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新刊紹介 (『日本語の研究』第3巻3号(通巻230号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

大塚光信編 『大蔵虎明能狂言集 翻刻 註解 上・下』

本書は,寛永19年(1642年)に大蔵虎明によって書写された「狂言之本」のうち,本狂言の巻を翻刻し,頭注を付したものである。本文は,笹野堅編『古本能狂言集』(岩波書店,1943-44年)を底本とし,大蔵弥太郎編『大蔵家伝之書古本能狂言』(臨川書店,1976年)及び原本の写真を参照して定めている。翻刻に当たってはなるべく原本に忠実になるよう配慮しており,仮名遣いや清濁・読点などは原文のままとしつつも,漢字・仮名字体は現在通行のものを使用するなど,読みやすさへの配慮も行っている。また,頭注は編者のほか,柳田征司・小林賢次が執筆を担当し,池田廣司・北原保雄著『大蔵虎明本狂言集の研究 本文篇』(表現社,1972-83年)をはじめとしたこれまでの虎明本研究や,多岐にわたる中世語研究の成果を盛り込んでいる。『日葡辞書』『日本大文典』『和漢通用集』などによって語釈を示すほか,抄物・史書類からの引用などで同種の用例を示し,注釈を施している。本書は上下2巻から成り,上巻に「脇狂言之類」「大名狂言類」「聟類山伏類」「鬼類小名類」を収め,下巻に「女狂言之類」「出家座頭類」「集狂言之類」「萬集類」を収めている。

各巻の内容は以下のとおりである。

(2006年7月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 上巻640ページ・下巻552ページ 上下セット28,000円+税 ISBN 4-7924-1398-2

鈴木右文・水野佳三・高見健一編 『言語科学の真髄を求めて―中島平三教授還暦記念論文集―』

中島平三氏の還暦を記念して出版された論文集である(巻末に「中島平三教授研究業績一覧」を掲載する)。言語理論,生成文法,言語発達などに関する論考35編を収める。収録された論考には,英語のbecause節に関する否定文の論理構造を扱う久野〓論文,間投詞的に用いる「こ」「そ」「あ」も指示詞として総合的に扱うことを論じる北川千里論文,中古日本語の完了の助動詞「つ」「ぬ」の使い分けを考察する平田一郎論文,英語のN after N構文との比較によって「Nに次ぐN」構文の意味的・統語的性質を探る松山哲也論文,日本語および韓国語の「名詞句+格助詞+数量詞」の等位接続を考察する曽雌崇弘・崔珍賀論文,日本語を母語とする子供のWH疑問詞と全称数量詞の獲得に関する実験結果を報告する山腰京子論文,「形容詞+くある」は経済性原理によって統語部門で不適格になると述べる森川正博論文,チャロモ語・パラオ語・上代日本語の疑問文生成を扱う外池滋生論文,「〜させ」形が使役と経験のどちらの意味になるのか要因を考察する高見健一論文などがある。

内容は以下のとおりである。

(2006年8月19日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 568ページ 12,800円+税 ISBN 4-89476-316-8

音声文法研究会編 『文法と音声 5』

1997年の『文法と音声』刊行以来,5冊目を迎える論文集である。全体を3部に分け,全15編を収録している。「第1部 発話・調音運動・感情音声のデータベース化とその分析」には,3種の音声データベースの資料性・利用法などの概要を述べる杉藤美代子論文,ラッパーとフィラーの観点から話し言葉の構造を探るニック=キャンベル論文,磁気共鳴映像法(MRI)を用いた調音器官の観測について述べる本多清志論文などを収める。「第2部 日本語のアクセントとイントネーション」には,尾張方言の疑問詞疑問文のイントネーションに関する調査結果を考察する犬飼隆論文,文節末や文末の「末尾上げ」現象は文節と文の類似性を反映していると論じる定延利之論文,アクセントの機能負担量を求めるためにアクセント対立の分布を解析する北原真冬論文などを収める。「第3部 音声と文法の諸相」には,古代・中世日本語用例のローマ字表記の方法を提案する金水敏論文,英語談話での項構造に見られる分布様態の男女差を扱う熊谷吉治論文などを収める。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月7日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 248ページ 3,500円+税 ISBN 4-87424-346-0

