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新刊紹介 (『日本語の研究』第3巻1号(通巻228号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

町田健編 中井精一著 『社会言語学のしくみ』

「シリーズ・日本語のしくみを探る」の第7巻である。「社会言語学」がどんな学問で,何を対象にして,どのように研究するのかを概説した入門書である。第1章「社会言語学の枠組と方法」では,社会言語学の意義やテーマ,日本の社会言語学の特徴やデータ収集の方法について述べる。第2章「日本社会の特質とことば」では,地域差や言語意識,地域社会生活と言葉の関係などについて述べる。第3章「変貌する日本社会とことば」では,高度経済成長に伴う社会変化と言葉の変化の関係,世代差や男女差,集団語について述べる。第4章「国際社会と日本語」では,多言語社会,世界の中での日本語の位置について述べる。巻末では,参考文献(定評があるもの,初学者に向いているもの)についての解説がなされている。なお,本書の冊子本体の表紙・背表紙には「社会言語論のしくみ」と書かれているが,刊行元によると,「社会言語学のしくみ」が正しい書名とのことである。

章立ては以下のようになっている。

(2005年12月20日発行 研究社刊 A5判縦組み 194ページ 2,000円+税 ISBN 4-327-38307-4

江口泰生著 『ロシア資料による日本語研究』

18世紀に薩摩出身の漂流民がロシアに残した資料を基に,その資料的意味を考え,数々の現象を記述し,そこから方言や日本語史に関わる考察を行ったものである。全体は2部に分かれる。「1部 ロシア資料資料論」では,漂流民がロシアに残した日本語資料がどのような性格を持つか,あるいはこれまでどのように研究されてきたか,資料として扱うときにどのような注意が必要か,という観点で資料論を展開する。「2部 ロシア資料形態音韻論」では,資料から得られる当時の薩隅方言に関する事実の積み重ねと,形態音韻論的分析を行う。具体的には,母音の脱落・無声化現象,助詞ノの撥音化,助詞の融合と文節形成などの現象を扱い,その現象が起こる条件を探る。なお本書は『ロシア資料の形態音韻論的研究』(岡山大学文学部2002年)および九州大学に提出された博士論文を大幅に書き改めたものである。

章立ては以下のようになっている。

(2006年2月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 336ページ 10,000円+税 ISBN 4-7576-0350-9

馬渕和夫著 『悉曇章の研究』

本書は,悉曇章(梵字の子音系文字と母音系文字を合成した時にできる文字を,五十音図のような表にしたもの)の資料的性格を明らかにし,梵字に添えられた漢字や朱筆の書き入れ(万葉仮名や漢字など)を検討して,日本語の音韻・表記に関する考察を行ったものである。第1章「悉曇章の伝来」では,悉曇章の説明を行い,日本への伝来について文献にはどのように記述されているかを紹介する。第2章「渡来悉曇章各論」は,諸本について述べたもので,特に安国寺本,東寺観智院金剛蔵第201箱の大悉曇章に多くの紙面を費やしている。第3章「個別問題研究」では,諸流の学統,空海と悉曇との関わりなど,個々のテーマに関する論が展開されるが,中でも「円仁と安国寺本悉曇章」「東寺観智院蔵『全雅本悉曇章』解析」では,書き入れに関する詳細な読み解きが展開される。また,「円仁『在唐記』について」では,これについての従来の説の検討を行なう。第4章「中国漢字音史との関係」では,悉曇章の対注漢字について検討し,安国寺本は当時の長安音,全雅本は南方音を記した資料と推測する。第5章「国語における清濁の意識」では,清濁意識の発生について考究し,第6章「濁音記号」では,濁音記号の発生に関する見解を記す。

