日本語学会

ホーム > 研究情報 > 新刊紹介 > 新刊紹介 (『日本語の研究』第6巻3号(通巻242号)掲載分)

新刊紹介 (『日本語の研究』第6巻3号(通巻242号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

今野真二著『大山祇神社連歌の国語学的研究』

本書は,文安二年(1445)から文禄二年(1593)にわたり大山祇神社に奉納された連歌懐紙『大山祇神社連歌』267帖を対象として,国語学的検討を加えたものである。「序章 国語史資料としての大山祇神社連歌」において連歌作品の一般性と特殊性,連歌の文法について述べ,「第一章 大山祇神社連歌の概観」では「大山祇神社」および「大山祇神社連歌」について概説する。「第二章 大山祇神社連歌を音韻資料としてみる」では母音,四つがな,開合等について,「第三章 大山祇神社連歌の語彙」では漢語・字音語の使用,百韻に使用される語,本連歌で使用された『日葡辞書』の詩歌語,賦物について,「第四章 大山祇神社連歌の表記」では重点の使用,仮名文字遣,かなづかい,漢字と仮名とによる表記,漢字について検討し,「終章 連歌世界のひろがり」では『万葉集』・『源氏物語』(註釈)・『仮名文字遣』・『節用集』を中心とした国語資料と連歌との直接・間接の関係性を指摘している。なお,本書は既発表の論文を新たにまとめたものである。

(2009年8月31日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 608頁 13,500円+税 ISBN 978-4-7924-0681-3

山梨正明他編『認知言語学論考―No.8 2008―』

認知言語学に関わる論文を紹介する論文集の第8集である。収載されているのは,時間の特性を示し時間のメタファーがそれらの特性からどのように構成されているかを示す碓井智子論文,予期的認知といろいろな言語表現の関わりについて考察する仲本康一郎論文,英語において副詞位置に形容詞が現れる現象を扱う早瀬尚子論文,「clear」と「明らか」を例に主観化・文法化の過程を扱う進藤三佳論文,英語の不変化詞が表す2種類の主観的意味を扱い主観的有界性や価値付与について論じる大谷直輝論文,英語進行形の文法化がどのように進んだかを扱う今井澄子論文,thatの歴史言語学的考察を通して英語指示代名詞の認知的分析を扱う金杉高雄論文の7編である。

内容は以下のようになっている。

(2009年9月25日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 344頁 4,200円+税 ISBN 978-4-89476-482-8

真田信治監修,岸江信介・中井精一・鳥谷善史編著『大阪のことば地図』

本書は,大阪府に分布する方言的特徴を,現地調査によって得られたデータをもとに言語地図に示し,それぞれについて解説を加えたものである。6章で構成される。第1章で本書の構成と調査概要が,第2章で現在の大阪府のことばの地域差が述べられている。第3章では大阪府全域の161地点で行われた現地の生え抜き出身者に対する面接調査のデータから作成した言語地図の中でも明らかに地域差が認められる129の図が示され,第4章はそれぞれに関する解説がなされる。第5章では都市としての大阪の多様性と,それによって生じる言語の地域差について述べている。第6章には,大阪方言を研究する上で関連する図書・論文が掲載されている。

内容は以下のようになっている。

(2009年9月25日発行 和泉書院刊 A5判横組み 296頁 1,800円+税 ISBN 978-4-7576-0526-8

中島平三監修,池内正幸編集『シリーズ朝倉「言語の可能性」3 言語の進化・変化』

「言語の可能性」シリーズの第3巻。全11章からなる。本書は,進化・変化と言語との関係が扱われているため,総論(第1章)に続き,第2章では進化論,第3章で言語の起源と進化の研究史を概観した後,「生態学・行動学の視点」「脳・神経科学の立場」「生成文法の視点」「自己組織化/コンピュータ・モデリングの視点」から,それぞれ言語の起源と進化について述べている。第8章,第9章では言語変化が生じる時間に応じて観察される言語変容,言語変種が取り上げられ,第10章では日本語の起源と変化が論じられる。第11章で言語学における今後の学際的な発展に関する見通しが述べられている。

内容は以下のようになっている。

(2009年10月5日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 256頁 3,800円+税 ISBN 978-4-254-51563-3

