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新刊紹介 (『日本語の研究』第5巻1号(通巻236号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

石黒圭著 『日本語の文章理解過程における予測の型と機能』

文章を理解する過程における「予測」の問題を扱ったものである。「予測」とはいかなる活動なのかということを,文を単位とした分析により明らかにしようとしている。全体は10部(21章)からなる。第1部「文章理解と理解過程」,第2部「先行研究における予測の考え方」,第3部「本書の予測の考え方」では,文章理解について論じ,先行研究,「予測」の定義・類型,調査方法について述べる。第4部「関係連続の予測」,第5部「連接関係の予測」,第6部「内容の予測」では,予測の意味的類型記述を豊富な例をもとに行う。第7部「予測の精度」では予測を誘発する形態的指標を統計的に検証し,第8部「外れた予測と理解」では予測が理解にどのように影響しているかを検討する。第9部「予測と文章」では連文の予測の延長上に文章全体の予測の問題を考えることができるとし,第10部「総合的考察」でまとめを行う。なお,本書は2007年10月に早稲田大学に提出された博士論文を出版したものである。

内容は以下のとおりである。

(2008年3月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 450頁 8,000円+税 ISBN 978-4-89476-398-2

岡本能里子・佐藤彰・竹野谷みゆき編 『メディアとことば 3』

現代社会のコミュニケーションにおけるメディアとことばの関係を論じるシリーズ『メディアとことば』の第3巻である。本巻の特集は「社会を構築することば」であり,メディアとことば研究会の活動の成果をもとにしている。収録論文は,携帯メールテクストの日独比較を行う渡辺学論文,新聞のスポーツ紙面のレイアウト分析をもとにビジュアル・グラマーを論じる岡本能里子論文,「身内」の不祥事報道を批判的に分析して新聞の隠蔽・自己正当化ストラテジーを指摘する布尾勝一郎論文,1980年代初頭の『コロコロコミック』の「遊び方情報」記事の内容分析より,商品情報誌への変質以前には「遊び」と「商品」の間には明確な境界があったと述べる森山由紀子論文,1940年前後のラジオドラマのことばを分析して〈女ことば/男ことば〉の成立の様相を見ていく佐竹久仁子論文,電子メディアを通じたことばの使用の成り立ちを考える平本毅論文,ファンサイトにおけるナラティブと引用を通してオンライン・コミュニティーの形成・維持・強化を考察する佐藤彰論文の7編である。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年3月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 252頁 2,400円+税 ISBN 978-4-89476-364-7

近藤政美著 『天草版『平家物語』の原拠本、および語彙・語法の研究』

天草版『平家物語』の原拠本及び語彙語法に関する既発表の研究をまとめたものである。第1部「天草版『平家物語』の原拠本の研究」では,天草版の原拠本文を特定することを目的とした調査の結果を示す。天草版を(イ)十二巻本『平家物語』の巻1〜巻3相当部分,(ロ)巻4〜巻7,巻9〜巻12相当部分,(ハ)巻8相当部分に分け,100余種の『平家物語』諸本と対照して,各部分の本文に最も近い伝本として,(イ)竜大本・高野本・西教寺本,(ロ)巻4〜7―斯道本(一次・二次),巻9〜12―小城本・鍋島本,(ハ)平松本・竹柏園本を提示し,各部分における他伝本の影響の可能性を示す。第2部「天草版『平家物語』の語彙・語法の考察」では,天草版の自立語・付属語・文末語についての計量結果を示し,高野本や他軍記作品,『源氏物語』の語彙と比較した上で,天草版の言語の特徴を明らかにする。また,天草版の語彙・語法について,原拠本文に最も近いと判断された本文との対照をふまえ,連体形と終止形との合流現象,助詞・助動詞の用法,命令形語尾,断定の「なり」「ぢゃ」の使用状況などを論じる。

内容は以下のとおりである。

(2008年3月25日発行 和泉書院刊 A5版縦組み 440頁 13,000円+税 ISBN 978-4-7576-0461-2)

