日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (『日本語の研究』第4巻1号(通巻232号)掲載分)

新刊紹介 (『日本語の研究』第4巻1号(通巻232号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

串田秀也・定延利之・伝康晴編 『シリーズ文と発話1 活動としての文と発話』 『シリーズ文と発話3 時間の中の文と発話』

シリーズ文と発話(全3巻からなる論文集)は,言語学・会話分析・認知科学などの立場から,従来の言語研究では「周辺」とされてきた談話の中での言語事象に焦点を当て,「文」という概念を再検討しようとするものである。第1巻は,「「文」内におけるインターアクション―日本語助詞の相互行為上の役割をめぐって―」(林誠),「非流ちょう性への言語学的アプローチ―発音の延伸,とぎれを中心に―」(定延利之・中川明子)を含む9編の論文からなる。「文は記号である」という観点に代え,「文は活動である」という観点から言語を観察し,話し手と聞き手の相互作用や「会話の中の文法」を扱っている。第3巻は,「時間の経過から生まれる破格文」(野田尚史),「「即時文」・「非即時文」―言語学の方法論と既成概念―」(岩崎勝一・大野剛)を含む8編の論文からなる。文が時間の流れの中で産出されるものであるという視点から従来の論の限界を指摘し,破格,挿入,中止,非流暢性といった現象を扱う。また,聞き手が文をどう処理しているかという過程を分析する。

各巻の内容は以下のとおりである。

【第1巻】(2005年10月19日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 320ページ 3,200円+税 ISBN 978-4-89476-255-8
【第3巻】(2007年5月25日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 288ページ 3,200円+税 ISBN 978-4-89476-257-2

石井正彦著 『現代日本語の複合語形成論』

20年にわたって著者が行ってきた複合語形成に関する研究をまとめたものである。本研究は豊富なデータによって裏付けられた研究であり,その根拠を示すためのデータを多く載せている。「序論 複合語形成論の対象と方法」では,複合語とは何かを考察し,既成の複合語(解釈的複合語),個人が新たに作り出す新造の複合語(命名的複合語),構文活動において一時的に作る臨時の複合語(構文的複合語)の3種に分けて考えることを述べる。「第1部 複合動詞の形成」では,既成の複合語を中心に新造の複合語も合わせて,動詞の組み合わせでできる複合動詞について検討する。語構造型を類型化したうえで,既成/新造の複合動詞にどのような違いがあるのかを見ていく。「第2部 複合名詞の形成」では,新造の複合名詞である自然科学系学術用語を中心に語形成モデルの作成を行なう。「第3部 臨時一語の形成」では,臨時一語の形成法について考察を行う。巻末に「「既成の複合動詞」造語成分の連接表」などの資料を付している。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 512ページ 8,400円+税 ISBN 978-4-89476-324-1

副島健作著 『日本語のアスペクト体系の研究』

スル/シテイルの対立を中心にして論じられることが多かった従来のアスペクト論を批判し,他の形式を考慮に入れたアスペクト体系の全体像を明らかにしようとしたものである。「第1章 日本語アスペクト論の諸問題」では,先行研究を概観し,従来の説の問題点を述べ,スル/シツツアル/シテイル/シテアルの四形式がアスペクト体系の基本であるという説を提出する。「第2章 不完結相」ではシツツアルを扱う。「第3章 主体結果相」ではシテイルを扱い,従来は継続性を多様な用法の基礎としていたが,むしろ結果性が基本的意味であると主張する。「第4章 客体結果相」ではシテアルを扱い,この形式の本質が対象指向性にあるということを,ロシア語や英語との比較によって明らかにする。「第5章 非継続相」ではスルを扱う。「第6章 アスペクト形式の内部構造」では,シツツ,シテ,イル,アルの単独用法の意味・機能を捉え,その組み合わせであるアスペクト形式の意味とどう関わるのかを論じる。なお,本書は九州大学に提出された博士論文(2005年)に加筆・修正したものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 280ページ 8,300円+税 ISBN 978-4-89476-322-7