高見健一・久野〓著 『日本語機能的構文研究』

日本語の八つの表現を取り上げ,機能主義の立場から分析を行ったものである。「第1章 動詞句前置構文」では「降りさえ雨がした」文の不適格性,「第2章 「ろくな/大した…ない」構文」では「ろくなタレントがふざけなかった」文の不適格性,「第3章 「VかけのN」構文」では「走りかけのランナー」文の不適格性,「第4章 「〜ている」構文」では「桜の花が散っている」文の曖昧性,「第5章 数量詞/副詞の解釈」では「子供がいっぱい走った」文の曖昧性,「第6章 総称PROの生起」では「夜中に現われることがよくある」文の不適格性,「第7章 主語をマークする「ハ・ガ」の省略」では「自分より先に子供死ぬのは淋しい」文の不適格性,「第8章 使役受身文」では「水が蒸発させられた」文の不適格性をそれぞれ考察する。これらの表現は,自動詞を非対格・非能格に区別することによって統一的に説明できると主張されてきたものだが,著者は,なお解明できない現象があることを指摘し,構文の意味や機能,文脈,語用論的要因などを考慮して,包括的な分析を行っている。なお,本書は,第1章が既発表論文の修正である以外は,新たに書き下ろしたものである。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月15日発行 大修館書店刊 A5判横組み 304ページ 2,400円+税 ISBN 4-469-21308-X

縫部義憲監修 水島裕雅編 『講座・日本語教育学 第1巻 文化の理解と言語の教育』

縫部義憲監修 町博光編 『講座・日本語教育学 第2巻 言語行動と社会・文化』

縫部義憲監修 迫田久美子編 『講座・日本語教育学 第3巻 言語学習の心理』

縫部義憲監修 水町伊佐男編 『講座・日本語教育学 第4巻 言語学習の支援』

縫部義憲監修 倉地曉美編 『講座・日本語教育学 第5巻 多文化間の教育と近接領域』

縫部義憲監修 多和田眞一郎編 『講座・日本語教育学 第6巻 言語の体系と構造』

平成12年(2000年)3月,文化庁によって発表された「日本語教育のための教員養成について」を受け,日本語教員養成課程における体系的基本書となることを企図して編集された全6巻の講座である。第1巻では,日本語・日本文化を国際的な視座から概観した上で,日本語教育の沿革・現状について論じる。第2巻では,言語及び言語活動を社会・文化の中に定位し,言語活動についての対照研究の視点を示す。第3巻では,言語習得・言語学習の心理的側面や,日本語教育に関する統計学的研究を扱う。第4巻では,分野別の指導法や評価方法など日本語教育活動の実際面や,情報社会における日本語教育のあり方などについて具体的に論じる。第5巻では,心理学・コミュニケーション学・教育学など,日本語教育学に近接する分野との学際的関係を扱う。第6巻では,日本語の体系・歴史について概説し,日本語と諸外国語との対照研究や,言語研究と日本語教育学との関連について考察する。執筆者は,国内外の66人に及び,扱われる学問分野は,言語学・教育学・心理学・生理学・文化学・教員養成学など,日本語教育に関連する広範な領域に及んでいる。

各巻の内容は以下のとおりである。

【第1巻】(2005年6月25日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 276ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-348-9

【第2巻】(2006年9月15日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 272ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-349-7

【第3巻】(2006年9月15日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 308ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-350-0

【第4巻】(2005年10月1日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 264ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-351-9

【第5巻】(2006年9月15日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 256ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-352-7

【第6巻】(2006年9月15日発行 スリーエーネットワーク刊 A5判横組み 280ページ 2,500円+税 ISBN 4-88319-353-5

遠藤好英著 『平安時代の記録語の文体史的研究』

本書は,和語・漢語と共に和漢混淆文を生み出した第三の言葉として記録語を捉え,その特質について文体史的観点から考察を試みた論考である。これまで著者が発表してきた16編の論文と,序説・各章のはしがき・まとめなどの新稿により構成されている。「1 序説」では記録体研究の視点や方法について述べる。「2 記録語の性格」では,「夜前」「徒然」「させる」「キハメタル」「兼日」といった記録特有語について,和文体等に出現する類義語群や当該語の漢籍での用法との比較を交えながらその特色を述べる。「3-1 記録語の語彙の性格」では,「別」を含む熟語群,また,「3-2 『後二条師通記』の時の表現」では,時を表す語彙群について調査・考察する。「4 記録体の文章の変遷と史的位置」では,11世紀から12世紀の古記録において,「殊(ことなる)」「指(させる)」「別(べちの)」という類義語群の使用状況が,「殊」から「指」,さらに「別」へと変遷していることを観察した上で,和文的性格から記録体特有の和漢混淆の性格へ,さらに和漢混融の性格へ変化していると述べている。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月20日発行 おうふう刊 A5判縦組み 408ページ 16,000円+税 ISBN 4-273-03374-7

