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新刊紹介 (『日本語の研究』第4巻2号(通巻233号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

上野誠司著 『日本語における空間表現と移動表現の概念意味論的研究』

Jackendoffの概念意味論の枠組みを利用して,日本語における場所を表す表現「〜に」「〜で」と,移動地点を表す表現「〜まで」の分析を行ったものである。第1章「序章」では研究の目的,理論的背景などを述べる。第2章「概念構造に対する適格性制約」では,従来の主題関係仮説による意味場の定義が,適格性制約として働いていることを指摘するとともに,新たな適格性制約を提案する。第3章「空間表現の「に」と「で」」では,第2章での仮定や枠組みを利用して具体的な分析を行い,「に」と「で」の違いは概念構造の構造的位置の違いによると述べる。第4章「空間移動表現の概念構造」では,「〜まで」と「歩く」などの移動様態動詞が共起する文を扱い,「まで」句の特性は語彙概念構造と適格性制約との関係により,概念構造のレベルで説明できると主張する。第5章「結論」ではまとめと今後の課題について述べる。なお,本書は大阪大学に提出した博士論文(2003年)にもとづくものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月22日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 194ページ 8,500円+税 ISBN 978-4-89476-326-5

角岡賢一著 『日本語オノマトペ語彙における形態的・音韻的体系性について』

日本語の擬音語・擬態語類の体系性を形態論的・音韻論的観点から論じたものである。著者のデータベースに収録された1652語のオノマトペ語彙を分析の基礎としている。著者は,動詞や名詞などの要素からの転用部分がない「真性オノマトペ」と,転用がある「境界オノマトペ」とを区別する。「境界オノマトペ」のうち,漢語起源のものを「擬似オノマトペ」と呼び,さらにその中で平仮名書きされるようになったものを「かな擬似オノマトペ」と呼んでいる。全体は9章からなる。第1章「序論」に続き,第2章「語源」では,「真性オノマトペ」とそれ以外を区別するために語源の検証をする。第3章「語基と派生形」では,語基の抽出を行い,その性質を論じる。第4章「オノマトペ標識」では,主として音声的特徴について述べる。第5章「接辞」は,接辞とオノマトペ標識との共通点・相違点を探る。第6章「交替形語彙」では「ちらほら」のように部分的に交替して繰り返されるパターンを扱う。第7章「語基の多義性について」は,数量分析をもとに多義語基の割合を明らかにし,語義の多義性を形態的・音韻的側面から考察する。第8章「擬似オノマトペ」では,漢語起源のオノマトペを見ていく。第9章「結論」ではオノマトペ語彙の体系性についてまとめる。

内容は以下のとおりである。

(2007年2月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 288ページ 4,800円+税 ISBN 978-4-87424-386-2

中島悦子著 『日中対照研究 ヴォイス―自・他の対応・受身・使役・可能・自発―』

広くヴォイスを対象として,日本語と中国語の対照研究を行ったものである。日本語学習者が日本語を学ぶ際に生じる誤用や非用について,その要因や解決の方法を考えるところから出発した研究である。全体は3部に分かれる。第1部「自・他の対応と日中対照」では,現代日本語の動詞の自・他対応と,それらに対応する中国語表現について考察する。第2部「受身と日中対照」では,直接受身文,間接受身文,「語彙的受身」(日本語では「受ける」類の動詞,中国語では“受”類の動詞を用いて受身を表す形式)などについて,作例のほかに,『暗夜行路』とその翻訳書を資料として,日中両語の対照を行っている。第3部「使役・可能・自発と日中対照」では,「サセル」・「テモラウ」・「ヨウ(ニ)」構文,「ラレル」可能,「ラレル」自発を取り上げ,それぞれの表現に対応する中国語構文について考察する。最後の「終論」では,ヴォイスと結果表現との関係についてまとめている。

