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新刊紹介 (『日本語の研究』第8巻4号(通巻251号)掲載分)

2012年10月3日掲載

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

李光赫著『日中対照から見る条件表現の諸相』

日本語の条件文で提起された問題が条件文研究の中でどのように位置づけられるか,また自然言語の条件文研究で提起された問題が日本語の条件文研究でどのように位置づけられるか,という問題意識にもとづく日本語と中国語の対照研究。東北大学に提出された博士学位請求論文をもとにしている。

内容は以下の通り。

(2011年8月11日発行 風詠社刊 A5判横組み 215頁 3,800円+税 ISBN 978-4-43415-871-1

今野真二著『漢語辞書論攷』

明治期に陸続と出版された「漢語辞書」について,「辞書」と「漢語」という両面から考察を加えた書。第一章「漢語辞書のとらえかた」では,「和漢の対置」「辞書における摸倣と創意と」「語釈の近さ/遠さ」など,「漢語辞書」に対する著者の考え方・捉え方が提示され,漢語についての整理が試みられている。第二章「漢語辞書の系譜的聯関」では,まず『新令字類』を例にして辞書体資料が漢語辞書に与えた影響と,影響が指摘されている二つの漢語辞書の対照について論じられている。第三章「漢語辞書の改訂増補」では,『校正増補漢語字類』,『新撰字類』,二つの『文明いろは字引』を対象として,漢語辞書の増補改訂について述べられている。第四章「明治期の『節用集』と漢語辞書と」では,これまであまり論じられることがなかった『開化節用集』を採り上げながら,明治期の『節用集』と漢語辞書の関わりについて論じられている。

(2011年10月23日発行  港の人刊 四六判縦組み 296頁 3,000円+税 ISBN 978-4-89629-239-8

青木博史編『日本語文法の歴史と変化』

編者をリーダーとする国立国語研究所共同研究プロジェクトの研究成果。「古典文献に基づいた実証的な方法論に加え,現代語の理論研究や方言データも視野に入れた幅広い視点から研究を行う」,「各時代語を中心としながらも,一時代の共時的な観察・記述にとどまらなく,歴史変化をダイナミックに描く」,「様々な文法現象を対象とし,どのような記述が歴史変化を「説明」するものとして必要十分であるか,自覚的に取り組んでいく」ことを目指している。

次の10編の論文と解説からなる。

(2011年11月9日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 264頁 3,000円+税 ISBN:978-4-87424-533-0

安田敏朗著『かれらの日本語―台湾「残留」日本語論』

「ことばはだれのものか」という問いに「ことばとはわたしのものでしかない」という回答を与えるべく,日本植民地時代の台湾で使用されていた日本語,また植民地支配が終わった後も使用され続けている日本語に対する視線のあり方について考察した書。

以下の8章からなる。

(2011年11月30日発行 人文書院刊 四六判縦組み 294頁 2,800円+税 ISBN 978-4-40904-102-4

李无未著『日本漢語音韻学史』

日本人研究者による漢字音研究(中国語音韻史研究)の歴史を,総合的に整理・紹介する。日本語題は『日本の漢語音韻学史』で,目次および裏表紙の内容紹介にも,日本語訳が付されている。分野としては,中国語学に属する研究を中心に取り上げているが,いわゆる国語学・日本語学の研究者の業績にも,十分な目配りが為されている。日本の漢字音研究の蓄積について,総合的に整理した著作は,これまで日本語で書かれたものも存在しなかったので,事実上,当該分野の唯一の解説書となる。

前篇「日本の漢語音韻学研究の特徴」,中篇「音韻文献と漢語音声史研究」,後篇「対音訳音文献と漢語音声史の研究」の三部からなり,それぞれが,4章・15章・9章に分かれている。中篇第七章「日本の学者の《韻鏡》研究」,第十二章「日本の学者による仏教“声明”と漢語声調の関係に対する研究」,後篇第一章「日本漢字音の時間的段階およびそれを確認する根拠と方法」,第五章「日本学者による漢梵対音と音訳に対する研究」などが,とりわけ日本語学に関連の深い章段である。巻末に「主要参考文献」のリストが付される。

(2011年12月発行 北京・商務印書館刊 A5判横組み 453頁 3,600円+税 ISBN 978-7-100-08581-6

藤村逸子・滝沢直宏編『言語研究の技法―データの収集と分析』

名古屋大学大学院国際開発研究科・国際コミュニケーション専攻「言語教育と言語情報プログラム」の実施過程で着想・実現された書。コーパスの可能性,心理言語学的実験方法,音声収録・分析の手法など,これからの言語研究において習得すべき分析方法を最新の研究成果と共に紹介している。

