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新刊紹介 (『日本語の研究』第3巻4号(通巻231号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

呉美寧著 『日本論語訓読史研究(上)訓点資料篇』,『日本論語訓読史研究(下)抄物篇』

日本における鎌倉時代以後の論語の訓読の歴史について,訓点資料と抄物の両面から考察を行った書である。(上)では高山寺所蔵本,醍醐寺所蔵本,東洋文庫所蔵本など鎌倉時代から江戸時代初期までの論語の訓点資料16種を対象に考察し,(下)では東山御文庫蔵本応永27年本論語抄など5種の清原家の論語の抄物を扱っている。考察の中心はそれぞれの訓点資料,抄物に朱子の新注の説がどの程度取り入れられているかという点にあり,訓点資料については,既に13世紀前半の訓点に新注の影響があって,日本において新注が流布したのは,通説よりも早く13世紀前半であろうと著者は主張する。しかし,全体としては訓点資料では室町時代に至っても訓説の中心は古注であり,新注は抄物に旺盛に取り入れられたとする。論語に関する限り,訓点資料と抄物には役割分担があり,前者が伝統を保持するのに対し,後者は積極的に新しい学問を吸収して行ったと結論づけている。

各巻の内容は以下のとおりである。

【(上)訓点資料篇】(2006年4月5日発行 J&C(ソウル)刊 A5判横組み 284ページ 20,000ウォン ISBN 89-5668-349-2
【(下)抄物篇】(2006年4月5日発行 J&C(ソウル)刊 A5判横組み 332ページ 25,000ウォン ISBN 89-5668-350-6

森田良行著 『日本語の類義表現辞典』

現代日本語の中から,微細な表現の違いが微妙な意味の違いを招く類義表現を選び出し,それぞれの表現の類似点と相違点とを解説した,大項目分類による辞典である。全体を,その表現内容から,「第1章 動作・作用の実現と使役の言い方」「第2章 受身・可能の言い方」などの10章に分類し,第1章には,「〜する」という表現における助詞「を」の有無を解説する「「練習する」か「練習をする」か」,「なる」「する」「させる」の使い分けを論じた「「上手にする方法」か「上手にさせる方法」か」などの7項を,第2章には,自発表現と誘発表現との関連を論じた「「食欲をそそられる」か「食欲をそそらせる」か」,被害の受身について考察した「「逃がした魚は大きい」か「逃げられた魚は大きい」か」などの5項目を収めるなど,全61項の類義表現を例示しながら,日本語文法の様々なトピックについて解説を加える。巻末に「事項索引」を付す。なお、本書は『日本語の類意表現』(創拓社,1988年)を「装い新たに」刊行したものである(著者「はじめに」による)。

内容は以下のとおりである。

(2006年9月25日発行 東京堂出版刊 B5判縦組み 328ページ 2,800円+税 ISBN 4-490-10697-1

小田勝著 『古代語構文の研究』

本書は,古代語の文法を構文論的観点から研究したものである。活用などの形態論や,助詞・助動詞の意味用法に関する研究に比べ,構文論的研究は立ち遅れているという問題意識のもと,古代語における「文の基本的な構成から逸脱した句型」,すなわち「遊離語句とそれに関連する構文」と「係結構文の違例」について考察を行っている。「第1章 不十分終止の句」では,挿入句・提示句などの5種類を論じる。「第2章 体言および連体形の接続句的用法」では,「連体形接続法」を逆接・順接などの5種類に分け,そのような構文が存在し得た理由を論じ,「無助詞名詞」の構文についても考察している。「第3章 同格構文」は「同格構文」に関する考察であり,同格構文を「収斂型」と「等号型」に大別するほか,同格助詞「ノ」の有無による表現効果の差についての分析も行っている。「第4章 係結の違例」は中古和文における「係結の違例」を扱い,全数調査によって違例の実態を記述する。「第5章 従属句の制約からみた中古助動詞の分類」では,中古語の接続句中に出現する助動詞の調査を通じて,中古助動詞の分類を試み,「第6章 古典文における使役文・受身文の格表示」では,『今昔物語集』における使役文・受身文の格表示形式の分析を行っている。