沖森卓也・木村義之・陳力衛・山本真吾著 『図解日本語』

新しいスタイルによる「日本語学概説」の本である。各ページを上段と下段に分け,上段には本文による各項目の簡潔な説明,下段にはそれに関連する資料類が配置されている。資料類部分では,脚注を中心に,図と表が多用され,見やすさと読みやすさが考慮されている。全体は6章で構成されている。「第1章 総記」では,日本語と日本語学,言語研究とその分野,日本語の系統などについて述べる。「第2章 音声・音韻」「第3章 文字・表記」「第4章 語彙」「第5章 文法」の各章では,「音節とモーラ(拍)」「日本語アクセントの性格」,「漢字」「万葉仮名」,「語構成」「理解語彙と使用語彙」,「態と格」「モダリティ」など,それぞれの分野の基礎事項・基本概念を解説する。「第6章 現代生活と日本語」では,「待遇表現」「位相語」「文章と文体」「認知言語学」「対照言語学」「社会言語学」「語用論」「日本語教育」など,現在の日本語研究に関わる広範な分野を取り上げている。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月30日発行 三省堂刊 A5判横組み 168ページ 2,000円+税 ISBN 4-385-36242-4

堀井令以知著 『京都語を学ぶ人のために』

「京都語」についての入門・概説書である。「第1章 京都語について」では,「京都語」の範囲などについて述べる。「第2章 覚えておきたい京都語の語彙」では,基本的な「京都語」の語彙(135語)を五十音順に挙げ解説をする。「第3章 婉曲表現を好む京都語」では,「京都語」の特性である婉曲表現について言及する。「第4章 京都御所のことば」「第7章 職人ことば」「第8章 舞妓ことば」「第10章 町家のことば」では,京都のさまざまな位相語について述べる(なお,「補章 洛北の方言」では,八瀬・大原・花背の方言が紹介されている)。「第5章 京都語の変遷」では,あいさつの言葉やわらべ歌などを扱い,「第6章 京都語の語源」では,安原貞室『かたこと』(1650年)の語源説や京都の地名などを取り上げて,それぞれ歴史的な面からみた「京都語」について述べる。「第9章 京の正月と京の祭り」では,正月の行事や祇園祭りなどの言葉を扱う。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月30日発行 世界思想社刊 B6判縦組み 196ページ 1,900円+税 ISBN 4-7907-1206-0

ジョン=R=サール著 山田友幸監訳 高橋要・野村恭史・三好潤一郎訳 『表現と意味―言語行為論研究―』

本書は,言語行為論を,心の哲学,特に心の志向性を扱う哲学に基礎付けることを企図して構想された著作の一部が独立して発表されたものである。「第1章 発語内行為の分類法」は,発話内行為を一定のカテゴリーに分類しようとする試みであり,オースティンの分類が検討され,代案が提示される。「第2章 間接的言語行為」では,ある発話が字義どおりの意味以外の発話意味を持つケースを説明するために,何らかの深層構造や追加的な会話公準を設けることの妥当性が検討される。「第3章 フィクションの論理的身分」「第4章 隠喩」では,それぞれフィクションと隠喩という言語使用について,その諸原理が考求される。「第5章 言葉どおりの意味」では,文には如何なる文脈からも中立な意味があるという想定が,批判的に検討される。「第6章 指示的用法と帰属的用法」では,確定記述句の真理条件に関する分析に,その指示的用法と帰属的用法との区別を導入することの必要性を主張するドネランの説が検討される。「第7章 言語行為と最近の言語学」では,言語行為論の立場から,ジョン=ロス,及びデイヴィト=ゴードン・ジョージ=レイコフの論が批判される。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月30日発行 誠信書房刊 B5判縦組み 328ページ 3,800円+税 ISBN 4-414-12054-3