杉村泰著『現代日本語における蓋然性を表すモダリティ副詞の研究』

「キット」,「タブン」などのような,蓋然性を表す副詞の意味について論じたものである。著者は従来の研究がこれらの副詞の違いを論じる際,蓋然性というものさしの上に位置づけることに重点を置きすぎたのではないか,また文末のモダリティ形式との共起を重視しすぎたのではないかと指摘し,むしろ必要なのは使用例をもとに固有の意味を明らかにすることだと述べる。第1章では分析の前提として,命題とモダリティの定義,認識と推論の区別,事態確定性と認識確定性の区別,推論には演繹推論と帰納推論の型があることを論じる。第2章でも分析の前提として「ヨウダ」(様態),「ヨウダ」(推論)などの文末形式を検討し,モダリティ成分の部分を確定したうえで,それについて述べる。第3章から第9章までが本論にあたる部分で,「キット」,「タブン」,「オソラク」,「サゾ」,「モシカスルト」,「ドウモ」,「ドウヤラ」,「タシカ」,「マサカ」の意味分析を行う。第10章でまとめを行う。なお,本書は2000年に名古屋大学に提出された博士論文をもとに,その後の研究成果を加えて出版したものである。

内容は以下のようになっている。

(2009年10月7日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 228頁 6,200円+税 ISBN 978-4-89476-466-8

江口正弘注釈『天草版平家物語全注釈』

イエズス会により出版された不干ハビアン編の天草版平家物語(ローマ字表記)を漢字かな交じり文として翻刻し,語釈と通釈を施したものである。翻刻にあたっては,原本の表音綴りを歴史的仮名遣いにする(例えば,「narai xiran」は「習い知らん」ではなく「習ひ知らん」とする)などの処置を行っている。語釈はいくつかの語句を取り上げて説明する方式である。通釈は平易な現代語に直したものとなっている。(例えば「読誦の人に対して申す」という本文に対して語釈では「読誦 読むこと。『読誦の人』とは読者」とし,通釈では「読者のために」としている。)天草版平家物語に関しては初の本格的注釈書ということができる。

(2009年10月7日発行 新典社刊 A5判横組み 656頁 18,600円+税 ISBN 978-4-7879-1514-6

坪本篤朗・早瀬尚子・和田尚明編『「内」と「外」の言語学』

日本英語学会(2006年11月開催)でのワークショップ「言語現象の『内』と『外』」をきっかけに編まれた論文集である。全体は4部に分かれる。第1部「構文・叙述の類型・概念拡張」には,日本語の尊敬構文を扱った益岡隆志論文のほか,比較を扱った岡田禎之論文,懸垂分詞構文を扱った早瀬尚子論文を収録。第2部「再帰代名詞・人称・自分」には,再帰代名詞を扱った澤田治美論文,再帰代名詞の意味拡張を扱った廣瀬幸生論文,上代日本語の代名詞体系を扱ったJohn Whitman・柳田優子論文を収録。第3部「話法・時制現象」には,自由間接話法を扱った山口治彦論文,時制を扱った和田尚明論文を収録。第4部「存在・身体・他者理解」には,内外未分化の状態から分化へと至る中間スキーマについて論じる坪本篤朗論文,身体性と認知について論じる中村芳久論文,他者理解と言語の関係を論じる本多啓論文を収録。

内容は以下のようになっている。

(2009年10月20日発行 開拓社刊 A5判横組み 448頁 5,200円+税 ISBN 978-4-7589-2145-9

仁田義雄著『仁田義雄日本語文法著作選 第2巻 日本語のモダリティとその周辺』

仁田義雄日本語文法著作選,全4巻の第2回配本。本書は,モダリティに関する著書または論文が所収されている。全5部,14章からなる。第1部はモダリティについての基本的な理解と日本語におけるモダリティのタイプについて,第2部は「したことがある」「するかもしれない」などの複合形式や動詞のあらわすモダリティ的意味,第3部は事態めあてのモダリティとその周辺が取り上げられる。その後,第4部は複文や文章とモダリティの関係,第5部は,例えば日本語文と表現類型,問いかけと疑いの表明など,文および文類型に関するものが取り上げられる。

(2009年10月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 312頁 4,800円+税 ISBN 978-4-89476-451-4

