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新刊紹介 (『日本語の研究』第9巻3号(通巻254号)掲載分)

2013年7月24日掲載

「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)

山内洋一郎著『ことばの歴史――語史研究――』

本書は,ことば(単語)の一つ一つの発生・変化・進展・消滅をとらえつつ,ことばの歴史を主題,ことば一つ一つの記事を副題とし,下記の四章にまとめたものである。各時代における言語の中から,それぞれの基本要素としての語(単語)をとり上げ,そのあり方を明らかにしようとする。第一章では,たまゆら/番にをりて/こうずなど,第二章では,はいる/そぼつ/たくさん/くる/はなすなど,第三章では,恋風ならばしなやかに/こまり申候/何せうぞ,くすんで/きさまにて遊ばし候などについて論じる。

(2012年10月29日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 336頁 6,400円+税 ISBN:978-4-7924-1422-1

今野真二著『ボール表紙本と明治の日本語』

和装本から洋装本にきりかわっていく時期の過渡的な本のかたちであるボール表紙本をとおして,明治の日本語を観察する書である。ボール表紙本は,内容は実録小説,人情小説,伝記,翻訳本,「刑法」といった法令書まで多彩なジャンルにわたっている。そのボール表紙本の日本語のありかたはきわめて多様的であり,明治初期の言語資料としての価値は極めて高い。巻末に詳細な「ボール表紙本書誌データ」を収録する。

(2012年10月29日発行 港の人刊 280頁 四六判縦組み 3,000円+税 ISBN:978-4-89629-258-9

川村大著『ラル形述語文の研究』

東京大学大学院人文社会系研究科に提出された学位請求論文(2011年)「古代語ラル形述語文の研究」に第六章を増補し,全体に修正,改稿を施したものである。

受身・自発・可能・尊敬という多様な意味を持つとされる「動詞+レル・ラレル形」について,古代語「動詞ラル形」を主たる対象とし,学史の見直し・精緻な記述を経て多義の構造の本質に迫る。

次の三点を課題として議論を展開する。1.意味面に注目した受身文研究史の全面的見直しと,それに基づいた受身文の本質把握。2.動詞ラル形の諸用法の整理・確認と,各用法の意味・構文面にわたる精密な記述。3.動詞ラル形述語文の多義の構造の統一的把握。

(2012年11月1日発行 くろしお出版刊 A5判縦組み 448頁 5,400円+税 ISBN:978-4-87424-572-9

三原健一・仁田義雄編,益岡隆志ほか著『活用論の前線』

日本語学および理論言語学の視点に基づき書かれた論文集である。2011年大阪大学で開催された日本言語学会大会のシンポジウム「活用論の前線」に基づいている。「新たしいパラダイムで活用論を考える」ことを目的とし,各執筆者が各々の方法論で論を展開しているため,活用論には多様な方法があり得ることを実感できる。日本語の活用論が活性化することを意図して編まれた論文集である。仁田義雄氏の退官記念論文集としての意味合いも兼ねる。

(2012年11月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 230頁 3,400円+税 ISBN:978-4-87424-571-2

藁谷隆純著『敬語の研究 源氏物語・宇治拾遺物語・日蓮遺文を中心に』

中古・中世の資料を中心に,日本語の敬語の実態をあきらかにしようと試みた書である。場面・人間・心理等の文学的研究の側面からの記述も含めつつ,原典・原文に即した分析・比較・考察という実証的研究によっている。

書名にある『源氏物語』『宇治拾遺物語』「日蓮遺文」を対象とした研究のほか,第四編には近代語を資料とした章も含み,通時的な敬語研究としての側面も持つ。

(2012年11月18日発行 おうふう刊A5判縦組み 392頁 15,000円+税 ISBN:978-4-273-03702-4

村木新次郎著『ひつじ研究叢書 言語編第101巻 日本語の品詞体系とその周辺』

伝統的な学校文法や標準化しつつある日本語教育文法を是としない立場から,日本語のあるべき単語認定と品詞体系について提言した書。従来の文法が形式中心で,syntagmaticな側面に傾斜していたことを指摘し,意味・機能を重視し,paradigmaticな側面をとりこむ必要性を説く。形容詞をひろくとらえること,日本語の品詞として,後置詞,従属接続詞をみとめるべきであることなどを主張する。日本語の感動詞や節の類型にも言いおよぶ。

