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新刊紹介 (『日本語の研究』第8巻3号(通巻250号)掲載分)

2012年8月18日掲載

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

上野和昭著 『平曲譜本による近世京都アクセントの史的研究』

本書は、江戸期における京都アクセントの共時体系を明らかにし、それをアクセント史に位置付ける試みで、著者の既発表の論文(1987〜)を中心としながら新たに補筆訂正を加え、編まれたものである。近世京都アクセント資料として、主に平曲譜本、特に『平家正節』(安永5年、荻野知一撰)を用いる。序章と終章を含む10章からなり、第1章「『平家正節』の譜記によるアクセント型の認定」を始めとして、単純名詞・転成名詞のアクセント型認定、固有名詞・漢語・動詞・形容詞のアクセントの変遷、「平曲ならびに平曲伝書とアクセント史」「特殊表記からみた平曲古譜本」「『言語国訛』覚え書」「アクセント史からみた『平曲問答書』」等について記述する。高低4種(H・L・R・F)から成るアクセント型について、「型の統合」「型の消滅」等、近世を中心とする型の消長を綿密に分析し、アクセント史の近世が、「広義の〈中世〉」に含まれるものと結論付ける。早稲田大学学術叢書15。

内容は以下のようになっている。

(2011年3月30日発行 早稲田大学出版部刊 A5判横組み 568頁 9,800円+税 ISBN 978-4-657-11707-6

全国手話研修センター日本手話研究所編集 米川明彦監修 『新日本語―手話辞典―』

本書は1997年発行の「日本語ー手話辞典」の改訂版である。日本語の語句,文に相当する手話単語,手話表現を具体的な用例を挙げて説明したもので,「日本語ー手話辞典」は国際的に見ても本格的な辞典であった。近年,ろう者がかかわる情報・知識が急速に増え,同時にそれを的確に表す手話が存在してないという問題が表面化してきた。また,近年の外来語をはじめとする語彙の増加によって,それに対応する手話を策定する必要がでてきた。このような状況を受けて刊行されたのが本書である。本書は日本語の見出しの意味/用法を多くの例文やイラストを用いながら説明を試みている。見出し語は日常的でありかつ手話としての特色が出せる語彙を選出した。その数は見出し語約1万語,項目数1700頁になる。

(2011年6月10日発行 財団法人全日本聾唖連盟発行 中央法規出版発売 B5判横組み 1807頁 22,000円+税 ISBN 978-4-8058-3450-3)

文化庁文化部国語課編 『平成22年度国語に関する世論調査 現代の国語をめぐる諸問題』

文化庁が毎年行っている国語に関する世論調査の結果を報告したものである。(16歳以上の3000人を対象に個別面接形式で調査。有効回答数2104。)本年度は,言葉遣い(関心の有無,困っている点,国に期待する点,男女の言葉の違い,ら抜き・さ入れ言葉など),官公庁などの公的な言葉の使い方(漢語,外来語,句読点),外国語と日本語(英語の国際語化,在住外国人に期待する日本語能力,そのために求められる施策など),長音のローマ字表記,間違いが多いと言われている単語・ことわざ・慣用句の意味などの調査項目が立てられており,地域別・年齢別などの分析結果が表やグラフなどの形で提示されている。以前の調査と同様の項目を立て,それとの比較を行っている部分もある。

内容は以下のようになっている。

(2011年9月10日発行 ぎょうせい刊 A4判横組み 216頁 2,095円+税 ISBN 978-4-324-09364-1

田中ゆかり著 『「方言コスプレ」の時代―ニセ関西弁から龍馬語まで―』

その場での演出として一時的に方言を使用することを「方言コスプレ」と呼び,その実態,背景などを追究したものである。序章ではリアル方言(?@生育地方言)とヴァーチャル方言を分ける。(後者をさらに?A生育地での方言だが自分では普段使わない方言と,?B全く自分と関係がない地方の方言使用に分ける。)第1章ではアンケート調査により,「方言コスプレ」の使用状況を探るとともに,?@〜?Bの使用意識・使用理由などを調査する。第2章では国語審議会・学習指導要領などから方言に対する国家の姿勢,新聞記事から方言に対する国民の姿勢の変遷を見ていく。第3章では,大阪方言=おもしろい,九州方言=男らしい,などのステレオタイプの形成と流通を,近代文学・現代マンガを通して考察する。第4章ではNHKの大河ドラマと方言の関わりについて述べ,坂本龍馬の土佐弁キャラ生成の過程を追う。第5章ではマスコミによる方言の扱いの歴史的変化を観察し,映画・TVドラマ・マンガなどのメディアがキャラクターを特徴付ける方言使用にいかに関わったかを考える。終章では,方言コスプレに対する評価がはらむ問題点を指摘しつつも,この現象の未来を予測している。

内容は以下のようになっている。

(2011年9月29日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 296頁 2,800円+税 ISBN 978-4-00-024870-9