内容は以下のとおりである。

(2007年4月20日発行 おうふう刊 A5判横組み 192ページ 4,000円+税 ISBN 978-4-273-03450-4

久野〓・牧野成一・スーザン=G=ストラウス編 『言語学の諸相―赤塚紀子教授記念論文集―』

言語学・日本語教育学の分野で活躍したUCLA教授赤塚紀子氏の古稀記念論文集である。論文全15編からなり,巻頭に「赤塚紀子先生著書論文リスト」を収める。Part1「日本語言語学」には,「拘束義務」条件文を扱うパトリシャ=M=クランシー論文,自発性や非対格・非能格の問題を扱うウェスリー=M=ヤコブセン論文,日本語の言語類型論的特徴について述べる久野〓論文,「わからない」が“I don't know”と解釈される現象を情報のなわ張り理論から分析するリー季里論文,日本語の「〜たち」を認知言語学の面から分析する牧野成一論文など11編を収める。Part2「日本語言語獲得と教授法」には,母音の長短エラーを扱う浅野真紀子論文,言語学と言語教育の関わりについて論じる浜野祥子論文など4編を収める。

内容は以下のとおりである。

(2007年4月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 352ページ 4,200円+税 ISBN 978-4-87424-373-2

有田節子著 『日本語条件文と時制節性』

条件文を不確定な知識にもとづく推論の明示的な形式と捉え,条件節の時制のあり方と条件文の意味分類との対応関係について論じたものである。分析の主要概念は「時制節性」や「既定性」であり,本書の前半(第1章から第4章)は定義や検討に充てられている。第5章「論理文の体系性」では,論理文における条件文の位置づけと,この研究での条件文の捉え方について述べる。第6章「条件文の意味と二種類の不確定性」では,前件の命題が非既定的なものを予測的条件文,前件の命題が既定的であるが話し手が真偽を知らないものを認識的条件文,前件の命題が既定的であり偽であることを知っているものを反事実的条件文と呼び,第7章から第10章でその3種の条件文の分析を行う。第11章「前件の既定性と後件のモダリティ」では,前件の既定性が後件のモダリティ制約にどう関わっているのかを論じる。第12章「テハ文の意味の合成性」では,周辺的な形式のテハを扱い,「時制節性」や「既定性」の概念がテハ文分析の際にも有効であることを述べる。なお,本書は京都大学に提出した博士論文(2004年)に加筆・修正したものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年5月30日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 224ページ 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-382-4

定延利之・中川正之編 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉1 音声文法の対照』
西光義弘・水口志乃扶編 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉3 類別詞の対照』
益岡隆志編 『シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉5 主題の対照』

近年の現代日本語研究によって得られた知見を基礎とし,現代日本語に見られる諸事象を世界の諸言語と対照することによって,日本語の個別性,及び言語一般に認められる普遍性を明らかにすることを企図した全11巻のシリーズのうちの3巻である。第1巻『音声文法の対照』は,音声科学・言語学・認知科学・コミュニケーション論など多角的視点から,音声言語の解明を目指した論文を収録したもので,「序」に加えて,日本語をはじめとする諸言語の音声面についての論文9編を収める。第3巻『類別詞の対照』は,類別詞に関する理論的総論3編を収める第1部「序論:理論的背景」,日本語の類別詞についての認知言語学的考察5編を収める第2部「日本語の類別詞」,他言語の類別詞体系についての考察2編を収める第3部「ビルマ語とネワール語の類別詞」により構成される。第5巻『主題の対照』は,2003年7月に行われた「言語対照シンポジウム―主題をめぐって―」での発表にもとづく9編の論文(第1部「論文編」)と,それらに対して当日なされたコメントにもとづく2編の論文(第2部「解説(コメント)編」)を収める。

各巻の内容は以下のとおりである。

【第1巻】(2007年6月5日発行 くろしお出版刊 A5判縦組み 226ページ 3,000円+税 ISBN 978-4-87424-383-1
【第3巻】(2004年11月3日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 228ページ 3,000円+税 ISBN 978-4-87424-313-8
【第5巻】(2004年12月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 236ページ 3,000円+税 ISBN 978-4-87424-314-5