内容は以下のとおりである。

(2006年12月5日発行 おうふう刊 A5判縦組み 330ページ 12,000円+税 ISBN 4-273-03442-5

森田良行著 『話者の視点がつくる日本語』

本書は,著者が2004年6月の語彙・辞書研究会において行った講演「ことばの意味分析・意味記述から見えてくること」の内容に基づいて,用例を増補し記述を詳細にして書き下ろしたものである。長年,日本語の文法,語彙に関する記述・分析に携わってきた著者が,日本語の言語事象を,話者である人間の視点に焦点を合わせて再考しようとする試みである。「第1章 日本語の発話は人をどう待遇するかで始まる」は,間投助詞「よ」「ね」,助動詞「た」,受給表現や使役表現など,広範な言語事象と話者の対聞手・対事物意識との関連が素述され本書の導入となる。以下の第2章から第8章では,上の問題が更に詳細に検討され,発話における語彙の選択や文型の決定といった言語事象と発話者の叙述内容に対する主観的評価や発話意図との係わり,さらには,語義の派生や用法の拡大,擬人表現・比喩表現の成立などと当該言語使用者の使用意識との関連などについて,筆者自身の経験なども交えながら,平易に論述される。「第9章 日本語の表現と日本人の発想・文化」では,以上の論を踏まえての,著者の日本語論が述べられる。

内容は以下のとおりである。

(2006年12月5日発行 ひつじ書房刊 B5判縦組み 248ページ 2,400円+税 ISBN 4-89476-335-4

近代語学会編 『近代語研究 第十三集』

近代語学会編の論集『近代語研究』の第13集である。鎌倉時代から現代に至るまでの日本語についての記述的・理論的研究論文,全26編を収載する。以下に収載論文題名の一部(キーワード)と執筆者名とを列記する。二音節単位,韻律(柳田征司),「善悪」(玉村禎郎),「定(ヂャウ)」「条(デウ)」(坂詰力治),日蓮,言語生活(杉本つとむ),抄物,反実仮想表現(山田潔),ハビアン平家物語,間(あい),「と申す」「と聞こえた」(小林千草),雑兵物語,東京国立博物館蔵写本(浅川哲也),対称代名詞,狂言詞章,鷺傳右衛門派(米田達郎),和泉流狂言台本,雲形本,古典文庫本(小林賢次),江戸・明治期の漢文訓読,訓読,音読(齋藤文俊),町人の漢語使用,當世七癖上戸(山口豊),「ござる」,十返舎一九滑稽本(神戸和昭),浮世床,「へ」「に」(園田博文),早引節用集(佐藤貴裕),遊里,「であります」(長崎靖子),「時間」,時刻表示法(松井利彦),会話篇,音節融合(小松寿雄),英学資料,音節「エ」(常盤智子),浮雲,心話文(阿部八郎),格助詞「〜カラ」(田中章夫),「〜まじりに〜」(中野伸彦),隠岐アクセント(山口幸洋),言語研修(森岡健二),家電名(宮島達夫),英和通信,諸本(大久保恵子),和英語林集成,漢字表記(木村一)

内容は以下のとおりである。

(2006年12月15日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み(一部横組み) 472ページ 14,000円+税 ISBN 4-8386-0223-5

小林政吾筆録,武田佳子翻刻 『東京語ノ成立―新しく発見された保科孝一講義録―』

先年発見された,保科孝一(東京高等師範学校教授)の講義録「東京語ノ成立」「口語法」「言語學」「國語學」のうち,「東京語ノ成立」「口語法」の影印,及び武田佳子による翻刻(翻刻注を付す)を収載したものである。筆録者は当時同大学国語漢文部本科学生であった小林政吾(翻刻者の祖父)である。「東京語ノ成立」は,明治42(1909)年から43年前半頃に行われた何らかの講演会における筆録と推定されるもので,ノート14頁に記されたもの。江戸開闢以来明治期に至るまでの言語社会情勢,言語生活事情に論の中心を据え,江戸社会史研究の資料としても貴重なものである(「地域言語」13号に既出のものの再録)。「口語法」は明治42年の本科講義の筆録と推定されるもので,ノート74頁に及ぶ。内容は概ね保科の『日本口語法』のそれに沿うものであるが,講義特有の踏み込んだ発言もまま見え,「保科研究における第一級資料」と認められるという(真田信治「序文」による)。なお,影印に2頁分の差替えがある。

