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新刊紹介 (『日本語の研究』第1巻4号(通巻223号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

夏井邦男著 『北海道方言の歴史的研究』

北海道で使われている言葉が,どのような歴史的背景を持っているか,ということをテーマにして行われた研究をまとめたものである。全体は3篇に分かれている。第1篇「北海道方言の語誌から」は,「肝」,「うたて」,「アズマシクナイ」,「メンコイ」や,寒さを表す言葉を取りあげ,それらの史的推移を見ていく。第2篇「北海道方言研究のための書誌」では,青森・岩手・秋田県の方言について書かれた本の解説を行っている。これは北海道南の海岸方言(浜ことば)の語誌的研究を行うため,その基礎となった北奥三県の方言文献を整理しておくという趣旨である。第3篇「資料編」は,弘前市立図書館蔵『俚俗方言訓解』と秋田県立図書館蔵『蝦夷拾遺附言・蝦夷言葉之部』の影印を載せたものである。

内容は以下のとおりである。

2004年11月30日発行 おうふう刊 A5判縦組み 230ページ 12,000円+税 ISBN 4-273-03355-0

李敦柱著・藤井茂利訳 『漢字音韻学の理解』

漢字音研究に必要な基礎的理論と方法を述べたものである。原著は『漢字音韻学理解』(韓国 塔出版社1995年)である。全体は7章から構成されている。第1章「序説」に続き,第2章「漢字音の三要素と音節構造」で声母・韻母・声調,第3章「等韻学の基礎」で等韻学の基礎理論,第4章「反切」で反切の起源・規則・系連法についての説明が行われる。第5章「主要音韻書の解説」では『切韻』系の韻書,『広韻』以後の韻書に記載された漢字音の性質について述べる。第6章「中古漢字音」では主に隋唐時代の漢字音を扱う。第7章「上古漢字音」では先秦から後漢までの音について述べる。『詩経』『楚辞』の押韻などを資料として当時の音韻体系を推定する方法を取るが,その方法と結果を述べる。第8章「韓国漢字音」では韓国漢字音の由来,15〜16世紀末及び17〜19世紀の漢字音について述べる。第9章「日本漢字音」では呉音・漢音などの特色について,『広韻』を基準に説明する。

2004年12月15日発行 風間書房刊 A5判横組み 411ページ 16,000円+税 ISBN 4-7599-1457-9

真田信治・生越直樹・任栄哲著 『在日コリアンの言語相』

在日コリアンの言語使用意識や言語使用実態についての論を集めた論文集である。全体は3部に分かれる。第1部「在日コリアンの言語使用意識」は,大阪の民族学校でのアンケートを元に,コリア語がどのような場面,状況で使われているかを調査した生越論文,在日・在米・在中朝鮮韓国人の比較をした任論文,コリア語を民族語(実用および象徴)としてどう評価付けをしているか,自分とどのような関係づけをしているかなどを扱う前田達朗論文から成る。第2部「在日コリアンの言語使用実態」は,残存韓国語語彙を扱う金由美論文,在日1世の否定表現運用についての金智英論文,コード・スイッチングについて在日1世と韓国人留学生との比較を元に論じる郭銀心論文,言語使用について新来者の影響を基に述べた金美善論文から成る。第3部「在日コリアンの言語計画」は,韓国系民族学校での言語教育を扱う前田真彦論文,北朝鮮系民族学校での言語教育を扱う申昌洙論文から成る。

論文リストは以下のとおりである。

  1. 在日コリアンの言語使用意識
    • 在日コリアンの言語使用意識とその変化――ある民族学校でのアンケート調査結果から(生越直樹)
    • 在外韓国人の言語生活(任栄哲)
    • 「在日」の言語意識――エスニシティと言語(前田達朗)
  2. 在日コリアンの言語使用実態
    • 残存韓国語語彙の様相――ある在日2・3世の場合(金由美)
    • 在日コリアン1世の否定表現の運用(金智英)
    • 帰国子女のコード・スイッチングの特徴――在日1世と韓国人留学生との比較を中心に(郭銀心)
    • 言語景観にみえる在日コリアンの言語使用――新来者の登場がもたらしたもの(金美善)
  3. 在日コリアンの言語計画
    • 韓国系民族学校の事例――白頭学院建国幼・小・中・高等学校の場合(前田真彦)
    • 民族教育の歴史と朝鮮学校における朝鮮語教育(申昌洙)

