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新刊紹介 (『日本語の研究』第9巻2号(通巻253号)掲載分)

2013年4月23日掲載

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

神部宏泰著『生活語の原風景』

本書は,生活語の伝承と,そのことばに生きた人びとの生活と哀歓を描きながら,生活語事実を事実として取り上げ,その組織や体系に意を用いた書である。中備後の神石高原町小野をフィールドとし,その地域性と具体性によりながらも,基層で日本語の史的事実と深く関わるさまが,名詞や動詞,挨拶や敬語,文末詞などの実例とともに示されている。第一章では,ボタモチ,モチ・タンゴ,トビ,ユリー(いろり),ニワ・カド,カシコマル,ミテル,ニガル,オエル,イタシー,ボッコーをとりあげる。第二章では,あいさつことば,自然敬語,敬語命令形,転成文末詞をとりあげる。第三章では,動詞・形容詞・形容動詞をめぐる生活とその推移について,付章では,九州方言における動詞活用の変遷と動詞音便の変遷を論じている。なお,本書は村の生活語を記述した前著『日本語方言の表現法――中備後小野方言の世界――』(2006)につづく姉妹編という位置づけになるという。本書は和泉書院 研究叢書405として刊行された。

(2010年4月25日発行 和泉書院 A5判横組み 307頁  8,000円+税 ISBN:978-4-7576-0552-7

北原保雄著『日本語の形容詞』

形容詞を,「客観の表現」,「主観の表現」,「主観客観の二面的表現」の三種に分け,三者の関係について詳しく考察した書。著者が長期間にわたり書いたり話したりした内容が総合的にまとめて論じられている。次の7章からなる。

(2010年6月20日発行 大修館書店刊 四六判縦組み 266頁 1,800円+税 ISBN:978-4-469-22211-1

近代語学会編『近代語研究第15集』

近代語学会による論集『近代語研究』の第15集である。室町時代周辺から現代に至るまでの日本語について計29編の論文を収める。

(2010年10月20日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み(一部横組み) 532頁 15,000円+税ISBN:978-4-8386-0248-3

国語文字史研究会編『国語文字史の研究12』

国語文字史研究会による論集『国語文字史の研究』の第12集である。文化を創造し,時代・地域を越えて情報を伝える言語において重要な役割を果たす文字の視点からの研究と,文字史研究に関する11編の論考による。

(2011年3月25日発行 和泉書院刊 A5判縦組み 215頁 7,000円+税 ISBN:978-4-7576-0583-1

中西久実子著『現代日本語のとりたて助詞と習得』

ひつじ書房「シリーズ言語学と言語教育」の28冊目。著者の博士論文「現代日本語におけるとりたて助詞の使用実態と日本語学習者の習得」の内容を含む。とりたて助詞の統語的・意味的・語用論的特徴を明らかにした上で,コーパスを用いて日本語学習者によるとりたて助詞の使用実態の調査をおこない,語の位置でとりたて助詞の誤用・不使用の問題が多いという現象を見出し,それが述語の位置のとりたてと述語以外の位置のとりたての違いによるものであることを指摘している。

(2012年1月31日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 308頁 4,800円+税 ISBN:978-4-89476-606-8

高山倫明著『ひつじ研究叢書言語編第97巻 日本語音韻史の研究』

著者のこれまでの日本語音韻史研究の成果を集めた書。清音濁音,四つ仮名,促音,アクセント,プロソディなど,これまでも日本語音韻史の中心的で伝統的に議論されてきたテーマである題材を扱いながら,従来の学説,通説に縛られず,日本語の音韻史を革新することを提案する。

住吉朋彦著『中世日本 漢学の基礎研究 韻類編』

2010年に提出された慶應義塾大学審査学位論文を根幹とする書。国内外の伝本を博捜,書誌学の方法により,中世日本漢学の特質を明らかにする。

中国で成立した韻類書で日本の中世に広く流布した『古今韻会挙要』,『韻府群玉』,『氏族大全』の三書を取り上げ,その現存諸本を網羅的に調査し,版本学的方法を以てその本文系統と諸本の展開とを明らかにし,さらに三書の日本に於ける受容の実態を探って,日本漢学史の中に位置づけたものである。