近代語研究会編『日本近代語研究 5 ―近代語研究会25周年記念― 』

近代語研究会の第5番目の論文集である。同会の25周年記念号となっている。近代語における語彙・文法・表現の構造・変化を考察した論考,あるいは日本語史の資料についての調査・検討などを題材とした論考を収める。論文は「日本語辞書学の課題」(飛田良文),「字音語の生態」(田中章夫),「国定読本の語彙」(島村直己),「訳語‘帰化’の成立」(鄭英淑),「『ひく』の意味論―多義と認知の接点―」(松中完二),「助数詞『本』の近代までの用法拡張―認知意味論的解釈の再検討―」(王鼎),「いわゆる副助詞『きり』考」(山西正子)をはじめとする24編を収録。なお,巻末に研究会の運営を見守ってきた金田弘氏と森岡健二氏の追悼文が収められている。

内容は以下のようになっている。

(2009年10月30日発行 ひつじ書房刊 A5判縦組み 492頁 36,000円+税 ISBN 978-4-89476-432-3

今野真二著『文献日本語学』

本書は文献を用いた日本語研究の研究意義を,実際の分析結果を示しつつ示したものである。全4章からなる。第1章では現在までの文献学,ならびに日本語学における先行研究を概観し,問題の所在に関する著者の考えが示される。第2章で手書きされた文献,第3章で印刷された文献を,それぞれに適した手法を用いて分析し,第4章では手書きよる文献とその印刷された文献を取り上げ,両者を比較しながら考察を加えている。なお,第2章では『竹取物語』『宇治拾遺物語』『古本説話集』『今昔物語集』が,第3章では『太平記抜書』『中華若木詩抄』『からいとさうし』まどが,第4章では,『弁慶物語』などが取り扱われている。

内容は以下のようになっている。

(2009年11月1日発行 港の人刊 B6判横組み 272頁 2,800円+税 ISBN 978-4-89629-214-5

安部清哉・斎藤倫明・岡島昭浩・半沢幹一・伊藤雅光・前田富祺著/安部清哉・金水敏共編『シリーズ日本語史2 語彙史』

従来の資料研究・記述的研究の成果をふまえつつ、理論的研究を重視した新しい日本語史研究を指向する「シリーズ日本語史(全4巻)」の2冊目である。「語彙的カテゴリー」として設定(第1章)された語彙分野「意味、形態、語構成、語種、文法機能、文字、文体、位相、文化、意味体系的分析方法、計量的分析方法」からの7ジャンルを、紙幅にあわせて6つの章で取り上げている。具体的には,「語彙史研究と語彙的カテゴリー――その多様性と体系化」(1章)「語彙史としての語構成史」(2章)「意味から見た語彙史――“パーツ化”“名詞優位化”」(3章)「漢語から見た語彙史」(4章)「文体・位相から見た語彙史」(5章)「計量語彙論から見た語彙史」(6章)「文化から見た語彙史」(7章)が取り上げられている。

内容は以下のようになっている。

(2009年11月26日発行 岩波書店刊 A5判横組み 270頁 3,800円+税 ISBN 978-4-00-028128-7

堀正広・浮網茂信・西村秀夫・小迫勝・前川喜久雄著『コロケーションの通時的研究―英語・日本語研究の新たな試み―』

2007年に開かれた近代英語協会の大会におけるシンポジウムをきっかけに刊行されたものである。コロケーション研究が最初に提唱されたときには現代英語の研究に限らず広い範囲を扱うものであったはずであり,今回はその領域を開拓する意味で通時的研究の可能性を追究するという趣旨がはしがきで述べられている。コロケーションについて第1章(堀)では英語史,第2章(浮網)では文法化との関わりについて述べる。第3章(西村)では「very」の変化,第4章(浮網)では近代英語の談話標識,第5章では英詩の脚韻語,第6章(堀)ではいくつかの英語様態副詞についての通時的研究と,ある作家の特徴を浮き彫りにする研究を示す。第7章(前川)では英語以外の研究として『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(およそ30年の幅がある資料)をもとにした通時的研究(例えば「すべからく」の意味変化が確認できるかどうか,「自己」と共起する語の傾向と変化)の可能性を探った論が展開される。

内容は以下のようになっている。

(2009年11月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 240頁 4,200円+税 ISBN 978-4-89476-443-9