国語語彙史研究会編 『国語語彙史の研究 27』

国語語彙史研究会の27冊目の論文集であり,「特集―近代語」が組まれている。近代語に関する論文としては,三遊亭圓朝講談『塩原多助一代記』について,3種類のテキストを対照するとともに速記本に独特の漢語が存することを論じた山内洋一郎論文,連合関係という視点を取り入れて明治期の漢字列と振り仮名との結びつきを考察した今野真二論文,東海地方に分布する敬語の補助動詞「〜テミエル」について論じた江端義夫論文など7編が収録されている。また,特集以外の論文としては,語形成(造語)における「変形」の過程を変容・類推という二つの観点から論じた蜂矢真郷論文,「しのぶ」「念ず」などの「忍耐」に関わる語について,それぞれの性質の解明を試みた吉井健論文など8編を収録し,本書全体で15編を収める。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年3月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 300頁 9,000円+税 ISBN 978-4-7576-0455-1

平山輝男編者代表,友定賢治編 『島根県のことば』

『現代日本語方言大辞典』(明治書院,1992〜94年刊)を基礎として,さらに各地域のことばの特色を詳述しようとする「日本のことばシリーズ」(全48巻)の第32巻である。「1 総論」(友定賢治)では,島根県の風土・文化,方言意識や方言の特色などについて述べる。「2 県内各地の方言」(友定賢治・有元光彦・水谷美保)では,出雲・隠岐・石見の各方言について述べる。「3 方言基礎語彙」(神部宏泰・広戸惇)は,全国調査の方言基礎語彙項目について出雲市の方言をまとめた辞書的記述である。「4 俚言」(灰谷謙二・岩城裕之)は,『現代日本語方言大辞典』の方言基礎語彙に含まれていない語詞を中心に,島根県特有の表現をまとめたものである。「5 生活の中のことば」(友定賢治)には,島根県の昔話やことわざなどを収録している。

内容は以下のとおりである。

(2008年4月10日発行 明治書院刊 A5判横組み 248頁 4,500円+税 ISBN 978-4-625-62406-3

吉永尚著 『心理動詞と動作動詞のインターフェイス』

連用形接続の用法研究を発端として,心理動詞の動詞的本質を明らかにしようとするものである。全体は8章に分かれる。第1章「動詞連用形接続について」では,連用形接続の分類と各用法の統語現象について述べる。第2章「付帯状況を表すテ形動詞と動詞の意味分類」,第3章「継起用法・因果用法の相違点と動詞分類との関係」,第4章「並列用法と動詞分類との関係」では,各用法と動詞の意味分類との関係について考察し,第5章「動詞連用形接続についての総括」でまとめを行う。第6章「心理動詞の動詞的性質について」では,心理動詞の性質について考えていく。第7章「心理表現文の「視点」について」,第8章「事象認知の日中対照」では,中国語との対照を通して日本語心理動詞における人称制限などの現象の本質を明らかにしようとしている。

内容は以下のとおりである。

(2008年4月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 216頁 4,800円+税 ISBN 978-4-7576-0466-7

野村雅昭著 『漢字の未来 新版』

1988年刊の『漢字の未来』の新版である。全体は三つの章と付章からなる。第1章「漢字はなぜ日本語で問題となるか」,第2章「現代日本語の漢字の機能」,第3章「これからの日本語と漢字」は旧版をほぼそのまま再録し(新版刊行に際しての補正・付注のされた箇所がある),付章「21世紀の漢字論」において旧版以後の国語政策に対する著者の考えを述べる。付章第1節「漢字に未来はあるか」では,常用漢字表制定以後の動向,特に日本新聞協会による常用漢字表外字の追加措置,表外字の字体に関する政府方針,外来語の言い換えに関する提言について検討する。付章第2節「正書法と漢字」では,日本語における正書法確立のための語彙体系整備の必要性を述べる。付章第3節「漢字の位置」では,口頭言語と,それが視覚的に定着されたもの(表記)との関係について考察する。

内容は以下のとおりである。

(2008年4月30日発行 三元社刊 A5版横組み 320頁 2,900円+税 ISBN 978-4-88303-078-1)

山口佳紀著 『万葉集字余りの研究』

『万葉集』に現れる字余りの現象についての研究書である。字余りの性格と意味とを明らかにすることを試みるとともに,従来の読み方に従うと疑問・矛盾が生じる箇所に関しては,読み方を再検討する作業も並行して行っている。本書は4章からなり,第1章「『万葉集』字余りの研究・序説」は,概説的な論述を行った章である。字余り句における単独母音エの位置づけを再考するほか,奇数番句・偶数番句で字余りのあり方が異なっていることに着目し,字余りと唱詠法とが関連している蓋然性を指摘する。第2章「短歌の字余り」は,奇数番句・偶数番句それぞれの字余りのあり方を考察しており,後者については唱詠上の切れ目がどのように現れるかについても論証している。第3章「長歌・旋頭歌の字余り」は,短歌の場合と同様の検証を行っている。第4章「[非単独母音性の字余り句]について」は,句中に単独母音を含まないにも関わらず字余りを生じている句を扱った章であり,読み方そのものの吟味も含め,その性質と背景の解明を試みている。

