は、その誤った解釈を引き継いできたため、徹底的な読み直しが必要と述べる。そして、古今和歌集の和歌がどのような論理に基づいているのかを解説する。本論「和歌表現の解析」では、12の和歌を主な対象として、従来の説を批判しながら、それぞれの表現を解きほぐしていく。

(2004年2月28日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 357ページ 2,800円+税 ISBN 4-305-70264-9

秋元実治・尾形こづえ・遠藤光暁・近藤泰弘・Elizabeth Closs Traugott著 『コーパスに基づく言語研究―文法化を中心に―』

青山学院大学総合研究所人文学系センターのプロジェクトの研究成果を出版したものである。

(2004年3月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 164ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-216-1

国語語彙史研究会編 『国語語彙史の研究23』

「特集・中世語」の論文8編、一般論文6編を収める論文集である。

●特集の論文

●一般の論文

(2004年3月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 273ページ 9,000円+税 ISBN 4-7576-0254-5

真田信治監修 中井精一・内山純蔵・高橋浩二編 『日本海沿岸の地域特性とことば―富山県方言の過去・現在・未来―』

本書は日本海総合研究プロジェクト研究報告の第2として刊行された。このプロジェクトは日本海沿岸諸地域を考古学、人類学、地理学、社会言語学などの面から総合的に捉え、この地域の歴史的役割、特性、将来の方向性などを考えるものであり、富山県を発信源とした日本海文化の紹介という役割を担うものである。

第1部 富山県方言の特徴

第2部 日本海沿岸地域のことばの様相

(2004年3月31日発行 桂書房刊 A5判縦組み 306ページ 3,000円+税 ISBN 4-905564-69-7

林巨樹・池上秋彦・安藤千鶴子編 『日本語文法がわかる事典』

日本語文法に関する事項・術語(約270項目)について説明・解説する事典である。現代語文法・古典語文法とも扱っている。構成は、事項・術語を五十音順に並べるという形式で、各項には例文、定義、解説、補説の欄がある。助詞・助動詞に関しては、例えば「推量の助動詞」、「係助詞」という項目を立て、その下に各形式(う・よう、らしい、む・むず、らむ、けむ……)、(は・も・さえ・でも・しか・こそ……)を挙げ、解説を加える形式である。参考のため試しにア行の項目を目次から(空見出しも含めて)挙げると、アク説、アスペクト、言い切り、イ音便、イ形容詞、意志の助動詞、已然形、已然言、一語文、一人称、意味から見た文の種類、入子型構造、いろは歌、ヴォイス、ウ音便、受身・可能・自発の助動詞、受身・尊敬・可能・自発の助動詞、動辞(うごきてにをは)、打消推量の助動詞、打消の助動詞、詠嘆の助詞、詠嘆の助動詞、婉曲表現、延言、縁語、遠称、大槻文法、送り仮名、音便となっている。

(2004年4月10日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 318ページ 2,800円+税 ISBN 4-490-10644-0

前田富祺・野村雅昭編 『朝倉漢字講座3 現代の漢字』

(2003年10月30日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 250ページ 4,800円+税 ISBN 4-254-52533-2

前田富祺・野村雅昭編 『朝倉漢字講座5 漢字の未来』

(2004年4月30日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 255ページ 4,800円+税 ISBN 4-254-51535-9

山梨正明ほか編 『認知言語学論考3』

(2004年4月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 262ページ 3,800円+税 ISBN 4-89476-220-X

森岡健二著 『日本語と漢字』

既発表論文を中心に書き下ろしも含め、漢字に関する論をまとめて一書としたものである。全体は4部に分かれる。第1部「文字論」は文字形態素論を中心に、文字による相通変換の実態を分析する。第2部「明治から現代へ―漢字・漢語の流れ―」は現代漢語の成立を明治期の漢字・漢語論を踏まえて論じていく。第3部「語彙と漢字の用法」は、和語・漢語・外来語の性質と役割、欧文訓読の歴史、語彙研究の学史について論じる。第4部「現代の漢字調査」は、書き下ろしで、JISコード漢字表の研究を展開する。表にある漢字を、音訓文字、字音文字、字訓専用文字…というように類別し、そのグループの性質を観察・分析する。また、JISコード漢字をグループごとに整理した一覧表を付す。

(2004年5月25日発行 明治書院刊 A5判縦組み 299ページ 9,400円+税 ISBN 4-625-43323-1

諸星美智直著 『近世武家言葉の研究』

本書は、近世の武家が実際に使っている言葉が残されている文献を探し、それらを出身地域、身分などに注意しながら観察し、その実態を描こうとしたものである。物語世界に現れる武士の言葉は、武家らしさを強調するため実態とは異なっている。したがって、それを基に当時の武家での言葉を論じるのは危険であると著者は述べている。全体は6部に分かれる。第1部「総説 武家言葉の資料と場面」では、研究方法と資料について、武家社会の会話場面、武家と庶民の対話場面での言葉を観察する。第2部「徳川幕府における言語の諸相」では幕府の、第3部「藩社会における言語の諸相」では主に土佐藩での言葉を観察する。第4部「吟味席における役人の言語」では事情聴取の場面、第5部「遊里における武家客の言語」では、その場面における打ち消し表現や自称・対称などを見ていく。第6部「余録」では人相書の言語事項や、忍者・隠密と方言などについて述べる。