内容は以下のとおりである。

(2006年12月15日発行 国書刊行会刊 B4判横組み 184ページ 3,600円+税 ISBN 4-336-04819-3

安田敏朗著 『「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち―』

「国語」とは何か,国語学者が「国語」にどうかかわったか,などについて,近代を中心に歴史的素描を行い,多くの人に向けてわかりやすく述べたものとなっている(中公新書1875)。「序章 「国語」を話すということ」では,近代国民国家形成の必要上から「国語」が生み出された様相を描く。「第1章 国民国家日本と「国語」・国語学」では,近代初期の国語国字問題などについて,上田万年とその周辺を中心に述べていく。「第2章 植民地と「国語」・国語学」では,植民地(台湾・朝鮮)における「国語」や,現地の帝国大学に在職した研究者(時枝誠記・小倉進平・安藤正次)が携わった研究とその役割,「第3章 帝国日本と「日本語」・日本語学」では,「東亜共通語」としての「日本語」の諸相や,「日本語学」が誕生する様子を述べる。「第4章 帝国崩壊と「国語」・「日本語」」では,敗戦,国語民主化,国語の再構築を扱い,戦前との連続面にも目を向ける必要があると指摘する。「第5章 「国語」の傷跡」では,日本の国語学が,韓国の国語学に与えた影響を見ていく。「終章 回帰する「国語」」では,再び統合原理としての「国語」が強化されつつあると述べる。巻末に,人物略歴と関連年表を収める。

内容は以下のとおりである。

(2006年12月20日発行 中央公論新社刊 新書判縦組み 320ページ 880円+税 ISBN 4-12-101875-3

飛田良文・遠藤好英・加藤正信・佐藤武義・蜂谷清人・前田富祺編 『日本語学研究事典』

佐藤喜代治編『国語学研究事典』(明治書院,1977年)をもとに作られた日本語学の専門事典である。全体で約1,500項目を収録する。編集方針は,第一に,各項目によって研究の動向を端的に示し,第二に,日本人研究者及び外国人研究者の日本語研究を扱い,世界の中で研究情報と研究資料の共有化をはかり,第三に,誰もが手軽に信頼して利用できるよう平易な説明を行うことである。事項編と資料編に分けることをはじめとして,項目の立て方などは旧版の枠組みを踏襲しつつも,理論的研究の進展,社会言語学の発展,古典籍の新資料の紹介など,この30年間の研究成果の蓄積を反映して,新項目の立項を行っている。また,旧版で立項されていた事項も,必要に応じて平易な説明を旨とする新たな項目記述に変え,項目末の参考文献の拡充を行っている。巻末には4種の索引(人名索引,書名索引,語彙索引,事項索引)と,「日本語史年表」「叢書・全集目録」「索引目録」「明治末期国・県・郡地名と地図」が収載されている。

内容は以下のとおりである。

(2007年1月15日発行 明治書院刊 B5判縦組み 1378ページ 28,000円+税 ISBN 978-4-625-60306-8

二枝美津子著 『主語と動詞の諸相―認知文法・類型論的視点から―』

英語のテンス・アスペクトなどを扱った論考と,主語の性質を考察した論考をまとめたものである。全6章からなる。「第1章 英語では時をどのように表すのか」は,時の位置づけやアスペクト体系について述べる。「第2章 アスペクトはどう捉えられ,どう表されるのか」では,アスペクトとは何かということを過去の説を検討しながら考え,それが英語ではどのように表されるかについて述べる。「第3章 進行形の本質は何なのか」では,英語の進行形を取り上げ,その認知構造はどのようなものかを論じる。「第4章 主語とは何なのか」では類型論的観点から主語の特性を捉え,「第5章 被動者が主語の文は何を表すのか」では動作主が主語ではない構文(中間構文・能格構文・再帰構文)の特質を指摘する。「第6章 能格とはどんな格なのか」では,バスク語等の分裂能格言語において,主語が能格で表される場合と主格で表される場合の違いを分析し,決定の動機を検討する。

