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新刊紹介 (『日本語の研究』第6巻1号(通巻240号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

土屋信一著『江戸・東京語研究―共通語への道―』

近現代における「東京共通語」の形成過程について,滑稽本や洒落本など江戸時代の資料,明治初期の文献や演説速記資料,児童語調査の結果などから追究し,「江戸共通語」の存在を検証しつつ,共通語の通時的研究の可能性を論ずる。「共通語」の研究史をめぐっては,国立国語研究所による1949年のいわゆる白河調査において「共通語」が調査における重要概念として提唱されながら明確に検証されなかったことを問題であるとし,学術における議論の記録の重要性を指摘する。昭和50年代以降,日本語史において存在が想定されるようになった「江戸共通語」を考えるためにも,学術用語としての「共通語」を検討する必要があると述べる。なお,本書は,1969(昭和44)年から2007(平成19)年までに発表された各論文に付記を加え,序章と第5章を新たに執筆したものである。

内容は以下のとおりである。

(2009年1月30日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 480頁 12,500円+税 ISBN 978-4-585-03216-8

西川寛之著『日本語文末詞の研究―文構成要素としての機能を中心に―』

日本語の句の切れ続きを「文末詞」という文構成要素の存在によって説明することを主張する。「文末詞」を「文末を示す文構成要素」としてとらえ,文構造上必須の要素であり,言語運用上においていわゆる「文」の単位認定の手がかりになるものとして機能し,文の始まりと終わりを規定する機能を持つと述べる。本テーマは,日本語教育に携わる筆者が,第二言語習得過程に現れる言語使用の特徴として文末表現に感じる違和感を説明するという目的で選ばれた。言語習得においても「文末詞」は早い段階で習得されるとみられるが,「文末詞」が示す情報の所有者の人称に関わる部分に母語話者と非母語話者の反応に違いがあることから,語学教育への応用を指摘する。なお,本書は博士論文(明海大学,2007年3月)に加筆・修正したものである。

内容は以下のとおりである。

(2009年3月24日発行 凡人社刊 A5判横組み 184頁 3,200円+税 ISBN 978-4-89358-696-4

秋永一枝著『日本語音韻史・アクセント史論』

西日本の音韻とアクセントについて、日本語史および方言学の面から考察した既発表論文をまとめたものである。全体は4部に分かれ、そこに21編を収める。各部の最初には概説的な論文が置かれており、読みやすくなるようにとの配慮がなされている。第1部「音韻史」には、発音の変化、連濁、ハ行転呼などを扱った論が入っている。第2部「アクセントの史的変化と方言アクセント」には、アクセント概説と、瀬戸内海の佐柳島、魚島のアクセントを扱った論が並ぶ。第3部「声点資料によるアクセント研究」には、声点をアクセント資料として利用した研究が収録されている。第4部「定家とアクセント」には、藤原定家とアクセント・仮名遣いなどに関わる論文のほか、古今和歌集に関わる論文が含まれる。

内容は以下のとおりである。

(2009年3月31日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 444ページ 11,500円+税 ISBN 978-4-305-70467-2

唐〓著『日本書紀における中国口語起源二字漢語の訓読』

『日本書紀』に見られる中国語口語起源の二字漢語がどのように訓じられているか、それが適切な読みかどうかを古訓点諸本調査により解明したものである。『日本書紀』には古典漢文でも使われる漢語のほか、魏晋〜唐代の口語・俗語に由来する漢語など多様なものがあり、訓読の際の難易度も異なるが、そのうち研究が遅れている口語起源漢語の中の二字漢語(148語)を扱っている。また、訓読がどのように行われていたかの調査にあたっては、平安中期の岩崎本をはじめとして、江戸時代の版本まで、時代・系統の異なる14種の訓点資料を使用している。全体は5章から構成され、それぞれ名詞、動詞、形容詞、副詞、連詞(接続詞)の章となっている。各章において調査結果を「二字一語として訓んでいる例」と「二字一語として訓んでいない例」に分け、前者の場合は「一語の和訓」か、「合符のみ加点」かで分類しており、後者の場合は「和訓が不当な例」と「文意は大きく外れていない又は不明な例」に分類している。なお、本書は北海道大学により学位を受けた博士論文に増補・改訂を加えて出版されたものである。

