日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (『日本語の研究』第6巻2号(通巻241号)掲載分)

新刊紹介 (『日本語の研究』第6巻2号(通巻241号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

Janick Wrona著 "The old Japanese complement system: A Synchronic and Diachronic Study"

本書は上代の日本語における補文構造に見られる用法変化について,万葉集,古事記歌謡,風土記,日本書紀歌謡,仏足石歌,続日本紀歌謡,宣命,祝詞をコーパスとして活用しながら説明を試みたものである。上代の日本語には,名詞化補文,連体化補文,「ト」補文,「コト」補文,連体形述語,並列補文,動名詞補文の七つがあると指摘し,それぞれの用法における変化の方向性が異なることを指摘している。本論では,このことを踏まえ,関連する先行研究について外観した後に,この用法に見られる事柄を説明している。具体的には名詞補文,連体系捕文,「ト」「コト」を取り上げている。また同時に,上代の補文化に係る規則や上代以前の時期から上代にかけての時期に観察される現象についても述べられている。

内容は以下のようになっている。

(2008年6月発行 Global Oriental刊 A5判横組み 552ページ £95.00 ISBN 978-1-901903-19-5

Heiko Narrog著 "Modality in Japanese: The Layered Structure of the Clause and Hierarchies of Functional Categories"

節における層構造の面から現代日本語のモダリティを整理し,その位置づけを行ったものである。その基礎論として個々の形式の用法についても論究しているので,英語などで書かれた本としては最も詳細な記述的研究がなされていることにもなっている。全体は5部20章からなる。第1部ではモダリティについて,日本語学における研究史,階層構造についての基礎論,ロールアンドレファレンスグラマーやファンクショナルグラマーでの階層構造の扱い,日本語学での階層の扱い(南,仁田等)など,背景となる事柄の説明を行う。第2部では日本語のモダリティの記述をしている。第3部ではモダリティの周辺に位置する諸カテゴリーについて述べる。第4部ではコーパスを用いた実証研究を展開する。データは計量的な研究を行うのではなく,あくまで裏付けとして使うという姿勢を保ちつつ,あるモダリティ形式が他のモダリティやアスペクト・テンス・否定などの形式と,どのような関係にあるのかを明らかにする。第5部では複合的な形式を取り上げ,共起のあり方から,モダリティについて考える。

内容は以下のようになっている。

(2009年3月15日発行 John Benjamins Pub Co刊 244×164mm 横組み 304ページ USD158 ISBN 978-90-272-0576-6

Masahiko Mutsukawa著『Hituzi Linguistics in English No.15 Nanzan University Monograph Japanese Loanword Phonology』

本書は米国ミシガン州立大学に提出された博士論文に加筆修正を加えたものである。本書は英語から日本語に取り込まれた借用語に見られる音韻論的特性について,例えば借用語のアクセントや最適性理論(Optimality theory)など,複数の視点から論じたものである。本書では,借用語をめぐる先行研究を丁寧に整理した上で,英語からの借用語が日本語に取り込まれる際に観察される四つの現象に着目している。その四つとは,英語起源の借用語のアクセント,英語の/r/の実現形,複数の形態素を持ち合わせた語の実現形,英語の複合語の省略である。本書は7章構成となっている。第1章で本書の構成が示され,第2章で先行研究を整理した後,第3章から第6章にかけて,先に述べた四つの視点について,それぞれ論考がなされている。最後に第7章で本書のまとめと今後の課題が示されている。

内容は以下のようになっている。

(2009年3月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 200ページ 12,000円+税 ISBN 978-4-89476-442-2

仁田義雄著『日本語の文法カテゴリをめぐって』

全4巻予定の「仁田義雄日本語文法著作選」シリーズの第1回配本である。本書はカテゴリをテーマとして扱ったものであるが,以下の続巻ではモダリティ,語彙的統語論,記述的研究といったテーマを中心に編集される予定である。このシリーズは今までに刊行された著書に収録されていない(あるいは直接のもととなっていない)論文の中から,テーマに沿った内容のものを選びまとめることで,著者の研究の営為や関心のあり方が跡付けられるように編集されている。本書は4部12章構成となっている。第1部「文法カテゴリ」では,それがどのようなものかが述べられ,次にヴォイス・アスペクトといったカテゴリについて解説する。第2部「格」では,日本語の格にはどのようなものかあるかを扱う。第3部「ヴォイス」では,相互構文と受身について論じる。第4部「アスペクト」では,その形式と解釈について述べる。また二次的アスペクト(アクチオンスアルト)について見ていく。