内容は以下のとおりである。

(2007年1月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 218ページ 5,000円+税 ISBN 978-4-89476-384-5

田中章夫著 『揺れ動くニホン語―問題なことばの生態―』

近代の日本語が抱えてきた問題を中心にして,日本語の実態から,言葉の問題が発生する要因を考察する。全7章からなる。「第1章 気になる日本語」では,男女の言葉の接近,呼称,言い換え(忌み言葉,不適切語)などの問題を扱う。「第2章 コトバも文字も波の間に間に」では,明治以来の言葉に関するキャンペーン(ネサヨ運動,ローマ字運動,漢字制限,標準語普及運動)について述べる。「第3章 ことばの伝説・俗説」では,世間でよく取り上げられるが,調べてみると典拠が不明な言葉について論じる。「第4章 お国ことばの評判記」では,各地の言葉に対する批評や評判について述べる。「第5章 東西対抗ことば合戦」では,近世における言葉の東西対抗意識を扱う。「第6章 問題な日本語の現在・過去・未来」では,いわゆる「ことばの乱れ」をテーマに,ら抜き,鼻濁音,「〜ちゃう」,「御乗車できません」などを扱う。「第7章 これもニホン語,それもニッポン語」では,語形や表現など言葉の「ゆれ」を話題にする。

内容は以下のとおりである。

(2007年1月25日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 280ページ 1,900円+税 ISBN 978-4-490-20599-2

名嶋義直著 『ノダの意味・機能―関連性理論の観点から―』

ノダ文を関連性理論の枠組みを用いて考察したものである。序章を含め全9章からなる。序章では,研究の目的,研究の理論的枠組みについて述べる。「第1章 先行研究の検討と語用論的考察の必要性」では,ノダ文を扱った主要な先行研究の概観と問題点の指摘を行う。「第2章 関連性理論」では,関連性理論の説明をし,その枠組みを使った先行研究の到達点・問題点を指摘する。「第3章 仮説提出のための理論的考察」では,ノダが持つ意味・機能に関する理論的考察を行い,ノダが表意・高次表意・推意の3レベルで聞き手の発話解釈を制約することを指摘し,「ノダは,ある命題を「聞き手側から見た解釈として」「意図的に,かつ,意図明示的に」「聞き手に対して提示する」」という仮説を導く。また,この仮説によって,「既定性」によらない記述が可能であることを論じる。「第4章 表意の復元とノダ」「第5章 高次表意の復元とノダ」「第6章 推意の復元とノダ」では,仮説検証のため,ノダの各用法を取り上げ,記述的な考察を行う。「第7章 フィードバック」では,ノダの変異形を含む包括的な記述の可能性に触れる。また,ノダ文が許容されない例についてその要因を説明する。なお,本書は2002年に名古屋大学に提出された学位論文に修正を加えたものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年1月25日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 336ページ 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-366-4

二枝美津子著 『格と態の認知言語学―構文と動詞の意味―』

英語の広義ヴォイスの問題を認知言語学の立場から扱ったものである。全7章からなる。「第1章 受動構文は何故使われるのか」は,受動構文の存在意義を探ったもので,補助線としてギリシアの中間態,能格言語に見られる逆受身などの現象を検討している。「第2章 自動詞と他動詞の区別は必要か」は,いわゆる非対格自動詞と非能格自動詞に基づく自動詞構文分類の是非を考察する。「第3章 中間構文は受動か能動か」「第5章 中間構文は能格構文・再帰構文とどうちがうのか」は,中間構文とその関連構文について特徴の共通性を検討したものである。「第4章 能格性は英語にあるのか」は,能格構文を分析し,その意味や特徴の独自性を指摘する。「第6章 言語表現と概念的距離は関係するのか」は,認知言語学の立場から,概念的距離と言語的距離との相関を扱う。「第7章 英語に句動詞は何故必要か」は,動詞+不変化詞(in,upなど)の句動詞が存在する意義について論じる。

