日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (『日本語の研究』第4巻3号(通巻234号)掲載分)

新刊紹介 (『日本語の研究』第4巻3号(通巻234号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

中村桃子著 『「女ことば」はつくられる』

本書は,女性が使用する言葉に対する社会的関心を通して,歴史的に形成され規範化されたものを「女ことば」と捉え直し,言語規範のイデオロギーとしての側面を明らかにしようとするものである。序章「「女ことば」に対する二つのアプローチ」では,言葉についての「本質主義・進化論的アプローチ」を批判し,「構築主義・イデオロギー的アプローチ」を提案する。第1部「規範の対象としての女の言葉づかい」では,女訓書と女房詞を扱い,女性の言葉遣いが「女ことば」として規定・規範化され,管理の対象にされていく経緯をみる。第2部「ジェンダーと「国語」―明治の国民国家成立と「女ことば」―」では,明治期の「国語」制定にジェンダーが大きな役割を果たしたと述べる。第3部「女の国民化と「国語」―近代総力戦の「女ことば」―」では,戦中期に「国語」がジェンダー化されていく過程を扱う。第4部「「女ことば」の脱政治化・本質化―「女らしさ」の戦後―」では,戦後の「女ことば」は脱イデオロギー化され,女性の生得の性質によるものと再定義され,維持されてきたと述べる。

内容は以下のとおりである。

(2007年7月7日発行 ひつじ書房刊 B5判縦組み 360頁 2,800円+税 ISBN 978-4-89476-352-4

文化庁文化部国語課編『平成18年度 国語に関する世論調査 情報化時代と漢字使用』

国語施策の立案に資することを目的とする,現代の社会状況の変化に伴う国語意識の実態に関する世論調査の報告書である。調査は,2007年2月から3月にかけて,層化2段無作為抽出法によって選ばれた全国16歳以上の男女個人3,000人を対象に(有効回収数1,943,有効回収率56.4%),調査員による面接聴取によって実施している。調査項目は「言葉遣い」「常用漢字表」「情報化時代における漢字使用」「慣用句等の言葉遣い」に関するもので,設問には,言葉遣いに関する関心の有無,常用漢字表の認知度,新聞・雑誌・ウェブニュースを読む頻度や,「役不足」の意味などがある。回答は,地域ブロック別,性別,年齢別に集計され,設問ごとに検討が行われている。

内容は以下のとおりである

(2007年7月13日発行 国立印刷局刊 A4判横組み 128頁 1,429円+税 ISBN 978-4-17-196061-5

青木博史編 『日本語の構造変化と文法化』

関西言語学会のワークショップ「歴史的観点からみた日本語における句の諸相」(2005年6月,関西大学),名古屋大学国語国文学会のシンポジウム「形式名詞の文法化」(2005年7月,名古屋大学)をきっかけに編まれた論文集である。文法変化の研究が目指すものは,「言語の仕組みそのものの変化,体系変化そのものの解明」(「はしがき」より引用)であるとする。内容面では「とりたて」「接続」「述語」を論じたものが多く,形式名詞の文法化を扱う宮地朝子論文,形式名詞から形式副詞・取り立て詞への変化を数量詞遊離構文との関わりで見ていく江口正論文,付加節から取り立てへの変化パターンを論じる衣畑智秀論文,「食べたり飲んだり」「食べるなり飲むなり」などの並列形式の史的変化を見ていく岩田美穂論文など,計11編を収録する。

収録論文は以下のとおりである。

(2007年7月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 288頁 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-351-7

山内洋一郎編著 『天草本金句集の研究』

本書は,「天草本金句集」の文献学的研究の成果を示すとともに,「天草本金句集」(大英図書館蔵)の本文影印と翻字本文・総索引を資料として提供するものである。全体は4部構成である。中世以前の金言成句集について論じる第1部「金句集の研究」では,大東急記念文庫蔵『金榜集』と『金句集』との関係,『金句集』諸本について,構成,句の異同,増補の過程を検討する。また,主要写本として,松平本,雑記本,伊達本について解題し,松平本(松平頼武氏蔵大永4[1524]年写本)と雑記本(前田育徳会尊経閣文庫蔵室町末期写本)の影印を収める。加えて,雑記本を底本とした修訂本文により出典考証を行い,「收載書目一覽」を示す。第2部「天草本金句集の研究」では,天草本の所拠文献として,『金句集』『管蠡抄』などの本邦金言成句集のほか,『論語』『三略』などの漢籍,『太平記』などの国書について検討した上で,天草本全則について出典を特定する。また,天草本の語彙・語法について論ずる。第3部「天草本金句集 總索引」には,天草本の翻字本文による「自立語索引」と「助詞・助動詞索引」を収める。第4部「天草本金句集 影印・翻字本文」には,天草本の影印と翻字本文とを見開き対照の形で示す。

