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新刊紹介 (『日本語の研究』第5巻3号(通巻238号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

串田秀也・定延利之・伝康晴編 『シリーズ文と発話 2 「単位」としての文と発話』

「談話の中での言語事象」に光を当て,「文」という概念を再検討しようとした「シリーズ文と発話」(全3巻)の第2巻である。言いさし文が独立文と同様の完結性を得る現象を論じる白川博之論文,相手の発話を受け,その発話を繰り返す際の終助詞に注目する森山卓郎論文,談話の観点から「文」と「発話」を考察する沖裕子論文,話し言葉において従来主張されていた単位(句,文節など)が有効とは言えないことを指摘する金田純平論文,統語・韻律要素を加味した発話単位を検討する小磯花絵論文,発話順番の観点から大人との相互行為の中で生じた幼児の発話を分析する高木智世論文,話者交代における基本的単位の多面性を明らかにする岩崎志真子論文,会話の中における名前の呼びかけを観察し,そのタイプの異同が何に根ざしているかを論究する森本郁代論文の計8編を収録している。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年9月15日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 290頁 3,200円+税 ISBN 978-4-89476-256-5

児玉一宏・小山哲春編 『言葉と認知のメカニズム―山梨正明教授還暦記念論文集―』

認知言語学・語用論の観点から言語研究を行ってきた山梨正明氏の還暦を記念した論文集である。巻末に「〈随想〉歳月,人を待たず―私の学問・教育の遍歴」(山梨正明)と,「山梨正明教授 業績一覧」を付す。収録論文は,フランス語の入手を表わす動詞(prendreなど)の分析から,非線状的事態認知モデルの存在を指摘する平塚徹論文,生態心理学の立場から言語の概念化を支える環境の持つ意義について考察する仲本康一郎論文,英語の軽動詞構文と同族目的語構文の認知構造を比較し,同族目的語構文の使用の動機を解明しようとする木原恵美子論文など計43編である。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年9月23日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 678頁 17,000円+税 ISBN 978-4-89476-415-6

金澤裕之著 『留学生の日本語は、未来の日本語―日本語の変化のダイナミズム―』

現代日本語の誤用,「ゆれ」,新語などを題材とし,言語変化について述べたものである。世間では,正しいとされている表現以外を誤用とし,誤用を訂正することに重きが置かれているが,本書では,正しい/正しくないという観点ではなく,変化ととらえ,変化の原因や推移を冷静に観察する立場があることを伝えようとする。取りあげられた題材は,「動詞+なく(中止形)」,「なかった」の成立,丁寧表現,授受表現,「する」と「なる」,「〜と(条件)」と「〜て」,「〜的」,「落とし込む」,「〜なそう」と「〜なさそう」,「〜が…たい」と「〜を…たい」などである。

内容は以下のとおりである。

(2008年9月25日発行 ひつじ書房刊 B6判縦組み 304頁 2,800円+税 ISBN 978-4-89476-413-2

沈国威編著 『漢字文化圏諸言語の近代語彙の形成―創出と共有―』

西洋の文明や概念をどのように漢字語によって創出し,また漢字文化圏で共有したのかをテーマとして,2007年7月に関西大学で行われた国際シンポジウム「漢字文化圏諸言語の近代語彙の形成」をもとに編まれた論文集である。中国がどのように近代的知識を受容し,近代語彙体系を確立したのかを論じる沈国威論文,近代日本語における「時」の獲得を扱う松井利彦論文,「電視」が和製漢語である可能性を検討する宮島達夫論文,中国における日本からの借用語の移入の初期状態を探る朱京偉論文,語彙交流研究資料として漢訳西学書の調査を行った李漢燮論文,19世紀の末に来日した梁啓超の書いた『和文漢讀法』の「和漢異義字」増補過程に,『言海』の「漢ノ通用字」が中国語の語釈として利用されたことを論じた陳力衛論文など計17編を収録する。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年9月25日発行 関西大学出版部刊 A5判横組み 476頁 4,300円+税 ISBN 978-4-87354-464-9