章立ては以下のようになっている。

(2006年3月1日発行 勉誠出版刊 A4判縦組み 292ページ 16,000円+税 ISBN 4-585-03145-6

岡田袈裟男著 『江戸異言語接触―蘭語・唐話と近代日本語―』

江戸期における異文化言語との接触・苦闘・交流の実態を解明し,当時の人たちが何を得たのか,あるいは何を考えさせられたかを通じて,文化を考えようとしたものである。具体的には,当時のオランダ語や,明・清の中国語口語の受容がいかにして行われたかを中心に扱っている。全体は5章からなる。第1章「江戸異言語接触と言語文化」では,次章以下の詳しい検討に入る前に概略を説明する。第2章「蘭語学史の諸相」では,『和蘭字彙』の分析(文法の枠組み,音訳語表記,漢語の分析を含む)や「ハルマ和解」との比較,蘭学者が使った文法用語や時制表現把握の様相などが扱われる。第3章「唐話学史 白話の受容と展開」では,岡島冠山の語学書の紹介,唐話辞書の基礎的検討,白話翻訳小説の語彙・文体等の研究,荻生徂徠・太宰春台の著書の分析などを扱う。第4章「蘭学史・蘭語学史と文学・文化」では,広く文化という観点から,異文化と関わった人が感じたことなどを追う。第5章「唐話辞典・江戸時代唐音表・江戸言語学年表」は資料編に相当する。この「江戸言語学年表は」,1253年以降の西暦・年号・干支・一般事項・キリシタン語学・蘭学・蘭語学・唐話学・漢語学・日本語学・海外事項を年表としてまとめたものである。

章立ては以下のようになっている。

(2006年3月20日発行 笠間書院刊 A5判横組み 684ページ 14,000円+税 ISBN 4-305-70308-4

林義雄編 『四本和文対照 捷解新語』

朝鮮李朝で交易・外交の通訳を養成するための教科書として使われた『捷解新語』の「原刊活字本」(1676年),「第1次改修本」(1748年),「重刊改修本」(1781年),「捷解新語文釈」(1796年)の日本語本文部分を対照して示したものである。このうち原刊活字本と二種の改修本は,内容面では変化がないが,言語面では異同が見られる。これは近代日本語形成の過渡期の現象を反映していると考えられている。そこで,『捷解新語』4種の日本語本文を翻字し,対照して並べることでその異同が明らかになるようにし,中世から近世期における日本語の言語変化を研究する際の資料として,『捷解新語』諸本の本文を活用できるようにすることが本書の主たる目的である。なお,「原刊活字本」「重刊改修本」「捷解新語文釈」は,それぞれ『原刊活字本捷解新語』『重刊改修新語』『捷解新語文釈』(いずれも韓国弘文閣出版刊)の本文影印より翻字し,「第1次改修本」は『改修捷解新語(解題・索引・本文)』(韓国太学社刊)の本文影印に基づく翻字本文を用いている。

(2006年3月20日発行 専修大学出版局刊 A5判縦組み 236ページ 5,500円+税 ISBN 4-88125-173-2

矢澤真人・橋本修編 『現代日本語文法―現象と理論のインタラクション―』

北原保雄前筑波大学長の退任を記念して出版された論文集である。教えを受けた人の中で比較的若い世代の現代日本語研究者(70年代生まれが9人含まれる)による14編を収載している。現象と理論の両面に目配りをし,その相互関係を意識しつつ論を進める態度を忘れないという気持ちが副題に込められている。全体は5部に分かれる。第1部は「情報の提示と理解」がテーマで,文内情報完結度を扱った天野みどり論文,否定応答表現を扱った冨樫純一論文,誤用文聴取時の脳波を調べる実験言語学研究を展開する福盛貴弘論文を収める。第2部は「格体制」がテーマで,受動文における動詞外項の降格重視説に反対する石田尊論文,格体制変更現象に関わる「〜テイル」に注目する福嶋健伸論文を収める。第3部は「従属節」がテーマで,引用句内の「は」「が」を扱う阿部二郎論文,B類・C類従属節の情報構造を扱う橋本修論文,資格を表す「〜に」を扱う和氣愛仁論文を収める。第4部は「とりたて」がテーマで,副詞「せいぜい」を扱う安部朋世論文,従属節内の「さえ」「こそ」の解釈と構造を扱う茂木俊伸論文を収める。第5部は「限界性・結果性」がテーマで,副詞的修飾に関する新たな概念構造を提案する井本亮論文,結果性と限界性を分けることが格体制記述にも有効であることを示す川野靖子論文,ある条件下で動詞が方向を表す句を持つことが可能かどうかということと,その動詞の経路指向性との関係について述べる北原博雄論文,結果修飾と様態修飾を検討してその再編を試みる矢澤真人論文を収める。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年3月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 368ページ 7,800円+税 ISBN 4-89476-277-3