内容は以下のとおりである。

(2007年7月31日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 416頁 12,000円+税 ISBN 978-4-7629-3561-9

奥津敬一郎著 『連体即連用?―日本語の基本構造と諸相―』

1995年から1997年まで明治書院の月刊誌『日本語学』に連載した論(全23回)をまとめたものである。連体と連用の対応,例えば「はげしい練習をする」(連体成分「はげしい」)と「はげしく練習する」(連用成分「はげしく」)の対応を取り上げ,ほぼ同内容の対応関係がどのような文のときに成り立つか,その条件は何か,などを考察していく。全体は2部構成である。第1部「連体と連用の対応」では,上記のような「スル動詞」の文(第1章「機能動詞文」),「冷たい雨が降る/雨が冷たく降る」のような例(第2章「自然現象文」),「大きい穴があく/穴が大きくあく」のような例(第3章「変化動詞文」),一般的な文(第4章「一般述語文と連体・連用の対応」)を検討する。第2部「特殊な連体と連用との対応―準連体など―」では,「仲人は花嫁の手をとった/花嫁の手は仲人にとられた/花嫁は仲人に手をとられた」のような受身文(第5章「不可分離所有と所有者移動」),「どっちか」など不定指示詞の文(第6章「不定指示詞構造」),「3匹」など数量詞の文(第7章「数量詞移動」)のようなより複雑な対応関係を扱う。

内容は以下のとおりである。

(2007年8月6日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 282頁 5,400円+税 ISBN 978-4-89476-350-0

小野尚之編 『結果構文研究の新視点』

日本英語学会のワークショップ「結果述語の意味論」(2005年11月,九州大学)をきっかけにして編まれた論文集である。意味論と統語論の接点にある問題とされる結果構文をテーマとする。「序論―結果構文をめぐる問題―」(小野尚之)では,従来の議論をまとめ,収録論文の背景・論点を解説する。収録論文は,英語の結果述語を意味の面から精密に分類し,意味分類と統語構造とが関係することを論ずる影山太郎論文,本来的結果構文と派生的結果構文に異なる事象構造の設定を提案する小野尚之論文,結果構文を慣用的あるいは個別的問題とするのではなく有界性制約に基づく現象とみる鈴木亨論文,ゲルマン諸語における派生的結果構文を扱う都築雅子論文など,計8編である。

収録論文は以下のとおりである。

(2007年9月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 336頁 6,200円+税 ISBN 978-4-89476-346-3

山梨正明他編 『認知言語学論考 No.6 2006』

言語研究の新しいアプローチとして,認知言語学による研究成果を提供する目的で創刊された『認知言語学論考』の第6巻である(第1巻は2001年9月刊)。第6巻には,認知心理学的実験研究により得られた知見を認知言語学に生かす可能性を探るため,空間認知実験が時間メタファーの認知意味論研究にどのように結びつくかを論じる篠原和子論文,語におけるメタファー的意味の実現に関して見られるギャップ(概念メタファーの不適用)について検討する松本曜論文,抽象化の認知的発達から言語習得の過程を追い,言語に関わるスキーマの構築を扱う谷口一美論文,英語の自動詞goの分析を通して「多重活性化モデル」を提唱する出原健一論文など,計7編が収録されている。

収録論文は以下のとおりである。

(2007年9月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 288頁 4,200円+税 ISBN 978-4-89476-365-4

中島悦子著 『条件表現の研究』

日本語学・日本語教育の観点から,条件表現の意味と文法を論述したものである。全体は4部構成である。第1部「条件表現の歴史的変遷」には,古代語・中古語の「未然形+バ」「已然形+バ」,中世語の「ナラバ」「タラバ」「タ ナラバ」,近世語の「ナラバ」「ナラ」「タラバ」「タラ」を扱った論考を収めている。第2部「現代語の条件表現「ト」「バ」「タラ」「ナラ」」では,自然談話録音資料(自然な話し言葉)、シナリオ(話しことば)、国語教科書(書きことば)に現れた条件表現を分析し,用法の特徴を指摘する。第3部「現代語の条件表現「ト」」では,「テ」や「トキ」との関係から継起の「ト」の特徴を分析する。第4部「条件表現の日中対照」では,川端康成の『雪国』とその中国語訳を資料として,条件表現の日中対照研究を行っている。

内容は以下のとおりである。

(2007年9月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 348頁 8,000円+税 ISBN 978-4-273-03484-9