山口幸洋博士の古希をお祝いする会編 『方言研究の前衛―山口幸洋博士古希記念論文集―』

日本語諸方言におけるアクセントの研究をはじめ,多岐にわたるテーマで方言研究を行ってきた山口幸洋氏の古稀記念論文集である。巻頭に山口氏の博士論文『日本語方言一型アクセントの研究』の概要を紹介した「前衛派 山口幸洋さんの研究について」(真田信治)を収める。論文全28編からなり,山口氏の前衛的な方言研究のスタイルに触れながら,言語接触・方言接触論の立場から山口氏の研究を検証したダニエル=ロング論文,山口氏の代表的論文・著作における静岡方言の文法・語彙研究を研究史的に論じた大西拓一郎論文,形式の伝播と体系の接触による方言形成のパターンを山口氏のアクセント研究に準えつつ論じた日高水穂論文などを収める。

内容は以下のとおりである。

(2008年9月26日発行 桂書房刊 A5判縦組み 504頁 5,000円+税 ISBN 978-4-903351-56-8

犬飼隆著 『木簡から探る和歌の起源―「難波津の歌」がうたわれ書かれた時代―』

本書は,著者のこれまでの著作を近年発見された木簡から得られた新しい知見で補いつつ,国語・国文学研究の立場から木簡資料を読み直すことを提唱したものである。まず本書では自然発生的に人々の間に存在した「うた」をもととして,公的な典礼の場で唱和するための「歌」が発生し,この「歌」がふたたび「うた」の個人性を再吸収することで「和歌」という形に昇華したと,和歌成立の経緯を説明する。そのうえで,難波宮跡の「歌木簡」(第1章),観音寺遺跡の「難波津の歌」木簡(第2章)から,韻文の表記方法が訓字主流表記ではなく一字一音表記先行であったと推測できること,一方『万葉集』のような訓字主流表記は,和歌を文学作品として視覚的にも楽しむため,後になされた表記法であり,ごく一部の知的エリート達が享受したものだと思われること(第6章),木簡に記された「歌」の世界と万葉集に記された「和歌」の世界は異なるのであり,それゆえ「難波津の歌」は『万葉集』におさめられていないこと(第9章)などを述べる。

内容は以下のとおりである。

(2008年9月30日発行 笠間書院刊 B6判縦組み 218頁+図版4頁 1,900円+税 ISBN 978-4-305-70390-3

渡邊ゆかり著 『文補語標識「こと」「の」の意味的相違に関する研究』

文補語標識「こと」「の」は,補文を名詞化する文法的意味が共通しているため,同種のものとして扱われることもある。しかし,すべての場合において同じように使えるわけではなく,文末などの述語により使い分けがあるという点が従来重視されてきた。本書では「こと」「の」には語彙的な意味の違い(「こと」には「概念」,「の」には「実在」)があり,それが使い分けの背景にあると主張している。本書の特徴としては,通時的な観点からも「こと」「の」を扱い,その本質を明らかにしようとしている点が挙げられる。全体は10章からなる。第1〜3章で研究課題や先行研究を見ていく。第4〜6章で「こと」の中古語から近代語までの用法の変遷を扱う。第7章では「の」の成立と変化を扱う。第8章で現代語の「〜の/ことをV」のようなヲ格,第9章で「〜の/ことがV」のようなガ格のときの分析を行い,第10章でまとめを行っている。

内容は以下のとおりである。

(2008年10月1日発行 溪水社刊 A5判横組み 208頁 3,200円+税 ISBN 978-4-86327-031-2

森田良行著 『動詞・形容詞・副詞の事典』

動詞・形容詞・副詞に関して,重要事項を項目としてまとめた事典である(著者による『助詞・助動詞の辞典』(東京堂書店,2007年)は,個々の助詞・助動詞を項目にしている)。文法上の説明をするだけではなく,語彙的な意味の特徴や,語義と文法との関わりについても記述している。全体は3部構成である。第1部「動詞編」には,「動詞とは」「動詞による叙述の有り様」「語種から見た動詞」など38項目,第2部「形容詞編」には,「形容詞とは」「語種から見た形容詞・形容動詞」「形容詞の語彙量」など24項目,第3部「副詞編」には,「副詞とは」「副詞の範囲」「副詞と他品詞の副詞法」など14項目が立てられている。

内容は以下のとおりである。

(2008年10月10日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 292頁 2,800円+税 ISBN 978-4-490-10744-9

