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新刊紹介 (『日本語の研究』第3巻2号(通巻229号)掲載分)
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 鈴木一著 『松下文法論の新研究』
- 全国大学国語国文学会編 『日本語日本文学の新たな視座』
- 加藤重広・吉田浩美編 『言語研究の射程―湯川恭敏先生記念論集―』
- 前田富祺・野村雅昭編 『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』
- 安田敏朗著 『統合原理としての国語―近代日本言語史再考3―』
- 文化庁文化部国語課編 『平成17年度 国語に関する世論調査 日本人の敬語意識』
- 城生佰太郎博士還暦記念論文集編集委員会編 『実験音声学と一般言語学―城生佰太郎博士還暦記念論文集―』
- 鈴木良次編 『言語科学の百科事典』
- 井出祥子・平賀正子編 『講座社会言語科学1 異文化とコミュニケーション』
- 橋元良明編 『講座社会言語科学2 メディア』
- 片桐恭弘・片岡邦好編 『講座社会言語科学5 社会・行動システム』
- 伝康晴・田中ゆかり編 『講座社会言語科学6 方法』
鈴木一著 『松下文法論の新研究』
本書は,松下大三郎の文法論に関する諸著述を比較検討し,それらの資料をもとに松下文法がどのように変化したか,その特質は何か,という問題に迫ったものである。従来の松下文法に関する論は『改撰標準日本文法』の解析に重点があったが,本書により動的・立体的な松下文法像を得られることとなった。第1章「構文研究史上の松下大三郎」では,松下文法の構文観と特質について述べる。第2章「松下大三郎の構文論の研究」では,『標準日本文法』と『改撰標準日本文法』を比較し,その異同を探ることにより,松下文法論の基軸と振幅を明らかにする。また,『標準漢文法』と『改撰標準日本文法』昭和5年訂正版のための入稿用原本を用いて,松下の思考の軌跡を探り,初期の文論や文の解剖論にも論及する。第3章「文の成分としての形式語の研究」は,松下文法の着想を生かそうとする試みである。第4章「松下文法の用語研究」は,基本用語180項目について解説を施したものである。なお,本書は博士論文に加筆をしたものである。
内容は以下のようになっている。
- 第1章 構文研究史上の松下大三郎―「詞・連詞」論の創造と,「形式性品詞」論の体系化―
- 第2章 松下大三郎の構文論の研究
- 第1節 松下文法論の形成と展開―『標準日本文法』から『改撰標準日本文法』へ―
- 第2節 『標準漢文法』の国語学的考察―松下日本文法論をいちだんと飛躍させたもの―
- 第3節 『改撰標準日本文法』最終訂正版(昭和五年訂正版)の研究―松下文法論の到達点を記録する,ひとつの資料―
- 第4節 松下文法「格」の論,「詞の相関論」の本質を求めて―『改撰標準日本文法』最終訂正版の研究・続稿―
- 第5節 初期の文論,「章句論」「句法論」について―『中學教程日本文典』『日本俗語文典』『漢譯日本口語文典』―
- 第6節 文の解剖の系譜と松下大三郎の「文章の解剖」―物集高見・落合直文・大槻文彦・岡倉由三郎から松下まで―
- 第3章 文の成分としての形式語の研究
- 第1節 形式性品詞論を体系化した松下文法
- 第2節 文の構成に関わる形式動詞の機能―文末慣用表現の様相を中心に―
- 第3節 形式語は文の叙述にどう関わるか―基本文型と形式語のはたらきについて―
- 第4章 松下文法の用語研究
(2006年6月1日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 384ページ 13,000円+税 ISBN 4-585-03141-3)
全国大学国語国文学会編 『日本語日本文学の新たな視座』
