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新刊紹介 (53巻1号(208号)掲載分)
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど、雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 国立国語研究所編『新「ことば」シリーズ13 「ことば」を調べる考える』
『新「ことば」シリーズ14 言葉に関する問答集 ―よくある「ことば」の質問―』 - 平山輝男ほか編著『岩手県のことば』
- 真田信治著『関西・ことばの動態』
- 国立国語研究所編『国立国語研究所報告117 教育基本語彙の基本的研究 ―教育基本語彙データベースの作成―』
- 大坪併治著『石山寺本四分律古点の国語学的研究』
- 辻幸夫編『ことばの認知科学事典』
- 日野資成著『形式語の研究 ―文法化の理論と応用―』
- 河野六郎・千野栄一・西田龍雄編著『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』
- スーザンH.フォスター=コーエン著『子供は言語をどう獲得するのか』
- 飛田良文編『異文化接触論』
- 神鳥武彦著『共時方言学攷 ―課題と方法―』
- 賈恵京著『日韓両国語における敬語の対照研究』
- 日本国語教育学会編『国語教育辞典』
- 井上史雄著『日本語は生き残れるか ―経済言語学の視点から―』
国立国語研究所編
『新「ことば」シリーズ13 「ことば」を調べる考える』
『新「ことば」シリーズ14 言葉に関する問答集 ―よくある「ことば」の質問―』
『「ことば」を調べる考える』は,「言葉の研究」というものがどのようなものなのかを概説したものである。総論を兼ねた座談会(木村義之,福田邦夫,宮沢清治,鷲津名都江,甲斐睦朗)と解説6編を収める。解説の題名・執筆者は以下の通りである。
- 「ことばにパターンを見る―文法の研究―」(井上優)
- 「言語行動を観察する―くり返しのはたらき―」(熊谷智子)
- 「ことばの多様性を調べる―社会調査にもとづく研究―」(尾崎喜光)
- 「方言の活用表を作る―鶴岡市大山方言の場合―」(大西拓一郎)
- 「語の歴史を調べる―タナゴコロを例に―」(小椋秀樹)
- 「ことばと実験」(井上優・横山詔一)
『言葉に関する問答集』は,国立国語研究所に寄せられた質問などをもとに,日常の言語生活の中で疑問となることについて、一問一答形式で記述したものである。言葉の歴史の項目には,「船の名につく「丸」の由来は?」という質問,敬語の項には「こちらからの手紙を「お手紙」と言っていいか」などの質問が見られる。
(2001年3月発行 国立国語研究所刊 A5判縦組み 94ページ 360円 ISBN 4171962137)
(2001年3月発行 国立国語研究所刊 A5判縦組み 94ページ 360円 ISBN 4171962145)
平山輝男ほか編著『岩手県のことば』
『現代日本語方言大辞典』を基礎として,さらに各地の方言を詳述しようとする「日本のことばシリーズ」の第3巻である。章立て・内容は以下のようになっている。
- 総論
※位置と区画,岩手県の方言の特色などについて述べる。 - 県内各地の方言
※盛岡市方言・一関市方言など各地域の方言について述べる。 - 方言基礎語彙
※全国的に調査した項目を取り上げ,それに対応する岩手県盛岡市でのことばについてまとめた辞書的記述である。共通語形・方言形・音声表記・品詞・意味説明・用例を記す。 - 俚言
「俚言の意味分析」について述べた論と,『岩手県方言研究集 第3集 岩手方言語彙』(小松代融一)などを元にした俚言の小辞典である「俚言の世界」の項が含まれる。
なお,3は大野真男・森下喜一,それ以外は,斎藤孝滋による執筆である。
(2001年6月15日発行 明治書院刊 A5判横組み 212ページ 2,800円 ISBN 4-625-62301-4)