小林芳規博士喜寿記念会編 『小林芳規博士喜寿記念 国語学論集』

小林芳規氏の喜寿を記念した論文集である。門下生や,角筆文献の研究を通して交流のある韓国の研究者が稿を寄せている。「乃至」の訓読を例にして,平安初期にはテニヲハを読み添える訓法あるいは不読の語が,平安後期ごろから次第に音読語化する変化について述べる小林芳規論文以下,合計34編を収める。執筆者は,山内洋一郎,東辻保和,柳田征司,来田隆,沼本克明,三保忠夫,村田正英,金子彰,松本光隆,原卓志,田中雅和,榎木久薫,山本秀人,佐々木勇,山本真吾,西村浩子,柚木靖史,〓竹民,青木毅,宇都宮啓吾,田村夏紀,土居裕美子,岡野幸夫,連仲友,橋村勝明,磯貝淳一,浅田健太朗,世羅恵巳,森岡信幸,尹幸舜,金永旭,李丞宰,南豊鉉である。巻頭に,小林芳規氏の略年譜,業績目録を収録している。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年3月26日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 696ページ 22,000円+税 ISBN 4-7629-3547-6

青柳宏著 『日本語の助詞と機能範疇』

本書は「日本語を特徴づけるとりたて詞を中心とした助詞や接辞がどのような仕組みで実現し,また解釈されるのかを生成文法理論の立場から論じる」ことを目的としている(3ページより引用)。第1章「助詞,接辞と膠着」で,前提とする文法モデルと論の対象となる基本概念を示す。第2章「とりたて詞と機能範疇」では,とりたて詞の位置づけを論じており,接語的付加詞である(形態的には基体を選ばない非独立要素であって,統語的には任意要素)との仮説を提示する。第3章「とりたて詞と格助詞」では,これらの助詞の連結順序の事実を説明しようとする。とりたて詞については係助詞と副助詞との区別の必要性,格助詞に関しては抽象格ではなく形態格であるとの指摘がなされる。第4章「とりたて詞と焦点」では,焦点決定には,とりたて詞の作用域と,とりたて詞とは無関係な焦点の二つが絡んでいることを示す。第5章「動詞・形容詞と機能範疇」では,動詞と機能範疇の膠着について,ゲルマン諸語の場合は述語上昇という説明がなされるが,日本語の場合は,述語上昇ではなく形態的併合による説明が適切であることを論じる。なお,本書は南カリフォルニア大学に提出された博士論文を基に,大幅な加筆修正を行ったものである。

章立ては以下のようになっている。

(2006年3月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 216ページ 6,000円+税 ISBN 4-89476-286-2

野沢勝夫著 『「仮名書き法華経」研究序説』

「仮名書き法華経」の諸本の関係を整理し,主要系統に属さない瑞光寺本・月ガ瀬本の紹介をし,それらと妙一本(主要系統)との比較・考察を行ったものである。全体は2篇に分かれる。まず<論考篇>では,諸本の系統整理を行う(法印本―唐招提寺蔵の断簡―天理本―妙一本―足利本の流れに属するものが「妙一本群」としてまとめられる)。そして,妙一本群に属さない瑞光寺本・月ガ瀬本の紹介をする。また,「「法華経切れ」に見る仮名書き法華経―「翻訳法華経」の存在―」と「「絵巻」のなかの仮名書き法華経―「簡約仮名書き法華経」の存在―」では,中世の「仮名書き法華経」とは別種の仮名書き資料の存在を論じる。他に,「仮名書き法華経に見る謙譲の「給フ」の消長」では,仮名書き法華経を国語資料として使い,謙譲の「給フ」の四段化について論を展開する。次に<資料篇>では,〔比較,考察〕の項で瑞光寺本と月ガ瀬本をそれぞれ妙一本と比較し,その考察を記す。また,〔翻字〕の項で,この二本の翻字を行う。

章立ては以下のようになっている。

(2006年3月30日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 408ページ 13,000円+税 ISBN 4-585-03150-2