リンゼイ=J=ウェイリー著 大堀壽夫・古賀裕章・山泉実訳 『言語類型論入門―言語の普遍性と多様性―』

本書は“Introduction to Typology: The Unity and Diversity of Language”(1997年)の邦訳であり,言語類型論の入門書として執筆されたものである。学部・大学院用の教科書としての用途を想定しているが,最新の理論も取り入れており,日本語での言語類型論入門書に従来見られた量的な欠を補うものとなっている。本論は6部16章から成り立っている。まず,「第1部 言語類型論の基本」で類型論の沿革や基本的概念・術語の解説などの概略を述べている。「第2部 語順の類型論」は,これまで類型論の中心的課題とされている構成要素順序についての概説であり,構成要素順序の普遍性と個別言語における基本順序解明の方法について論述している。「第3部 形態論的類型論」では,形態素の基本的なタイプ分けと基本的概念の入念な解説を行った上で,諸言語を形態論の観点から類型化している。「第4部 名詞句の関係的・意味的性質」で格や性,結合価といった名詞句に関わる問題を,「第5部 動詞カテゴリー」でテンスやムードなどの動詞カテゴリーに関する事柄を検討し,平叙文・命令文などの文タイプについて述べた上で,「第6部 複文」で従位・等位・連位接続について論じ,より複雑な文のメカニズムを解説している。

内容は以下のとおりである。

(2006年10月18日発行 岩波書店刊 A5判横組み 336ページ 4,200円+税 ISBN 4-00-022760-2

馬場俊臣著 『日本語の文連接表現―指示・接続・反復―』

本書は,指示表現(指示語),接続表現(接続詞),反復表現(反復語句)に関する既発表論文15編を中心に,新たな書き下ろし2編(第5章と第14章)を加えて一書としたものである。全体は3部に分かれる。「第1部 指示表現」では,現場指示に比べて論じられることが少ない文脈指示に関する考察,国語教科書に使われた指示語の調査分析などを収める。また,「第5章 指示語研究の流れと現在」は,指示語研究の流れと論点を簡潔にまとめている。「第2部 接続表現」では,「それで」のような指示語を含む接続詞,「だが,しかし」「しかし,また」のような接続詞の二重使用,「かと思うと」のような複合接続詞の分析などを行う。「第3部 反復表現」では,反復語句を形式的に扱い文章分析に活用する方法を提案する。なお,本書に関連して,著者による文連接表現に関する研究文献一覧が,著者のWebサイトで公開されている(「接続詞関係研究文献一覧」http://www.sap.hokkyodai.ac.jp/baba/home/setuzokusiitiran.htm /「反復表現・省略表現研究文献」http://www.sap.hokkyodai.ac.jp/baba/home/bunkenhanpuku.htm)。

内容は以下のとおりである。

(2006年10月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 256ページ 10,000円+税 ISBN 4-273-03440-9

益岡隆志・野田尚史・森山卓郎編 『日本語文法の新地平1 形態・叙述内容編』『日本語文法の新地平2 文論編』『日本語文法の新地平3 複文・談話編』

仁田義雄氏の還暦にあたり,同氏の同僚や修了生,日本語文法学会設立に関わった人たちが,文法研究のさらなる発展を企図して編集した全3巻の論文集である。「1 形態・叙述内容編」は,通常の複合語形成規則から逸脱するとされる外項複合語を扱う影山太郎論文,本居学派以外の活用論(非四段活用論)の系譜を記述する山東功論文,語・成分・文の順序の自由度とその順序になる動機について述べる野田尚史論文など11編を収める。「2 文論編」は,主題を表示する「ハ」と主題性の無助詞の使い分けについて述べる菊地康人論文,「シタイ」「シヨウ」を述語とする「まちのぞみ文」が表わす意味を検討する宮崎和人論文,「〜タイ」構文が特定の文脈では願望から価値判断へ意味が拡張することを述べる益岡隆志論文など11編を収める。「3 複文・談話編」は,仮定条件文に出現しうるモダリティを貫く特徴を取り出そうとする仁田義雄論文,周辺的な時間節(「や否や」「とたん」など)について主節のモダリティ制限から考察を行う塩入すみ論文,「添加(累加)」の意味として「同類別項目」を提案する森山卓郎論文など11編を収める。

各巻の内容は以下のとおりである。

【1 形態・叙述内容編】(2006年10月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 208ページ 3,800円+税 ISBN 4-87424-356-8

【2 文論編】(2006年10月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 224ページ 3,800円+税 ISBN 4-87424-357-6

【3 複文・談話編】(2006年10月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 216ページ 3,800円+税 ISBN 4-87424-358-4