2005年1月25日発行 和泉書院刊 B6判横組み 300ページ 2,500円+税 ISBN 4-7576-0283-9

菊千代・高橋俊三著 『与論方言辞典』

見出し項目数15700余の方言辞典である。菊氏の使用語彙を中心としており,正確に言えば氏の生育地である与論島の麦屋東区の方言辞典ということになる。菊氏は消えゆく民具の収集を通じて,物がなくなれば言葉もなくなるということに思い至り,言葉の収集を始めたという。1985年に『与論方言集』の冊子を刊行,それを見た外間守善・服部四郎両氏に辞典作りを勧められたとのことである。以後,音韻・品詞・意味等の記述の検討,コンピューター化,出版の体制作りなどを行った高橋氏とともに,本格的な辞典作成に取り組むこととなった。全体は本文篇,索引篇,解説篇に分かれている。本文篇の記述は,アクセント符号付きの見出し,音声表記,品詞,(活用),意味,(解説),用例となっている。索引篇には,標準語引き索引,語彙一覧(感動詞などのグループが一覧できるようになっている),地名一覧などがある。解説篇は,麦屋東区地区の音韻・文法の概説を述べる。

2005年2月19日発行 武蔵野書院刊 B5判横組み 801ページ 18,000円+税 ISBN 4-8386-0215-4

宮崎和人著 『現代日本語の疑問表現――疑いと確認要求――』

現代日本語の疑問文の形式・意味・機能についてモダリティの観点から体系的に述べようとしたものである。序章に続き,第1章「「モシカスルト」類と疑問文の共起」では,可能性の想定と疑問文の関わりを考察する。第2章「推量の疑問化と「コト」」では,「コトダロウ」を基に推量の認識的意味の再検討を行う。第3章「意志と推量の疑問形式」では,「シヨウ」と「シヨウカ」,「ダロウ」と「ダロウカ」の対立の様相を描く。第4章「認識的モダリティとしての〈疑い〉」では,「ダロウカ」,「ノデハナイカ」の位置づけを行う。第5章「確認要求表現の類型」では,確認要求表現を聞き手への機能的タイプの面から分類し,また,確認の対象の観点から分類する。第6章「認識の現場性と確認要求機能」で「ネ」を扱い,第7章「確認要求と当為性判断」で「ダロウネ」を扱う。第8章「否定疑問文の述語形態と機能」では対話の「ノデハナカッタノカ」の定位を行う。なお,本書は2002年の学位論文の関連部分を土台として成立したものである。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 223ページ 5,200円+税 ISBN 4-89476-235-8

谷口一美著 『事態概念の記号化に関する認知言語学的研究』

認知言語学的アプローチにより日英語の構文の分析を行ったものである。第1章「序――理論的背景――」で理論的前提となる認知文法,構文文法,認知意味論の重要な観点を述べる。第2章「事態概念と文法関係の認知的基盤」では,「主語,目的語」などを認知的際立ちなどの要因から特徴づける。第3章「動詞の意味と構文の意味」では,他動性がどのようなカテゴリーかを見ていき,動詞と構文の相互作用について述べる。第4章「非対格性:自動詞の分類とその概念的基盤」では,「非対格」,「非能格」の自動詞分類をプロトタイプカテゴリー観から見ていく。第5章「中間構文」,第6章「補語を伴う知覚動詞の意味と構文の成立」は英語学で有名な構文の分析。第7章「動詞と構文に関する日英語対照研究」は従来「する」型と「なる」型の対立などとされてきた違いを,統一的観点から説明する。第8章「事態概念の拡張と構文の拡張」は日本語の被害受身,英語の疑似目的語構文などを扱う。第9章で「結論」を述べる。なお,本書は大阪大学に提出された学位論文が基になっている。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 364ページ 6,200円+税 ISBN 4-89476-236-6

