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新刊紹介 (『日本語の研究』第1巻3号(通巻222号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

橋口満著 『鹿児島方言大辞典』上巻/下巻

鹿児島出身の著者による鹿児島方言の辞典である。著者は先に『鹿児島県方言辞典』(桜楓社1987)を上梓したが、その後、増補改訂を加え、新たに出版したのが本書ということになる。特色としては、方言の分布地をより明確にしたこと、鹿児島県の薩摩・大隅に加え宮崎県の諸県地方の全市町村の方言を収めていること、アクセント・音韻を明示したこと、用例を多く入れたこと、多くの民俗語彙を収録したことが挙げられる。全体の構成は、まず上巻巻頭に「鹿児島方言の概説」を配し、方言区画、音韻、アクセント、語彙、文法について述べる。その後、辞典としての記述があり、上巻にはア〜タ、下巻にはチ以下の項を載せる。下巻末には、標準語索引(下巻の875ページから)を付す。

(2004年5月25日発行 高城書房刊 B5判縦組み 1011ページ 7,143円+税 ISBN 4-88777-055-3
(2004年6月25日発行 高城書房刊 B5判縦組み 1035ページ 7,143円+税 ISBN 4-88777-056-1

金田一春彦著
 『金田一春彦著作集4―国語学編4―』
 『金田一春彦著作集10―童謡・唱歌編―』
 『金田一春彦著作集11―随筆編1―』

第4巻は、国語学編で、『日本語』上・下(1988年改訂新版 岩波新書)、『日本語セミナー5 日本語のあゆみ』(1983年 筑摩書房)を収める。前者は日本語の概説、後者は日本語の歴史について、それを専門としない人にもわかりやすいように書かれたものである。第10巻は、童謡・唱歌編で、『童謡・唱歌の世界』(1978年 主婦の友社、1995年改訂復刊 教育出版)、『十五夜お月さん 本居長世 人と作品』(1982年 三省堂)を収める。第11巻は、随筆編1で『ことばの四季』(1955年河出書房 1976年増訂版 教育出版)、『ことばの歳時記』(1966年 文藝春秋より『ことばの博物誌』という題名で刊行。1973年に新潮文庫で再刊されたとき題名を変更したもの)、『日本語セミナー4 方言の世界』(1983年 筑摩書房)、さらに『日本語セミナー6 正しい日本語』のうち、「敬愛する先達・友人の思い出」と「言語時評」の章、さらに『自然と人生』(1991年 三省堂)のうちの「忘れがたき人々」の章を収めたものである。

(2004年5月25日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 718ページ 8,500円+税 ISBN 4-472-01474-2
(2004年7月25日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 709ページ 8,500円+税 ISBN 4-472-01480-7
(2004年9月25日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 651ページ 8,500円+税 ISBN 4-472-01481-5

国立国語研究所編
 『全国方言談話データベース 日本のふるさとことば集成―第8巻 長野・山梨・静岡―』
 『全国方言談話データベース 日本のふるさとことば集成―第15巻 広島・山口―』

昭和52年度から60年度にかけて行われた「各地方言収集緊急調査」(文化庁)をもとに、国立国語研究所がデータベースを作成・公開した全20巻のシリーズのうちの2冊である。その土地の人が何らかの話題について自由に話をしたもの(談話)を文字化し、共通語訳を付け、それを冊子形態で提供するとともに、付属CDで実際の談話音声を聞けるようになっている。また、総合形態として付属CD-ROMに文字化テキストと音声を収載している。調査場所と時期に関しては、第8巻は長野県木曽郡開田村1978、山梨県塩山市1978、静岡県静岡市1979、第15巻は広島県広島市1977、山口県豊浦郡豊北町1978となっている。

(2004年11月30日発行 国書刊行会刊 A5判横組み 269ページ 6,800円+税 ISBN 4-336-04368-X)第8巻
(2004年5月25日発行 国書刊行会刊 A5判横組み 294ページ 6,800円+税 ISBN 4-336-04375-2)第15巻