片岡喜代子著 『日本語否定文の構造―かき混ぜ文と否定呼応表現―』

本書は,かき混ぜ文を検討することを通して否定呼応表現の構造を明らかにし,そこから否定文の構造の特質について述べるものである。日本語に関する現在の生成文法の標準的見解である「LFにおいて否定要素にc-統御されなければならない」という仮説に反する結論を導き,従来の枠組みを見直す必要性を主張している。全体は3部7章に分かれている。「第1章 導入」で,理論的背景と研究の目的を述べる。その後,「第1部 日本語否定文の構造」となる。ここでは,文否定要素 -nai の構造上の位置についての仮説を明白にし,かき混ぜ文を見ることで,LFにおいて-naiにc-統御されない名詞句の存在を示す。「第2部 否定呼応表現生起の構造条件」では,「ろくな」「しか」「だれも」などの呼応表現を検討し,従来の仮説に対する反証を行う。「第3部 本書での議論による帰結」では,否定文に関する考察結果によって,かき混ぜ文の分析を行う。なお,本書は,九州大学に提出した博士論文(2004年)に加筆したものである。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 296ページ 3,800円+税 ISBN 4-87424-365-7

土岐哲先生還暦記念論文集編集委員会編 『日本語の教育から研究へ』

土岐哲氏の還暦を記念した論文集である(巻末に「土岐哲教授業績一覧」を掲載する)。収録された論文は,教育,音声,文法と大分類がなされているが,内容や方向性は多様である。「教育」の部には,日本語教育の「禁領域」について検討する関正昭論文,自民党文教(制度)調査会に関する資料を紹介しながら国語施策と国語国字問題について述べる仁田義雄論文,日本語と韓国語の談話内における話題転換の接続詞の特徴を分析する金秀芝論文など10編を収める。「音声」の部には,発音辞書改良のために自発音声コーパスから語形変異情報を抽出する可能性について検討する前川喜久雄論文,吃音幼児の発声特徴を明らかにし成人吃音との比較から吃音の自然治癒過程を考察する氏平明論文など5編を収める。「文法」の部には,既定の出来事を非過去形で表す二つの用法(「劇的現在」と「感情・評価の現在」)それぞれの特徴と共通性を記述する工藤真由美論文,「XハYガZ」文で「X」が「Z」と格関係を持たない例について検討する谷守正寛論文など7編を収める。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月8日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 264ページ 4,200円+税 ISBN 4-87424-367-3

松本克己著 『世界言語への視座―歴史言語学と言語類型論―』

本書は,著者の研究活動の柱である印欧比較言語学,言語類型論,主語論,類型地理論の4分野に関わる既発表論文18編を収めた論文集である。「第1部 印欧語の世界」は,西洋古典学を出発点とした著者が,古典学と言語学との接点として専門分野とするようになった伝統的な印欧比較言語学に関わる論を収める。第1部に収録された「第2章 印欧言語学への招待」は,この分野の概説として読むことができる。「第2部 語順の類型論」は,印欧比較言語学から展開して,著者の関心が言語の多様性と普遍性を扱う言語類型論に移った1980年代頃の論を収める。印欧語や日本語などの語順を扱い,さらに一般性のある語順タイプの考察を行っている。「第3部 主語をめぐる諸問題」は,言語学史的観点および類型論的観点から「主語」を扱う論考を収める。「第4部 世界諸言語の類型地理論」には,数詞・形容詞・流音・母音調和・キョウダイ名を例として,言語諸特徴の地理的な分布によって,分布を生み出す諸言語の歴史的な背景を探ろうとする論を収める。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月10日発行 三省堂刊 A5判横組み 480ページ 4,200円+税 ISBN 4-385-36277-7

井出祥子著 『わきまえの語用論』

日本語の敬意や丁寧さの表現を分析することによって,西欧語を基盤に組み立てられた語用論にはない要素を提示し,より包括的な語用論モデルを探ろうとしたものである。序章を含め全9章からなる。序章では日本語と日本文化の関わりについて述べる。「第1章 「言うという行為」とモダリティ」では,言語を「場」から切り離さず分析をすることの重要さ,日本語における話し手の見方や立場を伝える方法の豊富さを見ていく。「第2章 ポライトネスの普遍理論」では,ポライトネス理論の誕生,その要点とそれへの批判を述べる。「第3章 わきまえのポライトネス」では,日本語における「場を考慮に入れた」言語使用を基にした語用論について述べる。「第4章 敬語のダイナミックな動き」では,儀礼・品位を表す敬語を取り上げ,社会における敬意表現の働きを扱う。「第5章 敬意表現と円滑なコミュニケーション」では,国語審議会答申「現代社会における敬意表現」について,「第6章 女性語はなぜ丁寧か」では,女性語の丁寧さについて述べる。「第7章 ホロン構造型社会の言語使用」「第8章 〈複雑系〉社会の日本語」では,要素還元主義を脱し,文化的社会的コンテクストを考慮に入れてその場で言語表現を作り上げていく側面を重視する必要性について述べる。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月15日発行 大修館書店刊 A5判横組み 248ページ 2,300円+税 ISBN 4-469-22186-4

