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新刊紹介 (『日本語の研究』第3巻2号(通巻229号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

鈴木一著 『松下文法論の新研究』

本書は,松下大三郎の文法論に関する諸著述を比較検討し,それらの資料をもとに松下文法がどのように変化したか,その特質は何か,という問題に迫ったものである。従来の松下文法に関する論は『改撰標準日本文法』の解析に重点があったが,本書により動的・立体的な松下文法像を得られることとなった。第1章「構文研究史上の松下大三郎」では,松下文法の構文観と特質について述べる。第2章「松下大三郎の構文論の研究」では,『標準日本文法』と『改撰標準日本文法』を比較し,その異同を探ることにより,松下文法論の基軸と振幅を明らかにする。また,『標準漢文法』と『改撰標準日本文法』昭和5年訂正版のための入稿用原本を用いて,松下の思考の軌跡を探り,初期の文論や文の解剖論にも論及する。第3章「文の成分としての形式語の研究」は,松下文法の着想を生かそうとする試みである。第4章「松下文法の用語研究」は,基本用語180項目について解説を施したものである。なお,本書は博士論文に加筆をしたものである。

内容は以下のようになっている。

(2006年6月1日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 384ページ 13,000円+税 ISBN 4-585-03141-3

全国大学国語国文学会編 『日本語日本文学の新たな視座』

全国大学国語国文学会の50周年を記念して出版された論文集である。この50年における各分野の研究を総括し,今後に生かすことを目的としている。上代7編,中古15編,中世7編,近世10編,近代10編,国語学10編の論文を収録している。国語学は,「国語史研究のこれまでとこれから」(柳田征司),「「近代語」とは何か」(小林賢次),「文献資料と口語性」(辛島美絵),「漢字文から見える世界」(橋村勝明),「いま近世・近代語研究で何が問題か―近世〜明治期江戸語・東京語研究を中心に―」(神戸和昭),「文法論と意味論―その相関性―」(岩下裕一),「文字・表記研究の資料と方法と」(今野真二),「古辞書研究のパラダイム」(鈴木功眞),「「国語学史」再考―概説的記述と専門的記述をめぐって―」(矢田勉),「方言の現在と方言研究の今後」(齋藤孝滋)の各論である。

収録された論文は以下のとおりである。

(2006年6月3日発行 おうふう刊 A5判縦組み 582ページ 6,800円+税 ISBN 4-273-03437-9

加藤重広・吉田浩美編 『言語研究の射程―湯川恭敏先生記念論集―』

湯川恭敏氏の熊本大学定年退職を記念した論文集である。日本語に関する論文は2編ある。一つは「N1が N2が 自動詞」という構文を検討し,N1の性質について述べる永井忠孝論文,もう一つは,日本語の数量詞に関して従来の自説をさらに進め,連体数量詞文(例えば「6本の鉛筆を買った。」)と連用数量詞文(「鉛筆を6本買った。」とは,一方から他方を派生するという関係ではないこと,そして,両者に類似性を感じるのは語用論的な要因があることを述べる加藤重広論文である。そのほかに,中国語に関して,「被」を扱う太田栄次論文,「是……的」構文を扱う許慧論文の2編があり,さらにモンゴル語(梅谷博之),ビルマ語(加藤昌彦),バリ語(塩原朝子),タラウド語(内海敦子),ウォライタ語(若狭基道),マテンゴ語(米田信子),ケレウェ語(小森淳子),バスク語(吉田浩美)に関する論文がそれぞれ1編収録されている。

収録された論文は以下のとおりである。

(2006年6月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 274ページ 8,800円+税 ISBN 4-89476-298-6

前田富祺・野村雅昭編 『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』

本書は,朝倉漢字講座の第2巻であり,漢字の機能面に重点を置いた内容を扱っている。全体は10章にわかれている。第1章「表語文字としての漢字」(田島優)では,表語文字としての漢字の機能を明らかにするために,表記の諸側面を検討する。第2章「漢字の音」(湯澤質幸)では,漢字の1字複数音現象の成立を追う。第3章「漢字と表記」(佐竹秀雄)では,正書法と漢字の関わり,語・文・文章の表記における漢字の働きを見ていく。第4章「意味と漢字」(乾善彦)では,漢字の表語構造を考え,その上で字義と和訓の対応,字義の変化などを扱う。第5章「漢字の造語機能」(小林英樹)では,漢語を構成する言語単位の造語機能を扱う。第6章「字体・書体」(笹原宏之)では,字体・書体の概念とそれらに対する意識について述べる。第7章「漢字の認識と発達」(齋藤洋典)では,認知の観点から読みの処理過程の特徴を考える。第8章「漢字の使用量」(横山詔一)では,新聞などを対象とした調査の結果を紹介する。第9章「漢字の位置」(野村雅昭),第10章「漢字文化論」(前田富祺)では,この講座の編者が自らの立場から漢字の文化的位置づけを行う。なお,本書でシリーズ全5巻が完結した。

内容は以下のようになっている。

(2006年6月20日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 244ページ 3,800円+税 ISBN 4-254-51532-4

安田敏朗著 『統合原理としての国語―近代日本言語史再考3―』

『近代日本言語史再考―帝国化する「日本語」と「言語問題」―』(2000年),『脱「日本語」への視座―近代日本言語史再考2―』(2003年)に続く第3論文集である。「序論 統合原理としての「国語」への回帰」では,文化審議会答申の『これからの時代に求められる国語力について』の批判的分析を行う。第1部「近代化・帝国化する言語─国語・日本語の機能─」では,言語の近代化・帝国化に伴う暴力的側面の問題を扱い,言語と文化の一体化について検討をする。第2部「脱帝国化する言語─国語・日本語が刻印したもの─」では,支配システムとしての日本語を「配電システム」という比喩で語り,それが植民地社会に何を残したのかを考える。第3部「「配電システム」というくびき」では,琉球の言葉を言語と見るか方言と見るかという問題について,服部四郎の論を中心に検討していく。「結論─近代日本言語史の構図─」では,過去10年における自身の研究の論点をまとめている。