内容は以下のとおりである。

(2008年5月1日発行 塙書房刊 A5判縦組み 392頁 9,500円+税 ISBN 978-4-8273-0107-6

井上史雄著 『社会方言学論考―新方言の基盤―』

著者は,社会とことばとがどのように関わり合っているのかを,言語変化研究の視点から音韻・文法・語彙など様々な分野で論じてきた。本書はそれらの論考を社会言語学の理論構成に沿って一書にまとめたものである。第1部「社会方言学の4分野」では,社会言語学の研究分野の4分類(第1分野・社会と言語,第2分野・言語の変異,第3分野・談話の規則,第4分野・談話と変異の総合的な原理)を提案する。第2部「新方言の調査と理論」では,文体差や使い分けに注目し,共通語化と新方言を言語変化として位置づける。第3部「文法と敬語の変化」では,現在進行中の言語変化として文法の新方言を取り上げるとともに,言語普遍的変化として敬語変化を論じる。第4部「音韻の変異と認知」では,ガ行子音の変化,西洋語の発音の流入,方言音声の使い分け,方言音の認知などについて考察する。第5部「イントネーションの変化」では「尻上がり」イントネーションを観察し,現代の変化が近世からの長期変化の一部であると指摘する。

内容は以下のとおりである。

(2008年5月25日発行 明治書院刊 A5判横組み 436頁 6,000円+税 ISBN 978-4-625-43403-7

大橋勝男著 『日本海沿岸方言音声の研究』

日本海沿岸の12地点(青森県南津軽郡浪岡町杉沢,秋田県河辺郡河辺町石見三内,山形県東田川郡立川町大字狩川字荒鍋,新潟県新潟市赤塚,富山県婦負郡八尾町,石川県羽咋郡押水町免田,福井県南条郡今庄町,京都府船井郡和知町安栖里,兵庫県養父郡八鹿町朝倉,鳥取県倉吉市八屋,島根県邑智郡川本町三原,山口県大津郡三隅町野波瀬)における音声の統一的な実態記述を行ったものである。著者の別刊『太平洋沿岸方言音声の研究』(上巻,おうふう,2008年)と対をなすものであり,従来の東西対立とは違った視点,つまり日本海側,太平洋側という角度から方言の音声現象を考えていこうとする意図に基づいてまとめられたものである。全体は7章からなる。第1章「当方言会話の一端」,第2章「当方言の話し調子一般」,第3章「文アクセント」,第4章「発音」,第5章「音転現象」,第6章「語・話部アクセント」のように,テーマごとに章を設け,12地点における観察結果の詳細な記述がなされている。第7章「結語」では,日本海沿岸各地点の方言音声の特色をまとめる。

内容は以下のとおりである。

(2008年5月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 712頁 68,000円+税 ISBN 978-4-273-03494-8

城生佰太郎著 『一般音声学講義』

著者が大学で行ってきた音声学の講義内容をまとめたものである。一般的に述べられていることを簡明に示すだけではなく,各分野の展開を記しつつ,著者が重要だと考えているポイントを示している。また,従来の説に不足する点についても触れている。序章「音声言語への注目」では,音声学が言語学とは異なる独立科学であると述べ,音声言語研究の特質を紹介するとともに,帰納法的方法論の重要性を説く。以下,音声学の領域や音声学が扱うテーマごとに章を設け,第1章「音声学とは」,第2章「調音音声学および生理音声学」,第3章「音響音声学」,第4章「聴覚音声学」,第5章「母音論」,第6章「子音論」,第7章「アクセント論」,第8章「イントネーション論」,第9章「音韻論」,第10章「音節論」,第11章「音変化」の全11章からなる。