浦野聡・深津行徳編 『古代文字史料の中心性と周縁性』

立教大学東アジア地域環境問題研究所が主催した国際シンポジウム「歴史的コンテクストの中における文化財(古代文字史料)の『中心性』と『周縁性』」(2004年12月)の報告原稿を編集したものである。古代地中海世界を対象とする研究者(英国の大学から4名)と,古代東アジア世界を対象とする研究者(韓国の大学から1名,日本の大学などから7名)が,研究対象の違いを越えて,情報交換を行ったものである。発掘史料を対象として,「中心」と「周縁」という概念で問題発見を試みている。収録された論文は,「古代東アジア史料の世界」(李基東),「古代日本史料の世界」(石上英一),「古代日本からみた東アジアの漢字文化とメンタリティの多様な成り立ち」(新川登亀男),「古代日本における地方社会と文字」(平川南),「木簡はどういう所から出土するか?」(寺崎保広)など12編である。このほかの執筆者は,アラン=K=ボウマン,チャールズ=V=クラウザー,エレイヌ=マシューズ,冨谷至,李成市,浦野聡,ロジャー=トムリンである。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年3月31日発行 春風社刊 A5判縦組み 360ページ 3,500円+税 ISBN 4-86110-067-4

窪薗晴夫著 『岩波科学ライブラリー118 アクセントの法則』

本書は,日本語の単語にどのようなアクセントの法則が隠れているかを明らかにすることを通して,言葉の中に(さらには頭の中に)規則の体系が存在していることを説明しようとしたものである。「プロローグ」に続き,「1 標準語のアクセント」「2 標準語と英語のアクセント」では,標準語のアクセント体系を分析する。従来は,単純語か複合語か,あるいは動詞か形容詞かなどの条件によって,アクセント規則が左右されると言われてきたが,基本的には同じ原理に拠っていることが明らかにされる。また,英語・ラテン語などの例を検討して,アクセントの一般原理を導く。さらに,一見アクセントとは無関係と思われている現象が,実はその規則によって生み出されている可能性について述べている。「3 平板式アクセントの秘密」では,どのような語が平板式になるかの条件を探る。「4 鹿児島弁のアクセント」では,複雑そうに見える鹿児島弁アクセント体系が,標準語の場合と異なる観点から見ると,単純明快な体系を持っていることを指摘する。「5 鹿児島弁のアクセント変化」では,標準語の体系からの影響で,独自の体系が崩れてしまう可能性が大きくなってきたと述べている。

章立ては以下のようになっている。

(2006年4月5日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 136ページ 1,200円+税 ISBN 4-00-007458-X

海保博之監修 針生悦子編 『朝倉心理学講座5 言語心理学』

行動実験というアプローチをとっている執筆陣によって書かれた言語心理学の概説書である。「1 言語心理学研究の潮流」(針生悦子)では「生得か学習か」を切り口に現在の研究動向を紹介する。「2 発話の知覚」(大竹孝司)では単語の聞き取りなどにおける分節の問題を扱い,「3 心的辞書」(久野雅樹)では,脳内単語検索などの高速性を可能にしている内部機構の問題を扱う。「4 文章の理解」(中條和光)は,理解過程における状況モデル生成の研究であり,「5 文章産出」(内田伸子)は,子供の物語産出,作文,推敲における過程の研究である。「6 語用論」(岡本真一郎)と「7 ジェスチャー」(野邊修一)は,状況の中での意味,コミュニケーションについての研究を紹介している。「8 言語と思考」(針生悦子)は,言語の思考への影響について,「9 言語獲得」(小椋たみ子)は,言語獲得における遺伝と環境,前提条件,個人差について述べる。「10 言語獲得のコンピュータ・シミュレーション」(河原哲雄)は,情報処理の計算論的モデルで言語獲得を研究する手法の現況について述べる。

章立ては以下のようになっている。

(2006年4月10日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 212ページ 3,600円+税 ISBN 4-254-52665-2

国広哲弥著 『日本語の多義動詞―理想の国語辞典II―』

多義の動詞をいくつか取り上げ,その多義のあり方についての具体的な分析と考察を行ったものである。前著『理想の国語辞典』(大修館書店1997年)の第二部「多義語」を発展させ,より具体的な検討をしたものと見ることができる。「序説」で方法論や注意点について述べ,「多義動詞の分析と記述」で個々の検討を行う構成になっている。取り上げられた単語は,「あおぐ(仰ぐ),あらう(洗う),くずす(崩す)・くだく(砕く),くれる(暮れる),こぐ(漕ぐ),こる(凝る),ころがる(転がる),しめる(閉める)・とじる(閉じる),とく(解く・溶く・梳く・説く),とぐ(研ぐ),とまる(止まる・泊まる・留まる),なおす(直す・治す),ながれる(流れる)・ながす(流す),ならう(倣う・習う),ぬう(縫う),ぬく(抜く),ねる(練る),のこる(残る),のぞく(覗く),のぞむ(望む・臨む),のびる(伸びる・延びる),はかる(計る・測る・量る・諮る・図る・謀る),はずれる(外れる),はらう(払う),はる(張る),ひかえる(控える),ひねる(捻る),ひらく(開く),ふく(拭く),ふむ(踏む),ふれる(触れる),ほる(掘る・彫る),まく(巻く),まつ(待つ),まわる(回る),もつ(持つ),もどる(戻る)・もどす(戻す),もむ(揉む),もる(盛る),やく(焼く),やける(焼ける),やすむ(休む),やぶる(破る),よぶ(呼ぶ),よむ(読む)」である。