内容は以下のようになっている。

(2009年3月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 324ページ 5,200円+税 ISBN 978-4-89476-450-7

佐竹昭広著 今西祐一郎・出雲路修・大谷雅夫・谷川恵一・上野英二編『佐竹昭広集 第一巻 萬葉集訓詁』

本書は『佐竹昭広集』全5巻のうちの第一巻である。副題のごとく,氏の著作のうち万葉集のよみと解釈に関わる論文・エッセイ等を収録する。「字余り法則の発見」と題する第1部には,「萬葉集短歌字余考」「人麿歌集の歌二首」「「火気」・「如」の訓など」「「都」「曾」の或る場合」など,字余りの法則とそれに関わる訓詁の問題を取りあつかう8編を収める。「本文批判の方法」と題する第2編には,「「萬葉集をよむこゝろばへ」」「萬葉集本文批判の一方法」「「島隠る」か「山隠る」か―遣新羅使の歌」「「後」と「復」」など膨大な資料に基づきながら本文批判に挑む11編を収める。「新しい訓詁学」と題する第3部には,「萬葉・古今・新古今」「訓詁の学」「人麻呂の反歌一首」「海路の歌二首」など,古語難語の解釈に傾きがちであった従来の訓詁学を超えて,ラングではなくパロールを対象とし,作者の心―すなわち人間学へと立ち返る「新しい訓詁学」に挑んだ14編を収める。また『万葉集大成』『日本名歌集成』で佐竹が担当した解釈も収録し,巻末に大谷雅夫による解説を添える。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月25日発行 岩波書店刊 A5判縦組み 392頁 8200円+税 ISBN 978-4-00-027211-7

岩城裕之著『方言数量副詞語彙の個人性と社会性』

方言における語彙に焦点をあて,伝達というきわめて社会的な側面と,認識という個人的な側面の2つを併せ持ったものとして捉え,社会性と個人性の両面から語彙体系を把握することを目的とする。?Tでは,広島県の大崎下島大長方言における数量副詞語彙をとりあげ,その内部構造と人々の認識について考察し,安芸太田町加計方言と比較した。?Uでは,語彙研究史において個人差の実態が明らかにされてこなかったことをふまえ,数量副詞語彙を例に語彙体系における個人差の実態調査から,個人差の大きい部分を「個人性の高い部分」,個人差が小さい部分を社会的に共有されている部分として「社会性の高い部分」とし,語彙組織という概念として捉えた。?Vでは,語彙組織の地域差,世代差,語彙カテゴリーによる差を観察し,解釈を行った。なお,本書は博士論文(広島大学,2001年3月)を全面的に書き直したもので,和泉書院研究叢書390として刊行された。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 264頁 8,500円+税 ISBN 978-4-7576-0511-4

工藤真由美・森幸一・山東功・李吉鎔・中東靖恵著『ブラジル日系・沖縄系移民社会における言語接触』

本書は,20世紀初頭からブラジルへ移住した日本人が持ち込んだ日本語,「コロニア語」の形成,および,それをとりまく言語接触事象について,2002年度から2006年度にかけての時期に,サンパウロ市内,ならびに,サンパウロ州の近郊農村などで行われた談話録音調査,文献調査,聞き取り調査によって収集された調査データを用いて分析を試みたものである。現地の日本語は,話者の高齢化にともない,緊急性を要するものである。本書は二部で構成される。第一部の「言語の接触と混交」では,言語接触の重層性,ならびに移民史を整理した後,「日本語観」,現地での社会調査,日本語の実態について取り上げられる。また,第二部の「言語接触の実際」では,ブラジル日系移民社会,沖縄系移民社会の談話の文字化資料が収められている。そこには,日本語,琉球語,ならびにポルトガル語の特徴が多く観察される。なお,この談話の音声を付録のCDで聞くことができる。