三原健一・平岩健著 『新日本語の統語構造―ミニマリストプログラムとその応用―』

本書は,GB理論に基づく日本語研究を総括した三原健一著『日本語の統語構造』(松柏社,1994年)の続編という位置づけである。生成文法は1990年代からミニマリストプログラムに枠組みが変わり,この理論のもとで行われた研究成果を俯瞰することが本書の目的である。全体は2部に分かれる。「第1部 基礎概念」では,「第1章 ミニマリストプログラムの基礎」と題し,最小限の理論的装置について解説する。「第2部 構文研究」では,「第2章 束縛関係」「第3章 かき混ぜ操作」「第4章 使役文」「第5章 受動文」「第6章 主要部内在型関係節」「第7章 主格目的語構文」「第8章 二重目的語構文」「第9章 主語―目的語繰り上げ構文」「第10章 分裂文」「第11章 二重対格制約と格」「第12章 主格/属格格交替構文」のように,11の構文を取り上げ,その構文に関する主要な説や提案と,それに対する反論や対案を紹介し,加えて著者独自の分析を展開する。なお,第1章から第8章までは三原健一,第9章から第12章までは平岩健が担当している。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月15日発行 松柏社刊 A5判横組み 388ページ 3,800円+税 ISBN 4-7754-0124-6

野村敏夫著 『国語政策の戦後史』

戦後から21世紀初頭までの国語政策の歴史について,総体的な記述を試みたものである。国語審議会の審議過程を追い,決定までにどのような点で意見の食い違いがあったのか,あるいは,その結果どうなったのかなど,政策の検討から実施までを,答申・告示・通知などの公式文書と諸記録を基本資料として記述するとともに,その時代において何が求められていたのかについて,民間における論争や政党内の動きなども取り上げ,政策決定の背景にも言及している。また,本書は,「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」など,国語政策による「きまり」に関する解説書の側面も持つ。全体は時期別に6章に分かれ,「序章 日本語の歩みと国語政策」「第1章 戦後の国語改革」「第2章 民主社会の基盤整備」「第3章 改革への賛否と施策の見直し」「第4章 国語表記基準の再構築」「第5章 「新しい時代」の施策追求」「第6章 国語政策の現在,そして未来へ」となっている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月16日発行 大修館書店刊 B6判縦組み 320ページ 2,400円+税 ISBN 4-469-22184-8

藤田保幸・山崎誠編 『複合辞研究の現在』

本書は,「について」「かもしれない」などの複合辞(複合助詞・複合助動詞)についての研究が,現在どのような状況にあるのかを示し,文法研究に貢献しようとするものである。全体は3部に分かれる。「第1部 序論」では,「複合辞研究の展開と問題点」(藤田保幸)と題し,複合辞研究の歴史について述べ,また,理論面・記述面における今後の課題を指摘する。「第2部 研究論文」には,「言う」を用いた複合辞(「〜ったら」「〜からといって」など)の文法化を扱う砂川有里子論文,「につれて」「にしたがって」の新聞記事データにおける量的分布から用法の違いを探ろうとする山崎誠論文,「〜どころか」「〜どころで(は)ない」の意味用法を分析し論理構造を論じる服部匡論文,辞としての性質を持つに至った形式名詞「ウチ」の分析を行う江口正論文など14編を収める。「第3部 資料編」には,「複合辞関係文献目録」(山崎誠・ 藤田保幸)が収録されており,これまでの複合辞研究の成果が整理されている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月17日発行 和泉書院刊 A5判横組み 352ページ 11,000円+税 ISBN 4-7576-0389-4

