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新刊紹介 (『日本語の研究』第9巻1号(通巻252号)掲載分)

2013年1月21日掲載

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

笹原宏之著『漢字の現在――リアルな文字生活と日本語――』

三省堂のホームページにおいて連載された記事「漢字の現在」をもとに編纂された書。日本語の表記の多様性は,世界に例を見ない。日本の文字には,それぞれに正誤,美醜,さらには良い悪い,硬い軟らかい,冷たい暖かい,好き嫌いといった意識や感覚が与えられることがある。それらの視覚情報と心理が,意味と発音とをもつ語の表記ごとに,因子となって強弱を伴って作用する。表記の多様性がさらなる個々人の感性の多彩さを生み,それが人々の間で再生産され,さらに相互の感性と触れあい揺さぶりあっていくという循環をもたらしている。心性が多彩である人間が生み出す実際の文字・表記を前にして,漢字の観察,他の文字との相対化,経験や意識に対する内省やインタビューの手法を用い,字体・画数・筆順,当て字・俗解,位相,漢字圏での共通点と相違点など,多角的な視点から「漢字の現在」に考察を加える。

(2011年9月10日発行 三省堂刊 四六判224頁 1,600円+税 ISBN:978-4-385-36524-4)

国語語彙史研究会編『国語語彙史の研究三十一』

国語語彙史研究の体系化と共に,語彙史研究の新たな方法論や隣接分野との関わりにも取り組んだ論文集。今回の特集は「名付け」。

収録論文は以下の通り。

(2012年3月31日発行 和泉書院刊 A5判縦組296頁 9,500円+税 ISBN:978-4-7576-0616-6)

今野真二著『日本語学講座第5巻:『節用集』研究入門』

単独著者による全10巻予定の講座の第5巻「『節用集』研究入門」。「言語資料として『節用集』を適切に使うためには諸本の関係をふまえておかなければならない」という立場から,江戸期から脈々と続けられてきた『節用集』研究を整理し,現在どのような地点に到達しているのかを示した。『節用集』をめぐって,どのようなことがらが話題/課題とされてきたのかをたどる。

(2012年4月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 230頁 3,500円+税 ISBN:978-4-7924-0963-0)

仁田義雄著『日本語文法研究の歩みに導かれ』

著者が40年余に及ぶ日本語文法の研究人生で出会い,対話を求め,影響を受けた研究のいくつかを取り上げて記述,紹介する書。山田孝雄,佐久間 鼎,寺村秀夫,三上 章,南部義籌,田丸卓郎,日下部重太郎,宮田幸一ほか。研究者の学的営みには,その研究者の生きた環境・時代が影響を与えている,という思いから,その研究者の生涯にも目配りされている。

(2012年5月1日発行 くろしお出版刊 四六判240頁 2,200円+税 ISBN:978-4-87424-552-1)

柳田征司著『日本語の歴史3中世口語資料を読む』

中世後期の口語資料として価値が高い,『詩学大成抄』『玉塵』を読み,一々の言語事象が日本語の歴史の中でどのような位置にあるのかを考察する書。日本語の歴史を,方言を含めて総体として動的に説明することを大目標としている。母音連続の問題,和語と漢語の問題,複雑な構文の問題,言語生活の問題といった日本語の歴史の動向について重要な問題を掬い上げている。

(2012年5月15日発行 武蔵野書院刊 四六判208頁 2,000円+税 ISBN:978-4-8386-0434-0)

筒井佐代著『雑談の構造分析』

日本語の会話教育において,雑談を体系的に指導することができるようにするため,日本語の雑談を分析し,その構造を明らかにしようとする書。雑談は,日常生活の中で簡単に自然習得できるものではなく,体系的に指導しなければならない重要な項目なのではないか,という観点から,日本語の会話教育への応用を目的として,会話分析の手法を用いて雑談の構造を分析し,構造パターンの抽出を試みている。

(2012年6月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み368頁 4,200円+税 ISBN:978-4-87424-554-5)

劉 志偉著『「姉小路式」テニヲハ論の研究』

中世のテニヲハ研究書「姉小路式」を取りあげ,日本語独自の文体に即して発達した「テニヲハ」の本質を明らかにする書。京都大学に提出された博士学位請求論文を基にし,京都大学総長裁量経費 若手研究者に係る出版助成事業の助成を受けている。「テニヲハ」とは,助詞・助動詞・接尾語等の品詞類を指す総称であるが,漢文訓読の際に加えられた「乎古止點」に由来するとされる。しかし,後に「テニヲハ」と呼ばれるものは漢文の訓点から離れ,日本語に即して論じられていく。中世から近世にかけて和歌と連歌の学説書において,行われたと考えられる交渉・融合のプロセスについて論じる。プリミエ・コレクション13。

(2012年6月15日発行 京都大学学術出版会刊 A5上製352頁 4,400円+税 ISBN:978-4-87698-210-3)

井上史雄監修・金端伸江著『東京ことば辞典』

金端伸江による卒業論文を基盤とした方言辞典。東京都の下町・山の手生育の話者が使用する語について,見出し語,意味記述,文体・意味分野,用例,出典文献,使用地域について,下町・山の手の生育者を対象にした調査結果,埼玉県・神奈川県の方言辞典における使用状況を示した。これまで,全国各地で多くの方言集・方言辞典が編纂されてきたのに対して,東京はその数が極端に少なかったが,本書はその空白を埋める辞典といえる。また,都区内と多摩地区を総合した辞典としても位置付けられる。東京ことばは,歴史的にみれば西日本や周辺の関東・多摩の各方言を取り込む一方で,全国への影響力も持つ。このことから本書では,東京ことばの特徴を地方の方言との双方向性にあるとしている。

(2012年6月20日発行 明治書院刊 A5判横組み 536頁 5,500円+税 ISBN:978-4-625-60309-9)

影山太郎・沈 力編『日中理論言語学の新展望1〜3』

日中両国の言語研究者の交流の活性化を意図して編集された論文集。『1 統語構造』,『2 意味と構文』,『3 語彙と品詞』の3巻,計26編の論考からなる。日本語・中国語以外の言語も視野に入れた幅広いテーマが扱われており,中国人中国語研究者による論考は日本語に翻訳されて収録されている。日本語と密接に関係する論考には次のものがある(副題省略)。

(第1巻:2011年12月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 240頁 3,200円+税 ISBN:978-4-87424-540-8)

(第2巻:2012年4月12日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 208頁 3,200円+税 ISBN:978-4-87424-549-1)

(第3巻:2012年6月25日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 280頁 3,600円+税 ISBN:978-4-87424-553-8)

斉木美知世・鷲尾龍一著『日本文法の系譜学――国語学史と言語学史の接点』

近代国語学史上の著名な文法学者の文法理論を言語学史との関わりからとらえることで,国語学史と言語学史を統合した「グローバルな言語学史」を構想しつつ書かれた日本語文法研究史の入門書。開拓社言語・文化選書32として刊行された。言語研究に携わる諸分野がいわば言語別の縦割りになっているという現状に鑑み,細分化された分野をまたいだ興味や関心に応えることを目指した。近代国語学史における文典や文法論,文法用語の位置づけや意義を,原典の引用をふんだんに用いて説明する。日本語学を専攻する読者には言語学や言語学史の紹介,外国語学専攻の読者にとっては日本語学研究史を紹介するという側面を持つ。

入門者向けに書かれたコラムとして,以下がある。

(2012年6月26日発行 開拓社刊 四六判横組み 272頁 2,000円+税 ISBN:978-4-7589-2532-7)