小林賢次・梅林博人著 『シリーズ日本語探究法8 日本語史探究法』

小池清治・河原修一著 『シリーズ日本語探究法4 語彙探究法』

事例研究を通して各分野の基本事項とその研究方法を提示する「シリーズ日本語探究法」の新刊である。すでに,現代日本語,文法,文字・表記,音声・音韻などに関する巻は刊行済みだが,今回,日本語史と語彙に関する巻が出版された。各章に「「古代語」から「近代語」へは,いつ,どのように変わったのか?[日本語史,時代区分]」(『日本語史探究法』の第1章),「「綺麗」と「美しい」はどう違うか?[単語論]」(『語彙探究法』の第1章)などの題を付けて各論の導入とし,本文,発展問題,参考文献と進んでいく形式は従来と同様である。

『日本語史探究法』の章立ては以下のようになっている。

『語彙探究法』の章立ては以下のようになっている。

2005年2月20日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 154ページ 2,800円+税 ISBN 4-254-51508-1)←『日本語史探究法』

2005年3月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 180ページ 2,800円+税 ISBN 4-254-51504-9)←『語彙探究法』

外崎淑子著 『日本語述語の統語構造と語形成――意味役割の表示と状態述語,心理述語,使役構文からの提言――』

著者自身のまとめによれば,「本書は,極小主義統語論の枠組みと,それと整合する拡散形態論の枠組みで,日本語の状態動詞,形容詞・形容動詞,心理動詞,使役構文,自他の対応,意味役割の生起等について考察し,これらの背後にある日本語の述語構造を提案した」(276ページより)ものである。第1章「序論」で理論的枠組みと,分析にあたって整理すべき点について述べる。第2章「動詞機能範疇の構造と述語内構造」では,この研究における文構造の仮定を提示する。第3章「述語の動作主性・他動性・状態性」では,研究者間で用語や見方が統一されておらず,混乱のもとにもなる,動作主性・他動性などの語の整理を行う。第4章「データ検証」,第5章「心理動詞と使役構文」では,前章までで用意された構造仮説をもとに,具体的な例について論じる。第6章「まとめ」では論考の結果と意義がまとめられている。なお,本書は神田外語大学に出された学位論文が基になっている。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 289ページ 8,400円+税 ISBN 4-89476-238-2

小野正樹著 『日本語態度動詞文の情報構造』

埋め込み節をとる動詞(つまり,補文標識「の」「こと」,および「思う」等の「と」を取る動詞)を「態度動詞」と名付け,その分析を行ったものである。第1章「情報構造と人間の精神活動」で,この研究の位置づけ,情報構造モデルについて述べる。第2章「態度動詞の位置づけ」で,日本語の動詞全体における「態度動詞」の位置づけを行う。第3章「態度動詞の分類」では,その規定と分類を行う。第4章「態度動詞「ト思う」述語文の情報構造」,第5章「モダリティ研究としての「ト思う」と「ト思っている」」,第6章「「ト思う」のコミュニケーション機能」の3章は,「ト思う」に絞って多角的な記述・分析を行う。なお,本書は2003年に筑波大学に提出された学位請求論文が基になっている。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 248+10ページ 9,400円+税 ISBN 4-89476-237-4

水島義治著 『万葉集防人歌の国語学的研究』

「万葉集」巻第20に収載されている諸国の防人等の歌93首について,用字・用語・方言・上代特殊仮名遣の違例等について精査し,考察を加えたものである。序章「防人歌の国語学的研究の意義」に続き,第1章「防人歌の用字」で,使用字母や用字技巧について述べる。第2章「防人歌の用語」では,防人歌用語研究の問題点について触れ,品詞別に語の特徴を見ていく。第3章「防人歌における古代東国方言」では,方言の種別,転訛語,東国特有語についてまとめる。第4章「防人歌における上代特殊仮名遣の違例」では,甲類であるべきところが乙類になっているもの,あるいはその逆に分類して,考察をする。付載として,「東国のことば」,「防人歌音節別・国別文字索引」,「防人歌品詞別・表記別・国別語彙索引」があり,また,巻末に「防人歌転訛語一覧」がある。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月27日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 362ページ 12,000円+税 ISBN 4-305-10358-3