坂梨隆三著 『近世語法研究』

近世の語法に関する既発表論文19編を基に,新たな書き下ろし1編(第20章)を加え,一書としてまとめたものである(著者には,近世の語法関係以外の論考を収録した『近世の語彙表記』(武蔵野書院,2004年)が既刊である)。本書の全体は5部20章に分かれる。「第1部 可能に関するもの」は,可能動詞の成立と発達に関する論を収める。「第2部 打消に関するもの」は,打消の助動詞「ない」に関する論考を収める。「第3部 活用に関するもの」では,二段活用の一段化やサ行四段活用のイ音便などについての論を収める。「第4部 敬語,自動詞・他動詞,補助動詞,接続助詞などに関するもの」では,「テル」と「テイル」,「おられる」などに関する論を収める。「第5部 文体,語の用法,方言,位相などに関するもの」では,上方語と東国の言葉,西鶴の言葉と近松の言葉などについての論考を収める。第5部に収録された「第20章 近世語法研究の現況」では,可能表現・活用・打消表現・敬語に関する近世語研究の推移と展望などが記されている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 444ページ 13,000円+税 ISBN 4-8386-0220-0

寺島浩子著 『明治三〇年代生まれ話者による 町家の京言葉―付 近世後期上方語の待遇表現―』

京都の言葉は,地域・職業などによって,いろいろな違いがある。本書は,明治30年代生まれの被調査者の協力のもと,自然観察法・人為的観察法により,京都市街の町屋で使われていた京言葉を記述し,様々な角度から考察したものである(全7部のうち,最後の第7部は近世後期上方語についての内容となっている。)第1部では,京言葉の記述の方法論や,京言葉の人称代名詞について述べる。第2部ではあいさつ表現,第3部では人間関係に関わる言葉,第4部では親族語彙,第5部では幼児語と児童関連用語(おもちゃや遊びなどの名称),第6部では性向語彙を扱う。第7部では近世後期上方語の待遇表現について,命令表現,勧誘表現,禁止表現,人称代名詞などの観点から分析を加えている。江戸語との比較を通して,上方語には特有の軽い敬意表現が発達していることを示し,それが京言葉に受け継がれていると述べる。なお,本書は京言葉と近世後期上方語に関する既発表論文を一書にまとめたものである(第6部は書き下ろし)。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 404ページ 13,000円+税 ISBN 4-8386-0221-9

前田直子著 『「ように」の意味・用法』

「ように」を使った従属節の意味・用法を四つに分類し,それぞれの意味・用法を記述するとともに,相互の連関について述べたものである。また,「ように」を含む周辺的な形式も扱っている。全体は7章に分かれている。「第1章 はじめに」において,「ように」節には四用法があることを述べる。続く「第2章 類似事態を示す用法」,「第3章 結果・目的を示す用法」,「第4章 必須成分として機能する「ように」節―発話・思考の内容を示す用法と命令・祈願の内容を示す用法―」で,「ように」節の四用法の意味や特徴をそれぞれ記述する。「第5章 動詞変化構文「スルようにする」―変化と様態の関係をめぐって―」,「第6章 否定的状態への変化を表す動詞変化構文―ないようにする・なくする・ないようになる・なくなる―」は,「ように」を含む諸形式の分析である。「第7章 おわりに」では,「ように」節相互の連関について述べ,さらに「ように」節と「ようだ」との関係へと展開する。なお,123〜154ページには英文による要約が載せられている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月20日発行 笠間書院刊 A5判横組み 166ページ 2,000円+税 ISBN 4-305-70330-0

小松英雄著 『古典再入門─『土左日記』を入りぐちにして─』

本書は,『土左日記』を題材にして古典文学読解の方法を述べたものである。古典文学とは断片的な古典文法によってではなく,作品全体を文献学的方法によって読解すべきであるという筆者の主張を実践したもので,研究者のみならず社会人・学生などの一般読者も対象層に想定していることから,「です・ます」体の平易な文体で論述されている。従来の注釈・現代語訳には,古典文法や瑣末な事柄の分析にとらわれるあまり,作者・書写者の意図を顧慮しない問題点があったことを指摘し,仮名テクストの持つ特性や,『土左日記』がフィクションであるという大前提を踏まえた分析が不可欠であることを述べる。イントロダクションで概要を論述するのに続き,「第1部 前文の表現を解析する」において,散文にも仮名連鎖の複線構造が見られることを指摘した上で,「第2部 女文字から女手へ」では「女文字」「女手」などの表現に注目し,仮名文字の諸相を分析しつつ,貫之は女性に仮託して『土左日記』を執筆したという通説を否定している。続いて「第3部 門出の日の記録」で12月21日の記事,「第4部 絶えて桜の咲かざらば」で2月9日の記事を取り上げ,なぜその表現・表記が使われているかという観点から,一つ一つの表現について細密な分析を行っている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月21日発行 笠間書院刊 四六判縦組み 352ページ 1,900円+税 ISBN 4-305-70326-2