(2006年4月20日発行 大修館書店刊 A5判縦組み 336ページ 2,300円+税 ISBN 4-469-22178-3

国語文字史研究会編 『国語文字史の研究9』

文字史に関わる11編を収めた論文集である。四つ仮名や開合の初期例かと見られる仮名表記を検討する遠藤邦基論文,宣命の用字をめぐる奥村悦三論文,定家の表記に関する説を再考する矢田勉論文,世阿弥自筆能本のマ・バ行音の表記を扱う長谷川千秋論文,『古事記伝』の特異な仮名字体使用の裏に『古言梯』の影響を想定する内田宗一論文,江戸期女性の仮名使用実態を往来物の調査を通して考える永井悦子論文,中世の医家・田代三喜の造字についての考察と京都大学富士川文庫本『百一味作字』の影印を載せる佐藤貴裕論文,森鴎外の著作を例にとり同語異表記についての考察をする今野真二論文,外来語片仮名文字列の特質を近代期雑誌『太陽』やその前身資料から考える深澤愛論文,日本統治期の『臺灣民報』を調査し,外国地名の表記の実態を描く王敏東ほかの論文,促音や撥音を中心に現代のローマ字表記の例を見ていく蜂矢真郷論文を収めている。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年4月25日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 256ページ 8,000円+税 ISBN 4-7576-0371-1

上田功・野田尚史編 『言外と言内の交流分野―小泉保博士傘寿記念論文集―』

本書は53編からなる記念論文集である。冒頭に「傘寿の辞」(小泉保),「小泉保博士履歴・学会活動・研究業績」があり,これまでの歩みとこれからの目標について知ることができる。扱われた分野の広さを反映して,収載論文も多彩である。「フィンランド語の離格の用法について」(佐久間淳一)などのウラル語系を扱ったもの,「定住外国人対象の日本語教育の枠組みに関する一考察」(足立祐子)などの語学教育に関わるもの,「「どうせ」の意味と既定性」(有田節子)や「とりたて助詞と条件・否定の相互作用」(澤田美恵子)などの意味・文法についてのもの,「英語のジョークと川柳の笑いについて―関連性理論による分析―」(東森勲)等の語用論に関わるもの,「「認知語用論」の展開―参照点能力と推論―」(林宅男)等の認知言語学に関わるものなどがある。このほかに,池田哲郎,伊藤克敏,稲葉信史,上田功,上村隆一,大島一,何自然・劉小珊,甲斐ますみ,鍵村和子,加納満,金良宣,金水敏,久保進,黒田史彦,児玉徳美,小林純子,小牧千里,澤田治,澤田淳,澤田治美,志水義夫,荘司育子,杉本孝司,砂川有里子,宗田安巳,高見健一,田澤耕,田中廣明,田中美和子,谷上れい子,陳訪澤,筒井佐代,徳井厚子,野瀬昌彦,野田春美,野田尚史,蓮沼昭子,林礼子,樋口功,藤家洋昭,Emi Matsumoto,村岡貴子,村松英理子,山口治彦,山梨正明,由井紀久子,余維の論考を収める。