内容は以下のとおりである。

(2009年3月31日発行 北海道大学出版会刊 A5判横組み 232ページ 7,000円+税 ISBN )978-4-8329-6709-0

関一雄著『平安物語の動画的表現と役柄語』

本書は平安時代の和文を題材にして、そこに現れる言葉を手がかりにどのような表現がなされているかを追究する表現解析の試みである。また、ある語を単に和文系・漢文訓読系の語という説明だけですませてしまうのではなく、その表現の中で持たされている意味に目を向けることの必要性を述べたものである。著者は『竹取物語』『うつほ物語』『源氏物語』などの地の文を「物語世界の人物を舞台に上げ、その演技を描くためのもの」と見なし、そこで使われる動詞や助動詞などを手がかりに、物語世界を動画のように映し出す表現と静止画のように描く表現があることを説明していく。また、会話にのみ現れ、その登場人物の人の特徴と性質を表す語を「役柄語」と規定し、それを表す表現がどのように物語の中に現れるかを指摘する。本書の後半では「ずして」「みそかに」「いはむや」「たがひに」「かたみに」などを扱い、その表現性を探っている。

目次は以下のようになっている。

(2009年4月30日発行 笠間書院刊 B6判縦組み 208ページ 1,800円+税 ISBN 978-4-305-70479-5

張秀民・大内田貞郎・豊島正之・鈴木広光・小宮山博史・宮坂弥代生・佐賀一郎・劉賢国・孫明遠・内田明・小形克宏著『活字印刷の文化史―きりしたん版・古活字版から新常用漢字表まで―』

活字印刷史についての論集である。実証的な調査に基づく活字・字体についての事実が豊富な図版と共に提示されている。冒頭には、中国の印刷史研究者張秀民氏の自伝が置かれている。それ以下は、最近の一連の研究で日本の古活字版が朝鮮活字版だけの影響によるものではなく、キリシタン版の技法から大きな影響を受けていることが明らかになってきたが、そのキリシタン版についての大内田貞郎論文と豊島正之論文、嵯峨本『伊勢物語』の活字と組版について扱う鈴木広光論文、明治8年に作られた連錦体活字のルーツを19世紀のウイーンの王立印刷局制作の連錦体活字に見る小宮山博史論文、美華書館(アメリカ長老会印刷所)について調べた宮坂弥代生論文、明治初期近代的新聞の木活字の特徴について述べる佐賀一郎論文、韓国の『韓仏辞典』についての劉賢国論文、20世紀前半の中国人による「倣宋体」と「楷書体」の開発についての孫明遠論文、築地体後期五号活字の出現時期を明らかにした内田明論文、常用漢字の改定経緯、JISコード等の文字コード規格への影響、人名の漢字の検討から常用漢字のあるべき姿を論じた小形克宏論文が収録されている。

内容は以下のようになっている。

(2009年5月15日発行 勉誠出版刊 B5判縦組み 512ページ 9,800円+税 ISBN 978-4-585-03218-2

国語文字史研究会編『国語文字史の研究11』

国語文字史研究会による論文集である。瓜を「ふり」と書く現象を扱う遠藤邦基論文、『土佐日記』の表記を扱う奥村悦三論文、『中務集』のハ行転呼音現象に関わる部分の表記を扱う今野真二論文、木簡等の資料についての基礎問題を論じる小谷博泰論文、『常陸国風土記』香島郡「童子女松原」の冒頭「処」字に関する詳細な検討を行う瀬間正之論文、日本書紀の職官を表す博士・師について扱う柳〓a和論文、日本書紀における「皇」か「王」かの選択について扱う朴美賢論文、和名類聚抄地名の「部」表記の有無、「部」を「べ」と読むか否かを扱う蜂矢真郷論文、無窮会図書館蔵本『大般若経音義』における異体字表示術語を扱う鳩野恵介論文、『広益字尽重宝記綱目』の複数書体を扱う内田宗一論文、片仮名文字体系の自立性獲得について論じる深澤愛論文、日本統治時代の台湾資料における「癌」字が含まれる語について扱う王敏東論文、そして狩野理津子による『初心假名遣』索引(下)の計13編を収める。