本書は,ひつじ研究叢書 言語編第101巻として刊行された。

  • 第2部 形容詞をめぐる諸問題
  • 第3部 従属接続詞をめぐる諸問題
  • 第4部 感動詞の問題
  • 第5部 単語とコロケーションをめぐる諸問題
  • 第6部 日本語文法の展望
  • (2012年11月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 496頁 5,600円+税 ISBN:978-4-89476-602-0

    茅島篤編著,岩瀬順一ほか著『日本語表記の新地平 漢字の未来・ローマ字の可能性』

    ローマ字上陸以降の歴史をひもとき,日本語表記の目指すべき姿を考える書。世界で最も多様かつ複雑な日本語の文字表記は,グローバル化と高度情報化を迎えた現代においてどのようにあるべきか。国際語としての日本語という観点から,ローマ字による日本語表記の可能性を探る。

    (2012年11月27日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 330頁 3,800円+税 ISBN:978-4-87424-569-9

    澤田治美編『ひつじ意味論講座6 意味とコンテクスト』

    全7巻からなる『ひつじ意味論講座』の第6巻。発話や話し手・聞き手を取り巻く場面的な脈絡・背景であるコンテクストをテーマとした論文集である。言語にとって,特に日本語にとって,コンテクストが重要な役割を果たしていることを,言語学,言語哲学,論理学,心理学という多様な分野からのアプローチによって明らかにする。

    (2012年11月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み240頁 3,200円+税 ISBN:978-4-89476-506-1

    柏原司郎編著『近世の国語辞書 節用集の付録』

    節用集の付録に着目し,その辞書の社会とのかかわりを考察する書。整版本として出版された近世の節用集は,商品としての付加価値を高めるために付録が利用された。近世の封建社会に生きた人々の要請が反映された付録を調査することにより,辞書利用者を推定し,言語生活を知る手掛かりとなるという立場からの研究である。

    (2012年12月10日発行 おうふう刊 B5判縦組み976頁 40,000円+税 ISBN:978-4-273-03684-3

    古田東朔著,鈴木泰・清水康行・山東功・古田啓編 古田東朔近現代日本語生成史コレクション 第1巻 江戸から東京へ 国語史1

    日本語史・日本語学史・国語教育に大きな影響を与え続けてきた,古田東朔の著作集全6巻の第4回配本。本巻では,近世(上方・江戸)語に関する論文と,幕末・明治以降の近代日本語の論考のうち,語彙・談話・文体に関する論文を中心に収録している。

    (2012年12月10日発行 くろしお出版刊A5判縦組み 432頁 8,500円+税 ISBN:978-4-87424-573-6

    札埜和男著『研究叢書427 法廷における方言――「臨床ことぱ学」の立場から――』

    本書は,大阪大学大学院文学研究科へ提出された博士学位論文(2008年)を加筆修正したものである。大阪(関西)方言を研究してきた筆者による,法廷における方言をテーマにした研究である。裁判の傍聴と放送関係者へのインタビューによって得られたデータから,大阪(関西)方言が法廷で果たす機能を心的接触機能・リズム変換機能・カムフラージュ機能・引用機能の4つに整理し,韓国やアメリカの海外事情を交えながら,方言の記録をめぐる問題,法廷で方言を使用する権利の問題,法廷での方言の持つ権力性・権威性や差別・排除の問題について論じる。ことばのフィルターを通して,研究の対象とする人々とことばの関係性やその社会の持つ問題を臨床ことば学の立場から明らかにしようとした。

    本書は和泉書院研究叢書427として発刊された。

    (2012年12月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 280頁 5,000円+税 ISBN:978-4-7576-0636-4