東野治之著 『日本古代金石文の研究』

日本古代の金石文(刀剣・仏像・鏡・墓誌・碑・梵鐘などに刻まれたり書かれたりした文)に関する論文をまとめて一書としたものである。序説「金石文研究の課題と方法」で、この分野に関する研究の現状と留意点について述べる。続く第1部「古代金石文の概観」には、概説的な論考を収める。(第1章「飛鳥・白鳳の造像銘」、第2章「古代の墓誌」、第3章「東アジアの石碑文化と古代日本」、第4章「法隆寺献納宝物の銘文」)第2部「古代金石文の世界」は、個別の金石文に関する論考を収めており、第1章「朝鮮半島出土の単龍文環頭大刀銘」、第2章「江田船山古墳の大刀銘」、第3章「法隆寺金堂釈迦三尊像の光背銘」を初めとして、全15章にわたり、それぞれの文の解読・考察が展開される。付編「古代金石文の周辺」では、古代金石文に関連した内容を扱った論を収める。

章立ては以下のようになっている。 序説 金石文研究の課題と方法

第1部 古代金石文の概観
 第1章 飛鳥・白鳳の造像銘
 第2章 古代の墓誌
 第3章 東アジアの石碑文化と古代日本
 第4章 法隆寺献納宝物の銘文

第2部 古代金石文の世界
 第1章 朝鮮半島出土の単龍文環頭大刀銘
 第2章 江田船山古墳の大刀銘
 第3章 法隆寺金堂釈迦三尊像の光背銘
 第4章 法隆寺金堂釈迦三尊像台座の墨書銘
 第5章 法隆寺金堂四天王の光背銘
 第6章 天寿国繍帳の図様と銘文
 第7章 那須国造碑
 第8章 滋賀県超明寺の「養老元年」碑
 第9章 上野三碑
 第10章 聖武天皇勅書銅版
 第11章 薬師寺仏足石記と龍福寺石塔銘
 第12章 法隆寺献納宝物 龍首水瓶の墨書銘
 第13章 法隆寺伝来の幡墨書銘
 第14章 法起寺塔露盤銘
 第15章 法隆寺印

付編 古代金石文の周辺
 付編1 七支刀銘文の「聖音」と「聖晋」
 付編2 大王号の成立と天皇号
 付編3 法隆寺献納宝物と花月庵関係の銘文

(2004年6月29日発行 岩波書店刊 A5判縦組み 375+16ページ 7,800円+税 ISBN 4-00-024224-5

04記念行事委員会編 『21世紀言語学研究―鈴木康之教授古希記念論集―』

鈴木康之氏の古希および退職を記念して作成された論文集である。論文のテーマ別に、8章に分けられ、合計34編が収められている。巻末には鈴木氏の簡略自伝および研究業績がある。

第1章 連語論研究の発展のために

第2章 動詞の意味・用法の研究

第3章 ヴォイス・ヤリモライの研究

第4章 名詞述語文および「のだ」文の研究

第5章 複文、特に従属節の研究のために

第6章 日本語の歴史的な研究

第7章 古典日本語教育の研究

第8章 言語とはなにか

鈴木康之簡略自伝および研究業績

(2004年7月20日発行 白帝社刊 A5判横組み 571ページ 10,000円+税 ISBN 4-89174-696-3

室山敏昭著 『文化言語学序説―世界観と環境―』

本書は「生活語彙論」を基盤とする「文化言語学」を提唱しようとしたものである。著者は、方言を単に中央語の変異と捉える見方を拒否し、地域生活者の世界観、環境に支えられた存在として研究するという道を歩んできた。その成果は『生活語彙の構造と地域文化―文化言語学序説』(和泉書院1998)、『「ヨコ」社会の構造と意味―方言性向語彙に見る―』(和泉書院2001)に結実したが、それを一歩進めたのが本書ということになる。全体は4部に分かれる。第1部「文化言語学の構想」では、その課題、隣接諸学との相関などが語られる。また認知言語学が見落としているものについても述べられる。第2部「文化言語学の理論」では、基本的な立場、言語観、文化観、対象、調査法、研究の目標などが述べられる。第3部「文化言語学の実践」は、第1章「漁民の「風」の世界観―広島県豊田郡豊町大長の場合―」を初めとする個別の論。第4部「文化言語学の周辺」は、言語の機能についての論、柴田武著『語彙論の方法』への書評を収める。