神部宏泰著 『方言の論理―方言にひもとく日本語史―』

地方に伝播したかつての中央語がどのように受け入れられ,どのような変遷を経たのかを見ることによって,方言生活と史的変化の関わりを述べたものである。本研究は,主に西日本各地の方言の事例にもとづいており,全体は付章を含めて13の章からなる。第1章「「れる・られる」敬語の変遷」では伝播,活用形式の推移,命令形式の問題を扱う。第2章「敬語命令形の諸問題」,第3章「動詞否定形の慣用」では各形式の方言形を見ていく。第4章「形容詞変遷上の旧形式と新形式」は九州方言の「サ語尾」「イ語尾」「カ語尾」を扱う。第5章「疑問表現の特殊慣用形式」は近畿・中国・四国に見られる「疑問詞…ナラ」などの表現,第6章「応答表現小考」は九州方言の肯定応答表現,第7章「離別表現の一態」は共通語の「さようなら」にあたる九州方言,第8章「断定助動詞の消長」は「ダ・ジャ・ヤ」の変遷,第9章「接続助詞の年輪」は確定順接・確定逆接の分布と分化,第10章「方言事象の衰退と転成」は文頭の感動成分,文中の間投成分,文末の文末成分,第11章「特殊発音の史的背景」は「〜チョル」の成立など,第12章「方言に生きる古語・特色語」は備後方言の古語の由来・実態について述べる。付章「生活のことばと文化」は生活語としての方言文化についての講演記録(1995年9月)である。

内容は以下のとおりである。

(2007年6月10日発行 和泉書院刊 A5判横組み 256ページ 8,500円+税 ISBN 978-4-7576-0417-9

陣内正敬著 『外来語の社会言語学―日本語のグローカルな考え方―』

言語生活におけるコミュニケーション問題という観点から外来語を観察し,考察したものである。第1章「外来語の現代的見方と研究方法」では,社会言語学的に外来語現象を捉える研究方法について述べる。第2章「言語接触・文化接触から見た外来語」では,Jポップスやテレビ番組名を資料として,言語接触によってもたらされた音声・音韻,語彙,表記などの言語体系内での変容の実態を検討する。第3章「コミュニケーションから見た外来語」では,著者自身の多人数調査や各種世論調査の結果から,わかりやすさや伝わりやすさの問題,外来語意識の問題など,現実のコミュニケーションにおける外来語の問題を考察する。第4章「言語政策から見た外来語」では,日本とフランスの言語政策の違い,外来語言い換えの問題,国語教育の外来語など,国・地域・組織・個人の外来語に対する考え方や扱い方を取り上げる。なお,本書は大阪大学に提出した博士論文(2005年)の一部である。

内容は以下のとおりである。

(2007年6月10日発行 世界思想社刊 B6判横組み 196ページ 1,900円+税 ISBN 978-4-7907-1266-4

山本忠行・河原俊昭編著 『世界の言語政策 第2集―多言語社会に備えて―』

経済のグローバル化とともに世界中で多言語化が起きている。定住外国人や留学生の増加によって,日本社会もやがて本格的な多言語社会を迎えることになる。本書は,このような現状認識にもとづき,これからの多言語社会にどのように対処すればよいのかを探っていくための材料として,多言語問題に取り組んできた世界各国の言語政策の歴史と現状を紹介したものであり,『世界の言語政策―多言語社会と日本―』(くろしお出版,2002年)の続編である。第2集では,日本(岡戸浩子論文,野山広論文),韓国(樋口謙一郎論文),中国(フフバートル論文),マレーシア(河原俊昭論文),シンガポール(田嶋ティナ宏子論文),インド(榎木薗鉄也論文),ドイツ(四釜綾子,ペート=バックハウス,山川智子共著論文),スペインとモロッコ(石原忠佳論文),ケニアとタンザニア(山本忠行論文)の言語政策が取り上げられている。