日高水穂著 『授与動詞の対照方言学的研究』

ヤル/クレルの対立を対象として,伝統的方言体系における地域差と現在の体系変化における地域差を,対照方言学的研究の方法論により考察しようとするものである。現在も古態を残す方言を通して,かつて中央語でどのような変化が起こったのかを探ること,現在異なる体系を持つ方言の接触地域を調べ,地域差が生じた過程を追うことなどを課題としている。「第1部 枠組み編」では,授受動詞の基本的性質と史的変遷について述べる。「第2部 全国分布編」では,方言談話資料に基づいて授与動詞の地理的分布を観察・解釈する。「第3部 現地調査編」では,富山県五箇山,石川県内浦,長野県信州新町,北部伊豆諸島,東北,九州中南部の各方言における授与動詞の体系とその動態について調査・記述し,人称的方向性を区別する表現体系の方言対照を行う。なお,本書は大阪大学に提出された博士論文(1997年)をもとに,その後の調査結果をふまえて加筆・修正したものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 376ページ 7,400円+税 ISBN 978-4-89476-321-0

大原由美子編著,国立国語研究所編 『日本語ディスコースへの多様なアプローチ―会話分析・談話分析・クリティカル談話分析―』

シンポジウム「日本語ディスコースへの多様なアプローチ」(2001年,国立国語研究所)で発表された内容を基にした論文と,それに対するコメントなどを一書にまとめたものである。「第1部 発表者による報告」には,クリティカル談話分析の立場から昼のテレビ番組の電話相談を扱う大原由美子論文,「調和」という説明に頼らない「あいづち」研究を会話分析の立場から進めるスコット=サフト論文,談話分析の立場から普通体の分析を行なうクック峯岸治子論文,「〜でいい」という表現をクリティカル談話分析の立場から論じる林礼子論文の4編が収められている。「第2部 報告者に対する質問」には,上記4論文に対するそれぞれのコメント4編(斉藤正美,岡本能里子,文野峯子,井上逸兵)を収める。「第3部 質問者に対する回答」には,発表者からの回答2編(スコット=サフト,林礼子)を収める。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月13日発行 凡人社刊 A5判横組み 228ページ 2,400円+税 ISBN 978-4-89358-622-3

堀畑正臣著 『古記録資料の国語学的研究』

著者が長年携わってきた記録語にまつわる論考を二部構成でまとめたものである。「第1部 古記録資料の語法」では,「須(スベカラク〜スベシ)」,形式名詞「條(条)」,「被成(ナサル)」,「(サ)セラル」といった古記録特有の語法について,古記録での使用の実態を素描し,古記録以外の日本漢字文や和文・和漢混淆文の諸文献,抄物,キリシタン資料,唐代口語資料などに見られる用例との関係づけへと展開させた上で,記録語が口語へ流入していく経路のひとつとして,教養ある男性の改まった場での運用という段階を介するケースが挙げられると総括する。「第2部 古記録の文章と記録語」では,『小右記』における避板法が古辞書類で常用の類と確認できる語彙の範囲でなされること,古記録では見られないとされてきた使役助字「使」が実は少なからず見受けられること,唐代口語出自の諸語が浸透の度合い等の面で多様な末路を辿ったこと,「首挙」「候気色」といった難読の表現に「カウベヲコゾリテ」「ケシキヲウカガフ」と妥当な読みを提示しうることなど,記録語とその周辺に対して多角的なアプローチを行う。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月15日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 676ページ 14,000円+税 ISBN 978-4-7924-1400-9