森山新著 『認知言語学から見た日本語格助詞の意味構造と習得―日本語教育に生かすために―』

日本語の格助詞に関して,従来の認知モデルを再検討し,各格助詞の意味構造を分析した上で,第二言語としての日本語教育への応用を試みたものである。全体は4部にわかれる。第1部「認知言語学の紹介」では,認知言語学成立の背景,言語観,基盤モデルについて述べる。また,格のとらえ方を説明する。第2部「格助詞の意味構造と習得」では,ガ,ヲ,ニ,デ,ヘ,カラ,マデについて,それぞれ分析を行う。第3部「類似する格助詞の意味構造の違い」では,場所を表すデとニの違い,対象を表すヲとガの違いなどを検討する。第4部「日本語教育への応用」では,日本語の格体系や,類似の意味・用法を持つ格助詞などを,いかに教えるかについて提言を行う。

内容は以下のとおりである。

(2008年10月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 324頁 5,600円+税 ISBN 978-4-89476-383-8

近代語学会編 『近代語研究 14』

近代語学会による論集『近代語研究』の第14集である。室町時代周辺から現代に至るまでの日本語について計25編の論文を収める。抄物の中で広く一般に用いられるカタチヨミの類縁表現を問題とした山田潔論文,御伽草子における室町時代語的な様相を示す形容詞について取り上げた坂詰力治論文,『吾輩ハ猫デアル』にあらわれる一・二人称について調査を行い明治期の知識層のことばを探る小松寿雄論文,『銀の匙』で接続助詞としてモノデが多用される背景を論じる鈴木英夫論文,近代日本語で随所に見られる「デスの台頭」と「マスの衰退」の様相を示した田中章夫論文,B. H. チェンバレンの試みた口語について日本語文例集をもとに述べる常盤智子論文などからなる。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年10月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み(一部横組み) 464頁 14,000円+税 ISBN 978-4-8386-0231-5

中村春作・市來津由彦・田尻祐一郎・前田勉編 『「訓読」論―東アジア漢文世界と日本語―』

本書は,従来古典学習の技法として限定的に論じられることの多かった漢文の「訓読」という事象について,東アジア文化研究の契機として取り扱ってゆくことを目指して編まれた論文集である。「異文化理解の「課題」としての訓読」と題した第 I 部には,ベトナムにおける漢文訓読を紹介する岩月純一論文など4編,「訓読と日本語・日本文化の形成」と題した第 II 部には,漢字音の音読の観点から日本における訓点資料の展開を論じる沼本克明論文など4編,「訓読論の地平」と題した第 III 部には,漢文訓読という行為を研究技法という観点から論じ直す市來津由彦論文など4編を収める。なお,本書は,公開シンポジウム「課題としての「訓読」―異文化理解と日本伝統文化の形成」(2006年,広島),ワークショップ「東アジアにおける〈訓読〉の思想文化( I )」(2007年,福岡)での成果をまとめたものである。

内容は以下のとおりである。

(2008年10月20日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 368頁 4,800円+税 ISBN 978-4-585-03184-0

日中対照言語学会編 『日本語と中国語の可能表現』

2006年12月に日中対照言語学会が主催した「可能表現特集大会」での研究発表をもとにした論文集である。全体は3部にわけ,全11編の論文を収録している。「日中対照研究」の部には,日本語の「可能だ」と中国語の「可能」を対照した曹大峰論文,「見える」と「看得見」を扱った王学群論文など4編,「中国語研究」の部には,「〜不了」の意味を考察する荒川清秀論文,可能補語を教える際の留意点を検討する山田留里子論文など6編,「日本語研究」の部には,有対自動詞が無標識で可能の意味を表す現象を扱った張威論文1編を収める。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年10月22日発行 白帝社刊 A5判横組み 260頁 2,800円+税 ISBN 978-4-89174-943-9