    飛田良文編『国立国語研究所「日本大語誌」構想の記録』

    かつて国立国語研究所が十年以上にわたって推進した,日本語用例辞典『日本大語誌』編纂の構想,その論考・目録・年報などの内部資料を公開する書。

    林大「国語辞典覚書」,見坊豪紀「用例辞典編集作業のために」などの論考,用例採集のための「主要文学作品目録」「主要雑誌目録」「ベストセラー目録」を初公開する。また,飛田良文「日本語辞書学の課題」をはじめ,中村幸彦「近世語と現代」,築島裕「理想の国語辞書」など日本語辞典に関する論考を収める。

    別冊(A5判)には,当時の研究者が辞典編集準備室の雰囲気を伝える。

    (2012年12月25日発行 港の人刊 B5判縦組み 1016頁 32,000円+税 ISBN:978-4-89629-257-2

    高山善行・青木博史・福田嘉一郎編『日本語文法史研究1』

    日本語文法の歴史的研究は日本語研究のなかで重要な位置を占めており,その成果は世界的に注目されている。本書は文法史研究の最新の成果を国内・国外に発信する論文集である。文法史の分野で初となる継続刊行の論文集であり,本書は創刊号となる(隔年刊行の予定)。今回は,語構成,構文,モダリティ等の論考10本を収める。巻末付録として,「テーマ解説」「文法史の名著」「文法史関係文献目録」が付されている。

    (2012年12月28日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 276頁 4,000円+税 ISBN:978-4-89476-638-9

    迫野虔徳著『方言史と日本語史』

    本書は迫野虔徳(2011年12月29日逝去)の遺稿集にあたり,新村出賞を受賞した前著『文献方言史研究』(清文堂出版,1998年)に含まれなかった27編の論文を収録する。当初,改訂した既発表論文と書き下ろしの原稿によって刊行する予定だったが,故人の遺志を尊重しつつ,青木博史氏による編集を得て発行された。第一章は東国語を反映した文献を用いて考察された論考,第二章は九州・琉球方言が反映した文献資料の考察と,資料に現れる方言次章の考察,第三章は中央語史をメインに据えた語法研究,第四章は特殊音節の表記について論じたもの,第五章は仮名遣いに関するものがおさめられている。

    (2012年12月29日発行 清文堂出版 A5判縦組み 488頁 10,000円+税 ISBN:978-4-7924-1424-5

    今野真二著『日本語学講座 第6巻 明治期の辞書』

    単独著者による全10巻予定の講座の第6巻「明治期の辞書」。明治期は,和語・漢語・外来語が多様なかたちで結びつき,日本語の語彙体系を形成していた。漢語辞書,英和・和英辞書,国語辞書など,さまざまな辞書体資料に分析し,明治期の日本語のありかたを描く。

    (2013年1月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 440頁 3,500円+税 ISBN:978-4-7924-0980-7

    鶴橋俊宏著『近世語推量表現の研究』

    推量表現の実態を通時的に考察し,ダロウを中心とした,常体における江戸語の推量表現の全体像を明らかにする書。

    ダロウの語誌を中心とした江戸語から東京語への変化を視野に入れた推量表現の通時的・記述的研究である第一部,推量表現の周辺についての研究,また,江戸語資料と言われる資料の「江戸語らしさ」についての考察からなる第二部,江戸語に生じた推量辞の変化が個別的な現象なのかを知るために,駿河国を中心とした近世の方言における推量辞の実態報告となる第三部からなる。

    (2013年1月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 400頁 11,600円+税 ISBN:978-4-7924-0977-7

    岡 智之著『ひつじ研究叢書言語編 第103巻 場所の言語学』

    主体や主語,個物(モノ)を中心にして考える従来の言語学に対し,場所や述語(コト)を重視した言語学の構築を主張した書。第1部理論編では,西田幾多郎の提起した場所の哲学を基礎として,主語論,日本語の論理をめぐる論争に対する見解を述べる。また,認知言語学を場所論の観点から位置づけ,発展させる方 途を模索する。第2部は事例研究として,場所論に基づく「ハ」と「ガ」の規定,格助詞「ニ」「ヲ」「デ」のスキーマとネットワークの提示などを行う。

    本書は,ひつじ研究叢書言語編 第103巻として刊行された。

    (2013年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 320頁 6,200円+税 ISBN:978-4-89476-626-6