王軼群著『空間表現の日中対照研究』

認知言語学観点や類型論的観点から,日本語と中国語の空間表現の対照研究を行ったものである。全体は7章に分かれる。第1章では,空間表現の重要性を確認して問題提起を行い,本書の構成について述べる。第2章は論を展開する上で重要になる基礎概念の「他動性」について述べる。第3章と第4章で起点表現を扱う。具体的には「から」と‘从’を取り上げ,その類似点と相違点について論じる。第5章では場所表現を扱う。具体的には「の上」「の中」と‘上’‘里’を中心に比較対照を行い,日本語に比べ中国語のほうが文法化が進んでいると指摘する。第6章では移動表現を扱う。具体的には移動動詞を取り上げ,日本語では移動の結果を重視するが,中国語では移動の過程を重視するなどの指摘をしている。第7章では全体のまとめを行い,今後の課題について述べている。なお,本書は2005年に神戸大学に提出された博士論文を改訂したものである。

内容は以下のようになっている。

(2009年11月10日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 176頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-462-3

佐佐木隆著『上代の韻文と散文』

前著『上代語構文論』(武蔵野書院2003年)に続く著者7冊目の研究論文集である。全体は3部に分かれており,さらに付論が2編ある。第1部「韻文と散文の構文的差異」には4章が収められている。ある構文が韻文と散文ではどう違うかについて,資料の量的な偏りに留意しつつ考察を進める。第2部「歌の表現とその構文」には5章が収められている。各章でそれぞれ歌謡の一部分を取り上げ,その構文について論じる。第3部「写本の文字と誤字説」は新規執筆の4章を含む全7章からなる。ここには,ある部分に誤字があると疑われる場合,写本の字を尊重するか,誤字と判定して正しいと思われる字を想定するかに関わる論考を収める。付論「歌の解読と語法」,「上代語の表記法」にはいわゆる講座物に執筆を依頼されて載せた論考を増補した内容となっている。

内容は以下のようになっている。

  • 付論1 歌の解読と語法
  • 付論2 上代語の表記法
  • (2009年11月10日発行 おうふう刊 A5判縦組み 428頁 15,000円+税 ISBN 978-4-273-03546-4

    日本語記述文法研究会編『現代日本語文法2―第3部「格と構文」・第4部「ヴォイス」―』

    特定の理論的枠組みに偏らず文法事実の掘り起こしに努め,それに対する明示的で一貫性のある分析・記述を行うシリーズの第2巻である。全7巻のうち第6回配本ということになる。この第2巻には第3部「格と構文」と第4部「ヴォイス」を収録している。「格と構文」では,さまざまな格とそれを表すために使われる助詞,連体や並列の助詞などのほか,補語の取り方という観点から自動詞・他動詞の問題を扱う。また,基本構文以外の特別な構文と言うことで,補助動詞構文,難易構文,比較構文,変化構文などについて記す。さらに,修飾的な成分という観点から,副詞的成分について述べる。「ヴォイス」では,受身・使役のほか,可能・自発・相互・再帰構文について記述している。なお,この巻の執筆担当者は安達太郎・阿部忍・小林英樹・佐野由紀子・渋谷勝己・高橋美奈子・張麟声・中畠孝幸・林雅子・日高水穂・山田敏弘であり,補筆・リライト担当者は野田春美・渡部学である。

    内容は以下のようになっている。

    (2009年11月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 336頁 2,800円+税 ISBN 978-4-87424-460-9

    田島優著『漱石と近代日本語』

    夏目漱石の作品を資料として近代日本語の研究を行ったものである。漱石作品は,いくつか全集で出ていること,データベースが存在すること,自筆原稿が比較的容易に見られること,漱石の用字用語についてこれまで言及されてきたという蓄積があること,作家として執筆期間が短かったため時間的に均質であること,描かれている世界がどちらかというと均質であることなどの理由から近代日本語の言語資料として優れていると著者は述べている。そして全8章の中で語誌(例えば「まぼしい」と「まぶしい」),近代の新造漢語,翻訳語法,話し言葉(例えば「てしまう」「ちまう」「ちゃう」),表記(振り仮名の問題,当て字の問題)などについて,多面的に検討している。また,「〜ル途端」から「〜タ途端」への移行を論じ,その中で漱石の作品における使用例について述べるなど,言語変化の流れの中に漱石の言葉を位置づける論考もある。その他,作者の意図と出版されたテキストとのずれの問題,時代相への目配りの大切さを示すなど,漱石作品を入口にして日本語の歴史という分野を紹介するという側面も併せ持っている。