全国大学国語国文学会の50周年を記念して出版された論文集である。この50年における各分野の研究を総括し,今後に生かすことを目的としている。上代7編,中古15編,中世7編,近世10編,近代10編,国語学10編の論文を収録している。国語学は,「国語史研究のこれまでとこれから」(柳田征司),「「近代語」とは何か」(小林賢次),「文献資料と口語性」(辛島美絵),「漢字文から見える世界」(橋村勝明),「いま近世・近代語研究で何が問題か―近世〜明治期江戸語・東京語研究を中心に―」(神戸和昭),「文法論と意味論―その相関性―」(岩下裕一),「文字・表記研究の資料と方法と」(今野真二),「古辞書研究のパラダイム」(鈴木功眞),「「国語学史」再考―概説的記述と専門的記述をめぐって―」(矢田勉),「方言の現在と方言研究の今後」(齋藤孝滋)の各論である。
収録された論文は以下のとおりである。
- 日本文学の想像力(中西進)
- 上代
- 前期万葉―人麻呂とその周辺―(菊地義裕)
- 古事記研究,回顧と展望(西條勉)
- 日本書紀研究の展望(青木周平)
- 古風土記研究五十年の回顧と展望(橋本雅之)
- 上代歌謡研究の展望(藤原享和)
- 上代漢文研究の広がり―東アジアにおける日本漢文学の展開―(藏中しのぶ)
- 万葉民俗学と万葉文化論の将来(上野誠)
- 中古
- 八代集 新古今集を除く(小町谷照彦)
- 私家集(後藤祥子)
- 平安朝漢詩文(金原理)
- 歌物語(伊勢・大和・平中)(妹尾好信)
- 前期物語(室城秀之)
- 源氏物語研究の回顧と展望(小嶋菜温子)
- 後期物語(後藤康文)
- 日記文学研究通観―この五十年から今後へ―(秋澤亙)
- 歴史物語(栄花物語・大鏡)(加藤静子)
- 電脳国文学の黎明(伊井春樹)
- 異文化体験と平安朝文学―季節感と男女の関係を中心に―(井上英明)
- 後宮女房と平安文学―日記・随筆を中心に―(宮崎莊平)
- 〈折口学〉と平安文学(長谷川政春)
- 平安文学研究における作家伝の意義(津本信博)
- 平安文学における史実と虚構(仁平道明)
- 中世
- 歌謡・連歌(真鍋昌弘)
- 中世物語(石川透)
- 軍記(前期)(鈴木彰)
- 軍記(後期)(小秋元段)
- 芸能(田口和夫)
- 仏教文学(三角洋一)
- 随筆・日記―回顧と展望―(齋藤彰)
- 近世
- 俳諧―芭蕉研究を中心に―(堀切実)
- 川柳・狂歌(石川了)
- 和歌・漢詩(鈴木健一)
- 西鶴(篠原進)
- 仮名草子・浮世草子(杉本好伸)
- 読本回顧と展望(内田保廣)
- 草双紙・合巻(佐藤至子)
- 歌謡(音曲)(鹿倉秀典)
- 演劇―近松研究の軌跡―(阪口弘之)
- 演劇と草双紙の交流(高橋則子)
- 近代
- メディアとイデオロギーの問題(西田谷洋)
- 戦後〓外研究史の余白に―〈回顧と展望〉に代えて―(大石直記)
- 樋口一葉―テクスト研究がめざすもの―(戸松泉)
- 漱石研究の現在(佐藤裕子)
- 大正・昭和の文学場(山口直孝)
- 国際化の中の近代文学研究(原善)
- フェミニズム批評・ジェンダー批評(岩淵宏子)
- 現代作家研究の開拓(二瓶浩明)
- 〈詩〉を論じるために(勝原晴希)
- 文学研究と教育の接点―研究と教育の架橋のために―(馬場重行)
- 国語学
- 国語史研究のこれまでとこれから(柳田征司)
- 「近代語」とは何か(小林賢次)
- 文献資料と口語性(辛島美絵)
- 漢字文から見える世界(橋村勝明)
- いま近世・近代語研究で何が問題か―近世〜明治期江戸語・東京語研究を中心に―(神戸和昭)
- 文法論と意味論―その相関性―(岩下裕一)
- 文字・表記研究の資料と方法と(今野真二)
- 古辞書研究のパラダイム(鈴木功眞)
- 「国語学史」再考―概説的記述と専門的記述をめぐって―(矢田勉)
- 方言の現在と方言研究の今後(齋藤孝滋)
(2006年6月3日発行 おうふう刊 A5判縦組み 582ページ 6,800円+税 ISBN 4-273-03437-9)
- ※〓は「鴎」の康煕字典体。偏が「區」の字体(Unicodeの9DD7)。
加藤重広・吉田浩美編 『言語研究の射程―湯川恭敏先生記念論集―』