次の4部16章からなる。

(2011年12月22日発行  ひつじ書房刊 A5判横組み 352頁 3,400円+税 ISBN 978-4-89476-582-5

橋本ゆかり著『普遍性と可変性に基づく言語構造の構築メカニズム―用法基盤モデルから見た日本語文法における第一言語と第二言語習得の異同―』

「用法基盤モデル」にもとづき,幼児が第二言語を習得する際に固まり表現から言語構造を発達させていくメカニズムを,第一言語の習得と比較しながら明らかにすることを目指した研究。お茶の水女子大学に提出された学位論文をもとにしている。

内容は以下の通り。

(2011年12月25日発行 風間書房刊 A5判横組み 288頁 7,000円+税 ISBN 978-4-7599-1898-4

吉田妙子著『日本語動詞テ形のアスペクト』

日本語動詞の中止形の一つであるテ形のアスペクトについて考察した研究。「テ形接続文の前件と後件の関係とテ形の意味用法などは,テ形の完了アスペクトの故である」,「動詞テ形の作る補助動詞の意味用法は,テの完了あるいは開始のアスペクトが作用している」という観点から,テ形を含む種々の文法形式の意味分析がおこなわれている。

内容は以下の通り。

(2012年1月30日発行 晃洋書房刊 A5判横組み 245頁 2,700円+税 ISBN 978-4-7710-2313-0

ノーム・チョムスキー著・福井直樹編訳『チョムスキー言語基礎論集』

チョムスキーの思想の展開を鳥瞰できるように編まれた日本語版オリジナル編集の選集(英文タイトルはFoundations of Biolinguistics: Selected Writings)。(1)その時代のチョムスキーの考えをなるべく簡潔に,かつ十全に論じたもの,(2)できれば著書の形で出版されていないもの,(3)できれば邦訳が存在しないもの,という3つの観点から選ばれた次の論考が収録されている。本書のためにチョムスキー自身が書き下ろした序,および編訳者による解題を付す。

内容は以下の通り。

(2012年1月27日発行 岩波書店刊 菊判横組み 460頁 6,500円+税 ISBN 978-4-00-022787-2

柳慧政(ユ・ヘジョン)著『依頼談話の日韓対照研究―談話の構造・ストラテジーの観点から』

2006年に提出された学習院大学審査学位論文を加筆修正したもの。ロールプレイによって得られた日本語・韓国語の依頼談話データ(日本語170件,韓国語192件)を用いて,(1)依頼談話の全体像はいかなるものであるか,どういう構造によって成り立っているのか。(2)「話段」という分析単位を用いることは依頼談話の構造の解明および依頼談話の特徴の把握に有効であるか,(3)依頼者は依頼状況に応じて,目的達成と相手配慮のためにどのようにストラテジーを用いているのか,(4)日本語と韓国語の依頼談話には,類似点及び言語・文化による相違点はあるのか,という4点を明らかにしようとした研究である。依頼をおこなう際の依頼内容の情報提供において,日本語は「情報小出し」を,韓国語は「全情報提示」を重視する傾向があることが指摘されている。

次の8章からなる。

(2012年1月31日発行 笠間書院刊 A5判横組み 300頁 3,200円 ISBN 978-4-305-70528-0

堤良一著『現代日本語指示詞の総合的研究』

日本語指示詞に関する先行研究を詳細に検証した上で,コ・ソ・アの現場指示用法と文脈指示用法を単一のモデルで簡潔に説明することを目指した研究。大阪大学外国語大学に提出された博士論文をもとにしている。

以下の各章からなる。

(2012年2月10日発行 ココ出版刊 A5判横組み 256頁 3,600円+税 ISBN 978-4-904595-17-6

塚本秀樹著『形態論と統語論の相互作用―日本語と朝鮮語の対照言語学的研究』

日本語と朝鮮語の文法現象に見られる相違が「文法化の進度の違い」,「形態・統語的仕組みの違い」という二つの根本的要因の相違により引き起こされるものであることを明らかにした研究。ひつじ研究叢書(言語編)第95巻。

以下の各章からなる。

(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 500頁 8,500円+税 ISBN 978-4-89476-570-2

金庚芬(キム・キョンブン)著『日本語と韓国語の「ほめ」に関する対照研究』

日本語と韓国語の会話に見られる「ほめる」言語行動を談話レベルから分析した研究。桜美林大学に提出された博士論文をもとにしている。条件統制した120名(日本語母語話者,韓国語母語話者各60名)の大学生同士の会話をデータとして,「ほめる表現」,「ほめられる具体的な対象」,「ほめられた時の反応」,「ほめの談話の流れ」を質的・量的に分析し,日本語と韓国語の類似点と相違点を明らかにするとともに,その結果をポライトネス理論の観点から考察している。全会話データのCD-ROMを付す。ひつじ研究叢書(言語編)第99巻。