内容は以下のとおりである。

(2007年6月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 272ページ 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-380-0

佐藤亨著 『現代に生きる 幕末・明治初期漢語辞典』

「主に幕末・明治初期に新造された語,成立はそれ以前であるが,新しい概念を示す語として改めて用いられた語,また,意味・表記・語形(よみ方)が変化した語,それらがゆれている語など,時代の特色を示している漢語4482語」(「凡例」より引用)を収録し,五十音順に配列した辞典である。見出し語は平仮名で示し,歴史的かなづかいと漢字表記も記す。次に原典からの引用により用例をあげ,出典(書籍の場合は,書名・著編者名・章節・刊行年など,雑誌の場合は,筆者名・論文題名・刊行年・雑誌名・号数など)を明示する。最後に,「意味」あるいは「意味・出自」といった欄を設け,見出し語の意味,出自と時代背景に関する解説,意味や出自に関する研究,意味変化の過程などについて記述する。また,見出し語と同義・類義の和語がある場合には,文章語・口頭語の別など漢語との性格の違いを解説している。巻末の付録には,引用文献をまとめた「出典総覧」,事項や各種資料(国語資料・漢籍・仏典資料・辞書)の簡便な解説である「事項・資料解説」,「参考文献」を付す。

(2007年6月20日発行 明治書院刊 B5判縦組み 946ページ 28,000円+税 ISBN 978-4-625-40400-9

斉藤くるみ著 『少数言語としての手話』

手話を少数言語の一つとして位置づけた上で,手話の構造,社会における位置づけ,手話による芸術表現などさまざまな側面が扱われている。第1章「手話からわかった人間の言語能力」では,手話の生成・認知に関わる脳内部位に対する近年の知見や,手話で育つ子供の言語発達に関する事例などが紹介され,手話が音声言語と同様の意味における言語の一つであることが示されている。第2章「マジョリティー言語に囲まれる手話」では,手話と音声言語との関係性を,マイノリティーの音声言語のおかれた社会的状況との対比において考察する。第3章「手話のバリエーション」では,手話の地域差,性差,世代差,人種差などについて論じる一方で,ろう者の国際的な連帯から生まれた国際手話の紹介もする。第4章「手話と芸術」では,手話演劇,手話詩・手話俳句などの芸術表現について述べる。第5章「教育の中の手話とろう文化の未来」では,教育現場における手話について,ろう者が手話を母語として選択する権利,音声言語とのバイリンガル教育や,手話文化に対する人工内耳の影響など,さまざまな問題を論じている。

本書の内容は以下のとおりである。

(2007年6月21日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 224ページ 2,800円+税 ISBN 978-4-13-083047-8

竹林一志著 『「を」「に」の謎を解く』

「を」および「に」の多義性を包括的に捉え,その本質を明らかにしようとしたものである。また,「を」「に」が用いられている諸構文の使用条件や使用制約の根拠を説明しようとしている。手法としては,認知言語学の「スキーマ」「ベース」などの概念を使用している。全体は3部に分かれる。第1部「助詞「を」をめぐって」と第2部「助詞「に」をめぐって」では,先行研究とその問題点をあげ,代案を提示する。例えば,「「を」の諸用法は<移動主体が,その存在していた場を出て,経路を移動し,別の場に至る>という構図を(背景[base]として)共有している」「どの領域が焦点化されるかによって「を」の諸用法が生ずる。(以下略)」(55ページより引用)と述べる。その上で諸構文の分析を進める。第3部「「を」と「に」」では,「を」「に」の省略現象のほか,「を」を使う使役と「に」を使う使役について論じる。