部立ては以下のようになっている。
第1部 文化言語学の構想
第2部 文化言語学の理論
第3部 文化言語学の実践
第4部 文化言語学の周辺

(2004年8月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 596ページ 13,000円+税 ISBN 4-7576-0273-1

泉子=K=メイナード著 『談話言語学―日本語のディスコースを創造する構成・レトリック・ストラテジーの研究―』

本書は、著者の談話研究を「談話言語学」の名のもとに一つの分野として確立しようとしたものである。その研究領域の課題や方法を、具体的な適用例を出しつつ、提示している。第1章「談話としての言語」で言語観、第2章「談話言語学:研究の対象と方法」でこの領域の立場を簡単に述べる。第3章「日本語ディスコースの軸」で、日本語の談話を支える諸要素(トピック・コメント関係など)を論ずる。第4章「物語の構造」では物語説明文、第5章「意見文・質問文・返答意見文の構成」では新聞コラムの意見文の構成などについて論ずる。第6章「談話のレトリック:スタイルの選択と混用」では、ダ体とデス・マス体のシフトなどを扱い、第7章「文表現のレトリック」では、受身文、・否定文などの機能について述べる。第8章「文頭と文末のストラテジー」は接続表現「だから」について、第9章「語句のストラテジー」では固有名詞の使用/回避の問題(指示・照応系の問題)を扱う。第10章「談話言語学と日本語のすがた」では、この学問の意義と今後の方向について述べる。

(2004年10月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 321ページ 3,400円+税 ISBN 4-87424-311-8

藤原与一著 『日本語における文末詞の存立』

本書は、文末詞の研究に長年携わってきた著者の「体験の表示」(あとがきより引用)である。第1章「日本語での歴史的存在としての文末詞」で『日本語文末詞の歴史的研究』(佐々木峻・藤原与一編 三弥井書店1998)の諸論文について触れる。第2章「日本語文末詞の現存立」では、自著『昭和日本語方言の総合的研究』の文末詞に関する部分の目次紹介をする。第3章「世界諸言語上に「文末詞」を観る」では藤原編『言語類型論と文末詞』(三弥井書店1993)での論文題名紹介をする。第4章「近隣諸言語と日本語」では朝鮮語・蒙古語・中国語の文末詞、第5章「西洋語内にうかがわれる「文末詞比肩性」の文末要素」では西洋での文末要素に当たるものについて、簡単に述べる。第6章「日本語文末詞―その現存在―」が本書の中心である(40ページ以降が第6章である)。自身の調査票により方言調査した結果をもとにして、文末詞のありかた・使用実態を、地方別に挙例してある。

章立ては以下のとおりである。
第1章 日本語での歴史的存在としての文末詞
第2章 日本語文末詞の現存立
第3章 世界諸言語上に「文末詞」を観る
第4章 近隣諸言語と日本語
第5章 西洋語内にうかがわれる「文末詞比肩性」の文末要素
第6章 日本語文末詞―その現存在―

(2004年10月22日発行 三弥井書店刊 A5判横組み 287ページ 7,500円+税 ISBN 4-8382-3135-0

湯沢質幸・松崎寛著 『シリーズ日本語探究法3 音声・音韻探究法―日本語音声へのいざない―』

このシリーズは、日本語学の演習での発表、あるいは卒業論文執筆に際して、基礎知識、新しい知識、探究方法を提示するという目的で編まれており、この巻に先立って、現代日本語、文法、文字・表記、レトリック、方言を扱った巻が刊行されている。本書の特色は、日常の身近な話を盛り込むなど、専門的すぎないように(しかし単なる読み物ではないように)工夫されていることと、自分の頭でいろいろな角度から考えられるように、定説以外の考え方も紹介しているところである。章立ては、以下のとおりである。