真田信治著『関西・ことばの動態』
関西およびその周辺での調査から得られたさまざまなデータをもとに,ことばの動態的な変遷のプロセスを紹介したものである。章立て・内容は,以下のようになっている。
- 第1章「「方言」から「ネオ方言」へ」
※新しい世代の言語運用を観察し,発音・語彙面に見られる(標準語の影響を受けた)新しい形について述べる。 - 第2章「表現法フィールドワーク報告」
※紀伊半島での調査分析を通して,関西中央部方言と周辺部方言の対立・接触の様相を紹介している。 - 第3章「図で見る京都ことばの動態」
※岸江信介・井上文子『京都市方言の動態』(近畿方言研究会 主宰真田信治 1997)によるデータを紹介している。これは「どす」など京都特有のことばの使用についてアンケートを取り,それぞれを年代別に図表にしたものである。 - 第4章「若者語の現在」
※敬語・アクセントについて述べる。
なお,本書は大阪大学創立70周年記念出版実行委員会編の「大阪大学新世紀セミナー」シリーズのうちの1冊である。また,本書の内容は部分的に大阪大学での社会言語学講義および方言学講義に基づいている。
(2001年6月20日発行 大阪大学出版会刊 A5判縦組み 96ページ 1,000円 ISBN 4-87259-109-7)
国立国語研究所編『国立国語研究所報告117 教育基本語彙の基本的研究 ―教育基本語彙データベースの作成―』
これまでに国内で刊行された7種の教育用の基本語彙を比較対照するために一覧表を作成したもの。これにより,ある単語が教育の基本語彙に入っているか否か,どの学習段階に位置づけられたものかといったことがすぐにわかる。7種の基本語彙とは,阪本一郎『教育基本語彙』(牧書店1958),阪本一郎『新教育基本語彙』(学芸図書1984),田中久直『学習基本語彙』(新光閣書店1956),池原楢雄『国語教育のための基本語体系』(六月社1957),児童言語研究会『言語要素指導』(明治図書1962),中央教育研究所『学習基本語彙』(中央教育研究所1984),国立国語研究所『日本語教育のための基本語彙調査』(秀英出版1984)に掲載されたものである。付属CD-ROMには,国立国語研究所で作成した6種の語彙表(幼児語彙,絵本語彙,作文語彙,教科書の用語,など)を収める。
(2001年6月25日発行 明治書院刊 B5判横組み 558ページ 15,000円 ISBN 4625433096)
大坪併治著『石山寺本四分律古点の国語学的研究』
『石山寺本四分律』の原典を調査して,その現存59巻中,平安初期の白点を持つ9巻を解読し,これを基礎資料として国語史的な立場から紹介・解説したものである。従来研究されてきた『願経四分律』の古点とは直接関係がなく,『平安時代訓点本論考』(築島裕 汲古書院1986年)に本資料のヲコト点や仮名字体表が載せられているものの,まとまった資料として研究されてこなかった資料である。訓点資料としての価値のほか,コの甲乙の残存,サ変動詞としての訓読例が多いなどの特徴があり,国語史的な資料としての価値がある。 章立て・内容は,以下のようになっている。
- 第1章「表記法」
※ヲコト点・仮名ほかについて述べる。 - 第2章「音韻」
※漢字音・国語音について述べる。 - 第3章「漢字にる訓義の注」
※漢字の訓義を示すために,漢字で注を加えたものについて述べる。 - 第4章「特殊な漢字の訓法」
※主として辞的な働きをする漢字(若・可・将・但・況など)について述べる。 - 第5章「文法」
※品詞別に特徴を述べる。 - 第6章「語彙」
※敬語について,また,旁訓を持つ単語について述べる。 - 第7章「石山寺本『大方広仏華厳経』古点との比較」
※訓点が似ており,近い関係にあると思われる石山寺本『大方広仏華厳経』との類似点・相違点について考察する。 - 第8章「『願経四分律』古点との比較」
※『石山寺本四分律』古点と『願経四分律』古点の比較。訓点の付け方からは教学の系統を異にする両資料だが,同内容をどのように訓じているかという点から比較する。 - 第9章「訳文」