次の7章からなる。

(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 288頁 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-589-4

堀川智也著『日本語の「主題」』

「主題」を談話上の概念ではなく,〈断裂要件〉と〈意味要件〉を満たす一文中の特定の成分を指すという立場から日本語の「主題」について論じた研究。名詞句Pと後続の伝達主要部分Qが「ハ」で結ばれて意味ある言明になる場合をなるべく広くとり,その場合の前後の意味関係を詳細に検討することを通じて,「○○ハ」の意味的立場の種々相を明らかにすることを目指している。ひつじ研究叢書(言語編)第100巻。

第1章で,「主題」の要件(断裂要件,意味要件),「主題提示」と「対比」の関係,助詞論と主題論の関係,「主題」が談話・テクスト上の概念であるか否かについて論じた後,以下の各章において「主題」に関する詳細な議論が展開されている。

(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 220頁 5,200円+税 ISBN 978-4-89476-593-1

小林芳規著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究III 初期訓讀語體系』

「I 敍述の方法」「II 訓點の起源」「III 初期訓讀語體系」の三冊からなる大著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究』の第三冊。

以下の各章からなる。

(2012年2月15日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 878頁 22,000円+税 ISBN 978-4-76293-593-0

矢田勉著『国語文字・表記史の研究』

複線的,多層的,多段階的という特徴を有する国語文字・表記史を俯瞰的に把握することを試みた研究。「国語文字・表記史が中国語とのバイリンガリズムから脱して独自の道を本格的に歩み始めて以降,西洋的文字文化の洗礼を受けて国語文字・表記史が単線的なものになっていく以前の,国語文字・表記史が最もその特色を顕著にしていた部分」を対象として,平仮名と漢字という現代国語表記の中核をなす文字とその表記法について考察がなされている。

以下の6編34章からなる。

(2012年2月16日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 840頁 19,000円+税 ISBN 978-4-76293-602-9

岡田薫著『室町時代末期の音韻と表記』

室町時代末期,天正・文禄・慶長の時代に限定して,特殊音素の音韻とそれに対応する仮名表記について研究したもの。立教大学に提出された学位論文をもとにしている。資料の詳細な調査にもとづき,促音・撥音の表記の用いられ方の法則性,資料が書かれた年代や位相と表記との関係など,表音的表記の傾向が顕著になったとされる室町時代末期の促音・撥音表記の様相が明らかにされている。

以下の5章からなる。

(2012年2月25日発行 おうふう刊 A5判縦組み 448頁 15,000円+税 ISBN 978-4-273-03639-3

小川晋史著『今帰仁方言アクセントの諸相』

沖縄本島北部の今帰仁方言のアクセントに関する研究。神戸大学に提出された博士論文をもとにしている。複数の先行研究をふまえたうえで,先行研究による資料と自身のフィールドワークによるデータを使用し,今帰仁方言が昇り核の体系を持つこと,韻律単位がモーラであること,方言内にアクセント型の有標性階層が存在することなどについて,記述と理論の両面から詳細な分析がなされている。

次の7章からなる。巻末にアクセント資料(19種)が付されている。

(2012年2月29日発行 ココ出版刊 A5判横組み 280頁 4,800円+税 ISBN 978-4-904595-16-9

藤田耕司・岡ノ谷一夫編『進化言語学の構築―新しい人間科学を目指して』

人間に固有とされる言語能力の生物学的な意味での起源・進化の実相の解明を目指す進化言語学(evolutionary linguistics)に関するわが国初の専門論文集。

次の3編13章からなる。巻末に「座談会 進化言語学を考える」と「用語解説」を付す。

(2012年3月12日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 325頁 4,200円+税 ISBN 978-4-89476-594-8

中井精一著『都市言語の形成と地域特性』

大阪大学に提出された博士学位論文を加筆修正したもの。わが国で最も歴史と文化資本の蓄積した都市社会である近畿中央方言域の待遇表現形式に焦点をあて,その成立と特質,周辺地域への伝播をフィールドワークにより明らかにするとともに,ことばの生成と変容,拡大が都市のもつ「地域特性」とどのように関係しているかについて,社会言語学的方言研究の観点から解明しようとした研究である。全体を通して,方言を「地域特性」との関係において考察する,新たな社会言語学的方言研究の方法を提示することを意図している。

次の6章からなる。

(2012年3月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 276頁 8,000円+税 ISBN 978-4-7576-0618-0

影山太郎編『属性叙述の世界』

これまであまり取り上げられてこなかったモノの性質・特性・属性に関わる表現に注目し,標準日本語だけでなく諸方言や外国語も視野に入れ,従来の動詞中心の言語学では見えなかった言語の側面を明らかにすることを意図して編まれた論文集。

次の4部11編の論文を収録する。

(2012年3月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 304頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-546-0