(2012年2月28日発行 汲古書院刊 A5判縦書き 750頁 16,000円+税 ISBN:978-4-7629-3604-3

鈴木泰著『語形対照 古典日本語の時間表現』

古典日本語の時間表現の形式の対立や競合の状態を,動詞の種類ごとに一目で対照できるようにするために編まれた書。全体は「概説編」と「用例編」に分かれる。

「用例編」では,各形態の用例の相互参照を便利にするために,見開き2ページを4象限に分割し,第1・2・3象限で各形態の用例を対照させ,第4象限で用例を対照した結果についてコメントが記されている。「用例索引」と「個別的意味索引」を付す。

陳志文著『現代日本語の計量文体論』

著者が東北大学に提出した博士論文「現代日本語の計量文体論的研究――情報伝達型の文章を中心に――」をもとにまとめられた書。現代日本語としてかなり代表的なものと考えられている新聞,雑誌(週刊誌)高校の教科書の3文体を,統計的な方法を利用して,それぞれ適切な文体類型に分類した上で,三者の関係について詳しく観察することを試みたものである。計量的な方法による日本語と中国語との対照研究も試みられている。くろしお出版日本語研究叢書26 FRONTIERSERIESとして刊行された。

小林芳規著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究4中期訓讀語體系』

大著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究』の第四冊。

(2012年9月10日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 623頁 18,000円+税 ISBN:978-4-7629-3594-7

長崎靖子著『断定表現の通時的研究 江戸語から東京語へ』

2001年に提出された日本女子大学審査学位論文と,その後10年間の発表論文に加筆修正を施しまとめた書。江戸語から東京語へ至る断定表現体系の変遷をたどる。助詞・助動詞という品詞の枠組を越えて,江戸語資料における終助詞の断定機能に着目する。江戸語が中央語として変化していく過程を象徴的に示す終助詞「さ」と助動詞「です」の通時的変遷を研究の核として,丁寧な断定表現体系の変遷に的を絞った考察が行われる。

(2012年9月14日発行 武蔵野書院刊 A5判縦組み 446頁 12,000円+税 ISBN:978-4-8386-0263-6

尾崎知光著『国語学史の探求』

本書は近代と近世の二部構成になっており,第一部の近代では,主に前著『国語学史の基礎的研究』(昭和五十八年刊)以後の国語学史の論考を取り上げ,第二部の近世では,第一部に先行する近世のものを取り上げている。第一部の近代では,昭和期を代表する二大文法学説として橋本文法と時枝文法について,橋本文法の文節論とそれに関連するノートを取り上げ,時枝文法の言語過程説と敬語論について論じた。第二部の近世では,本居宣長や本居春庭などの著書やそれに関わる研究を取り上げて論じ,第三部の余論では,真福寺本古事記について論じた。本書は新典社 研究叢書231として刊行された。

今野真二著『百年前の日本語 書きことばが揺れた時代』

日本語が,この百年ほどの間にどのように変化してきたのか,明治期の書きことばと現代の書きことばを対照しながら記述する新書。明治期の日本語はこういう状態にあったということを,豊富な実例を以って紹介する。岩波新書新赤版1385として刊行された。

(2012年9月20日発行 岩波書店刊 新書判縦組み 208頁 700円+税 ISBN:978-4-00-431385-4

室山敏昭著『日本人の想像力 方言比喩の世界』

本書は,方言比喩,とりわけ方言メタファーをのぞき窓として,地域生活者の歴史の厚みを背景とする豊かな「想像力」について,基礎論と研究の方向性を提示し,方言メタファーに独自の特性や地域差があることを指摘しつつ,その形成要因を明らかにしようとしたものである。特定の生活領域や社会状況に対する関心が強いほどそれに関する語彙が多くなり,細かく分節化されることを普遍的特性として指摘しつつ,「擬自然化」,「擬人喩」,「見立て」などの実例を挙げながら,方言比喩に関する具体的な分析を通して,地域生活者の感覚的理性が歴史を背景とする生活環境と相関しつつ形成されてきたことを明らかにすべく取り組まれた。筆者が長年取り組んできた方言語彙の世界を方言比喩の観点から描き出すための基本的アプローチが示されている。なお,第一章と第四章は既発表論文の大幅な加筆修正によるもので,他章は書き下ろしである。本書は和泉書院 研究叢書425として刊行された。