樋渡登著 『洞門抄物による近世語の研究』

中世から近世前期までに編まれた洞門抄物(曹洞宗抄物)が有する性質・特徴や,そこに現れた言語事象などを考察したものである。洞門抄物は近世前期までの東国語資料として期待されていながら,資料そのものの性質が解明されていないなどの理由で,研究資料としての真価をこれまで十分に発揮できていない側面があった。本書は,そのような研究上の問題点を踏まえた上で,後の江戸語とのつながりを意識しつつ執筆されている。本編は2部構成になっており,第1部「資料と表現」では,洞門抄物を「門参」「再吟」「代語抄」などに分類した上で,それぞれの性質や構成,個々の資料に表れた言語事象などについて考察している。第2部「言語研究」では,洞門抄物に見られる言語事象を資料横断的に論じており,洞門抄物に特有の語彙・表記などについての考察を行なうほか,「総別」「せっぱつまる」など近世語に見られる個々の表現の消長について,洞門抄物の分析を元に記述を試みている。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月8日発行 おうふう刊 A5判縦組み 400頁 16,000円+税 ISBN 978-4-273-03441-2

釘貫亨著 『近世仮名遣い論の研究』

本書は,近世における仮名遣い研究のうち,日本語音声に関する学問を対象として,その隆盛から衰退までを論じたものである。従来の近世仮名遣い論研究には,「歴史的仮名遣い」の書記規範としての側面が強調される一方で,古代音声復元の学理が等閑視されるという傾向があった。本書はこの弱点を補う目的で,従来あまり言及されることのなかった学者の功績にも触れつつ執筆されている。本編は,現代に至るまで錯綜している「音韻」という術語の沿革を整理し,西洋言語学のphonologyとの違いに言及した第1章「日本語学説史における「音韻」の問題」,仮名遣い研究における五十音図の優位性に気づきつつもいろは歌から抜け出せなかった『和字正濫鈔』の限界を,後世の『古言梯』との対比を通して論じる第2章「いろは歌から五十音図への交替―契沖『和字正濫鈔』の意義―」,『韻鏡』と反切とを完全に分離し,初めて仮名だけで日本語音節を記述した文雄の功績について述べる第3章「日本語音声の自覚へ─文雄『和字大観鈔』の意義─」をはじめとする9章と序章・終章から成る。また「資料編」として,未紹介資料である東京大学文学部国語研究室蔵『喉音仮名三異弁』『喉音三異弁弁正』(明和5[1768]年荒木田尚賢書写合冊本)の影印を収録している。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月15日発行 名古屋大学出版会刊 A5判縦組み 296頁 5,700円+税 ISBN 978-4-8158-0570-8

山田敏弘著 『国語教師が知っておきたい日本語音声・音声言語』

学校教育の現場において音声や音声言語に関する指導を行う教師のために,音声に関する客観的事実を解説したものである。「音声と音声言語」「母音」「子音」「プロミネンスとポーズ」「多文化間コミュニケーション」など全14セクションからなる。各セクションは,冒頭の基本事項の記載→課題の提示(「こんなことを考えてみましょう」)→内容についての解説→発展的課題の提示(「もう一歩進んで考えてみよう」)という順に進んでいく。さらに,各セクション末の「教科書ではこんな風に扱われています。」では,教科書や指導要領と照らし合わせ,音声の知識と実際の指導とのつながりを解説している。また,取り上げられている音声の電子ファイルは,くろしお出版のWebページ(http://www.9640.jp/kokugok/)でダウンロードすることができる。なお、本書の姉妹編に『国語教師が知っておきたい日本語文法』(くろしお出版,2004年)がある。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 200頁 1,600円+税 ISBN 978-4-87424-394-7

庵功雄著 『日本語におけるテキストの結束性の研究』

テキスト言語学は様々な対象を扱っている。一般的な知識の解釈,推論,一貫性などを扱う研究もあるが,本書は文法的な手法によって研究される結束性についての論究である。全体は3部からなる。第1部「本書の理論的枠組み」では,研究対象,先行研究の紹介をした後,分析上必要な諸概念(文脈,定・不定,結束装置など)についての規定を行う。第2部「結束装置の記述」では,結束性を分析する対象として,指示表現と「1項名詞」を取り上げ,議論を展開していく。指示表現に関しては,先行詞の捉え方や,指示表現と「は」「が」選択との関係について論ずる。名詞に関しては,統語論的性質による「1項名詞」「0項名詞」の大別や,意味論的性質に基づく分類によって得られる階層的関係と間接照応の許容度との相関について考察する。第3部は「本書の位置づけと展望」である。なお,本書は1997年に大阪大学に提出された学位論文に加筆・修正をしたものである。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月20日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 264頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-399-2