湯川恭敏氏の熊本大学定年退職を記念した論文集である。日本語に関する論文は2編ある。一つは「N1が N2が 自動詞」という構文を検討し,N1の性質について述べる永井忠孝論文,もう一つは,日本語の数量詞に関して従来の自説をさらに進め,連体数量詞文(例えば「6本の鉛筆を買った。」)と連用数量詞文(「鉛筆を6本買った。」とは,一方から他方を派生するという関係ではないこと,そして,両者に類似性を感じるのは語用論的な要因があることを述べる加藤重広論文である。そのほかに,中国語に関して,「被」を扱う太田栄次論文,「是……的」構文を扱う許慧論文の2編があり,さらにモンゴル語(梅谷博之),ビルマ語(加藤昌彦),バリ語(塩原朝子),タラウド語(内海敦子),ウォライタ語(若狭基道),マテンゴ語(米田信子),ケレウェ語(小森淳子),バスク語(吉田浩美)に関する論文がそれぞれ1編収録されている。
収録された論文は以下のとおりである。
- 日本語における自動詞で表される二項文(永井忠孝)
- 日本語の数量詞文と動作量解釈(加藤重広)
- 中国語の被害の意味をあらわさない“被”字句(太田栄次)
- 2つの文を結びつける“是……的”(許慧)
- モンゴル語における受身接辞と使役接辞の連続(梅谷博之)
- 現代ビルマ語の借用語に見られる低い促音節(加藤昌彦)
- バリ語の接頭辞ma-―「終結点を持たない状況」を標示する接辞―(塩原朝子)
- タラウド語の音声・音韻と語彙における世代差(内海敦子)
- ウォライタ語の形式体言-gaa(若狭基道)
- マテンゴ語の「補完語」と情報構造(米田信子)
- ケレウェ語の使役形動詞(小森淳子)
- スペイン・バスク自治州アスペイティアとアスコイティアの高校生のバスク語をめぐる状況(吉田浩美)
(2006年6月10日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 274ページ 8,800円+税 ISBN 4-89476-298-6)
前田富祺・野村雅昭編 『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』
本書は,朝倉漢字講座の第2巻であり,漢字の機能面に重点を置いた内容を扱っている。全体は10章にわかれている。第1章「表語文字としての漢字」(田島優)では,表語文字としての漢字の機能を明らかにするために,表記の諸側面を検討する。第2章「漢字の音」(湯澤質幸)では,漢字の1字複数音現象の成立を追う。第3章「漢字と表記」(佐竹秀雄)では,正書法と漢字の関わり,語・文・文章の表記における漢字の働きを見ていく。第4章「意味と漢字」(乾善彦)では,漢字の表語構造を考え,その上で字義と和訓の対応,字義の変化などを扱う。第5章「漢字の造語機能」(小林英樹)では,漢語を構成する言語単位の造語機能を扱う。第6章「字体・書体」(笹原宏之)では,字体・書体の概念とそれらに対する意識について述べる。第7章「漢字の認識と発達」(齋藤洋典)では,認知の観点から読みの処理過程の特徴を考える。第8章「漢字の使用量」(横山詔一)では,新聞などを対象とした調査の結果を紹介する。第9章「漢字の位置」(野村雅昭),第10章「漢字文化論」(前田富祺)では,この講座の編者が自らの立場から漢字の文化的位置づけを行う。なお,本書でシリーズ全5巻が完結した。
内容は以下のようになっている。
- 第1章 表語文字としての漢字(田島優)
- 第2章 漢字の音―一字複数音を中心として―(湯澤質幸)
- 第3章 漢字と表記(佐竹秀雄)
- 第4章 意味と漢字(乾善彦)
- 第5章 漢字の造語機能(小林英樹)
- 第6章 字体・書体(笹原宏之)
- 第7章 漢字の認識と発達(齋藤洋典)
- 第8章 漢字の使用量(横山詔一)
- 第9章 漢字の位置(野村雅昭)
- 第10章 漢字文化論(前田富祺)
(2006年6月20日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 244ページ 3,800円+税 ISBN 4-254-51532-4)
安田敏朗著 『統合原理としての国語―近代日本言語史再考3―』
『近代日本言語史再考―帝国化する「日本語」と「言語問題」―』(2000年),『脱「日本語」への視座―近代日本言語史再考2―』(2003年)に続く第3論文集である。「序論 統合原理としての「国語」への回帰」では,文化審議会答申の『これからの時代に求められる国語力について』の批判的分析を行う。第1部「近代化・帝国化する言語─国語・日本語の機能─」では,言語の近代化・帝国化に伴う暴力的側面の問題を扱い,言語と文化の一体化について検討をする。第2部「脱帝国化する言語─国語・日本語が刻印したもの─」では,支配システムとしての日本語を「配電システム」という比喩で語り,それが植民地社会に何を残したのかを考える。第3部「「配電システム」というくびき」では,琉球の言葉を言語と見るか方言と見るかという問題について,服部四郎の論を中心に検討していく。「結論─近代日本言語史の構図─」では,過去10年における自身の研究の論点をまとめている。