田島優著 『現代漢字の世界』

「シリーズ現代日本語の世界」(全6巻)の第3巻である。戦後の国語施策による漢字表との関わりから,現代日本語における漢字・漢字表記について解説している。全体は6章からなる。第1章「「当用漢字表」と漢字」では,「当用漢字表」「当用漢字音訓表」「当用漢字字体表」を取り上げるとともに,「現代かなづかい」や同音・同訓漢字による書き換えなども扱う。第2章「教育漢字」では,学年別配当漢字の変遷や,学校教育における漢字指導について述べる。第3章「「常用漢字表」と漢字」では,常用漢字表の成立過程から,現在行われている新しい漢字表の検討までを概説する。第4章「人名用漢字」では子の名づけに用いる漢字,第5章「JIS漢字」では国内の文字コード規格(JIS X 0208,JIS X 0213)を取り上げる。第6章「「当用漢字表」・「常用漢字表」と人名用漢字・JIS漢字」では,現代日本の漢字について,国語施策と人名用漢字とJIS漢字の三者の関係からまとめる。

内容は以下のとおりである。

(2008年10月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 208頁 2,900円+税 ISBN 978-4-254-51553-4

大橋勝男著 『太平洋沿岸方言音声の研究 上下』

太平洋沿岸の25地点(青森県上北郡天間林村,岩手県下閉伊郡川井村川内,宮城県黒川郡大和町鶴巣,福島県郡山市喜久田町,茨城県東茨城郡美野里町羽鳥,千葉県市原市東国吉,栃木県河内郡上河内町,群馬県群馬郡箕郷町松之沢,埼玉県比企郡小川町古寺,東京都昭島市拝島町,神奈川県厚木市飯山,山梨県東八代郡石和町小石和,長野県塩尻市南内田,静岡県静岡市玉川地区,岐阜県益田郡馬瀬村,愛知県岡崎市真福寺町,滋賀県神崎郡能登川町乙女浜,三重県松坂市漕代畜,和歌山県日高郡印南町上洞,奈良県吉野郡吉野町南大野,大阪府羽曳野市,兵庫県多可郡中町牧野,岡山県御津郡加茂川町,広島県高田郡向原町,山口県山口市宮野町)における音声の統一的な実態記述を行ったものである。著者の別刊『日本海沿岸方言音声の研究』(おうふう,2008年)と対をなすものであり,従来の東西対立とは違った視点,つまり日本海側,太平洋側という角度から方言の音声現象を考えようとする意図に基づいてまとめられたものである。上下巻で,テーマごとに設けられた7章からなる。上巻では,第1章「当方言会話の一端」,第2章「当方言の話し調子一般」,第3章「文アクセント」,第4章「発音」,下巻では,第5章「音転現象」,第6章「語・話部アクセント」を扱う。それぞれの章で,地点別の観察結果を詳細に記述し,第7章「結語」では,太平洋沿岸各地点の方言音声の特色をまとめる。

各巻の内容は以下のとおりである。

【上巻】(2008年11月10日発行 おうふう刊 A5判縦組み 784頁 68,000円+税 ISBN 978-4-273-03517-4
【下巻】(2008年12月10日発行 おうふう刊 A5判縦組み 840頁 68,000円+税 ISBN 978-4-273-03518-1

福島直恭著 『書記言語としての「日本語」の誕生―その存在を問い直す―』

本書は,言語には口頭言語と書記言語の2種類があり,近代以降の日本社会に普及した「日本語」は,国家語としての書記言語であると主張する。全体は3部にわかれる。第 I 部「「日本語」以前の日本語」では,言語表現内の情報完結度によって,口頭言語と書記言語の違いを考察する。第 II 部「「日本語」という名の標準語の誕生」では,言文一致運動の結果成立した「日本語」は,新たにできた書記言語であるとし,成立と普及の意味を考察する。第 III 部「文字獲得に伴うもうひとつの虚構の誕生―「定家仮名遣い」の実態と意義―」では,『仮名文字遣』などの仮名遣い書や,『舞の本』・狂言台本・『古今童蒙抄』などを対象とした表記調査によって,定家仮名遣いの日本語書記史の中での位置づけを行う。

内容は以下のとおりである。

(2008年11月5日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 324頁 2,500円+税 ISBN 978-4-305-70397-2