第1章 音声と意味とはどういう関係にあるのか?
 [音声言語の特質]
第2章 美しい日本語の発音とは?
 [ガ行鼻音]
第3章 オノマトペとは何か?
 [清音・濁音・半濁音]
第4章 外国人にとって日本語の発音は難しいか?
 [音声と音韻]
第5章 五十音図は日本語の音の一覧表か?
  [現代日本語音韻体系]
第6章 「バイオリン」か、「ヴァイオリン」か?
  [外来語の表記と発音]
第7章 16世紀、キリシタン宣教師たちは日本語の音声をどう聞いたか?
 [キリシタン資料のローマ字]
第8章 ミョウ、メイ、ミン、あかるい……「明」は何通りの読みを持っているか?
  [漢字の読みと中国音・日本音・訓]
第9章 「一本、二本、三本」はなぜ「いっぽん、にほん、さんぼん」と読むのか?
 [ハ行音の歴史的変遷]
第10章 古代日本語ではどんな文字でどんな音が書かれていたか?
 [万葉仮名と古代日本語の母音]
第11章 アクセントは本当に意味の区別に役立っているのか?
 [アクセントの弁別機能]
第12章 コウシ、コーシ、コオシの発音は同じか、違うか?
  [特殊拍と音節]
第13章 /ニワニワニワトリガイル/は何通りに読めるか?
  [アクセントの統語機能]
第14章 日本語は文末まで聞かないと言いたいことがわからない言語か?
 [韻律(プロソディ)]
第15章 機械による音声の分析結果は、私たちの内省と一致するか?
 [音響音声学]

(2004年10月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 160ページ 2,800円+税 ISBN 4-254-51503-0

秋永一枝編 『東京弁辞典』

東京弁の中で、現在、使われることが稀な語、意味不明になった語を中心に採録した辞典である。ここでいう東京弁とは、御一新(1868)から敗戦(1945)までに東京旧市内で言語形成期を過ごした人(しかも保育者が江戸墨引内か東京旧市内生育者)が使っていた言葉を指す。東京弁母語話者である編者によれば、従来の辞書類には日常生活語類があまり登録されていないという。この辞典はその欠を補う資料と言えるだろう。採録された語は延べ約9700語で、編者が直接カードにとったもの、母語話者の話を録音したもの、著作物から抜き出したものである。記述は、見出し語、漢字表記、解説、用例、アクセント(ないものも多い)、出典が基本構成である。解説は語義、元の語形、説明などを短く書いたものである。なお、東京弁特有語(他の地域で使っていなかった語)を集めた辞典ではないこと、旧市外の江戸川区のことばも参考までに挙げてあること、には注意が必要である(江戸川区のことばではあるが東京弁としての使用がなされなかったものについては、その旨、注記がなされている)。

(2004年10月30日発行 東京堂出版刊 A5判縦組み 684ページ 12,000円+税 ISBN 4-490-10656-4

吉田金彦・糸井通浩編 『日本地名学を学ぶ人のために』

地名に関心を持ち、それについて知りたい人に基本的な知識を提供するとともに、何かを調べたりするときにどのようなことを踏まえ、どのような手順で調べていけば実りある結果が得られるかということを述べた手引き書である。関連する領域は、歴史地理学、言語学、民俗学など多岐にわたるが、それを序章から第4章までに分け、さらにその下の節で、各執筆者が各々の項目について説明するという構成になっている。終章「地名研究の基本文献・資料」(梅山秀幸・綱本逸雄)では、入門書・参考書から始め、地名辞典、歴史的資料などについての案内をしている。なお、コラムと題して、各章末尾に外国地名に関する「まめ」知識が載せられている。

章立ては以下のようになっている。

序章 地名学への誘い
 第1節 「地名学」という学問(吉田金彦)
 第2節 日本地名学の魅力―記・紀・万葉地名の転訛・改字例を考える―(池田末則)

第1章 地名の成り立ち
 第1節 地形と地名―人々の空間認識―(片平博文)
 第2節 自然地名とその認識(片平博文)
 第3節 文化地名(鏡味明克)
 第4節 交通地名(木下良)
 第5節 地名の歴史(鏡味明克)

第2章 地名学の方法
 第1節 日本語の歴史と地名研究(糸井通浩)
 第2節 地名研究の歴史と研究文献(綱本逸雄)
 第3節 古代地名と語源研究(吉田金彦)