内容は以下のようになっている。
- 序論 統合原理としての「国語」への回帰
- 第1部 近代化・帝国化する言語─国語・日本語の機能─
- 第1章 言語的暴力をおおいかくすもの
- 第2章 言語の帝国化
- 第3章 一体化する言語と文化
- 第2部 脱帝国化する言語─国語・日本語が刻印したもの─
- 第4章 「配電システム」移植の前提
- 第5章 「日本語」という「配電システム」
- 第3部 「配電システム」というくびき
- 第6章 「琉球語」の不在─服部四郎を軸にして─
- 結論─近代日本言語史の構図─
(2006年6月20日発行 三元社刊 B6判縦組み 376ページ 2,700円+税 ISBN 4-88303-178-0)
文化庁文化部国語課編 『平成17年度 国語に関する世論調査 日本人の敬語意識』
毎年行われている「国語に関する意識調査」の報告書である。今回の調査は2006年2月から3月にかけ全国16歳以上の男女個人3000人を対象として面接聴取法により行われた。調査内容は,敬語に関するものと,慣用句などを含む言葉遣いについてである。敬語については,敬語意識を問う質問,具体的な状況を設定してそのときにどう言うかを尋ねる質問などがある。また,宛名の書き方,複雑な状況で誰にどのように敬語を使うかなどのほか,自分や相手の呼び方などについても調べている。慣用句などについては,「(あいそ/あいきょう)を振りまく」「怒り心頭に(達する/発する)」などの言い方のどちらを選ぶか,「あとで後悔した」などの例を示して気になるか否かを答える質問などがある。
(2006年7月18日発行 国立印刷局刊 A4判横組み 98ページ 1,200円+税 ISBN 4-17-196060-6)
城生佰太郎博士還暦記念論文集編集委員会編 『実験音声学と一般言語学―城生佰太郎博士還暦記念論文集―』
城生佰太郎氏の還暦を記念した論文集である。第1部「音声研究」と第2部「言語研究」にわけられている。第1部は,第1章「実験音声学」,第2章「音声学・音韻論」,第3章「関連領域」,第2部は,第4章「一般言語学」,第5章「個別言語学」,第6章「応用言語学・関連領域」からなり,合計53編の多彩な論文を収録している。日本語を扱ったものを中心に紹介すると,新潟の一方言のオ段長音開合現象を扱う大橋勝男ほかの論文,日本語アクセントを担う音節について述べる三浦弘論文,FMやCDなどの頭文字語を読む際のアクセントを論ずる上野善道論文,日英語の基礎色彩語彙を分析する皆島博論文,動詞の形態論についての佐々木冠論文,古代日本語のテンスとアスペクトを図示しようとする今泉喜一論文,版本狂言記研究の構想について述べる大倉浩論文,GoogleやWWWコーパスによる研究手法について述べる荻野綱男論文,「第三者調査」導入を論じる宮崎里司論文,漢字文化圏出身学習者に対する「漢語知識を利用した日本語教育」について述べる三松国宏論文などがある。
収録された論文は以下のとおりである。
- 第1部 音声研究
- 第1章 実験音声学
- 実験音声学の研究方法(城生佰太郎)
- 新潟県中魚沼郡津南町大字結東前倉方言のオ段長音開合現象―1老年男性の音響的実相―(大橋勝男・大橋純一・河内秀樹)
- 日本語におけるアクセントの担い手としての音節(三浦弘)
- 音響音声学によるモンゴル語弱母音の一考察―オラダ方言における解析―(レン=トヤー)
- 母音調和の音響音声学的類型―トルコ語・モンゴル語を起点として―(福盛貴弘)
- 朝鮮語ソウル方言のアクセント句におけるインテンシティーの特徴(宇都木昭)
- ポーズ論の新展開―節(ふし)と大ポーズ・小ポーズ―(高村めぐみ)
- 事象関連電位を用いた韓国語と日本語のアクセント(高慧禎)
- 第2章 音声学・音韻論