※『石山寺本四分律』巻第三九・四〇の本文と解読文,さらに参考のために岩淵本『願経四分律』の巻第四〇の本文と解読文を示す。
なお,巻末に語彙索引がある。また,本書は,大坪併治著作集の第8巻にあたる。
(2001年6月30日発行 風間書房刊 A5判縦組み 630ページ 17,000円 ISBN 4-7599-1267-3)
辻幸夫編『ことばの認知科学事典』
「認知と言語に関連する認知科学的諸研究の概観と今後の展望,そして「事典」と「辞典」を兼ね備えるレファレンスとしての内容」(「はじめに」より)をそれぞれの分野の専門家が執筆したものである。1章「言語と認識」では,哲学や言語学で言語と認識の問題がいかに扱われてきたか,今後の展開はどうかについて述べる。2章「認知と言語の基盤」では,それらの神経学的基盤と記号的過程について述べる。3章「言語の理論」では,一般的な言語学の基礎論と生成文法・認知言語学など近年の代表的な言語理論について述べる。4章「言語と認知の発達」では,心理学,言語習得,手話などさまざまな分野を扱う。5章「言語の産出と理解」では,言語の障害,対話の研究などのほか,意味づけ論,関連性理論,メンタルスペース理論について述べる。6章「言語と思考」では,推論,メタファーなどについて述べる。7章「言語と記憶」は,認知心理学の立場からの叙述である。8章「社会,文化から見た言語と認知」は,社会言語学,社会心理学などの立場からの叙述である。9章「言語と認知のモデル」は,計算モデル,人工知能,アフォーダンスについて述べる。10章「認知の理論」は,現在までの認知科学的研究の理論的枠組みを再考し,認知言語学における理論的枠組みの重要性と期待が表されている。
各章・各節の目次は以下のようになっている。
- 1章「言語と認識」
- 言語と認知の哲学的諸問題の概略と今後(土屋俊)
- 言語科学の身体論的展開 ―認知言語学のパラダイム(山梨正明)
- 2章「認知と言語の基盤」
- 認知と言語の生物学的基盤(山鳥重)
- 言語と認知の記号論的基盤(池上嘉彦)
- 3章「言語の理論」
- 言語学の基礎(辻幸夫・野村益寛)
- 生成文法(中島平三)
- 認知言語学(野村益寛)
- 語彙・概念的な意味論の成立と展開(米山三明)
- 言語と認知の相互作用様式 ―複雑系的視点から(池上高志)
- 4章「言語と認知の発達」
- 心理学から見た言語と認知の発達の概略と今後(岡本夏木)
- 想像力の発達とディスコースの成立過程(内田伸子)
- ことばと概念の獲得(今井むつみ)
- 手話の獲得(鳥越隆士)
- 第2言語習得と認知プロセス(小池生夫)
- バイリンガリズムと認知プロセス(小池生夫)
- 5章「言語の産出と理解」
- 神経心理学から見た言語の産出と理解(山鳥重)
- 言語療法(石坂郁代)
- 障害児の言語獲得 ―自閉症児を中心に(渡部信一)
- 意味づけ論(田中茂範)
- 関連性理論(西山佑司)
- 対話の認知プロセス(茂呂雄二)
- メンタル・スペース理論(坂原茂)
- 6章「言語と思考」
- 演繹的推論と帰納的推論(服部雅史・服部郁子)
- 条件文と仮説に関する推論(服部雅史・服部郁子)
- 推論における内容効果(服部雅史・服部郁子)
- 思考の規範性と適応性(服部雅史)
- 批判的思考(楠見孝)
- アナロジーとメタファー(楠見孝)
- 認知心理学から見た言語と思考(楠見孝)
- 7章「言語と記憶」
- 認知心理学から見た言語と記憶(小谷津孝明)
- 8章「社会,文化から見た言語と認知」
- 文化から見た言語と認知(井上京子)
- 社会言語学から見た言語と認知研究の概観と今後(日比谷潤子)
- 社会心理学から見た言語と認知研究の概観と今後(岡隆)
- マス・コミュニケーションにおける言語と認知(大石裕)
- 9章「言語と認知のモデル」
- 言語処理の計算モデルの概観と今後(橋田浩一)
- 人工知能から見た言語と認知(森芳樹・吉本啓)
