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新刊紹介 (『日本語の研究』第7巻2号(通巻245号)掲載分)

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

蜂矢真郷著『国語派生語の語構成論的研究』

前著『国語重複語の語構成論的研究』(塙書房1998)に続く語構成論的研究であり,今回はカ(・ガ)行に関係する接尾辞を伴う派生語を対象としている。第1篇「動詞―カス型動詞―」では「〜カス」の形をとる動詞について考察し「本来型」(アカス),「応用型」(代入型のオビヤカス,特殊代入型アラハカス,直接型ノガラカス),「再応用型」(カワラカス),「再々応用型」(スネカラカス)というように分類している。第2篇「形容動詞語幹―カ(・ヤカ・ラカ)型語幹―」では,カ型語幹のシヅカ,イヨヨカ,キララカ,ハヤリカ,アサハカなどをタイプ別に分類し,ヤカ型語幹,ラカ型語幹も同様に分類し,そのタイプ別の数の偏りなどを指摘する。第3篇「形容動詞語幹と動詞―カ(・ヤカ・ラカ)型語幹とク(・グ)型動詞―」では,例えばアザヤカ,アザラカ,アザヤクなどの関係を扱って,ヤカ語幹とラカ語幹の構成力の違いなどについて述べる。第4篇「形容詞―ケシ型形容詞―」では,同様に「〜ケシ」という形の形容詞を構成面から分類し考察する。第5篇「清濁―カ行・ガ行の清濁―」では「〜ク」→「〜グ」,あるいは「〜キ」→「〜ギ」の変化の様相を扱う。

内容は以下のようになっている。

(2010年3月15日発行 塙書房刊 A5判縦組み 456頁 13,000円+税 ISBN 978-4-8273-0115-1

宮澤俊雅著『倭名類聚抄諸本の研究』

1970年代から1990年代にわたる著者の論文を一書としたものであり,2005年以降に制作した私家版を公刊したものである。倭名類聚抄の諸本を比較検討しその成立や系統について論ずることを通じて一般的な諸本研究法がどうあるべきかを追究している。全体は4部17章からなる。1部では十巻本の諸本,2部では二十巻本の諸本をめぐる考察を行う。3部では和訓の冠称などをもとに書承関係について述べる。また,諸本の系統から「さざえ」の古形が「さだえ」であることを述べる。4部では成立に関わる諸問題についてまとめている。旧稿収録にあたって本文は誤記訂正にとどめてあるので,気づいた点,その後明らかになった点は「書後」という形で補足をしている。(例えば492ページには「温故堂本」は江戸初期写本であるが,諸辞書では鎌倉期写本とされているなどの指摘がある。)「参考文献」では諸本について述べ,2000年以前の和名抄関係研究論文リストを載せている。

内容は以下のようになっている。

(2010年4月20日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 544頁 12,000円+税 ISBN 978-4-585-03259-5

多和田眞一郎著『沖縄語音韻の歴史的研究』

本書は,16世紀初頭から現代(1970年代)に至るまでの沖縄語の音韻の変遷を,各時代の様々な文献資料の分析を通して明らかにしようとするものである。扱われている資料は,ハングル資料,漢字資料,アルファベット資料,仮名資料とあらゆるジャンルに及んでいる。序章で分析対象資料一覧と用例の示し方を提示した後,第1章では文献の存在しない15世紀以前の沖縄語の音韻を推定,項目の整理を行っている。第2章から第7章では,16世紀から20世紀の各時代の沖縄語の音韻について,母音,半母音,子音の分析を50音図の各行ごとに行っている。第8章では,それまでの分析を踏まえ全体的な考察・考究を行い,各項目ごとに時系列に沿った表を示している。なお,本書は平成22年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付を受けている。

内容は以下のようになっている。

(2010年6月26日発行 渓水社刊 B5判横組み 962頁 15,500円+税 ISBN 978-4-86327-105-0

Bjarke Frellesvig著 "A History of the Japanese Language"

本書は英語で書かれた日本語の通史である。著者のビャーケ=フレレスビッグは日本語学,歴史言語学,音韻論などの研究者であり,オックスフォード大学における日本古典語コーパスを作成するプロジェクトの責任者ということでも最近注目されている。全体は4部に分かれる。第1部の「Old Japanese」では上代,第2部の「Early Middle Japanese」では中古,第3部の「Late Middle Japanese」では中世,第4部の「Modern Japanese」では近世以後を扱う。それぞれ,資料や基本的な事柄に関する解説,音韻,文法,その他,について記述するという構成になっている。英語圏における日本語史のまとまった新しい文献ということで,言語変化・言語対照の資料として日本語に近づこうとする人にも利用されるであろうが,日本語史研究者で日本語以外の文献を読む機会があまりない人に英語圏における研究の成果を紹介するという役割も果たすであろう。(例えば上代特殊仮名遣いの甲乙の音価の解釈に関心のある人はその部分を見るとよい。)

内容は以下のようになっている。

(2010年7月発行 Cambridge University Press刊 A5変形判横組み 464頁 USD 130.00 ISBN 978-0-521-65320-6