高崎みどり・新屋映子・立川和美著 『日本語随筆テクストの諸相』

2000字程度の随筆500編を基礎データとし,文章談話研究の手法で随筆の分析を行ったものである。「第1章 テクスト分析における指示語の先行研究」(立川和美)では,指示語や結束性の先行研究についてまとめる。「第2章 随筆の指示語―『文藝春秋』の巻頭随筆を対象として―」(立川)では,「コ・ソ・ア」の出現傾向分析を行う。「第3章 随筆テクストの文章特性」(高崎みどり)では,文末表現,語句の反復パターン,引用表現の面から,随筆テクストの特性を把握しようとする。「第4章 随筆の名詞文」(新屋映子)では,名詞文の類型を示し,文章においてそれがどのような働きをしているのか,なぜそのような機能を持つのかを考察する。「第5章 随筆のジャンル特性」(立川)では,日本の随筆の史的展開を概観し,随筆とエッセイの比較を通して,随筆のジャンル特性について述べる。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 266ページ 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-327-2

有元光彦著 『九州西部方言動詞テ形における形態音韻現象の研究』

九州西部方言における動詞の語形変異を手がかりに,方言における類似性・差異性を体系的な観点から扱おうとするものである。従来のように単語・語彙中心の観察的研究ではなく,活用現象の背景にあるシステムを明らかにするための理論的研究を指向している。「第1部 導入編」では,九州西部方言に関する研究を概観した後,研究の対象と方法について述べる。「共通語でテ形になっている部分が,促音や撥音に変わっている場合も変わらない場合もある現象」を「テ形現象」と呼び,その現象の記述を出発点とし,生成音韻論の初期モデルによる分析を採用する。「第2部 記述編」では,「テ形現象」の変異パターンを記述・分類し,そこで働いている音韻ルールを導く。「第3部 理論編」では,共時的問題と通時的問題を検討し,九州西部方言の分布,変化の様相に関する理論化を試みる。また,説明のための仮説(海の道仮説,群仮説など)を立てている。なお,本書は広島大学に提出された博士論文(2004年)をもとに,その後の研究成果を加えたものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月22日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 300ページ 11,500円+税 ISBN 978-4-89476-323-4

宮地朝子著 『日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究―文法史構築の一試論―』

助詞シカなどの史的変遷・地理的変化を深く掘り下げることを通して,変化・動態を説明しうる文法史の構築をめざしたものである。「第1章 「とりたて」形式の構文的特徴と意味機能」では「とりたて」詞の概念を批判し,構文的特徴を考える際には係助詞・副助詞という区別が必要だとする。「第2章 「係助詞」シカの成立」では,シカの成立と,同類のヨリ・ホカの歴史的変化を見ていく。「第3章 方言からみたシカの構文的特徴と成立過程」では,方言におけるシカ類の分布を扱う。「第4章 ダケ・バカリの歴史・地理的変化」では,関連形式としてダケ・バカリを扱い,これらの限定性がシカ類の「其他否定」とどう関わるのかを考察する。「第5章 係助詞シカ成立の言語内的要因」では,文法史の見方について述べたあと,シカ成立の背景として古代語と現代語間の構造変化があることを指摘する。「第6章 係助詞シカ類の成立に関わる音変化をめぐって」では,シカ類の成立は音変化を伴った文法化によるという説を検討し,その可能性は低いと述べる。「第7章 「おく「より」」の背景」では,富士谷成章のヨリの分析を再検討する。なお,本書は名古屋大学に提出された博士論文(2001年)をもとに,その後の研究成果を加えたものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月22日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 232ページ 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-320-3

松本光隆著 『平安鎌倉時代漢文訓読語史料論』

本書は,従来の訓点語研究の流れを承けつつ,平安・鎌倉時代の漢文訓読語史を論じるものである。天台宗・真言宗の経類・儀軌と漢籍を検討の中心に据え,訓点資料における字訓の生成とそれぞれの資料性,訓読の様相を解明することに力点を置いている。「第1章 漢文訓読の方法」では,訓読語の成立と注釈書との関連が述べられており,漢文の理解と訓読との連動を論じる。「第2章 仏書訓点資料における注釈的活動と訓読語」では,仏書訓点資料における注釈活動を論じ,訓読の背後に注釈の存在が想定されることと,経類と儀軌類とで訓読態度が異なっていたことなどを指摘する。「第3章 訓読資料と訓読語」では,醍醐寺本遊仙窟や中院僧正点資料などを例に,同一言語集団内であっても資料の性質によって訓読語が異なっていたことを論じる。「第4章 訓読の形成と訓点資料の資料性」では,高山寺と他寺院の学問との影響関係を考察するとともに,特定の僧侶に関する資料から仏書訓読のあり方を論じている。「第5章 儀軌訓読の様態」では,儀軌の訓読に宗派・時代などによる相違が存したことなどを指摘する。「第6章 金剛界儀軌における訓読語」では,金剛界儀軌を取り上げ,各宗派・人物の訓読語の伝承や改編の問題を論じる。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月28日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 764ページ 21,000円+税 ISBN978-4-7629-3560-2)