吉野政治著 『古代の基礎的認識語と敬語の研究』

古代日本語を対象に,基礎的認識語と敬語という二つのテーマを扱ったものである。第1篇「基礎的認識語の研究」では,漢語の影響を受ける以前の思惟形式を表す語(=基礎的認識語)の研究を行う。第1章「理由の認識」では,タメ,ユヱ,カラ,第2章「領域の認識」では,マ(間)について考察している。第3章「時空間の認識」では,甲類ト,乙類トの性質を検討し,また,トキ(時)の語源について考えている。第2篇「敬語の研究」では,補助動詞や敬字を扱う。第1章「敬語補助動詞の成立」はマス(イマス),タマフの補助動詞化の過程を論じたものである。第2章「敬字の成立――「御」と「奉」――」は,「御」と「奉」が次第に敬語専用の文字となっていく過程を追ったものであり,表記の面から見た敬語研究になっている。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月28日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 410ページ 10,000円+税 ISBN 4-7576-0300-2

城生佰太郎著 『日本音声学研究――実験音声学方法論考――』

実験音声学の研究を進めてきた著者がこれまでの歩みを(日本語を中心に)まとめたものである。第1章「序論」では音声学の歴史について述べ,自らの研究の位置づけを行う。また,実験音声学と音声科学の違いについて述べる。第2章「音声研究の方法」では,方法論について説明する。第3章「日本語ニャ行子音の国際音声記号表記」は生理音声学的側面からの,第4章「韻律節の提唱」は音響音声学的側面からのアプローチを行ったものである。トルコ語・モンゴル語の分析を行い,そこから得られた韻律節と,日本語の文節との類似性を指摘している。第5章「日本語アクセントの認知的側面に見られる一特徴」は聴覚情報処理的な研究で,事象関連電位を用いた脳波実験を進めたものである。音響音声学に偏っていた従来の研究を是正し,殊に聴覚音声学的観点からの研究が試みられるべきではないかと主張する。なお,本書は2002年に国際基督教大学大学院に受理された学位請求論文が基になっている。

章立ては以下のとおりである。

2005年2月28日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 492ページ 20,000円+税 ISBN 4-585-10097-0

仁田義雄著 『ある近代日本文法研究史』

著者が重要だと考えるいくつかの観点から,明治以降の文法研究がどのような道をたどってきたかを描いたものである。第1部「構文論的研究から見た近代日本文法研究史」は,前編と後編に分かれる。前編「陳述・文成立をめぐって」は,陳述論争の概略について述べ,続いて山田,三宅,時枝,渡辺の論を取りあげ,検討する。後編「主要な文法学説二つ」は,陳述論争の流れからは扱えない松下,橋本の論を見ていく。第2部は「品詞・単語を中心に近代日本文法研究史を見る」となっており,単語とは何か,品詞分類をどうするか,品詞名はどうなっているかなどが扱われる。これは,日本語とは異質の言語を記述するために生まれた西洋文典の枠組みが日本語に出会ったとき,どのようなことが起きたか,日本語の記述は西洋文典からどのような影響を受け,またそこからどのように離れたかを見ていったものである。第3部「人と学問」は,三上章,奥田靖雄,寺村秀夫の学問,学界でのありよう,後世への影響について,個人の個性と周りの状況(時代・社会)の関係に留意しつつ,述べている。

章立ては以下のとおりである。

2005年3月10日発行 和泉書院刊 A5判横組み 268ページ 8,500円+税 ISBN 4-7576-0303-7

丹羽一彌著 『日本語動詞述語の構造』

諸方言を含めた一つのモデルで日本語の動詞述語を説明できることを目指し,標準語中心に組み立てられた文法の枠組みを再考しようという試みである。基本には形式重視の記述言語学的方法を据えており,理論や意味を優先させるやり方を避けている。全11章は,以下のような構成になっている。第1章「文法の考え方」,第2章「動詞述語と陳述」,第3章「命題の範囲とその構造」,第4章「動詞の活用」,第5章「アスペクトと判断」,第6章「否定表現と判断」,第7章「判断を構成する要素」,第8章「終助詞類の分類」,第9章「働きかけという職能」,第10章「丁寧表現と丁寧語」,第11章「まとめと補足」。第3章までで述語部の分析を行い,第4章以下では,具体的にどの要素をどう位置づけるべきかという考察が展開される。