    内容は以下のようになっている。

    (2009年11月20日発行 翰林書房刊 A5判縦組み 336頁 4,800円+税 ISBN 978-4-87737-290-3

    計量国語学会編『計量国語学事典』

    本書は,計量国語学会創立50周年記念事業として企画され,70人近い研究者が執筆にあたった事典である。1956年に設立された計量国語学会における研究活動範囲が本書の構成となっている。まず,計量国語学の定義付け,計量国語学史について説明がなされる。その後,計量的な分析手法を設定した上での,音声・音韻研究,文字・表記研究,語彙研究,文法・意味研究,文章・文体研究,社会言語学的研究,方言学的研究,国語史研究,日本語教育研究,日本語処理研究が設定されている。本書では,それぞれの研究分野で設定されてきた研究課題について,具体的な研究事例を参照しながら説明がなさてれいる。

    内容は以下のようになっている。

    (2009年11月30日発行 朝倉書店刊 A5版横組み 448頁 12,000円+税 ISBN 978-4-254-51035-5

    文字研究会編『新常用漢字表の文字論』

    「新常用漢字」をきっかけに、日本語の表記にとっての文字、言語政策と文字コード、言語と文字について、幅広い多様な視点から文字をめぐるさまざまな問題に言及する。2008年7月19日に花園大学で開催された「ワークショップ:文字―(新)常用漢字を問う―」での発表を中心に、常用漢字表改定の問題点を指摘する當山日出夫論文、独自の「一般キャラクター論」を構想する師茂樹論文、常用漢字表改定が文字コードに及ぼす影響を述べる小形克宏論文、戸籍統一文字などの「行政用文字」の中の常用漢字を計測する高田智和論文、これまでの漢字政策と文字コードの歴史を振り返り、(新)常用漢字の字体を考える安岡孝一論文、「文字」と「字」の違いを中国古典によって考察する山田崇仁論文の6編を収録している。

    内容は以下のようになっている。

    (2009年12月10日発行 勉誠出版 A5判横組み 136頁 3,500円+税 ISBN 978-4-585-03227-4

    山口治彦著『シリーズ言語対照「外から見る日本語」第10巻 明晰な引用,しなやかな引用―話法の日英対照研究―』

    シリーズ言語対照「外から見る日本語」の第10巻。本書は,日本語と英語を題材とし,他者もしくは自分のことばを引用する際の話法を,従来の研究手法とは異なる視点を用いて分析し,英語・日本語の対照研究に見出される問題点を指摘している。全5章からなる。第1章では,本書における「引用」と「話法」の定義付けがなされた上で,方法論について論じている。第2章では英語の話法を俯瞰したうえで,引用を行う際のコンテクストと話法の形式について考察している。第3章では日本語話法の柔軟性と多様性を,体系的で明瞭な英語話法と対比させながら述べている。第4章ではこれら二つの言語に大阪方言を加え,それぞれの話法を比較し,相違点と共通点を示している。第5章では先行研究を示し,本書との相違点を述べている。

    内容は以下のようになっている。

    (2009年12月14日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 288頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-465-4

    L.J.ブリントン・E.C.トラウゴット著,日野資成訳『語彙化と言語変化』

    本書は,2005年にケンブリッジ大学出版会から刊行されたLexicalization and Language Changeの日本語訳である。近年,着目を浴びるようになった文法化研究の一方で新たな研究領域として語彙化研究の必要性を示すのが本書の目的である。本書ではまず第1章で語彙化と文法化研究の理論的な背景について整理がなされ,第2章で語彙化の定義と観点について,具体的な語形成の過程を示しながら説明がなされる。次に第3章で語彙化と文法化の相違点・類似点について考察がなされ,第4章で両者の統合的な視点を設定する必要性について論じる。第5章で英語を題材とした事例をケーススタディとして挙げ,第6章で結論と今度の課題が示されている。

    (2009年12月25日発行 九州大学出版会刊 A5判横組み 296頁 6,000円+税 ISBN 978-4-7985-0002-7