国語語彙史研究会編 『国語語彙史の研究26』

国語語彙史研究会の26冊目の論文集であり,糸井通浩氏の龍谷大学退職記念号である(巻末に「糸井通浩教授著述目録」を付す)。本書には,京都の地名表示である「アガル・サガル」などについて,地理的・歴史的見地を踏まえて論じる糸井通浩論文,平安鎌倉時代の和漢混淆現象を,従来の語レベルではなく語法(文型)レベルから論じる山本真吾論文,久米邦武がまとめた岩倉遣外使節の報告書ともいえる『米欧回覧実記』とその素稿を資料に,「時」に関わる表現の成立過程を論じる松井利彦論文,明治から戦前にかけての文語体の唱歌における形容詞について,注意される例を論じる蜂矢真郷論文など,全19編の論文が収録されている。

内容は以下のとおりである。

(2007年3月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 338ページ 9,500円+税 ISBN978-4-7576-0398-1)

市井外喜子・根岸亜紀著 『天草版平家物語研究』

本書は,「I 天草版平家物語のローマ字表記・分かち書き」(根岸亜紀)と「II 天草版平家物語の語彙」(市井外喜子)の2部よりなる。前者は,冒頭に語学資料としての天草版平家物語について概説し,以下に同資料の音韻・表記についての論考を収める。「1  ローマ字表記」では,同資料のローマ字表記の意義を検討した上で,中世日本語の音韻体系を分析し,表記の問題として補助記号 ~ を取り上げる。「2 分かち書き」では,「以って(motte)」「於いて(voite)」の表記を取り上げ,筆録者の「一語意識」が検討されている。後者は,冒頭に,天草版平家物語中の仏教的要素の扱い方に注目した「天草版平家物語と古典平家」をおき,以下,「1 依拠本を巡って」では同資料の依拠本の問題を検討し,「2 語彙を巡って」では,対称詞コナタ・ソナタ,ヲトトイ(一昨日/兄弟姉妹),ヲドロク(驚・醒)について,同時代資料や現代方言などを視野に入れた検討が加えられている。

内容は以下のとおりである。

(2007年3月24日発行 おうふう刊 A5判縦組み 256ページ 12,000円+税 ISBN 978-4-273-03449-8

益岡隆志著 『日本語モダリティ探究』

本書は『モダリティの文法』(くろしお出版,1991年)の続編である。前著の基本部分を引き継ぎつつ,モダリティ分類の修正,新たな構想の展開を行っている。全体は本論と付説に分かれる。本論は,序章で議論の方向付けをした後,第1部と第2部に分かれ,終章で意義と残された問題について述べるという構成になっている。その中の「第1部 文の意味的階層構造とモダリティ」では,概念的意味を基盤として階層構造を設定する文構造モデルを根底に置き,モダリティ研究上検討すべき各論点(命題とモダリティの区分,モダリティと主観性の関係,発話・説明・評価のモダリティの考察)について9章に分けて検討する。「第2部 判断のモダリティと事態の現実性の捉え方」では,判断のモダリティ(その下位分類とされる真偽判断・価値判断のモダリティ)について7章にわたって詳細な考察を行う。付説は本論に関係がある三つの論考からなる。

内容は以下のとおりである。

(2007年5月24日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 314ページ 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-378-7