- 中間言語学と辞典における英語の定義(島岡丘)
- 幼児音は方言音とどのような関わりがあるのか(伊藤克敏)
- 在日コリア語のアクセント―韓国大邱方言および東京方言との対比―(羅聖淑)
- アルファベット頭文字語のアクセント(上野善道)
- Mangghuer(土族語民和方言)の音節変化は漢語の影響と言えるか―東郷語との比較の観点から―(角道正佳)
- 英語の嵌入閉鎖音について(三上司)
- 鏡像関係をなすアクセントシステム―古典ギリシャ語とラテン語―(田端敏幸)
- 自然発話に生じた音位転倒の心理言語学的分析(寺尾康)
- 破擦音化と母音体系(高山知明)
- プロソディーとしての英語のschwa(島田武)
- 第3章 関連領域
- 兼常清佐の「音韻音声学」小考(蒲生美津子)
- 子ども向け英語学習プロジェクトの現場から―日本語環境に育つ子どもに適した英語教材とは?―(和田のり子)
- 英語プロソディー習得法としてのシャドウイング―大学生の音声の分析を通して―(岡田あずさ)
- 日本人EFL学習者の英語子音知覚―単音節語における難易度の調査―(菅井康祐)
- 認知を視野に入れた日本語近似音に関する研究(小笠原雅子)
- 事象関連電位(ERP)を用いた実験音声学的研究―筑波大学実験音声学研究室における研究の歴史―(山崎修一)
- 第1章 実験音声学
- 第2部 言語研究
- 第4章 一般言語学
- 詩における垂直的文法(Vertical Grammar)(津村俊夫)
- 共時的変異と通時的変化―助動詞選択における《領域拡張》の場合―(鷲尾龍一)
- 現生人類単一起源説と言語単一起源説(山本秀樹)
- 文献言語学序説(池田潤)
- 日英語の基礎色彩語彙―「クロ」と“black”の語彙分析―(皆島博)
- Non-surface-apparent Opacity in Standard Japanese Verb Morphology(Kan SASAKI)
- 第5章 個別言語学
- 古代日本語のテンスとアスペクト―図示の可能性を探る―(今泉喜一)
- 版本狂言記研究の構想(大倉浩)
- 『元朝秘史』における疑問助詞についての一考察(栗林均)
- ライデン大学蔵Or.517写本のモンゴル語部分について(斎藤純男)
- モンゴル語3人称所有後接語の複数の機能について(橋本邦彦)
- 近代漢語における女性を指す人称代名詞「奴」について(増野仁,孟子敏)
- フランス語副詞si, tant, tellementについて(青井明)
- フランス語のオノマトペについて(青木三郎)
- Prefixed Verbs and Simple Verbs in AB Language(Harumi TANABE)
- Vladimir Ilich dorabotalsia do bessonnicy―ロシア語のdo-V-sia動詞についての記述的考察―(三谷惠子)
- ロシア語における名辞述語の形式と機能に関する試論(臼山利信)
- アバール語の不定詞従属節のいくつかの用法について(山田久就)
- バスケト語の態(ヴォイス)について(乾秀行)
- アザティワダ碑文のフェニキア語部分における非過去を表す不定詞絶対形再考(竹内茂夫)
- エジプト聖刻文字の表記要素の分類案(永井正勝)
- 「聖書ヘブライ語」動詞の再建(高橋洋成)
- 第6章 応用言語学・関連領域
- 検索エンジンGoogleの使い方とWWWコーパスによる日本語研究(荻野綱男)
- 外国人年少者日本語教育の基礎としての言語政策分析研究―スウェーデン言語政策の言語生態学・動態分析―(岡崎敏雄)
- 方法論としての「第三者調査」―言語研究への応用―(宮崎里司)
- Time Allocated to the Four Skills in Teaching English in South Korea(June-ko MATSUI)
- 漢字文化圏出身学習者に対する漢字と漢語知識を利用した効率的な日本語教育に向けて(三松国宏)
- モンゴル語仏典翻訳の規範―『merged Garqu-yin orun(mGo)』序章に見る翻訳論―(金岡秀郎)
- 欧米文化研究におけるハンガリー語の意義―語順を中心に―(秋山学)
- 会話シーンの映像文法―効果的な撮影・編集の試案―(今泉容子)