- 言語と認知のコネクショニズムモデルの概観と今後(守一雄)
- アフォーダンスと言語獲得 ―Reedの生態心理学的観点(佐々木正人)
- 10章「認知の理論」
- 認知科学としての認知言語学への期待(安西祐一郎)
(2001年7月1日発行 大修館書店刊 B6判横組み 561ページ 3,600円 ISBN 4-469-01269-6)
日野資成著『形式語の研究 ―文法化の理論と応用―』
名詞が形式名詞になったり,動詞が補助動詞になったりする,いわゆる文法化の現象が起きるときに,どのような意味変化をしているかを歴史的に捉え,そこからさらに意味変化のパターンについてのモデルについて論じていこうとする試みである。 第1章「導入」では,目的・方法論について述べる。 第2章「抽象化」では,意味変化の方向について,名詞の場合には「もの→空間」に変化し,そこから「こと,時間,質」のそれぞれに変化すること,動詞の場合には「物理的→心理的」に変化することが示される。 第3章「抽出化」では,変化が起きるとき,元の意味ABからBだけが抽出され,Aが失われる現象を「上がる」などを例にして説明する。 第4章「意味の希薄化」では,「よく考えたうえで返事します」などの「うえ」などの例を挙げ,意味変化において元の意味を失うタイプの文法化を扱っている。意味的な機能を失い,文法的機能(たとえば,文と文をつなぐ機能)や表現的機能(たとえば,批判・譲歩など)を担うことが示されている。 第5章「文法化の制約」では,文法化における形態統語論的制約について,さらに意味論的制約について述べる。 第6章「結論」では,新たに示されたことを8つの発見という形でまとめている。 なお,本書は,2000年3月にハワイ大学大学院言語学部に提出された博士論文( Grammaticalzation of Japanese Pseudonouns and Auxiliary Verbs ― A Morphosyntactic and Semantic Approach )を日本語に訳したものである。
(2001年7月10日発行 九州大学出版会刊 A5判横組み 124ページ 2,800円 ISBN 4-87378-690-8)
河野六郎・千野栄一・西田龍雄編著『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』
世界の文字(約300)を見出しとして立項し,それぞれについて分布・系統・歴史・文字構成・文字組織・研究史・資料などを記述したものである。単に文字を集めてその形を提示するというやり方ではなく,その文字を使っている言語体系との関係を配慮したうえでの取り扱いがなされている。日本語の文字の項の執筆者は笹原宏之、仮名の項の執筆者は築島裕・小松英雄となっている。付録には文字分布概略図・国別使用文字一覧がある。世界の文字を載せるということから印刷上の困難を伴ったであろうと思われるが,西洋言語学ではそれほどの考慮が払われない文字論に対する貢献という観点からこの別巻を捉える必要があるだろう。なお,この別巻をもって言語学大辞典のシリーズは終了となる。本シリーズが「言語」を扱う者に何を提示したのかを再び考え直す良い機会であると思われる。
(2001年7月10日発行 三省堂刊 B5判横組み 1222ページ 48,000円 ISBN 4-385-15177-6)
スーザンH.フォスター=コーエン著『子供は言語をどう獲得するのか』
言語獲得には,普遍文法を軸にした論理的方法と,非普遍文法的観点を取る伝統的な経験的方法がある。本書はこの両者の橋渡しを行い,現象をよりよく説明できる方法を追究しようという姿勢で書かれた心理言語学的な著作である。言語獲得のほか,言語発達における個人差の問題,メタ言語的能力の問題などについても考察している。章立ては以下のようになっている。
- 第1章「言語獲得にあたって子供はどういう能力を用いるか?」