内容は以下のようになっている。

(2006年4月30日発行 大学書林刊 A5判横組み 632ページ 10,000円+税 ISBN 4-475-01875-7

遠藤織枝編 『日本語教育を学ぶ―その歴史から現場まで―』

本書は,遠藤織枝編『概説日本語教育』(三修社1995年初版,2000年改訂版)を,時代の変化に合わせて項目・内容を新たにしたものと位置づけられる。第1章「日本語を学ぶ人・教える人」(谷部弘子)では,1980年以降の日本語教育の現状を海外・国内に分けて概観する。第2章「言語学」(桜井隆)では,言語学の基本を概説する。第3章「日本語教育現場における異文化コミュニケーション」(ヒダシ,ユディット)では,文化や誤解などを扱う。第4章「何を教えるか,どう教えるか」(川口良)では,教育の内容と方法,第5章「どう評価するか」(島田めぐみ)では,評価法について述べる。第6章「さまざまな外国語教授法」(加納陸人)では,代表的な教授法を紹介し,海外での教育法と現地レポートを載せる。第7章「第二言語習得研究と日本語教育」(小柳かおる)では,第二言語習得研究理論と外国語教育への応用について述べる。第8章「社会とことば」(遠藤織枝)では,言語権の問題と生活の中の日本語について述べる。第9章「日本語教育をふりかえる―日本語教育の歴史―」(本田弘之)では,日本語教育史について述べる。

章立ては以下のようになっている。

(2006年4月30日発行 三修社刊 A5判横組み 248ページ 2,400円+税 ISBN 4-384-04078-4

倉島節尚編 『日本語辞書学の構築』

倉島節尚氏の古稀を記念した論文集(編集委員は沖森卓也,木村義之,陳力衛,中山緑朗,山田進)である。「語彙・辞書研究会」の参加者による論文を中心に35編が収載されている。巻頭の「日本語辞書学構築の礎を―序に代えて―」(倉島節尚)で,辞書をめぐる検討課題や辞書学の展望について述べ,さらに本書の構成についての説明をする。収載論文の内容は多岐にわたるが,おおよそ「意味記述」「個別資料」「辞書中の語の扱い」「語誌」「対照言語学」「電子化・コーパス」に分けられる。執筆者(上記編集委員以外)は,野村雅昭,荻野綱男,伊藤雅光,松岡洸司,坂詰力治,上野和昭,木村一,武藤康史,當山日出夫,橋本和佳,相澤正夫,川嶋秀之,岩淵匡,安田尚道,〓a岡昭夫,砂川有里子,山田潔,佐藤武義,坂梨隆三,小杉商一,田中牧郎,〓b喜〓c,潘鈞,王学群,松岡榮志,李漢燮,牧野武則,横山晶一,柴田実である。

内容は以下のとおりである。

(2006年5月5日発行 おうふう刊 A5判横組み 536ページ 15,000円+税 ISBN 4-273-03431-X

小谷博泰著 『木簡・金石文と記紀の研究』

1999年以降に発表された木簡など文字資料をめぐる論考と,古事記・日本書紀についての論考をまとめたものである。全体は2部に分かれており,第1部「上代文字資料の表記をめぐって」では,木簡,幡の銘文,法隆寺薬師像光背銘等の金石文などについての表記・文体に関する論考を中心に10編を収めている。近年の新たな木簡の出土によって,かつては通説とされた「漢文から変体仮名へ」「音訓交用文から万葉仮名文へ」「記紀の歌謡借音仮名表記が新しい表記である」「和歌の表記は人麻呂の略体表記から」とする説が揺らいでいる様子がわかる。また,第2部「古事記の成立と日本書紀」では,「木花之佐久夜毘売」「天孫降臨」などのテーマごとに古事記と日本書紀の対照を行い,記紀の関係を探ろうと試みる論考を中心とした10編を収めている。

内容は以下のようになっている。

(2006年5月10日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 340ページ 12,000円+税 ISBN 4-7576-0369-X

筑紫国語学談話会編 『筑紫語学論叢2―日本語史と方言―』

1981年に始まった筑紫国語学談話会を主導してきた一人である迫野虔徳氏の九州大学退職を記念した論文集である。「日本語史と方言」というテーマの下に執筆された31編の論文を収めている。上代日本語母音調和の従来説検討と研究の見通しを述べる早田輝洋論文,「たまげる・たまぎる」の語誌を追う前田富祺論文,『古今集』554番歌の解釈を検討する山口佳紀論文,『蒙求抄』資料研究の一環として高野山宝寿院蔵本を紹介し位置づけを行う柳田征司論文,「巳の時,午の時」などの時刻表現の転義を見ていく鈴木丹士郎論文,『交隣須知』の成立について検討し,通説である雨森芳州関与説を疑う迫野虔徳論文が並ぶ。これ以外の論文は,各分野に分けられている。「1 音韻・表記」には,佐野宏,江口泰生,高山倫明,奥村和子,矢野準,「2 文法」には,堀畑正臣,山下和弘,荻野千砂子,青木博史,「3 語彙」には,辛島美絵,山本秀人,前田桂子,播磨桂子,新野直哉,林慧君,「4 文献」には,田籠博,藤本憲信,山県浩,岡島昭浩,坂本浩一,「5 方言」には,木部暢子,久保智之,高橋敬一,〓村弘文,杉村孝夫の論考が収録されている。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年5月15日発行 風間書房刊 A5判縦組み 610ページ 17,000円+税 ISBN 4-7599-1575-3