内容は以下のとおりである。

(2007年6月30日発行 笠間書院刊 A5判横組み 264ページ 2,500円+税 ISBN 978-4-305-70354-5

小林千草著 『女ことばはどこへ消えたか?』

光文社新書310として執筆された本書は,主として日本語における直近100年間の女ことばの様相と変化を述べたものである。第1章「一〇〇年前,漱石『三四郎』の女ことばから」では,『三四郎』を題材にし,それぞれの終助詞に登場人物の感情や意志が込められていることを分析している。第2章「二〇〇年前の『浮世風呂』の女ことば―『三四郎』および現代との距離を計りつつ―」では,『浮世風呂』などを考察し,江戸から明治への女ことばの移り変わりを素描している。第3章「「おことば」「もじことば」のルーツを遡る」では,単語レベルでの女ことばに注目し,「おことば」「もじことば」をはじめとする女房詞の消長を論じる。第4章「『三四郎』より一〇〇年後,現代女子学生の言語実態と言語感覚」では,世論調査や著者が行ったアンケート結果をもとに,ことばが中性化している現状や使用者の心理,個々の表現の実態を述べている。第5章「女ことばの一〇〇年〈まとめ〉」では,直近の100年間の女ことばの動向を,ニューハーフのことばやお嬢さまことばなどを軸にまとめている。

内容は以下のとおりである。

(2007年7月20日発行 光文社刊 新書判縦組み 344ページ 850円+税 ISBN 978-4-334-03411-5

井上史雄・荻野綱男・秋月高太郎著 『デジタル社会の日本語作法』

近年,電子メールや携帯電話などの通信手段が飛躍的に発達したが,これらの基本的なマナー・作法は確立していない状況にある。本書はそのような現状を踏まえ,社会言語学の観点から新しく形成されつつある作法を整理したものである。第1章「デジタル出世論」では,電子メールが発展してきた経緯を述べ,いまだ作法やルールが確立されていない現状を指摘する。第2章「デジタル行動論」では,電子メールを談話行動の一種として捉え,旧来存する手紙の形式と関連づけて論じる。第3章「デジタル書簡論」では,電子メールの形式面に重点を置き,現段階で通用している作法について述べている。第4章「デジタル文体論」は携帯電話のメール機能(ケータイメール)を取り上げ,様々な点において文体が話し言葉に近づいている現状を分析する。第5章「デジタル談話論」では3人以上の集団になった場合のコミュニケーションについて論じており,メーリングリストと電子掲示板・ネット会議が題材にされている。第6章「デジタル表現論」は新しい通信手段の発生により生じたコミュニケーションのスタイルなどについて多面的に論じ,その意図や文化的背景を探っている。第7章「デジタル対話論」では,携帯電話での通話について,従来の固定電話機との違いを論述している。第8章「デジタル敬語論」・第9章「デジタル作法論」では,本書での議論をまとめる形で,敬語や談話の諸規則について述べている。

内容は以下のとおりである。

(2007年7月26日発行 岩波書店刊 B6判横組み 216ページ 1,800円+税 ISBN 978-4-00-024023-9

山口仲美著 『若者言葉に耳をすませば』

本書は,若者言葉の成り立ちや特色,表現目的とそれに伴う表現効果を考察するとともに,若者の言葉に批判的な中高年との接点を見いだすことを目的とする。座談会と著者による解説とを交互に配置することによって,若者・中高年双方の本音に迫ろうとしている。第1章「若者はこんな言葉を使っている」には著者と都内大学生との座談会を収め,若者の生の言葉に触れることによって論点を浮かび上がらせている。第2章「若者言葉の特色と目的」は著者による解説で,若者言葉を省略語・強調語などに類型化している。第3章「こんな言葉をはやらせたい」では若者たちが気に入っている言葉について,第4章「若者たちの自省」では逆に若者自身が反省的に捉えている言葉について論じる。第5章「中高年は若者言葉をこう見ている」では,年配者が不快感を覚える若者言葉について議論する。第6章「実は中高年も若いときは」では,現在の中高年層がかつて使っていた言葉を顧みることで,若者言葉の系譜を探ろうとしている。第7章「若者が憧れる中高年の言葉」では,中高年層の言葉も若者の関心の対象になっていることを指摘する。