森篤嗣・庵功雄編 『日本語教育文法のための多様なアプローチ』

日本語教育文法を新たに打ち立てるための方向性を模索した論文集である。全体は二編に分かれる。導入編では,日本語記述文法の直系でもなく日本語記述文法とは異なる独自路線でもない「日本語教育文法」にとって必要と考えられる基本的な考え方(庵功雄)と研究手法(森篤嗣)について述べる。論文編では,各論文とその解説が収録されている。解説にはこれからこの分野で論文を書く人に参考となるよう,執筆者本人による「従来の方法論の問題点,新しい方法論の提案,今回のテーマの着想までのプロセス,今回のテーマ以外での汎用可能性,データをどのように扱うか,研究の学術的貢献と社会的貢献」が記されている。各論文は,「が」と「は」の使い分けを扱った庵功雄論文,数量表現を扱った岩田一成論文,ハズダを扱った太田陽子論文,伝聞のソウダの使用傾向を扱う小西円論文,非現場指示のア系と結びつく名詞の特徴を論ずる建石始論文,「てある」と「ておく」の使用特徴をコーパスから帰納する中俣尚己論文,学習者コーパスから超級日本語学習者の言語特徴を指摘する橋本直幸論文,〜ノダカラを論ずる藤城浩子論文,シテイナイとシナカッタを扱い,指摘されてはいるがそのままになっている言語形式があることを示す松田真希子ほか論文,コーパスで着点を表す助詞「に」と「へ」の母語話者使用傾向を探り学習者に対する「へ」の扱いについて述べる森篤嗣論文の計10編となっている。

内容は以下のようになっている。

(2011年10月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 368頁 3,400円+税 ISBN 978-4-89476-569-6

町田健著 『言語構造基礎論―文の意味と構造―』

文の構造を「線状的を持った形態素配列の諸規則」と捉え,その規則を支える一般的な原理を解明しようとしたものである。意味の構成・伝達を重視し,それが形態素配列とどのような関係があるかを明らかにするという点に力が注がれている。全体は序章と第1〜5章からなる。序章では研究の目的と意義を述べる。第1章「言語を構成する要素」では,意味の最も重要な部分が事態であることを主張し,事態がどのような成分によって構成されるかを見る。第2章「言語単位」では,事態の中での機能という観点から形態素を分類する。第3章「文構造の記述」では,形態素配列に規則性がなければならないこと,それが事態とは無関係に決定されるものではないことを明らかにし,その規則に決定に関与する要因を探る。第4章「言語理解の過程」では,文が表示する事態がどのようにして理解されるのかを説明する。第5章「構造規則を決定する原理」では,文の産出〜理解の過程において最も無理のない効率的な形態素配列規則が採用されていることを示す。

内容は以下のようになっている。

(2011年10月20日発行 勁草書房刊 A5判横組み 256頁 4,600円+税 ISBN 978-4-326-10211-2

釘貫亨・宮地朝子編 『ことばに向かう日本の学知 名古屋大学グローバルCOEプログラム』

日本語学史・学説史を扱った論文集である。序論がわりの「学史と学説史」(釘貫亨)に続いて,プラハ言語学派の分析を言語作品に生かす試みについて語るカレル=フィアラ論文,近代日本の文法学成立におけるbe 動詞解釈を扱う金銀珠論文,山田文法の「喚体句」はヴントの影響だとする宮地朝子論文,時枝誠記による『手爾葉大概抄』の「手尓葉」と「詞」解釈の不備を扱う小柳智一論文,時枝とソシュールの関連について述べる松澤和宏論文,消滅の危機にある琉球語文学を扱うかりまたしげひさ論文,1880年代の韓国新聞『漢城旬報』に近代新語の流通過程を見る李漢燮論文,謡曲の鸚鵡小町を題材にテキスト分析をするズデンカ=シュヴァルツォヴァー論文,橋本進吉の近代国語学創出を論じる釘貫亨論文,『韻鏡』を通して漢語学から悉曇学への影響を扱う肥爪周二論文,近世語学の「軽」「重」という術語を論ずる岡島昭浩論文,明治期国学者の言語研究を扱う山東功論文,石塚龍麿が万葉仮名の二類の区別を音の区別と述べなくなる理由を扱った安田尚道論文,佐藤一斎の訓法の特徴を見ていく齋藤文俊論文,『言海』の漢語語釈方法を観察する今野真二論文の計15編を収載する。

内容は以下のようになっている。

(2011年10月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 336頁 6,200円+税 ISBN 978-4-89476-559-7