金田一春彦著 『金田一春彦著作集5 国語学編5』 『金田一春彦著作集9 論文拾遺』 『金田一春彦著作集別巻』

第5巻は,『四座講式の研究―邦楽古曲の旋律による国語アクセント史の研究各論(一)』(三省堂1964年)を収めたものである。第9巻は,「補忘記の研究,続貂」(日本方言学会編『日本語のアクセント』1942年)以下,20編の論文を収めたものである。第9巻の編集にあたり,主題別に5群に分けて配列している。第9巻所収論文のうち「日本四声古義」など11編は,『日本語音韻音調史の研究』(吉川弘文館2001年)に収められており,読者にとって手に取りやすい環境にあったが,これらに加えて本書には,「日本語のアクセントから中国唐時代の四声値を推定する」(『日語学習的研究』第4巻第5号1980年),「埼玉県下に分布する特殊アクセントの考察」(プリント私家版1948年)など,簡単には見られなかったものも含まれる。別巻は,遺稿である「林大君のこと」や,その他,柳田國男との対談,「国語問題」についての座談(他の出席者は,池田弥三郎,熊沢龍,時枝誠記,林大)などを収める。また,年譜と著作目録(両方とも『金田一春彦博士古稀記念論文集』の第3巻所載のものに補訂を加えたもの),著作集の総索引がある。総索引は,標題索引,件名索引(末尾には「アクセントの型」索引がある),人名・機関名索引,書名・作品名索引からなる。

【第5巻】(2005年9月25日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 720ページ 8,500円+税 ISBN 4-472-01475-0
【第9巻】(2005年9月25日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 656ページ 8,500円+税 ISBN 4-472-01479-3
【別巻】(2006年5月19日発行 玉川大学出版部刊 A5判縦組み 360ページ 5,000円+税 ISBN 4-472-01483-1

山口仲美著 『日本語の歴史』

本書は,日本語の歴史についての概説を,専門書の延長ではなく,一般の人に受け入れられやすい形で述べようとしたものである。著者は「日本語の歴史に関する専門的な知識を分かりやすく魅力的に語ること」「できる限り,日本語の変化を生み出す原因にまで思いを及ぼし,「なるほど」と思ってもらえること」「現代語の背後にある長い歴史の営みを知ってもらうことによって,日本語の将来を考える手がかりにしうること」(7ページより引用)の3点を実現しようという思いで執筆したと述べている。また,「話し言葉」と「書き言葉」のせめぎあいという観点から叙述するという基本姿勢を打ち出している。内容は,序章にあたる「日本語がなくなったら」に続き,「漢字にめぐりあう―奈良時代」,「文章をこころみる―平安時代」,「うつりゆく古代語―鎌倉・室町時代」,「近代語のいぶき―江戸時代」,「言文一致をもとめる―明治時代以後」,結語にあたる「日本語をいつくしむ」となっている。なお,本書は岩波新書新赤版の1018である。

(2006年5月19日発行 岩波書店刊 新書判縦組み 240ページ 740円+税 ISBN 4-00-431018-0

真田信治監修 任栄哲編 『韓国人による日本社会言語学研究』

任栄哲氏門下の研究者による社会言語学的な日韓対照研究の論文集である。「出版の辞」(真田信治)に続き,「韓国人とのコミュニケーション」(任栄哲)では,日本と韓国の言葉・文化に関わる相違などについて概説する。以下は3部に分かれる。「日本人と韓国人の言語行動」には,スタイル切換えについて述べる李吉鎔論文,韓国での接客言語行動を扱う金美貞論文,セールス場面での発話順番取りを扱う呉恵卿論文を収める。「日本と韓国の言語表現の比較」には,断り談話に使われる理由表現を扱う任〓a樹論文,漫画の感情補足記号を扱う権敬〓b論文,シナリオ談話を材料に第三者への敬語を扱う金順任論文を収める。「日本における韓国人・韓国語」には,在日一世の言語運用を扱う金智英論文,バイリンガリズムを扱う朴良順論文,韓国の帰国子女のコード・スイッチングを扱う郭銀心論文,日本での韓国語学習者の学習目的と学習意識を扱う金由那論文を収める。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年5月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 248ページ 2,200円+税 ISBN 4-273-03432-8