遠藤邦基著『国語表記史と解釈音韻論』

著者あとがき(403ページ)によれば,本書は「仮名資料の中にみられる各種の修辞や句読の位置の誤認による意識的・無意識的誤解により生じた異文,また,ミセケチや擦り消しによって加えられた訂正の意図などを推察することにより,古典注釈書の解釈の変遷の跡を辿り,さらにはそれらを音韻史資料として見直すことを目的としたもの」である。全体は5章からなる。第1章「平安仮名文献の表記」では影印で字体や書法が確認できる文献を対象に古典仮名遣いと非古典仮名遣いのせめぎあいの実態を示し,その分析を行う。第2章「古典解釈と仮名遣」では音韻の変化をそのまま表記したときに解釈が変化する現象を扱う。第3章「仮名遣と仮名文字遣」では,いわゆる仮名遣いと異体仮名の使い分けの混同現象を扱う。第4章「異文と音韻史」では音韻の変化が異文を生じさせる現象を扱う。第5章「字体分析の言語遊戯」では「牛の角文字」を古注では「い」とするが兼好は「ひ」と見ていたのではないかとする論,似ている漢字を利用した言語遊戯,合字・分字における言語遊戯,字謎などを扱う。

内容は以下のようになっている。

(2010年7月25日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 416頁 10,000円+税 ISBN 978-4-7576-0561-9

西崎亨著『倶舎論音義の研究』

本書は,本文編,論考編,索引編からなり,本文編は,影印(京都大学文学研究科図書館蔵本,高野山大学図書館蔵金剛三昧院寄託本)および模写(金沢文庫蔵本)を収録。論考編は,著者の『倶舎論音義』に関する既発表の論文5本(「高野山大学蔵本倶舎論音義について」「金沢文庫蔵本倶舎論音義について」「京大転写本倶舎論音義のオ・ヲの仮名遣について」「倶舎論音義の引用書について(一)(二)」)をほぼそのままの形で再掲。索引編には,和訓索引,京大転写本差声訓索引,京大転写本所引小切韻索引,京大転写本被反切注字索引を載せる。なお『倶舎論音義』は,唐の玄奘三蔵の『阿毘達摩倶舎論』30巻と唐普光撰の『倶舎光記』30巻を巻第1より交互に配し,各々の書から難解な単字や熟字である漢字を抽出して,その音・訓について注解を加えた巻音義である。

内容は以下のようになっている。

(2010年8月1日発行 思文閣出版刊 A5判縦組み 424頁 9,000円+税 ISBN 978-4-7842-1509-6

安井寿枝著『谷崎潤一郎の表現―作品に見る関西方言―』

作家谷崎潤一郎はことばの使用に敏感な作家であり,大正末期の関西移住後その作品が大きく変わったことを自ら認めている。本書は,関西在住期に発表された関西方言の確認できる作品を対象に,谷崎の表現意図を考察したものである。1章「作品における関西方言の変遷」では,『卍』『蓼喰ふ蟲』など7作品を順に見ていくことで,谷崎作品における関西方言使用の変遷を確認する。2章「『卍』初出と初版における校異について」では,『卍』に見られる谷崎の関西方言への「翻訳」の過程を分析し,その発話文における関西方言使用が「谷崎流の言文一致の試み」であったことを示す。3章「『細雪』蒔岡家・四姉妹の措辞」では,作品の中心人物である「四姉妹」の発話文に現れる自称詞や対称詞などを分析する。そして,その関西方言が「四姉妹」の人物的特徴の形成に大きな役割を果たしており,谷崎の確かな表現意図を持って使用されていることを示す。なお,本書は博士論文(甲南大学,2007年)がもとになっている。

内容は以下のようになっている。

(2010年8月20日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 250頁 8,000円+税 ISBN 978-4-7576-0562-6

渡辺滋著『古代・中世の情報伝達―文字と音声・記憶の機能論―』

本書は,日本の古代・中世社会における文字利用の実態を追究したものである。第1章「「文書主義」の導入と情報処理」では,日本の律令制下の行政処理の過程において,情報が充分に文字化されず,処理の過程で音声の役割も不可欠とされていた実態を明らかにした。第2章「社会における文字の役割」では,文書・帳簿などの文字情報体において,核心的な部分が意図的に文字化されず,文字化された情報がそれ単体では機能し得ないあり方が一般的であったことを指摘した。第3章「情報伝達における「文字」と「記憶」」では,遠隔地への伝達において,文字情報と使者の記憶や「口状(口上)」が相補的な役割を果たしていた事実を解明した。第4章「日本古代・中世における文字利用」では,3章までの考察を踏まえて,生きた記憶と文字の相補関係が,古代以来近世に至るまでほぼ維持され続けた実態について述べた。また,終章「前近代社会における文字利用―東アジア以外の社会との比較から―」は,外国史の分野における関連研究の現状を総覧したものである。なお,本書は平成20年度に明治大学に提出した博士論文の後半部分に加筆修正を施したものである。

内容は以下のようになっている。

(2010年10月10日発行 八木書店刊 A5判縦組み 450頁 10,000円+税 ISBN 978-4-8406-2073-4

仁田義雄著『日本語文法の記述的研究を求めて』

「仁田義雄日本語文法著作選」シリーズ全4巻中の第4巻で,配本最終回となる。本書は,著者が言語をどのように捉えているか,文法記述はどうあるべきか,単語とは何か,などを扱った論文を収載している。全体は6部17章に分かれる。第1部「文法と文法分析・文法記述をめぐって」では文法,文法論,文法記述,文の構造と意味,文法カテゴリなどについて基本的な枠組みを説明する。第2部「文の意味―統語構造について―」では,文の意味的構造と文法的構造の結びつきをどのように捉えるかを述べる。第3部「単語と主語について考える」では単語についての論,主語をめぐっての論を展開する。第4部「複文考察への鍬入れ」では,条件節やシテ節にかかわる論を収録している。第5部「文を越える領域へ」は連文,文章レベルを対象としたものであり,第6部「学説史をも考慮に入れながら」は,学説史を踏まえて形容詞や係り結びについて考察したものである。

内容は以下のようになっている。

(2010年10月15日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 392頁 4,800円+税 ISBN 978-4-89476-453-8