第3章 地名に関する問題と課題
 第1節 山岳・河川等の名(山口均)
 第2節 大・小の字(あざ)名(岡田功)
 第3節 国・郡・郷(保・庄など)の行政地名(辰巳幸司)
 第4節 方言と地名―地域人の空間認識―(真田信治)
 第5節 地名の由来・伝説等(明川忠夫)
 第6節 音読みの地名・訓読みの地名(乾善彦)
 第7節 日本の中のアイヌ語地名(村崎恭子)
 第8節 日本の中のコリア語の地名(清瀬義三郎則府)

第4章 地名学の役割
 第1節 地名研究で見えてくるもの―信仰地名の変容―(金田久璋)
 第2節 現代の地名に関する課題―地名の保存―(安藤信策)
 第3節 隣接の諸学を包摂する地名学―地名学の実践と発見の一例―(吉田金彦)
 第4節 地名研究の将来―自治体史の中での位置付け―(金田久璋)

終章 地名研究の基本文献・資料(梅山秀幸・綱本逸雄)

コラム 外国地名に関する「まめ」知識
 イトバヤット島の地名(山田幸宏)
 インドネシアの地名(松尾大)
 バンコクとクルンテープ(吉川利治)
 アジアの東遷(石田天祐)
 日韓の固有漢字と訓(木田章義)
 「むろ」と「マル」(西垣安比古)
 バグダード(井本英一)
 モンゴルの地名(橋本勝)
 ロシアの地名(山口慶四郎)
 イギリスの地名(金山崇)
 イタリアの地名(池田廉)
 フランクフルト(乙政潤)

(2004年11月1日発行 世界思想社刊 B5判縦組み 350ページ 2,300円+税 ISBN 4-7907-1088-2

山梨正明著 『ことばの認知空間』

言語現象に対して、人間の認知能力と認知プロセスに基づいた説明を行ったものである。従来の手法にどのような限界があるか、認知言語学では言語現象をどのように適切に説明しうるかの2点を示すことに主眼がある。第1章「序章」に続き、第2章「焦点連鎖と言語現象」では、焦点化と焦点連鎖を軸に、話題化、二重主語化、メトニミーなどの現象を扱う。第3章「認知語用論とコミュニケーション」では、認知能力や経験的基盤の面から言葉の使用と解釈に関して研究する語用論を認知語用論と呼び、それがいかなる現象を説明するのかを見ていく。第4章「照応現象と参照点モデル」では、参照点モデルという概念を使って、先行詞と代名詞の照応に関わる現象を説明する。第5章「図・地の分化/反転とグラウンド化」では、ものの見方と言語表現の関わりについて述べていく。第6章「一般的展望」で全体のまとめを行う。

章立ては以下のとおりである。
 第1章 序章
 第2章 焦点連鎖と言語現象
 第3章 認知語用論とコミュニケーション
 第4章 照応現象と参照点モデル
 第5章 図・地の分化/反転とグラウンド化
 第6章 一般的展望

(2004年11月10日発行 開拓社刊 A5判横組み 204ページ 2,800円+税 ISBN 4-7589-2120-2

工藤真由美編 『日本語のアスペクト・テンス・ムード体系―標準語研究を超えて―』

本書は、1996〜2002にわたって行われた共同研究の成果の一部である。すなわち日本語の諸方言におけるアスペクト・テンス・ムードの調査研究を行い、そこから得られた知見をまとめるとともに、今後の日本語研究を考える際の枠組みに関して基礎となる概念を示している。付録CD-ROMには調査票が収められている。

目次は以下のようになっている。

(2004年11月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 335ページ 6,200円+税 ISBN 4-89476-231-5