言語の原理に関する生得的な知識を利用しているか否かについて判定するということはどういうことなのかを検討する。 - 第2章「言語が使えるようになる前に子供はどのようにして伝達を行うか?」
言語以前のコミュニケーションについて述べる。 - 第3章「言語発達はいつ始まるのか?」
子供の初期の言葉(1語発話,2語発話)の分析について述べる。 - 第4章「幼児は言語の働きをどう見ているか?」
5歳以下の子供の例を検討する。そして,言語構造・言語機能の発達について考える。 - 第5章「言語発達を左右するものは?」
子供に対する言葉や子供の内部の力がどのように言語発達に影響を与えているかを考える。 - 第6章「子供はみな同じように言語を獲得するのか?」
言語発達における個人差について,多数派の子供と少数派の子供(何らかの言語障害を持つ子供)のそれぞれの場合に分けて論じる。 - 第7章「どの言語を習うかによって違いが出るか?」
複数の言語を獲得するということはどのようなことなのかについて考える。 - 第8章「言語発達が終わるのはいつか?」
幼児期以後の言語発達についての考察である。話し,読み,書き,などを視野に入れて,言語発達を考える。
(2001年7月10日発行 岩波書店刊 A5判横組み 314ページ 3,800円 ISBN 4-00-022814-5)
飛田良文編『異文化接触論』
日本語教育の新しい流れについてまとめるとともに,日本語教育「学」という領域をより大きなものにしていこうという考えから,日本語教育学シリーズが編集された。本書はその巻頭にあたり,異文化関連の問題を扱ったものである。以下に,章立てと各々に付けられたキーワードを記す。
- 第1章「異文化接触と日本語教育学」(飛田良文)
【キーワード】 国際化 伝統文化 価値観 カルチャーショック 第二言語教育 帰国子女
※日本語教育学の総論・体系について述べる。 - 第2章「異文化を考える」(古藤友子)
【キーワード】 多文化主義 文化の構成要素 ステレオタイプ カルチュラル・アウェアネス 異文化リテラシー
※異文化についての概説である。 - 第3章「異文化間における語用の測定法」(山下早代子)
【キーワード】 異文化間比較語用論 語用能力 発話行為(スピーチアクト) 談話完成テスト(DCT) 自己評価
※語用能力を測定するにはどうしたらよいかを考える。 - 第4章「異文化コミュニケーションとしての日本語教授法」(縫部義憲)
【キーワード】 日本語教授法 哲学・世界観と教育観 ホリスティック・アプローチ 感情技法 合流的指導法
※異文化を踏まえた日本語教育について述べる。 - 第5章「外国人留学生のカルチャーショック」(多田洋子)
【キーワード】 カルチャーショックの定義 外国人留学生 異文化適応 カルチャーショックの事例
※外国人留学生がどのような時にカルチャーショックを感じるかを述べる。 - 第6章「日本語教師のカルチャーショック」(田口雅子)
【キーワード】 教室運営 教師と学習者との協力関係 教師に対する学習者の評価 異文化間の接触 自己開示
※日本語教師が感じる学習者との文化差,カルチャーショックについて述べる。 - 第7章「バイリンガリズムの問題点」(飛田良文・グロータース・斉藤慶太)
- 「バイリンガルとは」(飛田良文)
【キーワード】 バイリンガリズム 同時バイリンガリズム 継続バイリンガリズム 二重半言語 社会バイリンガリズム
※バイリンガルについての概説。 - 「第一言語と第二言語―二重言語使用の可能性―」(グロータース)
【キーワード】 二重言語使用 第一言語 第二言語 言語習得 国際結婚 アイデンティティー 国際人
※バイリンガルであるとはどのようなことかを当事者が述べたもの。 - 「帰国子女とバイリンガリズムの実情」(斉藤慶太)
【キーワード】 バイリンガル 帰国子女 現地校 補修校 高校受験 語彙不足
※バイリンガルであるとはどのようなことかを当事者が述べたもの。
- 「バイリンガルとは」(飛田良文)
(2001年7月25日発行 おうふう刊 A5判横組み 270ページ 2,500円 ISBN 4-273-03161-2)