荻野綱男・田野村忠温編 『講座ITと日本語研究 3 アプリケーションソフトの応用』

日本語研究に必須のIT関連知識とその活用法を詳しく解説するという「講座 ITと日本語研究」の第3巻である。この巻では,秀丸エディタ,Word,Excelを取りあげ,そのマクロの機能と利用法を解説している。第1章 「テキストエディタの応用」(田野村忠温)では,秀丸エディタの応用的な利用の可能性を「基本性能を生かす」「キー操作の記録と再生を使っておなじ処理を簡単に反復処理する(キーボードマクロ)」「マクロを手作業で作成する(マクロプログラミング)」の3点に分けて述べている。第2章「Wordの応用」(谷本玲大)では,青空文庫のデータの自動加工を例にして,Wordのマクロについての初歩的概要を述べる。第3章「Excelの応用」(大熊智子)では,フィルタ機能を使ったマクロのプログラミング,任意の文字列抽出,その集計,形態素解析結果の読み込みと形態素・品詞を対象とした処理について述べる。なお,巻末に「付録 正規表現・文字コード」(田野村忠温)があり,正規表現についての解説が記されている。

内容は以下のようになっている。

(2011年10月25日発行 明治書院刊 A5判横組み 240頁 2,400円+税 ISBN 978-4-625-43440-2

影山太郎編 『日英対照 名詞の意味と構文』

名詞には豊かな意味構造があり,それが語形成や構文に関わっていることを,日英両語を例として述べたものである。シリーズとしては動詞(2001年),形容詞・副詞(2009年)に続く第3弾となる。「語彙意味論」をベースとしつつ,J.Pustejovsky の「クオリア構造」を分析に利用している。全体は3部10章に分かれる。第1部「名詞の特性」(第1〜3章)は,名詞それ自体の意味的性質を中心に扱ったもので,モノ,デキゴトなどの名詞の性質,助数詞による類別について述べる。第2部「名詞と構文」(第4〜6章)は名詞句と構文の関わりについて考察する。第3部「名詞と動詞の連携」(第7〜10章)は文全体の構造が名詞と動詞の連携によって生み出されることを見ていく。各章の記述は,「1 なぜ?」,「2 〜とは」,「3 (具体的例示)」,「4 問題点と分析」,「5 まとめ」,「6 さらに理解を深めるために」という構成になっており,平易な解説が目指されている。担当者として名前が挙げられているのは,まとめて記すと影山太郎・眞野美穂・米澤優・當野能之・杉岡洋子・高橋勝忠・磯野達也・境倫代・由本陽子・岸本秀樹となっている。

内容は以下のようになっている。

(2011年11月25日発行 大修館書店刊 A5判横組み 336頁 2,500円+税 ISBN 978-4-469-24568-4

佐々木瑞枝著 『実践日本語教育を学ぶ人のために』

日本語教育で問題となる項目を挙げ,その語学上の要点と指導上のポイントを示したものである。世界思想社の「学ぶ人のために」シリーズの多くは,分担執筆によりその分野の基本的概説またはこれから必要とされる分野の概説を記すことが多いが,本書は単著であり言葉そのものを取りあげた本となっている。全体は4章に分かれる。第1章「初級表現のポイント」では,「います」「あります」の使い分け,「〜おきに」の指導,敬語の使い分け,「〜くらい」「〜ほど」の使い分け,など日本語教育初級での主要項目,あるいは主要項目ではないが学習者から質問があるような30の項目を扱っている。第2章「中級表現のポイント」では,「可愛がる」と「甘やかす」,「親切」と「おせっかい」など,類義語や反義語を扱っている。第3章「上級表現のポイント」では,言いさし表現のいろいろ,終助詞の指導,などテーマ別の内容となっている。第4章「日本語の中のジェンダー表現」では,「才色兼備」「男泣き」「主人・家内」などを挙げて,それに関するクイズを出すなど,社会・文化面を学習者とともに考える題材を提示している。

内容は以下のようになっている。

(2011年11月30日発行 世界思想社刊 B6判横組み 282頁 2,200円+税 ISBN 978-4-7907-1542-9

井上史雄著 『経済言語学論考―言語・方言・敬語の値打ち―』

本書は,筆者が言葉と経済の関係について,論文として執筆してきたもの,講演や講義の録音を文字化したものなどが数多くなってきたことを受け,それらをもとに構成されたものである。本書は3部,計25章で構成される。第一部「言語と経済」では,言葉の難易度という観点(1章),言語の情的価値(3章),公用語化の必要経費(4章)などが扱われる。第二部「方言と経済」では,方言景観と経済の関係(9章),東京新方言の重力モデル(13章),音韻共通語化のS字カーブ(15章)などが取り上げられる。第三部「敬語と経済」では方言敬語の時代性と社会(18章),言語変化の成人後採用(22章),「お」の使い分けにみる美化語の循環過程(25章)などについて考察がなされる。本書で取り上げられた調査の多くは大規模調査から得られた大量のデータを扱っているものである。そのデータの分析を実施する上で,背景となっていたのが,経済である。本書は,その社会全体の経済的状況,文化的な状況,個人の心理などを地理的分布として表現し,その相互関連を位置づけた,まさに経済言語学的アプローチによるものである。

内容は以下のようになっている。

(2011年12月10日発行 明治書院刊 A5判横組み 498頁 8,000円+税 ISBN 978-4-625-43447-1)