章立ては以下のとおりである。

2005年3月10日発行 笠間書院刊 A5判横組み 198ページ 3,200円+税 ISBN 4-305-70289-4

大石強・西原哲雄・豊島庸二編 『現代形態論の潮流』

形態論や語彙論研究の最新の研究成果を示すという意図を持った論文集である。「リンスインシャンプー」という語の形成を論じる竝木論文,英語の受動形容詞を2種に分ける大石論文,分散形態論の立場から派生名詞を扱う森田論文,英語を題材に句の語彙化を論じる島村論文,名詞化接辞を2種に分け考察する杉岡論文,英語における動詞から派生したモノ名詞を元の動詞の語彙概念構造との関係から考える伊藤論文,結果構文等を扱い,形態と意味の相互作用を論じる影山論文,複合動詞の格素性決定の原理を扱う由本論文,短縮語形成と単語分節の関係を考える窪薗・小川論文,アスペクトの限界性情報とその認可を扱う漆原論文,メンタル・レキシコンについて考える丸田論文,グリーンバーグの派生および屈折接辞の順序に関する説への反例を扱う西原・南條・豊島論文,超分節的な構造分析から五段動詞の語幹末を子音とは考えないという見方をする那須川論文の計13編を収録。

論文リストは以下のとおりである。

2005年3月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 258ページ 4,200円+税 ISBN 4-87424-317-7

安田章著 『国語史研究の構想』

『国語史の中世』(三省堂1996)に続く,著者の第5論文集である。過去10年間に発表したものから選んだ12編を収録している。中世国語の資料である朝鮮資料とキリシタン資料を中心にして,用例の存在とそれが持つ国語史的な意味を考える際には,資料の性格の見定めが肝要と説く。収録された論文は,捷解新語を材料に中世語研究の視点と当該資料の重要性を述べる「外国資料論」,助詞が表層にない現象が当時どの程度あったかを考察していく「格助詞の潜在」,助動詞「らう」について述べる「有ることの意味」のほか,「資料性の検証」,「世話」,「正と誤との相関」,「国語史における規範の問題」,「全一道人再見」,「『和漢三才図会』の「朝鮮国語」」,「司訳院倭学書の資料性」,「『時代別国語大辞典』の特色と課題」,「師 濱田先生」となっている。

目次は以下のようになっている。

2005年3月20日発行 三省堂刊 A5判縦組み 297ページ 9,000円+税 ISBN 4-385-35232-1

飛田良文・琴屋清香著 『改訂増補哲学字彙訳語総索引』

本書は『改訂増補哲学字彙』東京大学三学部御原版(1884)に現れる訳語の索引である。索引編のほか,本文(影印)編,および研究編が収められている。『哲学字彙』は編者の井上哲次郎らが訳語の統一と定着を目指して作成したもので,それまでの訳語のうち妥当な訳を載せ,また,場合によっては適当な訳語を新造している。その点で近代の漢語(訳語)研究のうえで重要なものであると言える。飛田良文『哲学字彙訳語総索引』(笠間書院1979)で,初版の総索引は刊行されていたが,本書はそれに続く改訂増補版の総索引ということになる。これによって,初版で示された訳語にどのような改訂(漢字表記も含めて)が施されているか,どのような見出し語が追加されているか,などの比較が容易になった。研究編ではconsciense, development など8語について調べ,その訳語一覧を作成することによって,この辞書がその後の辞書にどのような影響を与えたかを示すなどしている。