内容は以下のようになっている。

(2006年6月20日発行 三元社刊 B6判縦組み 376ページ 2,700円+税 ISBN 4-88303-178-0

文化庁文化部国語課編 『平成17年度 国語に関する世論調査 日本人の敬語意識』

毎年行われている「国語に関する意識調査」の報告書である。今回の調査は2006年2月から3月にかけ全国16歳以上の男女個人3000人を対象として面接聴取法により行われた。調査内容は,敬語に関するものと,慣用句などを含む言葉遣いについてである。敬語については,敬語意識を問う質問,具体的な状況を設定してそのときにどう言うかを尋ねる質問などがある。また,宛名の書き方,複雑な状況で誰にどのように敬語を使うかなどのほか,自分や相手の呼び方などについても調べている。慣用句などについては,「(あいそ/あいきょう)を振りまく」「怒り心頭に(達する/発する)」などの言い方のどちらを選ぶか,「あとで後悔した」などの例を示して気になるか否かを答える質問などがある。

(2006年7月18日発行 国立印刷局刊 A4判横組み 98ページ 1,200円+税 ISBN 4-17-196060-6

城生佰太郎博士還暦記念論文集編集委員会編 『実験音声学と一般言語学―城生佰太郎博士還暦記念論文集―』

城生佰太郎氏の還暦を記念した論文集である。第1部「音声研究」と第2部「言語研究」にわけられている。第1部は,第1章「実験音声学」,第2章「音声学・音韻論」,第3章「関連領域」,第2部は,第4章「一般言語学」,第5章「個別言語学」,第6章「応用言語学・関連領域」からなり,合計53編の多彩な論文を収録している。日本語を扱ったものを中心に紹介すると,新潟の一方言のオ段長音開合現象を扱う大橋勝男ほかの論文,日本語アクセントを担う音節について述べる三浦弘論文,FMやCDなどの頭文字語を読む際のアクセントを論ずる上野善道論文,日英語の基礎色彩語彙を分析する皆島博論文,動詞の形態論についての佐々木冠論文,古代日本語のテンスとアスペクトを図示しようとする今泉喜一論文,版本狂言記研究の構想について述べる大倉浩論文,GoogleやWWWコーパスによる研究手法について述べる荻野綱男論文,「第三者調査」導入を論じる宮崎里司論文,漢字文化圏出身学習者に対する「漢語知識を利用した日本語教育」について述べる三松国宏論文などがある。

収録された論文は以下のとおりである。

(2006年7月25日発行 東京堂出版刊 A5判横組み 608ページ 18,000円+税 ISBN 4-490-20579-1

鈴木良次編 『言語科学の百科事典』

「言語はもはやある一つの学問分野だけが独占するものではなく,全学問分野が関与する,そして関与しなければならない複合的な領域である」(「まえがき」より引用)という考えをもとに作られた事典である。すなわち,言語研究は学際的な領域であるがゆえに,各分野の基本的な概念を簡潔に解説したものが求められており,それに応じるものを作ったということである。本事典は8編にわかれ,「1.人文科学編」は言語学など,「2.教育学編」は言語習得など,「3.日本語学編」は日本語学,「4.社会科学編」は社会言語学,「5.生物学編」は進化や遺伝子など,「6.医学編」は脳や視聴覚など,「7.工学編」は自然言語処理やロボットなど,「8.人間学編」は文学・音楽・哲学・論理などの項目を解説している。全体を通して,見開き2ページで一つの項目の説明を記述する体裁となっている。

(2006年7月31日発行 丸善刊 A5判横組み 874ページ 23,000円+税 ISBN 4-621-07733-3

井出祥子・平賀正子編 『講座社会言語科学1 異文化とコミュニケーション』

橋元良明編 『講座社会言語科学2 メディア』

片桐恭弘・片岡邦好編 『講座社会言語科学5 社会・行動システム』

伝康晴・田中ゆかり編 『講座社会言語科学6 方法』

1998年に創設された社会言語科学会が,研究成果の公開や参加の呼びかけを企図して刊行した全6巻の講座のうちの4巻である。各巻において先行研究,最新の成果,今後の課題が盛り込まれている。第1巻は,「繋ぐ」「分かる」「感じる」の3部構成で,異文化の認識と理解について論じる14編を収録している。第2巻は,「言語変容」「表現様式」「対人関係」「メディア環境の未来」にわかれ,メディアの技術を支える基礎論やメディアが我々に与える影響などを論じる13編を収録している。第5巻は,「ことばとイデオロギー」「ことばと権力」「ことばと公共福祉」「ことばと進化」「ことばとインタラクション」「ことばと活動空間」にわかれ,社会学的,心理学的,生物学的アプローチなどの論文14編を収めている。第6巻は,「インタビュー」「サーベイ調査」「実験」「談話データの収録」「談話データの分析」にわかれ,方法論について述べる14編からなる。

収録された論文は以下のとおりである。

【第1巻】(2005年10月1日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 292ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-245-5

【第2巻】(2005年5月27日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 278ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-246-3

【第5巻】(2005年3月18日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 274ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-249-8

【第6巻】(2006年8月24日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 244ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-250-1