中井精一・ダニエル=ロング・松田謙次郎編 『日本のフィールド言語学―新たな学の創造にむけた富山からの提言―』

本書は富山大学人文学部が進めてきた日本海総合研究プロジェクトの研究報告4として刊行されたものである。今回は,このプロジェクトの一環として多分野総合型の研究が企図され,「日本のフィールド言語学」というテーマの下に調査研究が行われた。本書はそれに基づく22編の論文集である。変異理論が日本では多少誤解されて捉えられたことや,その理論が持つ可能性などを日本のフィールド言語学の研究史を織り込みながら述べる松田謙次郎論文,方言話者も含む日本語(標準語)非母語話者を研究対象にした社会言語学を扱うダニエル=ロング論文,奈良の文化・環境と「食」の語彙を扱う中井精一論文,『方言文法全国地図』についても触れながら言語地理学の発展と衰退と再起動について述べる大西拓一郎論文がある。このほかに,金澤裕之,太田一郎,岸江信介,都染直也,新田哲夫,二階堂整,井上文子・三井はるみ,田原広史,鳥谷善史,日高水穂,村上敬一,余健,西尾純二,朝日祥之,松丸真大,阿部貴人,高木千恵,市島佑起子の論考を収める。

収録されている論文は以下のようになっている。

(2006年5月31日発行 桂書房刊 A5判縦組み 348ページ 3,000円+税 ISBN 4-903351-09-2

内間直仁・野原三義編著 『沖縄語辞典―那覇方言を中心に―』

沖縄県那覇方言のうち,現在60歳以上の人によって日常的に用いられてきた語を中心に,古典文学作品の語,他方言には見られない那覇方言独自の語を加えた見出し語約8000の辞典である。歴史的にもっとも有力な位置にあった首里方言を基にする(あるいは中心にする)沖縄語辞典は多いが,本書は,首里方言とは微妙に違う点がある那覇方言を中心とし,本書の特色の一つとなっている。構成は「序」「凡例」に続き,「那覇方言概説」「主要参考文献」を記して,本編の「沖縄語辞典」の部に入る。巻末に「古典文学引用一覧」(琉歌,組踊,歌劇),「和沖索引」がある。辞典の部では,方言語形を五十音に準じて配列し,それぞれにアクセント,音声のIPA表記,品詞,活用形,語源,語義,用例,典拠,参照などの項目を記述している。

(2006年5月発行 研究社刊 B6判横組み 448ページ 3,200円+税 ISBN 4-7674-9052-9

日本語ジェンダー学会編 佐々木瑞枝監修 『日本語とジェンダー』

2000年に設立された日本語ジェンダー学会の論文集である。社会的・文化的な性役割が日本語の表現にどのような形で現れているかを論じている。男性を表す語句を扱った佐々木瑞枝論文,ジェンダーとポライトネスの関係について述べる宇佐美まゆみ論文,終助詞の男女差を日本語教育の立場から扱う小川早百合論文,談話の中でジェンダー表示形式が持つ役割について述べる因京子論文,女性文末詞の使用が「現実」と「女性が書いた脚本」・「男性が書いた脚本」でどう違うかを述べる水本光美論文,日本語教材に見られる女性・男性の職業描写,挿絵の男女比,ステレオタイプなどを調査した渡部孝子論文,源氏物語のジェンダー意識を扱った佐藤勢紀子論文,明治期女学生ことばを扱った中村桃子論文,ホフステードの文化モデルで日本の男性らしさが高数値になることについて考察するユディット=ヒダシ論文,自分の立場を表すという観点から,主語・文体などについて述べ,ジェンダー表現の意味を考える日置弘一郎論文の10編からなる。

論文の題名・筆者名は以下のとおりである。

(2006年6月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 226ページ 2,400円+税 ISBN 4-89476-274-9