内容は以下のとおりである。

(2007年1月30日発行 世界思想社刊 B6判横組み 216ページ 2,300円+税 ISBN 978-4-7907-1234-3

小泉保著 『日本語の格と文型―結合価理論にもとづく新提案―』

本書は,テニエールの結合価理論を背景に,日本語の格の本質を追求し,何を格助詞とするかを定め,さらに動詞文型と形容詞文型を分類している。また,日本では結合価理論が十分に紹介されてこなかったとして,その要点を解説するとともに,「転用」という操作をもとに文の構造図式化・文法分析が容易になると主張している。全体は10章に分かれている。「1 助詞「ハ」と「ガ」の問題」は,大槻文法以下の諸文法論における「ハ」と「ガ」の扱いを概観し,「2 格と格助詞」は,イェルムスレウ,フィルモアなど,諸家の格理論を見ていく。それらの検討を踏まえ,「3 日本語の格と格体系」では日本語の格を定義し,「ハ,ガ,ヲ,ニ,カラ,ヘ,デ,ト,ヨリ,マデ,ノ」の11格を認める。「4 結合価文法概要」では,結合価理論について説明し,「5 話線」では,構造系列と話線系列の切り替えを扱う。「6 文の種類」では,動詞文・形容詞文・名詞文の説明をし,「7 日本語の述語」では,述語の分析を行う。「8 文型」では,結合価をもとに文型について考え,「9 形容詞の文型」「10 動詞の文型」では,文型によって形容詞と動詞の分類を行う。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月1日発行 大修館書店刊 A5判横組み 336ページ 3,400円+税 ISBN 978-4-469-22185-5

井上史雄著 『変わる方言 動く標準語』

本書は日本語の方言を「社会的背景の中に位置づけ,歴史的に,また,地理的に大きな流れを読み取ろう」としたものである。筆者がドイツで行った集中講義(デュースブルク大学,2004年)を元にしており,「です・ます」調で書かれている(ちくま新書642)。また,「新方言」については割愛して論旨を絞り込んでいる。本書は3章から成っており,「第1章 プラスになった方言イメージ」では,方言を社会的観点から論じ,商品・テレビ番組などの具体例を交えながら方言のイメージが変化しつつあることを述べ,将来は方言コンプレックスが消滅し,様々な言葉が役割に応じて併存することを予測している。「第2章 方言に入った外来語」では,外来語の分布にも方言差があることを論じ,今後ますます外国語の影響が強くなっていくと同時に,外来語の方言差は縮小するという見通しを述べている。「第3章 標準語普及の3段階を復元する」では,方言の違いと標準語との近さが鉄道距離に関係する蓋然性を述べ,標準語の普及する早さを論じるとともに,東京の話し言葉が全国に普及し,地域差が減少してきた点に言及している。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 筑摩書房刊 新書判縦組み 208ページ 700円+税 ISBN 978-4-480-06348-9

クレア=マリィ著 『発話者の言語ストラテジーとしてのネゴシエーション(切りぬける・交渉・談判・掛け合い)行為の研究』

本書は,クイア言語を中心に,発話が行うネゴシエーション(切りぬける・交渉・談判・掛け合い)を考察したものである。「セクシュアリティとコトバ」に関しての座談を企画し,その談話を資料としている。全6章からなる。「第1章 ジェンダーとことばの研究」では,本書の構成,理論面での位置づけについて述べる。「第2章 批評的考察」では,先行研究を批判的に検討する。「第3章 規範と実践を行き来する発話行為」では,ジェンダーが固定的・本質的なものではなく,行為遂行的なものであるという立場を紹介しつつ,言語におけるジェンダー研究に何が必要かをまとめる。「第4章 〈日本語・ジェンダー・セクシュアリティ〉」「第5章 座談会の談話分析」では,談話の分析を行う。「第6章 かいくぐり,切り抜けるネゴシエーション」では,研究の総括を行い,変化していくアイデンティティと言語行為の相互関係に注目することの重要性を述べる。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 212ページ 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-325-8

山浦玄嗣著 『ケセン語の世界』

雑誌「日本語学」(明治書院)の「ケセン語の世界」(2003年9月号から全12回)に補足を加えて一書としたものである。著者は気仙地方の方言を,方言という位置づけではなく,ケセン語と名付け,一言語として研究を行い,これまで『ケセン語入門』(共和印刷企画センター,1986年),『ケセン語大辞典』(無明舎出版,2000年)などを著している。本書はそのような本格的な研究成果への案内として,またケセン語の概要紹介として位置づけられる。内容は,ケセン式ローマ字,ケセン仮名など,音声・文字の面での創見のほか,詞辞分類,各文法形式の紹介など,全体的には文法事項を中心に,言語事実を記述している。また,ケセン語訳聖書の一節も収録している。随所にコラムが挟み込まれ,著者がケセン語研究の途上で出会った人々との交流が描かれている。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 明治書院刊 A5判横組み 272ページ 4,200円+税 ISBN 978-4-625-43400-6