- 第4章 一般言語学
(2006年7月25日発行 東京堂出版刊 A5判横組み 608ページ 18,000円+税 ISBN 4-490-20579-1)
鈴木良次編 『言語科学の百科事典』
「言語はもはやある一つの学問分野だけが独占するものではなく,全学問分野が関与する,そして関与しなければならない複合的な領域である」(「まえがき」より引用)という考えをもとに作られた事典である。すなわち,言語研究は学際的な領域であるがゆえに,各分野の基本的な概念を簡潔に解説したものが求められており,それに応じるものを作ったということである。本事典は8編にわかれ,「1.人文科学編」は言語学など,「2.教育学編」は言語習得など,「3.日本語学編」は日本語学,「4.社会科学編」は社会言語学,「5.生物学編」は進化や遺伝子など,「6.医学編」は脳や視聴覚など,「7.工学編」は自然言語処理やロボットなど,「8.人間学編」は文学・音楽・哲学・論理などの項目を解説している。全体を通して,見開き2ページで一つの項目の説明を記述する体裁となっている。
(2006年7月31日発行 丸善刊 A5判横組み 874ページ 23,000円+税 ISBN 4-621-07733-3)
井出祥子・平賀正子編 『講座社会言語科学1 異文化とコミュニケーション』
橋元良明編 『講座社会言語科学2 メディア』
片桐恭弘・片岡邦好編 『講座社会言語科学5 社会・行動システム』
伝康晴・田中ゆかり編 『講座社会言語科学6 方法』
1998年に創設された社会言語科学会が,研究成果の公開や参加の呼びかけを企図して刊行した全6巻の講座のうちの4巻である。各巻において先行研究,最新の成果,今後の課題が盛り込まれている。第1巻は,「繋ぐ」「分かる」「感じる」の3部構成で,異文化の認識と理解について論じる14編を収録している。第2巻は,「言語変容」「表現様式」「対人関係」「メディア環境の未来」にわかれ,メディアの技術を支える基礎論やメディアが我々に与える影響などを論じる13編を収録している。第5巻は,「ことばとイデオロギー」「ことばと権力」「ことばと公共福祉」「ことばと進化」「ことばとインタラクション」「ことばと活動空間」にわかれ,社会学的,心理学的,生物学的アプローチなどの論文14編を収めている。第6巻は,「インタビュー」「サーベイ調査」「実験」「談話データの収録」「談話データの分析」にわかれ,方法論について述べる14編からなる。
収録された論文は以下のとおりである。
- 【第1巻】
- 第1部 繋ぐ
- 異文化コミュニケーション学―共生世界の礎を求めて―(井出祥子)
- 通訳における異文化コミュニケーション学(鳥飼玖美子)
- ビジネスにおける異文化間コミュニケーション―日本語での会議は非効率か―(近藤彩)
- 日英語バイリンガルの子供たちの言語習得(岩田祐子)
- ジェンダーシステム―ジェンダーイデオロギーの言語化プロセス―(林礼子)
- ロボットとヒトは理解しあえるか―心に共感する心のメカニズムの探求―(小嶋秀樹)
- 第2部 分かる
- 空間認知とコミュニケーション(井上京子)
- ジェスチャーにおける認知と文化―ガーナのタブー・ジェスチャーをめぐって―(喜多壮太郎・ジェームス=エセグベイ)
- *骨をこわす vs. break the bone―認知カテゴリーと文法項目のタイポロジー―(藤井洋子)
- 親族名称と呼称から見る人間関係―日本語と中国語の比較―(薛鳴)
- 第3部 感じる
- スモールトークとあいさつ―会話の潤滑油を越えて―(井出里咲子)
- 何を「心地よい」と感じるか―会話のスタイルと異文化間コミュニケーション―(重光由加)
- 何をうそと感じるか―日本語と英語の場合―(西村史子)
- ニューヨーク・タイムズ紙に見る日本―間接指標性の証拠としてのテキスト間連鎖―(ジェーン H ヒル)
- 第1部 繋ぐ
- 【第2巻】
- 第1部 言語変容
- インターネットと英語帝国主義(西垣通)
- 漢字コード問題(笹原宏之)
- 情報化と若者の言語行動(井上史雄)
- 第2部 表現様式
- メール文体とそれを支えるもの(佐竹秀雄)
- 携帯メールのコミュニケーション内容と若者の孤独恐怖(中村功)