中川正之・定延利之編 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉 第2巻 言語に現れる「世間」と「世界」』

益岡隆志編 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉 第6巻 条件表現の対照』

鄭聖汝著 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉 第9巻 韓日使役構文の機能的類型論研究―動詞基盤の文法から名詞基盤の文法へ―』

11巻の編成である。テーマごとに世界の諸言語と日本語との対照を行い,日本語の特質と諸言語との共通性を明らかにしようとするものである。第2巻は,公的・抽象的な領域と私的・具体的な領域(従来の「ウチとソト」というのはその一種)に関する区別に留意しつつ各論題に取り組んだ8編を収める。社会心理学的見地による人物の属性表現(菅さやか・唐沢穣論文),中国語の存現文(澤田浩子論文),「ている」構文(定延利之・アンドレイ=マルチュコフ論文)などの内容が扱われている。第6巻は,2005年7月の「言語対照シンポジウム―条件表現をめぐって―」の研究発表をまとめたものである。日本語とタイ語(田中寛論文),日本語とスペイン語(和佐敦子論文)などの対照研究や,日本語学習者の条件文習得(ソルヴァン=ハリー論文)に関する8編を収録する。「第3部 解説(コメント)編」は,第2部の論考に対する2編のコメントを収める。第9巻は個人研究書(鄭聖汝)で,韓国語・日本語の使役構文の機能的類型論を通して現代の統語理論の限界を指摘し,動詞基盤の文法から名詞の働きを重視した文法への転回を主張したものである。

各巻の内容は以下のとおりである。

【第2巻】(2006年11月22日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 200ページ 3,000円+税 ISBN 4-87424-368-1

【第6巻】(2006年10月24日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 240ページ 3,000円+税 ISBN 4-87424-361-4

【第9巻】(2006年10月30日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 320ページ 3,800円+税 ISBN 4-87424-362-2

小林隆・佐々木冠・渋谷勝己・工藤真由美・井上優・日高水穂著 『シリーズ方言学2 方言の文法』

本書は,地域ごとの方言についてその文法を記述したものではなく,日本語の多様性に基づく「言語変化論」,あるいは文法の記述枠組みの見直しを伴った「言語類型論」を扱ったものである。日本語の文法は,共通語から得られる知見に基づいて構築されてきたが,近年における日本各地の方言文法研究の進展により,共通語だけを見ていてはわからなかった日本語文法の多様性を捉えられるようになった。方言文法の相互の関係はどうなっているのか,変化の様相はどのようなものかについて,文法項目を軸にしたテーマごとに論じている。冒頭に「方言文法論への誘い」(小林隆)があり,この種の研究の要点と魅力について述べる。「第1章 格」(佐々木冠),「第2章 自発・可能」(渋谷勝己),「第3章 アスペクト・テンス」(工藤真由美),「第4章 モダリティ」(井上優)と,方言文法研究の視点から各テーマを扱い,「第5章 文法化」(日高水穂)では,「やる」「くれる」や「のこと」を事例として,方言を対象とした文法化研究を展開する。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月28日発行 岩波書店刊 A5判横組み 248ページ 3,400円+税 ISBN 4-00-027118-0

金善美著 『韓国語と日本語の指示詞の直示用法と非直示用法』

韓国語と日本語の指示詞に関する対照研究の成果をまとめたものである。両言語の指示詞の共通点と相違点を明らかにすること,従来の談話モデルを検討して「こ」「そ」「あ」の使い分けが談話モデルのどの領域に関わる現象であるのかを明示すること,談話参加者の相互関係が指示詞の選択にどのように関わるのかを考察することが目的である。全体は2部8章に分かれる。「第1部 研究の概観」では,研究の目的を示し,先行研究の検討を行う。「第2部 韓国語と日本語の指示詞の用法」では,まず,指示詞の各用法(現場指示・文脈指示・観念指示)について分析を行う。次に,指示詞の直示用法を,具体的に距離が測れる場合の用法(現場指示用法)と測れない場合の用法(直示の象徴的用法)に分け,二つの用法の違いと関係を考察する。さらに,各用法の選択優先順位を扱い,日本語と韓国語の違いを示す。最後に,指示詞用法の整理を行い,談話モデルを提示する。なお,本書は,京都大学に提出した博士論文(2004年)が基になっている。

内容は以下のとおりである。

(2006年11月30日発行 風間書房刊 A5判横組み 192ページ 7,000円+税 ISBN 4-7599-1597-4