齋藤希史著 『漢文脈と近代日本―もう一つのことばの世界―』

漢詩・漢文が思考・感覚のレベルでどのように近代と関わっているかについて述べたものである。単語や文体の問題として捉えられがちな問題をより広い視点で扱ったところに特色がある。「序章 漢文脈とは何か」では総論として,このテーマの前提と意義について述べる。「第1章 漢文の読み書きはなぜ広まったのか」では,頼山陽『日本外史』が多くの読者を獲得し,後代に多くの影響を与えたことを論じる。「第2章 国民の文体はいかに成立したのか」では,漢文から訓読文が分離し,普通文という実用的な文体として使われるようになったことを述べる。新漢語の誕生,啓蒙文章の文体もこの文体と切り離せないことを指摘する。「第3章 文学の近代はいつ始まったのか」では,明治の漢詩壇について述べ,漢文脈に見られる「政治=公」「文学=私」の二項対立のうち,私的領域からいわゆる近代文学が再編される過程を描く。「第4章 小説家は懐かしき異国で何を見たのか」では,永井荷風,谷崎潤一郎,芥川龍之介を中心に,漢文脈の視点で近代文学を素描する。「終章 漢文脈の地平」では,漢文脈を考えることは,現代日本の言語を相対化して捉えることに通じると述べる。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月25日発行 日本放送出版協会刊 B6判縦組み 240ページ 970円+税 ISBN 978-4-14-091077-1

小林ミナ著 『外国語として出会う日本語』

日本語学習者の質問や誤用を手がかりに,日本語のルールや特徴について考えたものである。エピソードを紹介しながら,学習者が考えていたことや学習者が作り上げた自分なりのルールを探るとともに,日本語のルールはどうなっているのか,と改めて検討していく。全体は6つに分かれている。「1 はじめに」は「母語」ではなく「外国語」として日本語を見ること,「2 「どうして「食べって」と言わないの」」は母語話者の言語直感と説明能力や,文法性と容認可能性,「3 「そうですねえー,北京です」」は学習者が作り出す「自分だけの文法」,「4 「先生,どうですか」」は学習者の日本語に対する学習者の母語からの影響,「5 「先生は若いし,……」」は文化や価値観が言葉を使う前提として存在していること,「6 「今日はネコ暑いですね」」は学習者の誤用を間違いと決めつけるだけでなく,学習者の側の論理を想像することの必要性,などを話題とする。なお,本書は「もっと知りたい!日本語」シリーズの一冊である。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月27日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 184ページ 1,600円+税 ISBN 978-4-00-006839-0

平山輝男編者代表,小林隆編 『新潟県のことば』

平山輝男編者代表,秋永一枝編 『東京都のことば』

『現代日本語方言大辞典』を基礎として,各地域の文化的・社会的特徴などについても解説した「日本のことばシリーズ」全48巻のうちの2巻である(新潟は第15巻で2005年1月刊行,東京は第13巻で2007年1月刊行)。『新潟県のことば』は,「I 総論」(大橋純一),両津市水津方言と新潟市五十嵐二の町方言を記述する「II 県内各地の方言」(大橋純一),調査地点を新潟市とする「III 方言基礎語彙」(大橋勝男・渡辺富美雄),前章に入らなかった地域特有語を記述する「IV 里言」(柄澤衞),談話資料等を収録した「V 生活の中のことば」(外山正恭),「ものもらい」の各地域での呼び方をもとに論を進める「VI 方言の地理と歴史」(小林隆)からなる。『東京都のことば』は,「I 総論」(秋永一枝・松永修一),「東京」の拡張と「東京新方言」についても述べる「II 都下の方言と新しい「東京のことば」」(田中ゆかり),「III 方言基礎語彙」(稲垣滋子),「IV 俚言」(秋永一枝),日本橋と浅草の女ことばの談話資料と,遊びのことばの調査結果を収める「V 生活の中のことば」(秋永一枝・加藤大鶴・三原裕子)からなる。なお,両書とも第1刷にはアクセント記述に不備があり,関連情報が出版社より出されている(下の書誌情報は第2刷による)。