内容は以下のようになっている。

(2009年5月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 264ページ 9,000円+税 ISBN 978-4-7576-0510-7

辻加代子著『「ハル」敬語考―京都語の社会言語史―』

本書は,近畿地方の方言敬語,特に京都市におけるハル敬語の包括的な記述を,社会言語学的な観点による臨地調査および文献資料調査によって試みたものである。臨地調査においては,ハル敬語の最も先鋭的な使用者と目される中年層女性を中心に,面接調査と自然談話資料の分析によって,標準語とは異なる方言独自の敬語運用の基本的な枠組みと,その枠組みを外して話者が状況に応じて行う待遇表現の用法を説明する。ハルは,素材待遇語の性格を保持し,運用面で話し手,話し相手,話題の主の関係が必ず顧慮される点で,丁寧語,美化語とは異なると論じる。文献資料調査においては,現代の敬語使用の枠組みの背景に遡り,ハル敬語の胚胎期とされる江戸時代後期から明治期までの敬語使用状況を考察する。なお,本書は博士論文(大阪大学大学,2005年3月)に加筆・修正したもので,ひつじ研究叢書〈言語編〉第71巻である。

内容は以下のようになっている。

(2009年5月29日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 400頁 7,800円+税 ISBN 978-4-894-76416-3

前田富祺・阿辻哲次編『漢字キーワード事典』

漢字にかかわる事項(約400項目)を取り上げ、それについて解説した事典である。体裁は、事項を五十音順に配列し、基本的にB5判1ページで説明する形である。(内容によっては、2ページ以上のものもある。)見出しがページの左上に来るようにしてあるので、項目名を視認しやすくなっている。取り上げられた事項は多岐にわたるが、内容別に整理された項目一覧によれば、1.総論、2.漢字と日本語、3.人名、4.書名、5.音韻、6.字体・書体、7.実用、8.書道、9.文物、10.国語政策、11.文字改革、12.印刷・電脳、というような分野に関する事項が対象である。付録として、国字一覧、主要万葉仮名一覧、片仮名および平仮名の主要字体一覧、漢字部首一覧、外国地名漢字表記、常用漢字表、送り仮名の付け方、中国漢字常用字表、中国・日本対照文字年表を収録している。

事典は五十音順配列だが、項目一覧による分野名とそれに関する項目を一部挙げると次のようになっている。

(2009年5月30日発行 朝倉書店刊 B5判横組み 544ページ 18,000円+税 ISBN 978-4-254-51028-7

時衛国著『中国語と日本語における程度副詞の対照研究』

中国語と日本語における程度副詞の共通点・相違点を検討することを通じて、程度副詞の本質に迫ろうとしたものである。全体は「序論」、「第1〜3部」、「結論と今後の課題」の5部構成で、その中に1〜19章が配置されている。序論では研究の課題と方法、先行研究の概観、この研究での分類が示されている。先行研究については紹介とともに著者の批判が随所に見られ、先行研究をどう読んだか、程度副詞研究にどのような検討事項があるかがわかる内容となっている。続く第1部は中国語「太」と日本語「あまり」、「〓1」と「とても」などの対照を8章にわたって行っている。第2部は程度副詞と名詞との関係、あるいは他の副詞との関係について述べる。第3部では文中での位置や働きなどについてまとめている。最後の「結論と今後の課題」では巨視的な観点から見た中国語と日本語の程度副詞の特徴を示す。なお、本書は2001年に東京都立大学より学位を受けた博士論文がもとになっている。