小田勝著 『古代日本語文法』

本書は中古和文を中心とする古代日本語の文法を概説したものであり,前著『古典文法読本』(開成出版,2004年)を全面的に改訂したものである。現代語の記述文法の枠組みで古代語文法を記述しているほか,1990年代・2000年代の研究成果を積極的に取り入れている点などに,従来の古典文法概説書に見られない特色がある。本書は,まず第1章「古代語文法の基礎知識」で歴史的仮名遣いや品詞分類などの概略を述べる。続く第2章から各論に入り,活用の種類や動詞の自他などについて述べる第2章「動詞」,助動詞の分類,肯定判断・否定判断の形式などについて解説する第3章「述語の構造」,ツ形・ヌ形,キ形・ケリ形などテンス・アスペクトに関わる形式について述べる第4章「時間表現」,推定・推量や疑問表現など,法助動詞に関わる事項を中心に扱う第5章「文の述べかた」など,全10章で構成されている。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月20日発行 おうふう刊 A5判横組み 256頁 2,500円+税 ISBN 978-4-273-03474-0

中村桃子著 『〈性〉と日本語―ことばがつくる女と男―』

「男ことば」「女ことば」について,「「ずれた」言葉づかい」とされる言語表現を対象として,ジェンダーやセクシュアリティの視点から,言葉とアイデンティティとの関わりについて論じたものである。「言語資源」という視点(言葉を使うことによって個人のアイデンティティが形成されていくという考え方)により,翻訳小説,恋愛小説,スパムメール,スポーツ新聞,少女が使用する「男ことば」,ファッション雑誌などの表現を取り上げ,「正しい日本語」観とは別の視点から日本語を見つめることの重要性を述べる。なお,本書はNHKブックスの1096である。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月30日発行 日本放送出版協会刊 B6判縦組み 256頁 970円+税 ISBN 978-4-14-091096-2

小野正弘編 『擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』

日本語に特徴的と言われているオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)を広く収集し,意味・用法についての解説と,古典文学から現代の新聞・雑誌にいたる諸文献からの用例を示す辞典である。見出し語は,本編4060語,「付録 漢語オノマトペ編」287語,「付録 鳴き声オノマトペ編」217語である。本編では,五十音順に見出し語を配列し,擬音語・擬声語・擬態語等の類別を示す。「鳴き声オノマトペ編」では,生物種別に見出し語を分類する。「解説―歴史的変遷とその広がり―」(鈴木雅子)では,オノマトペの定義,オノマトペ史を概観し,現代語オノマトペや方言に見られるオノマトペに関する諸問題を論じている。全収録語についての「五十音順さくいん」と,主要オノマトペ2470語についての「意味分類別さくいん」を付す。

内容は以下のとおりである。

(2007年10月31日発行 小学館刊 A5判縦組み 768頁 6,000円+税 ISBN 978-4-09-504174-2

工藤真由美編 『日本語形容詞の文法―標準語研究を超えて―』

海外の類型論的研究の成果を視野に入れ,統一的な調査票に基づいて,諸方言の形容詞について文法記述を行ったものである。全体は2部構成になっている。第1部「序論―形容詞研究の新たな視界―」は総論編である。第1章「調査と研究成果の概要」(工藤真由美)では,目的と方法論を提示し,研究成果のまとめを行う。第2章「形容詞研究の現在」(八亀裕美)は,欧米の類型論的研究をふまえた形容詞論である。第3章「ロシア語の形容詞」(佐藤里美)では,ロシア言語学における形容詞論,時間的限定性,評価性についての基礎的文献を紹介する。第2部「方言形容詞の文法―さまざまなすがた―」は,全国8か所の方言(宮城県登米市中田町方言,愛媛県宇和島市方言,熊本県宇城市松橋町方言,鹿児島県中種子方言,鹿児島県大島郡大和村大和浜方言,鹿児島県大島郡与論町麦屋方言,沖縄県うるま市安慶名方言,沖縄県那覇市首里方言)における形容詞の記述的研究である。

内容は以下のとおりである。

(2007年11月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 282頁 6,000円+税 ISBN 978-4-89476-367-8