工藤真由美・八亀裕美著 『複数の日本語―方言からはじめる言語学―』

現代日本語における方言を複数の日本語としてとらえ,標準語や他言語の研究成果と比較しつつ論じることで,標準語の文法が完璧で整った文法であるという幻想を打ち破ろうとしたものである。筆者らの共同研究の成果を例示しつつ,方言文法の多様性を文法研究者の視点から紹介する。取り上げられた事例は,京阪神の方言の存在動詞,宇和島方言のアスペクト,宇和島方言・ウチナーヤマトゥグチ・中田方言のムード,首里方言のテンス,五所川原方言の時間的限定性,ウチナーヤマトゥグチ・福岡方言のシテアル形,宇和島方言と青森県の諸方言の形容詞と形容動詞,宇和島方言の可能表現,宇和島方言の文末のイントネーション,ウチナーヤマトゥグチやブラジルのコロニア語の言語接触などである。なお,本書は講談社選書メチエの427である。

内容は以下のとおりである。

(2008年11月10日発行 講談社刊 A5判縦組み 208頁 1,500円+税 ISBN 978-4-06-258427-2

生越直樹・木村英樹・鷲尾龍一編著 『ヴォイスの対照研究―東アジア諸語からの視点―』

東アジア諸語のヴォイスに関する対照研究を収録した論文集である。巻頭の「東アジア諸語にみるヴォイスの多様性と普遍性―序に代えて―」(木村英樹・鷲尾龍一)で,本書における「東アジア」「ヴォイス」「対照研究」のとらえ方を述べる。本編には,「風に吹かれる」という表現を日本語・モンゴル語・朝鮮語で対照する鷲尾龍一論文,中国語授与動詞の文法化を,方言比較によって考える木村英樹・楊凱栄論文,北京語授与動詞「給」の文法化を扱う木村英樹論文,中国語(共通語)の位置変化文をタイプ別に考察し,日本語との対照も行うラマール=クリスティーン論文,ベトナム語授与動詞「cho」の文法化を扱う村上雄太郎(レー=バン=クー)論文,現代朝鮮語の自動・受動表現を考察する生越直樹論文の6編を収録している。

収録論文は以下のとおりである。

(2008年11月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 200頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-432-6

潁原退蔵著・尾形仂編 『江戸時代語辞典』

本辞典は,故潁原退蔵氏が採集した江戸時代語彙のカードおよび遺稿を,尾形仂氏らが整理・点検・補訂して成ったもので,項目数約21,000を収める。江戸時代語については,従来作者別,ジャンル別の辞典や,上方語,江戸語のように期を分けて編集した辞典は存在したが,特定のジャンルに偏らず,江戸時代の前期・後期を通じて一書にまとめたのは本書の大きな特徴である。配列は現代仮名遣いによる五十音順とし,見出し語は「オランダせんべい【阿蘭陀煎餅】」のように,和語・漢語は平仮名,外来語は片仮名で表示,対応する漢字表記は現行字体で統一して,現代の読者に配慮している。語釈・用例は潁原氏の遺稿に拠りつつも,同氏の『江戸時代語の研究』(臼井書房,1947年)などの著作によって編者が補った部分も少なくない。巻末には付録として75頁にわたる「出典一覧」,干支・年号・閏月・天皇・将軍等を対照させた「江戸時代年号表」を付す。

(2008年11月30日発行 角川学芸出版刊 B5判縦組み 1344頁 22,000円+税 ISBN 978-4-04-621962-6

田中真一著 『リズム・アクセントの「ゆれ」と音韻・形態構造』

日本語のリズム・アクセントにみられる「ゆれ」の現象を扱い,「ゆれ」が生じる原因と,一般言語学的な意味について考察したものである。「ゆれ」が生じる条件として,音韻構造と形態構造の競合を挙げ,その食い違いが大きくなるほど「ゆれ」が激しくなることを指摘している。全体は6章にわかれる。第1章「研究課題」に続き,第2章「音節形成の位置と作用域」では,現代川柳,野球声援,歌謡を言語データとして,音節量の対立・中和に関する知見を得る。第3章「外来語アクセントと音韻構造」では,フット形成とアクセント付与との関係について述べる。第4章「音韻・形態構造とアクセント」では音韻構造と形態構造の関係を扱う。第5章「ソノリティーと音節量」では,ソノリティーと音節量との関わりについて考察する。なお,本書は2005年9月に神戸大学へ提出された学位論文に加筆・修正をしたものである。

内容は以下のとおりである。

(2008年12月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 256頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-388-6