内容は以下のようになっている。

(2009年6月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 454ページ 8,000円+税 ISBN 978-4-89476-423-1

沖森卓也著『日本古代の文字と表記』

前著『日本古代の表記と文体』(吉川弘文館 2000年)に次いで,古代の文字表記をめぐっての論考をまとめたものである。既発表論文との関係はあとがきに一括して記されている。全体は5章に分かれる。第1章「漢字の伝来と受容」では,漢字がどのように伝わり,受け入れられたかについて考察する。第2章「上代文献の文字法」では,「所」,「有・在」など個別の文字法のほか,否定の用字や用字法一般など幅広く上代文献における文字の用い方について述べる。第3章「万葉仮名論」では,万葉仮名の意義から始めて,その種類について述べ,さらに訓仮名についての論を展開する。また,『歌経標式』などの特定の資料に見られる万葉仮名について論ずる。第4章「人麻呂歌集の表記」では,その表記の特性を追い,第5章「日本古代の地名表記」では,『出雲風土記』『播磨風土記』などに見られる地名表記を扱っている。

内容は以下のようになっている。

(2009年7月1日発行 吉川弘文館刊 A5判縦組み 352ページ 10,000円+税 ISBN 978-4-642-08523-6

米川明彦著『集団語の研究 上巻』

集団語の体系的,総合的な研究をめざし,全体的,概括的,体系的に記述を試みた上下巻のうち,資料的性格を持つ上巻である。第1部では,集団語を定義し,その種類,生まれる理由,研究の位置づけなど学問の体系的な記述に必要な内容をおさめる。第2部では,集団語を集団の種類によって大きく分類し,20の集団のことばを取り上げる。第3章では反社会的集団(スリ・泥棒・香具師・暴力団・不良少年)の用語,第4章では職業的集団(医療業界・大相撲社会・すし屋・銀行業界・フライトアテンダント・百貨店業界・寄席楽屋・新聞業界)の用語,第5章では被拘束集団(陸軍・海軍・囚人)の用語,第6章では学生集団(旧制高等学校・現代)の学生語,第7章では趣味娯楽集団(オタク)の用語について,各集団の全体的な用語の状況として,発生,属性,造語法,言語意識について考察する。巻末の4頁に事項索引,33頁に語彙索引を付す。

内容は以下のようになっている。

(2009年7月30日発行 東京堂出版刊 A5判縦組み 692頁 12,000円+税 ISBN 978-4-490-20665-4

佐藤亮一編『都道府県別全国方言辞典 CD付き』

都道府県ごとに,代表的な方言語形を見出し語としてかな表記で五十音順で並べ,その意味を共通語で示した方言辞典である。方言語形のほとんどに方言例文を付し,東京都の101語を最多にのべ3738語を収載する。各県頁下段に,県内の地域差,特色(音声・文法・アクセント,方言談話例・気づかずに使われる方言語形・方言イメージ・方言の商業利用など)を解説するほか,代表地点のあいさつ表現を掲載する。巻末の索引では,見出し語と本書で扱った県名・頁番号を付す。付録として,『日本言語地図』全6巻(国立国語研究所,1966-1974年)の方言地図75枚における方言語形と,その語形のおよその分布域として県名とを,分野別に列挙し,解説する。付属CDには,本書から抜粋した方言例文の読み上げ音声(合計74分・54名による)を,県別の47トラックに分割して収録する。なお,本書は同編者による『都道府県別全国方言小辞典』(2002年5月,三省堂刊)の増補改訂版にあたる。

内容は以下のようになっている。

(2009年8月25日発行 三省堂刊 B6判縦組み 480頁 2,600円+税 ISBN 978-4-385-13730-8

佐竹昭広著 今西祐一郎・出雲路修・大谷雅夫・谷川恵一・上野英二編『佐竹昭広集 第二巻 言語の深奥』

本書は『佐竹昭広集』全5巻のうちの第二巻である。「言語の深奥」と題される本書は,言葉の問題について取り組んだ論考を集めた巻である。全体は4部に分かれる。第1部「上代の文法」では,推量の語法,指定の語法などのように用法別の概説を展開している。第2部は「意味の深みへ」では,古代の色名についての論,意味についての論(意味論,意味変化)等を述べている。第3部「和語と漢語」では,和語と漢語の間を揺れ動く日本語表現のあり方を描く。第4部「古語雑談」は,語や語句の成り立ちを論じた論文,随筆を集めたものである。巻末に解説(上野英二)があり,そこでは著者と語学研究の関わりについて詳しい説明がなされている。