小林隆・篠崎晃一編 『ガイドブック方言調査』

方言調査をする人のためのガイドブックである。方言調査の技術面での手引書的解説がほとんどない現状,調査方法の体系化やマニュアル化が進んでいる社会学・心理学分野に比べての遅れ,指導にあたる専門の教員がいない大学・短大では,学生が方言調査を行いたくてもあきらめざるをえない現実があることなどが,本書編集の動機である。調査の立案に始まり,調査方法の選択,調査票の作成,インフォーマントの探し方,依頼状の書き方など調査の準備,インフォーマントとの接し方(調査を順調に進めるための心配り,思わぬ反応への対応など),機材の特性・扱い方,記録の方法など調査の実施,調査後の調査結果の整理まで,方言調査の一連の流れに関するマニュアルとしてまとめられている。なお,本書は『ガイドブック方言研究』(ひつじ書房,2003年)の姉妹編である。

内容は以下のとおりである。

(2007年11月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 224頁 1,800円+税 ISBN 978-4-89476-280-0

日本語記述文法研究会編 『現代日本語文法3―第5部アスペクト・第6部テンス・第7部肯否―』

特定の理論的枠組みに偏らず文法事実の掘り起こしに努め,明示的で一貫性のある分析・記述を行う「現代日本語文法」シリーズの第3巻である。全7巻のうち,2003年に刊行された第4巻(第8部モダリティ)に続く2冊目である。第3巻ではアスペクト・テンス・肯否を扱っている。第5部「アスペクト」では,スル形・シテイル形の形態的な整理を軸に用法を見ていき,スル形・シテイル形以外の形式,アスペクトに関わる副詞的成分,動詞分類などを扱う。第6部「テンス」では,非過去形と過去形の対立を軸に,主文末と従属節内とに分けて現象を整理し,最後にテンスに関わる副詞的成分について述べる。第7部「肯否」では,肯定・否定の非対称性を述べ,否定の形式・機能について記述し,最後に否定と関連する事項(呼応する副詞,応答など)を扱っている。

内容は以下のとおりである。

(2007年11月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 340頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-385-5

安田敏朗著 『国語審議会―迷走の60年―』

国語審議会の60年間(1934年の設置から2001年の廃止・文化審議会国語分科会に継承まで)を概観し,審議されたテーマや,議論における各委員の主張の背景にある思想について述べたものである。母語としての「国語」という概念に疑いを持たず,統治の要具としての「国語」のための議論を行ってきた審議会が,何か重要なことを為し遂げた機関であるとは思えないという立場からの記述となっている。「ことばは、政策的に管理されてはならない」(22頁より引用)というのが著者の主張であり,理想の審議会の姿として,「時代の要請としての政策的介入を肯定するのではなく,時代に抗する機関であってほしい」(275頁より引用)と結んでいる。なお、本書は講談社現代新書の1916である。

内容は以下のとおりである。

(2007年11月20日発行 講談社刊 新書判縦組み 296頁 760円+税 ISBN 978-4-06-287916-3

角田三枝・佐々木冠・塩谷亨編 『他動性の通言語的研究』

角田太作氏の還暦を記念して編まれた論文集である。世界各地の言語における他動性の現象を扱う論考を収録している。序章「他動性の研究の概略」(角田太作)では,他動性研究を意味,形態・統語,談話の側面から概観し,今後の発展が期待されるテーマとして,被動作性・意図性・コントロールといった意味的特徴,人間の認識,言語習得を挙げる。また,収録論文が他動性研究のどの要素と関連しているのかを示す。収録論文は地域別に分類され,「(南)アメリカ・太平洋編」6編,「ヨーロッパ・コーカサス編」6編,「アジア・アフリカ編」6編,「日本編」7編である。巻末に「角田太作教授研究業績一覧表」を付す。

収録論文は以下のとおりである。

(2007年11月26日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 384頁 4,200円+税 ISBN 978-4-87424-406-7

山梨正明編,上原聡・熊代文子著 『講座認知言語学のフロンティア1 音韻・形態のメカニズム―認知音韻・形態論のアプローチ―』

認知言語学的アプローチによる音韻・形態論,文法論,意味論,語用論,類型論,言語習得論の最前線を概説する「講座認知言語学のフロンティア」シリーズ全6巻の第1巻である。第1巻は言語の音韻・形態現象を扱う。全体は6章に分かれており,第1章「認知音韻論」,第2章「音韻論へのネットワーク的アプローチ」,第3章「音韻論への非還元主義的アプローチ」では認知音韻論,第4章「認知語形成論」,第5章「認知形態論」では認知言語学における広義の形態論を扱い,第6章「総括と展望」では,認知言語学とこれまでの言語学との違いを論じ,認知言語学の今後の課題と展望を述べる。課題と展望には,国語学・日本語学,言語学の関連分野,コーパス言語学,言語類型論などと認知言語学との対話を,例を交えて述べている。

内容は以下のとおりである。

(2007年11月30日発行 研究社刊 A5判横組み 272頁 2,800円+税 ISBN 978-4-327-23701-1