高野繁男著 『近代漢語の研究―日本語の造語法・訳語法―』

近代には新しい概念を取り入れるために和製漢語が多く作られたが、その語基や造語法について考察したものである。序章「近代語彙研究の概略と課題」に続き、第1章「『医語類聚』の訳語」では医学用語集の訳語を、第2章「『哲学字彙』の訳語」では、哲学の訳語を検討する。第3章「『百科全書』の語彙」では、『百科全書』の翻訳のうち、前半で「経済学」「論理学」「修辞及華文」「言語学」を取り上げて文系の訳語の特徴を、後半で「化学」「天文学」「物理学」を取り上げて理系の訳語の特徴を見ていく。第4章「『明六雑誌』の語彙」では、和製漢語を現存しているものと消滅したものに分け、観察する。第5章「蘭学資料の語彙」では『訳鍵』の語彙を中心にその特質を指摘する。第6章「日中現代漢語の層別」は日中両語における基本語の対照研究である。第7章「近代漢語の造語法・訳語法」では、全体のまとめを述べる。

章立ては以下のようになっている。

序章 近代語彙研究の概略と課題
第1章 『医語類聚』の訳語
第2章 『哲学字彙』の訳語
第3章 『百科全書』の語彙
第4章 『明六雑誌』の語彙
第5章 蘭学資料の語彙
第6章 日中現代漢語の層別
第7章 近代漢語の造語法・訳語法

(2004年11月15日発行 明治書院刊 A5判横組み 273ページ 7,800円+税 ISBN 4-625-43325-8

三原健一著 『アスペクト解釈と統語現象』

動詞に内在する意味的アスペクトを基に、いわゆる数量詞遊離構文、二重目的語構文、所有者上昇構文などの成立条件を考え、さらになぜそうなるかをミニマリストプログラムの枠組みで考察したものである。全体は2部に分かれる。第1部「記述的分析」では、まず、第1章「動詞類型とアスペクト限定」で、「意味的アスペクト」と「それに基づく動詞分類」に関する著者の立場を明らかにする。次に第2章〜第4章で、従来はアスペクト面からのアプローチがあまりなされなかった上記の諸構文の分析をしていく。第2部「理論的分析」では、第5章「限界的動詞句」で限界動詞句というレベルを設けることにより限界的事態を表す文の構造を分析するという提案をする。第6章「相対化素性照合」では、統語素性と意味素性は照合の方向性が違うことを主張する。第7章「EPPを巡って」では、指定部位置に範疇を要求する素性であるEPPの廃止を前章で主張したため、これまでそれによって説明されてきた現象をどのように扱うか、ということを論じる。第8章「二重目的語構文の解明を目指して」はこの構文に関する理論的分析を進める。

目次は以下のようになっている。

第1部 記述的分析
 第1章 動詞類型とアスペクト限定
 第2章 数量詞連結構文
 第3章 二重目的語構文
 第4章 所有者上昇構文

第2部 理論的分析
 第5章 限界的動詞句
 第6章 相対化素性照合
 第7章 EPPを巡って
 第8章 二重目的語構文の解明を目指して

(2004年11月25日発行 松柏社刊 A5判横組み 291ページ 2,900円+税 ISBN 4-7754-0070-3

佐田智明著 『国語意識史研究』

中世・近世における歌学書や注釈書を資料とし、そこに記される助詞・助動詞に関する考察を見ていくことによって、国語把握・国語意識の様相を描き出そうとしたものである。第1章「国語学史研究の方法と位置付け」では、学説史と国語意識史の融合を試みた永山勇の説、国語意識を狭義の国語意識と国語観に分けた前田富祺の説を概観し、国語学史と国語史に関する著者の見方を示す。第2章「中世前期における国語意識」は『教長古今集註』、第3章「中世後期における国語意識」は『古今秘註抄』などに見られる助詞の記述を見ていき、語分類意識やテニヲハ観の発達を捉える。第4章「近世における国語意識」は近世歌学、漢学、宣長らの国学などにより、助動詞等がどう見られてきたかを述べる。第5章「中世近世における語の把握の変遷」は「だに、すら」などの把握、消長について記す。第6章「国語意識史研究 結語」は全体のまとめである。

第1章 国語学史研究の方法と位置付け
第2章 中世前期における国語意識
第3章 中世後期における国語意識
第4章 近世における国語意識
第5章 中世近世における語の把握の変遷
第6章 国語意識史研究 結語

(2004年12月20日発行 おうふう刊 A5判縦組み 389ページ 18,000円+税 ISBN 4-273-03348-8