内容は以下のようになっている。

(2009年5月31日発行 風間書房刊 A5判横組み 416ページ 13,000円+税 ISBN 978-4-7599-1746-8

白川博之著『「言いさし文」の研究』

従属節で終わっている文を「言いさし文」と規定し、それにはどのようなタイプのものがあるか、その機能はどうか、それが談話レベルで独立文と同様の完結性を持つようになる仕組みはどのようなものなのかということを研究したものである。定義上、「あの、私…」のような言いさし文は除かれ、また、後件を言わないことにより、表現されなかった後半部分の意味が聞き手に分からないようなものは言い残し文として、考察の対象から除いている。そして対象となった「言いさし文」を二つに分け、第1部では言い尽くしタイプの「言いさし文」を、第2部では関係づけタイプの「言いさし文」を扱っている。第3部では、「言いさし文」が不完全文ではなく独立文と同様に扱われるべきだと主張し、さらに日本語教育において「言いさし文」を扱う際の留意点を述べる。なお、本書は2007年に広島大学より学位を受けた博士論文に加筆・修正を加えたものである。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月17日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 226ページ 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-451-7

日本語記述文法研究会編『現代日本語文法5―とりたて・主題―』

特定の理論的枠組みに偏らず文法事実の掘り起こしに努め,それに対する明示的で一貫性のある分析・記述を行う『現代日本語文法』の第5巻である。全7巻のうち第4巻(第8部「モダリティ」),第3巻(第5〜7部「アスペクト・テンス・肯否」),第6巻(第11部「複文」)に続く4冊目の刊行である。この第5巻には第9部「とりたて」,第10部「主題」が収録されている。第9部では,第1章でとりたて・とりたて助詞・とりたての副詞を概観したのち,累加の「も」,対比の「は」「なら」,限定の「だけ」「しか」「ばかり」「こそ」など,極限の「さえ」「まで」「も」「でも」,評価の「なんか」「くらい」など,ぼかしの「も」「でも」「なんか」「など」,疑問語・数量詞につく「も」「でも」などについて,それぞれ節を設けて記述する。第10部では,第1章で「主題」について概観し,第2〜3章で「は」の性質について述べたのち,第4章では「とは」類,「については」類,「には」類,「なんか」類,「ったら」類ほかについて,それぞれ節を設けて記述する。なお,この巻の執筆担当者は雨宮雄一・庵功雄・清水佳子・高梨信乃・高橋美奈子・中西久美子・野田尚史・浜田麻里である。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月20日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 296頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-444-9

日本語記述文法研究会編『現代日本語文法7―談話・待遇表現―』

特定の理論的枠組みに偏らず文法事実の掘り起こしに努め,それに対する明示的で一貫性のある分析・記述を行う『現代日本語文法』の第7巻である。全7巻のうち第4巻(第8部「モダリティ」),第3巻(第5〜7部「アスペクト・テンス・肯否」),第6巻(第11部「複文」),第5巻(第9〜10部「とりたて・主題」)に続く5冊目の刊行である。この第7巻には第12部「談話」,第13部「待遇表現」が収録されている。第12部では,指示表現の文脈指示,論理的関係・加算的関係・対等な関係・話題の展開を表示する接続表現,応答表現と関東表現,基本語順と談話的要因による語順,談話におけるヴォイス・アスペクト・モダリティ・主題,媒体・話し手の属性・ジャンルによる文体差について,それぞれ章を設けて記述する。第13部では,敬語の体系と敬語形式の組み合わせ,丁寧体と普通体,意図性や断定性の回避などの表現,待遇表現と対人行動の類型や談話との関係について,それぞれ章を設けて記述する。なお,この巻の執筆担当者は安達太郎,庵功雄,石黒圭,川越菜穂子,黄淑燕,野田尚史,浜田麻里,日高水穂,森山卓郎,渡辺学である。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月20日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 338頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-445-6