- エモティコンの世界(中丸茂)
- メディアと表現様式の変化:認知工学の立場から(原田悦子)
- 第3部 対人関係
- 携帯電話と若者の対人関係(三宅和子)
- インターネット・パラドックスの真偽(橋元良明)
- つながる-イメージ-共同体―TVCFに映るインターネット社会,あるいは「世界なき人間」たちの共在―(遠藤薫)
- 第4部 メディア環境の未来
- 個人的フィーリングを表現する非言語コミュニケーションのインタラクティブな可視化(土佐尚子)
- 携帯の将来(野島久雄)
- 情報ネットワークと日本社会(木村忠正)
- 第1部 言語変容
- 【第5巻】
- 第1部 ことばとイデオロギー
- 言語イデオロギーとディスコース研究―インタビューにおける二つの言語をめぐって―(松木啓子)
- 言語におけるジェンダー・イデオロギー(阿部圭子)
- 社会と指標の言語―構造論,方言論,イデオロギー論の統一場としての史的社会語用論―(小山亘)
- 第2部 ことばと権力
- ことばとパワー―クリティカル・ディスコース分析を中心に―(佐藤彰)
- パワーと言語変異―女性管理職のパワー方略を中心に―(高野照司)
- 第3部 ことばと公共福祉
- 供述の背後にある体験への接近―談話から行為へ―(森直久)
- 言語病理学における談話分析の応用と将来(渡辺義和)
- 患者中心の医療への転換―医療サービスにおける患者向け文書の分析―(佐伯晴子・野呂幾久子)
- 第4部 ことばと進化
- ことばの進化(正高信男)
- 生物言語学が証すLANGUAGE―ピジンからクリオールへの飛翔―(増田博邦)
- 第5部 ことばとインタラクション
- 語句の配置と行為の連鎖:プラクティスとしての文法(西阪仰)
- コミュニケーション行動における規範と共有(片桐恭弘)
- 第6部 ことばと活動空間
- 活動空間の言語的描写と探索について(片岡邦好)
- 発話と身振りの協調に見られる談話における時空的隣接/連続性(古山宣洋)
- 第1部 ことばとイデオロギー
- 【第6巻】
- 第1部 インタビュー
- インタビューによる言語調査法(日高水穂)
- 対話プロセスとしてのインタビュー(山田富秋)
- 方言研究法―構造から変異へ―(小林隆)
- 第2部 サーベイ調査
- 「新規登場事象」をとらえたい―探索的調査法による多人数調査―(田中ゆかり)
- 仮説検証的研究―言語的集団間バイアスを実際例として―(岡隆)
- 第3部 実験
- 会話を対象とする仮説検証型実験の手法(榎本美香)
- 自然な場面を設定してことばを収集する方法(白勢彩子)
- 第4部 談話データの収録
- フィールドにおける会話データの収録と分析(木村大治)
- 幼児の発話資料の収録方法とその意義(白井純子)
- 会話データの構築法―収録と書き起こし―(小磯花絵)
- 第5部 談話データの分析
- 会話分析の方法と論理―談話データの「質的」分析における妥当性と信頼性―(串田秀也)
- 談話データの定量的分析―タグの設計と集計―(伝康晴)
- 第1部 インタビュー
【第1巻】(2005年10月1日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 292ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-245-5)
【第2巻】(2005年5月27日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 278ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-246-3)
【第5巻】(2005年3月18日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 274ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-249-8)
【第6巻】(2006年8月24日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 244ページ 3,200円+税 ISBN 4-89476-250-1)