内容は以下のようになっている。

(2009年8月25日発行 岩波書店刊 A5判縦組み 520ページ 8,600円+税 ISBN 978-4-00-027212-4

小林千草著『現代外来語の世界』

現代日本語の実態を示すとともに,その分野にかかわる疑問点や変化のしくみを解き明かそうとする「シリーズ現代日本語の世界」(全6巻)の第4巻で,第3巻『現代漢字の世界』,第6巻『現代方言の世界』に続く3冊目の刊行である。本書は9章に分かれる。序章において外来語の規定と問題点を示し,第 1章から第2章では,ヨーロッパの言語がキリシタンによってもたらされた室町時代後期,欧米の文化・文明が流入した明治時代から現代まで,外来語(カタカナ語)受容の歴史を考察する。第3章では和製英語の研究史と課題について考察し,第4章では若者語・流行語としての外来語について,「リベンジ」を中心に分析する。第5章では日常生活に密着した物から外来語の現状を考察し,第6章では外来語氾濫の現代的状況をふまえ,外来語の理解度調査に基づいた日本語のおきかえなどを提案する。第7章では,近年の外来語の研究文献リストを紹介し,解説する。終章において,本来の日本語(和語)を重要視することが,外来語の受容においても必要であると述べる。

内容は以下のようになっている。

(2009年8月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 184頁 2,900円+税 ISBN 978-4-254-51554-1

深野浩史著『同訓異字使用史の研究―中古・中世を中心に―』

用字に拠って意味を異にしない場合の「同訓異字」が,中古・中世においてどの様な実態であったのか,具体的な副詞「すでに」「ひそかに」「つひに」「しばし・しばらく」を採り上げ,論じる。著者は「文字選択者が漢字を習得するに当って材料としたものは如何なるものであったか」,すなわち漢籍・仏典のいずれを用いて漢字を習得したかという学習環境に注目しており,「儒家編著文献」と「仏家編著文献」について用例検証を行っている。「儒家編著文献」として『本朝文粋』『説話集・往生伝』,「仏家編著文献」として「日蓮の諸文」『説話・験記・談義』,また他に『平家物語』『太平記』を使用している。文献ごとに,用例及び用字使用率を詳細に示し,本書末に用例比率一覧を掲げる。調査の結果,十七世紀初頭まで「儒家」「仏家」の各社会に主用(あるいは専用)される用字が存在しており,その用字社会の対立が認められると著者は結んでいる。

内容は以下のようになっている。

(2009年8月31日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 252頁 5,500円+税 ISBN 978-4-305-70483-2

安田章著『仮名文字遣と国語史研究』

本書は,数ある安田章氏の論文の中から,従来書籍の形にまとめられていないものを中心に編纂した論集である。編集を担当した遠藤邦基氏による,解説を兼ねたあとがきがある。第1章は,仮名表記・仮名文字遣に関する論考を収める。昭和40〜50年代に書かれた「仮名文字遣序」「仮名資料序」「仮名資料」「吉利支丹仮字遣」「仮名資料としての虎明本」の5本を扱っており,著者の仮名表記に関する論文が初めて一つに集積された。第2章は,文法論・表現論に関する論文2本と,朝鮮資料・キリシタン資料などの外国史料から近世語を概観した論文1本から成る。第3章では,外国資料に関する論文6本を収め,主に朝鮮で出版された日本語資料について取り上げている。付章では,国語学における資料復刻や索引作りの動きを時系列で詳細に追っている。

内容は以下のようになっている。

(2009年9月29日発行 清文堂出版刊 A5判縦組 312頁 8,500円+税 ISBN 978-4-7924-1414-6