内容は以下のとおりである。

(2007年7月30日発行 講談社刊 B6判縦組み 288ページ 1,400円+税 ISBN 978-4-06-214160-4

加藤正信・松本宙編 『国語論究 第13集 昭和前期日本語の問題点』

昭和前期の日本語・日本語研究・日本語教育に関わる論文を収めた論文集である。戦時下日本の語彙を扱う宮島達夫論文,当用漢字表成立までの漢字節減論を扱う松本宙論文,歴史的仮名遣いと仮名遣いの改定論議について扱う石井正彦論文,日本式と標準式のローマ字論争を扱う菊地悟論文,読み書き能力調査を扱う島村直己論文,横書きと地域・ジャンルの関連を探る屋名池誠論文,外地における日本語教育を扱う安田敏朗論文,南洋群島における日本語教育の一端を体験者から聞く真田信治論文,地方の言語生活と標準語について述べる加藤正信論文,ガ行鼻濁音を扱う大橋純一論文,「これからの敬語」(国語審議会建議,1952年)の背景などについて述べる浅田秀子論文,国語研究とソシュールについて述べる石井久雄論文,トルベツコイの音韻論と有坂秀世について論じる釘貫亨論文,山田孝雄の文法論の受容について述べる仁田義雄論文,橋本進吉の文法論の学校文法への採用と影響について述べる鈴木泰論文,東条操らの方言研究と各地の方言集作りについて述べる遠藤仁論文の計16編を収録している。

内容は以下のとおりである。

(2007年9月1日発行 明治書院刊 A5判縦組み 368ページ 28,000円+税 ISBN 978-4-625-43401-3

真田信治・友定賢治編 『地方別方言語源辞典』

「読んで楽しめる辞典」を目指し,11の地方(北海道・東北北部,東北南部,関東,甲信越,東海,北陸,関西,中国,四国,九州,沖縄)と6地点(津軽,東京,名古屋,京阪,出雲,博多)の代表的な方言について,語源を解説した辞典である。各地方・地点別に20〜60語程度をあげ,それぞれ五十音順に見出し語を配列している。取り上げられた語を例示すれば,「あーけーじゅー[沖縄]・あいそんない[北陸]・あえぶ[東北南部]・あおすたんぼーぶら[博多]・あが[関西]・いいまのふり[東京]・いかい[関東]・いきる[関西]・いぐね[東北南部]・いけず[京阪]」などである。各見出し語に対して,使用地域の目安として県名・地域名をあげ,意味の解説,文脈の中での語の使用文例およびその標準語訳を示す。「語源」の欄には,語源説(「民間語源」を含む)を紹介するだけでなく,この辞典としての主体的な解釈も提出している。巻末に「主要参考文献」と「索引」を付す。

(2007年9月15日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 352ページ 2,400円+税 ISBN 978-4-490-10724-1

大野晋著 『日本語の源流を求めて』

岩波新書新赤版1091という形で,前著『日本語の形成』(岩波書店,2000年)と『弥生文明と南インド』(岩波書店,2004年)の要点を,幅広い読者層に伝えようとしたものである。また,その後の研究の進展による考察も加えられている。全体は「タミル語と出会うまで」「言語を比較する」「文明の伝来」「言語は文明に随いて行く」の4章(全22節)からなる。最終節では「日本語の歩んだ道」として,日本語の形成と展開を9段階にまとめている。その骨子は「1 日本では,縄文時代には西日本ではポリネシア語族の一つが使われていた。その単語はすべて母音終わりであった。」「2 そこにタミル語が到来して,私の言うヤマトコトバが作られて来た。」「6 タミル語の到来によってヤマトコトバが成立した後,朝鮮半島から高句麗語が入って来て,数詞の一部分と共に,他の単語やタミルと異なる文明を日本にもたらした。」(259ページより引用)である。