(2004年5月26日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 518ページ 13,000円+税 ISBN 4-7924-1383-4

三保忠夫著 『古文書の国語学的研究』

中世以前の古文書を対象とし、その文書語(もんじょご)の実相・体系を探究すべく、その基礎固めを行ったものである。全体は3部に分かれる。第1部「古文書の国語学的研究」では歴史学に比べ、国語学系の研究者が古文書の言葉を研究することが少なかったことを述べ、文書語研究が有する意義(従来の文芸資料あるいは、漢文訓読系資料には見られない語、用法、歴史的変化についての資料が得られる)について述べる。また、研究史・研究課題をまとめる。第2部「古文書の文字・用語」では、古文書における特殊な言語事象のいくつかについて検討する。まず、文字、さらに用字・用語について概略を述べる。そして、「仰(おほす‐あふぐ)」、「奉(うけたまはる‐たてまつる)」などの語について、その用法を検討する。第3部「古文書の表現法」では、古文書における待遇表現、引用表現、数量表現を対象に、どのような言い方が用いられるかについて、中国文献との関わり、時代別の傾向などを探る。

(2004年6月1日発行 吉川弘文館刊 A5判縦組み 303ページ 11,000円+税 ISBN 4-642-08522-X

角田三枝著 『日本語の節・文の連接とモダリティ』

日本語における接続表現の使い分けに関する構造的な原理を指摘したものである。また、「のだ」「わけだ」の表現を(個々の意味用法ではなく)「思考のプロセス」という概念を利用して統一的に述べていこうとしている。全体は6章からなる。第1章「本書のねらい、構成、意義」に続き、第2章「節の連接とモダリティ」では、従属節と主節のモダリティの共起関係、および従属節と主節の意味関係を考察し、5つのレベル(現象描写、判断、働きかけ、判断の根拠、発話行為の前提)の区別を提案する。そして、原因・理由、逆接、条件の諸表現について、これらのどのレベルの表現が可能かを論じていく。第3章「ノダの思考プロセス」では「のだ」を扱う。第4章「ワケダ、ワケデハナイ」では「わけだ」を「のだ」と比較しながら、述べる。第5章「節の連接と思考プロセス」では、「ので」「から」「のだから」の違いを検討する。第6章は「結論と今後の展望」。なお、本書は2003年にお茶の水女子大学から学位を授与された論文が基になっている。

(2004年6月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 225ページ 3,300円+税 ISBN 4-87424-295-2

飛田良文編 『国語論究11―言文一致運動―』

言文一致運動をテーマとした16編を収める。収録論文は以下のとおりである。

(2004年6月25日発行 明治書院刊 A5判縦組み 479ページ 18,000円+税 ISBN 4-625-43324-X

北原保雄監修・編 『朝倉日本語講座5 文法1』

北原保雄監修・尾上圭介編 『朝倉日本語講座6 文法2』

現在の研究水準(研究成果)を平易に論述する講座の、文法を扱った2冊である。

【文法1】では、文法についての全般、文の構造、文の成分などについて扱う。

【文法2】は、主語とはどのようなものか、述語とはどのようなものかということについて、その本質から問う論を展開する。また、主語とその周辺について、および述語の機能(その内部組織を含めた)について述べる。

第5巻 文法1(2003年10月30日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 273ページ 4,200円+税 ISBN 4-254-51515-4

第6巻 文法2(2004年 6月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 305ページ 4,600円+税 ISBN 4-254-51516-2

渡辺富美雄編 『新潟県方言辞典 中越編』

上越編(1973年)、佐渡編(1973年)、下越編(2001年)に続くものであり、この中越編をもって、シリーズ完結となる。収録語彙は、他の新潟県諸地域と共通するものも入れ、相互の比較を可能にしている。記述は、約2700項目あり、方言語形の五十音順で、語構成、アクセント、品詞等、意味、場合によっては解説、用例、反義語の情報などが盛り込まれている。基になった調査は、中越地方のすべてに及んだものではないが、さらに細かい調査が行われるのは、今後の課題とある。採録にあたっては、生え抜きでなるべく調査当時50歳以上の人のデータを選んだとのことである。巻末には新潟県中越地方の方言の概観、共通語索引がある。

(2004年6月30日発行 野島出版刊 A5判縦組み 326ページ 10,000円+税 ISBN 4-8221-0199-1