内容は以下のとおりである。

(2008年5月31日発行 勉誠出版刊 A5判横組み 288頁 3,500円+税 ISBN 978-4-585-05399-6

今野真二著 『消された漱石―明治の日本語の探し方―』

本書は,夏目漱石の原稿を題材とし,その観察・分析を通して明治期の日本語のあり方を考察したものである。漱石の原稿には,活字印刷される過程でなくなってしまった要素があると指摘するのが序章「近くて遠い明治」であり,本書の目的・構成について略述している。第1章「消された漱石」は,漱石自身が施した「フタエマブチ」という振り仮名が,活字では「フタエマブタ」と改められていることに着目した章であり,関連語の実態を調査した上で明治期の両形のあり方を追求するという本書全体の方法を例示した章にもなっている。第2章「印刷が消した漱石」は,漱石の手書き原稿と活字印刷物との関係を論じた章である。漢字字体や仮名遣い・語形などが印刷側の方針により取捨選択されていることを論証し,従来行われてきた「漱石独自」といった評価についてもその根拠が薄弱であることを指摘する。第3章「漱石が消した漱石」は漱石自身の推敲の過程に着目した章であり,表記・用字などの選択のあり方から,明治期の日本語における「揺れ」とその背景を窺い知ることができる可能性について論じている。

内容は以下のとおりである。

(2008年6月1日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 450頁 4,800円+税 ISBN 978-4-305-70379-8

大西拓一郎著 『現代方言の世界』

現代日本語の実態を示すとともに,その分野にかかわる疑問点や変化のしくみを解き明かそうとする「シリーズ現代日本語の世界」(全6巻)の第6巻である。方言に関する基本的な知識を示すとともに,方言の成立,分布の実態など,方言の地理的・歴史的側面を扱っている。全体は6章に分かれる。第1章「方言とは何か」で総論を述べ,第2章「日本語の方言」で方言区画と各方言の特徴を扱う。第3章「方言の形成」では,方言差を生じさせる言語変化の様々な要因を解説する。第4章「方言の分布」では周圏分布・東西対立など分布の類型を扱う。第5章「地理情報としての方言」では地理情報システム(GIS)を使った方言研究の展望を述べる。第6章「方言の現在・過去・未来」では,風俗・民俗・民族という観点から,ことばの地域差について考察する。

内容は以下のとおりである。

(2008年6月10日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 136頁 2,300円+税 ISBN 978-4-254-51556-5

日本語記述文法研究会編 『現代日本語文法6―第11部複文―』

特定の理論的枠組みに偏らず文法事実の掘り起こしに努め,それに対する明示的で一貫性のある分析・記述を行う『現代日本語文法』の第6巻である。全7巻のうち第4巻(第8部「モダリティ」),第3巻(第5〜7部「アスペクト・テンス・肯否」)に続く3冊目の刊行である。この第6巻には第11部「複文」を収録している。複文の定義と分類,補足節(下位分類として「の」「こと」などによる名詞節,引用節,疑問節を含む),名詞修飾節,条件節(下位分類として「ば」「と」などの順接条件節,「から」「ので」などの原因理由節,「ても」「のに」のような逆接条件節を含む),時間節,目的節,様態節,等位節・並列節について,それぞれ章を設けて記述する。なお,この巻の執筆担当者は安達太郎・阿部忍・塩入すみ・白川博之・高橋美奈子・野田春美・前田直子である。

内容は以下のとおりである。

(2008年6月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 328頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-415-9

益岡隆志編 『叙述類型論』

ワークショップ「叙述の類型をめぐって」(2007年3月,神戸)での発表を中心に編集された論文集である。全体は3部に分かれる。第1部「導入編」の「叙述類型論に向けて」(益岡隆志)では,叙述の類型として属性叙述と事象叙述があるが,従来の研究は後者に大きく偏っていたと指摘し,前者の研究の必要性を説く。第2部「論文編」には,属性叙述を二種類に分け,叙述タイプの違いが形式に反映されていることを論じる影山太郎論文,「って」による提題文を扱う岩男考哲論文,状態述語文の時間性にかかわる議論を展開する眞野美穂論文,ハンガリー語を例に事象叙述の属性叙述化について述べる江口清子論文,談話レベルでの主題の問題に取り組む砂川有里子論文,属性の認知と叙述について扱う唐沢穣・菅さやか論文の計6編を収める。第3部「研究史」には,「叙述類型研究史(国内編)」(岩男考哲)と「叙述類型研究史(海外編)」(眞野美穂)を収録する。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年6月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 232頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-413-5