各巻の内容は以下のとおりである。

【『新潟県のことば』】(2007年3月1日初版2刷発行 明治書院刊 A5判横組み 264ページ 2,800円+税 ISBN 978-4-625-62309-7
【『東京都のことば』】(2007年3月1日初版2刷発行 明治書院刊 A5判横組み 266ページ 4,500円+税 ISBN 978-4-625-62400-1

杉藤美代子・森山卓郎著 『音読・朗読入門―日本語をもっと味わうための基礎知識―』

声を出して読むことに関するさまざまな基礎知識をやさしく解説したものである。「第1章 音声で表現されるいろいろな意味」では,「〜じゃない」や「〜じゃないか」などを例に,読み方によって意味が変わることを述べる。「第2章 早口言葉に挑戦!」は発音のしくみ(音声学的知識),「第3章 大きな声・小さな声」は音量調節による強調,「第4章 スピードアップ・スピードダウン」は速度変化とその効果,「第5章 声の上げ下げ」はアクセントとイントネーションについて説明する。「第6章 間のとり方」では,ポーズの効果について述べる。小学生とプロの朗読を比較・分析するとともに,それらを大学生に聞かせる実験の結果をもとに,聞き手にとってポーズがどのような意味を持つのかを考察する。「第7章 方言の音声」は,各地の方言で「桃太郎」を読んだときの違いを紹介する。なお,本書には音声を収録したCD-ROMが付属している。

内容は以下のとおりである。

(2007年3月15日発行 岩波書店刊 B6判横組み 192ページ 2,000円+税 ISBN 978-4-00-022389-8

彭飛企画・編集 『日中対照言語学研究論文集─中国語からみた日本語の特徴,日本語からみた中国語の特徴─』

本書は,日中対照言語研究分野の論文22本を収めた論文集である。近年,日中対照言語研究を研究課題とする学生が急増している一方,日英対照研究に比べ,この分野は研究書も少ない傾向があった。本書はその現状を打開することを目指したもので,日中両国の日本語学,中国語学,言語学研究者が執筆している。論文の内容も,文字・語彙・文法・語用・言語行動・コミュニケーション・日本語教育・中国語教育・認知言語学・コーパス言語学など多岐にわたっている。日中両国語の漢語語基について,意味と造語力に違いがあることを論じる荒川清秀論文,日中対訳コーパスの現状と問題点,応用研究などを述べる徐一平論文,日本語の「動詞+テイル」と中国語の「在+動詞」「動詞+着」とを比較する彭飛論文などを収める。

内容は以下のとおりである。

(2007年3月30日発行 和泉書院刊 A5判横組み 552ページ 10,000円+税 ISBN 978-4-7576-0409-4

笹原宏之著 『国字の位相と展開』

国字に関する総合的研究である。「序文」(野村雅昭)では,国字であるか否かに関わる検証に関して分析的・徹底的であること,国字の使用を時間・空間・使用主体の三方面から多元的・包括的に捉えようとしていること,国字の一つずつを静的に扱うのではなく,その文字が属する漢字集合の社会における推移を動的に把握しようとしていること,の3点を本書の特色として挙げている。全体は序章・本章・終章に分かれており,本章は3部8章構成となっている。「第1部 国字とは何か」では,国字の定義・分類・発生を論じる。「第2部 国字の位相」では,個人文字,地域文字,位相文字の性格と実態を明らかにする。「第3部 国字の展開」では,限られた場で使われていた国字の一般化の現象や,一般化していた国字の衰退現象を扱う。また,JIS漢字(JIS X 0208)の音義未詳字の出典調査についても述べる。なお,本書は2004年度に早稲田大学に提出された学位請求論文を増補・改稿したものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年3月31日発行 三省堂刊 A5判縦組み 936ページ 9,800円+税 ISBN 978-4-385-36263-2