2005年3月25日発行 港の人刊 A5判横組み 499ページ 13,000円+税 ISBN 4-89629-133-6

国語文字史研究会編 『国語文字史の研究8』

国語文字史研究会の第8論文集である。上代戸籍を資料として,字の通用の一例について述べる「「枚」と「牧」の通用――「牧夫」は「ひらぶ」――」(犬飼隆)を含め,計12編の論文を収録。他の論文は,「上代の表記とことば――「参」字をめぐって――」(土居美幸),「善珠『因明論疏明燈抄』所引『玉篇』佚文攷」(井野口孝),「天理図書館蔵『大和物語』四種の平仮名連彫活字」(中嶌容子),「書き手の意識」(今野真二),「観智院本『類聚名義抄』における異体字の記載形式」(田村夏紀),「擬似漢文の展相」(乾善彦),「「」から「急」へ――イソグ訓変遷の環境――」(白石幸恵),「『一之富當眼』の仮名遣い――「い・ひ・ゐ」「え・へ・ゑ」の仮名遣いを中心に――」(矢野準),「『坊っちやん』原稿に現れた漱石の手書きルールについての覚え書き」(佐藤栄作),「漱石の特徴的なあて字――字音的・字訓的表記と意味的表記との混交――」(田島優),「一九六五〜七五年度頃の略字」(蜂矢真郷)となっている。

論文リストは以下のとおりである。

2005年3月25日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 236ページ 7,500円+税 ISBN 4-7576-0304-5

岡野信子著 『屋号語彙の開く世界』

「生活語彙の開く世界」シリーズの第10巻である。家の名前たる屋号にどのような種類のものがあり,その命名・流通に際し,どのような社会背景があるのかを究明していったものである。日本語学的観点からは命名論・語彙論,民俗学や社会学的観点からは社会意識論・社会構造論の面で興味深い。序「屋号語彙概説」で屋号が言葉屋号と家印屋号に分かれ,言葉屋号は誰が命名したかによって共同命名屋号・名乗り屋号・拝領屋号があるとされる。そして,?T「言葉屋号語彙」,?U「家印屋号語彙」でそれについて詳説する。?V「諸地の屋号語彙」では,各地の事例研究を展開する。?W「集落社会生活の中の屋号」は集落の人の屋号観や命名・披露・改変などについて扱う。?X「屋号の歴史」では室町・江戸などの文献に見られる屋号を見ていく。

章立ては以下のとおりである。

2005年3月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 236ページ 2,800円+税 ISBN 4-7576-0282-0

中村明・野村雅昭・佐久間まゆみ・小宮千鶴子編 『表現と文体』

はしがき(中村明)によれば「本書は文学と語学,文体論と表現論とを結びつけ,表現と文体をめぐる日本語の姿を多角的に浮き彫りにしようとするものである」。このような観点からまとめられた論文集であり,全49編をテーマによって9章にまとめている(第1章「ジャンルと文体」第2章「表現分析の基礎」第3章「文体分析の着眼点」第4章「古典文学における文体論の実践」第5章「近代文学における文体論の実践」第6章「文学の表現」第7章「日本語表現の諸相」第8章「日本語表現の現在」第9章「文体論のひろがり」)。最後の第10章は,「文献プロフィール」となっており,1935年から2002年まで約70年間にわたる文章・文体・表現論の基本的文献28を取りあげ,それぞれ600字程度で紹介をしたものとなっている。

論文リストを以下に示す。

2005年3月25日発行 明治書院刊 A5判横組み 530ページ 18,000円+税 ISBN 4-625-43326-6

国語語彙史研究会編 『国語語彙史の研究24』

国語語彙史研究会の論文集である。今回の特集は「近世語」となっており,それに関する論文は,「江戸東京語の敬語形式オ〜ダ」(小松寿雄),「雅俗に遊ぶことばの世界――近世初期俳諧『大海集』の語彙――」(山内洋一郎),「女中ことばの位相」(松井利彦),「近世漢語の重層性について――対訳資料「唐音和解」(一七一六)を中心に――」(陳力衛),「書簡用語集としての『世話早学文』の語彙」(乾善彦)のほか,佐藤貴裕,浅野敏彦,丸田博之,今野真二,王敏東・許巍鐘,櫻井豪人の手になる計11編である。特集以外の論文は「上代語における助詞トによる構文の諸相」(竹内史郎),「今昔物語集の形容動詞――語種からの分析を中心に――」(村田菜穂子),「キブイの意味」(山本佐和子)のほか,藤田保幸,蜂矢真郷,小椋秀樹,岸本恵実の手になる計7編である。

論文リストは以下のとおりである。

2005年3月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 351ページ 10,000円+税 ISBN 4-7576-0315-0