内容は以下のとおりである。

(2007年9月20日発行 岩波書店刊 新書判縦組み 288ページ 820円+税 ISBN 978-4-00-431091-4

中村明著 『日本語の文体・レトリック辞典』

文体論・文章論に関する用語,レトリックに関する用語など約1100項目を選び,五十音順に配列して,その意味・用法を解説した辞典である。立項されている項目を例示すれば,「曖昧語法・曖昧性・アイロニー・アウトライン・悪文・揚げ足取り・アシンデトン・後書き・アナグラム・異化・異化効果・異化装置・異義兼用・意義素性」などである。重要項目については,文学作品などから実例を引き注解を加えてある。外来の概念には原語を注記し,また,それ以外の用語についても関連のある修辞学・文体論用語の原語を付記するとともに,各項に「類義(項目)」「対立(項目)」「関連(項目)」を記す欄を設けて,項目相互の参照関係を示す。巻末の「日本語レトリック体系一覧」は,日本語表現において用いられるレトリックを修辞的言語操作の性格の違いにより,「1〔配列〕の原理」「2〔反復〕の原理」「3〔付加〕の原理」など8類に大別し,各技法にコードを付して配列したものである。

(2007年9月25日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 474ページ 3,200円+税 ISBN 978-4-490-10726-5

森田良行著 『助詞・助動詞の辞典』

助詞や助動詞について,その根底にある発想,各用法に通底する意味,文型との関連,表現性などを著者の立場から示した辞典である。「プロローグ」において,助詞・助動詞の性格と日本語に占める位置について解説を行う。辞典本編は2部に分かれる。第1部「助動詞編」では,「せる・させる」「れる・られる」「たい・たがる」などの項目別に説明を行う。ここでの説明は,一般的な文法教科書のように簡単な意味と例文を列挙する形式ではなく,例えば「せる・させる」ならば,「使役と他動詞の区別」「文型変換から見た使役文型」「「せる/させる」文型の種類」「動詞と「せる/させる」の意味関係」「「せる/させる」文型と意味との関係」「「せる/させる」文型の拡張」「「〜に〜させる」か「〜を〜させる」か」などの小項目を設け,解説を加える構成となっている。第2部「助詞編」では,「は」「も」「まで」「さえ」などの項目を立て,それぞれの性質を詳述する。例えば「は」の項目では,「が」との違い,「は」を用いる文型などを解説する

内容は以下のとおりである。

(2007年9月25日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 336ページ 2,800円+税 ISBN 978-4-490-10727-2

金水敏編 『役割語研究の地平』

本書は「役割語」をテーマとした論文集である。金水敏著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店,2003年)によって導入された「役割語」に関する新しい研究の可能性を示したものと言えよう。全体は3部に分かれる。第1部「対照役割語研究への誘い」には,日英の対照を通して役割語の個別性と普遍性に迫る山口治彦論文,日常会話のキャラ助詞について述べる定延利之論文,日本のアニメにおける善玉・悪玉の声質の違いを扱う勅使河原三保子論文,日韓対照役割語研究を試みる鄭惠先論文の4編(2005年6月の関西言語学会のシンポジウム「対照役割語研究への誘い」での発表にもとづく)を収める。第2部「近代マンガの言語と身体」には,『サイボーグ009』の役割語を見ていく金水敏論文,登場人物の身体的特徴を分析してステレオタイプを論じる吉村和真論文の2編(2004年の阪大フォーラム〈ストラスブール〉の報告書『Le Japon, d'autres visages 日本,もうひとつの顔』からの再録)を収める。第3部「役割語研究の射程」には,米語方言の日本語訳を分析するトーマス=マーチン=ガウバッツ論文,西洋人語を扱う依田恵美論文,軍隊語の成立を明らかにする衣畑智秀・楊昌洙論文,ピジン日本語について述べる金水敏論文の4編を収める。

内容は以下のとおりである。

(2007年9月26日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 232ページ 2,500円+税 ISBN 978-4-87424-396-1