(2012年9月25日発行 和泉書院 A5判横組み 405頁 11,000円+税 ISBN:978-4-7576-0631-9

増井典夫著『近世後期語・明治時代語論考』

近世後期語,明治時代語についての著者の研究をまとめた書。第一部では,近代語の形容詞について述べる。第四部では,近世後期上方語から近代関西方言について述べる。第二部及び第三部は近代日本語研究上の基本文献となりうる資料論についての論考が続く。本書は和泉書院 研究叢書426として刊行された。

陣内正敬・田中牧郎・相澤正夫編『外来語研究の新展開』

「言語文化論的なアプローチ」,「言語生活論的なアプローチ」という二つの方向から,「近年急速に成熟し視野を広げた観のある外来語研究の分野を広く展望し,外来語をめぐる新しい日本語研究の姿を提示」することを意図して編まれたもの。

丹羽一彌編著,黒木邦彦・田村建一・品川大輔著『日本語はどのような膠着語か――用言複合体の研究――』

日本語のようなタイプ(アルタイ型)の言語においては,語の「足し算」的構造の組み立て方の原理を明らかにすることが重要であり,記述の枠組みや文法概念も「足し算」的な構造の資料から帰納的に導かれなければならないという考え方に基づき,日本語以外の言語も視野に入れながら,日本語の膠着語構造の特性を把握しようとした論文集。

東北大学方言研究センター著『方言を救う,方言で救う 3.11被災地からの提言』

東日本大震災で自らも被災した東北大学方言研究センターの筆者らが,地域と方言の関係を震災をとおして改めて問い直してきた活動成果をまとめたものである。東日本大震災と原子力発電所の影響で人口が激減している地域で,方言が消滅するということの研究上の意味,消滅しつつある方言を記録するための事前調査,方言によるコミュニケーションのあり方,方言に関わる情報の集約・発信,方言の伝承を取り上げ,東北方言概説のコラムを所収する。東日本大震災以降,研究者による災害復興支援が特に重視されるようになったが,方言研究者がチームを作り,研究対象を通じて被災地支援にあたろうとする一つのモデルをしめしたものといえる。

なお,本書の内容は,2011年度文化庁委託事業「東日本大震災において危機的な状況が危惧される方言の実態に関する予備調査研究」成果報告書のうち第1部「東日本大震災の中の方言」の内容を大幅に改訂し,新たに第5章を加えて構成されている。

(2012年10月31日 ひつじ書房 B6判横組み 240頁 1,600円+税 ISBN:978-4-89476-640-2

石塚晴通編『漢字字體史研究』

漢字について,各時代・各地域(各国)の用例の推移に基く帰納的方法と,字書・字様書による演繹的方法とをつきあわせて,字体規範と異体の歴史を考えることを目的とする研究のもと,漢字字体規範データベース(Hanzi Normative Glyphs database,略称HNG)を用いながら,漢字字体史研究の基礎とすべく編まれたものである。

中国周辺民族が漢字漢文を受容してそれぞれの文化を形成する過程で,漢字の草書化・省画化・増画化あるいは漢字の構成原理を応用して固有文字を生み出されており,漢字の役割は重要である。漢字文献の記述において,漢字字体の歴史的・地域的変遷や諸文献中の字体異動,実用例と字書記述とを相互に検討することにより,字体のもつ資料的意義を体系化し,対象文献の時代比定や作成背景を探る。なお,本書は2011年12月16-18日に開催された国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」の成果を基本とし,字体規範と異体の歴史を考える上で有用な既発表論文を採り込み,五部構成,計22本の論文で構成されたものである。

(2012年11月2日発行 勉誠出版 A5判縦組み 416頁 8,000円+税 ISBN:978-4-585-28008-8