神鳥武彦著『共時方言学攷 ―課題と方法―』
共時態としての方言学の建設をめざして,共時論についての検討をするとともに,広島県の地域方言に関するさまざまな事象を論じたものである。章立てと内容は以下の通りである。
- 序章「共時態認識とその問題点」
※共時態に関する考察で,ソシュール・亀井孝・時枝誠記・ヤーコブソン・コセリウ・丸山圭三郎らの論が検討され,方言の共時態に関する服部四郎・藤原与一・国立国語研究所の研究が紹介される。 - 第1部「発音の上に認められる変容」
- 第1章「発音事象とその課題」
- 第2章「一集落における[ai]連母音の動態 ―呉市阿賀町冠崎方言の場合―」
- 第3章「音節・モーラ音節とアクセント ―広島県安芸郡熊野町方言の場合―」
- 第4章「教育の普及と音変容」
- 第2部「地域社会の敬態表現とその待遇心意」
- 第1章「敬態表現を支える基底」
- 第2章「述部における敬態表現法 ―広島市西区古江・田方(旧古田町)の場合―」
- 第3章「対人認知と敬語形式の選択 ―広島市域における「訪問時のあいさつ」―」
- 第4章「敬語形式の選択に認められる話し手の許容期待度 ―広島方言話者を対象として―」
- 第5章「敬語と敬語認識」
- 第3部「表現と語詞との間 ―表現の固定化と語詞の表現化―」
- 第1章「文表現のレベルと語のレベル」
- 第2章「あいさつ表現に見られる地方人の表現心意 ―広島県を中心とする地域を対象に―」
- 第3章「親族語彙に認められる変容 ―安芸国の2地点の比較を通して―」
- 第4章「非同居親族間における呼称 ―対面時・非対面時の場合―」
- 第5章「同居親族間での呼称」
- 第6章「家称語彙 ―広島県安芸郡熊野町の場合を中心に―」
- 第7章「人相互の関係・呼称・命名と「場」」
- 第4部「方言漢語語詞の世界」
- 第1章「地域語としての漢語語彙」
- 第2章「方言における漢語語詞の性格」
- 第3章「方言漢語語詞の通時的性格 ―広島県安芸郡熊野町方言と「長崎版日葡辞書」との比較を通して―」
- 第4章「広島県安芸郡熊野町方言における漢語語彙の性格」
- 第5章「地域社会における漢語語彙の生活」
- 第5部「方言と生活環境」
- 第1章「地域社会と方言語詞の認識・受容・使用」
- 第2章「新居住地方言の受容 ―東広島市における社宅住民と社宅周辺の自然集落の住民との比較―」
- 第3章「方言使用と生活環境 ―社宅居住者と自然発生的集落居住者」
- 第4章「都市地域内の新形成集落と方言 ―広島市南区東雲町の場合―」
- 第5章「方言語詞の受容と忘失」
- 第6部「「方言」に対する好悪の意識」
- 第1章「特定地域の「方言」に対する好悪の意識」
- 第2章「社宅居住者の「広島弁」に対する好悪の意識」
- 第3章「自然発生的集落居住者の「広島弁」に対する好悪の意識」
- 第4章「社宅居住者と自然発生的集落居住者との比較」
- 第5章「方言意識と方言変容」
-
※以上のように,第2部は敬語法,第3部は語詞と表現,第4部は漢語語詞,第5部は生活環境と方言語詞,第6部は方言に対する意識の問題を扱っている。
- 終章「方言共時態の本質とその現象の相」
※方言共時態という視点の必要性を述べるとともに,共時態把握の現象論・本質論,観察者のあり方などについて述べている。
なお,著者の論文を元にした章には,章末ごとにその文献が示されている。
(2001年7月30日発行 清文堂出版刊 A5判横組み 600ページ 18,000円 ISBN 4-7924-1350-8)
賈恵京著『日韓両国語における敬語の対照研究』
日韓両国語の敬語使用の実態をアンケートを行って調査するとともに,両語の特徴を記述・比較・考察したものである。第1章「序論」に続き,第2章「日韓両国語における人称代名詞の用法と比較」では,1988年に鳥取市と清州市で実施したアンケート(日韓とも10代・30代・50代の男女10名ずつ計120名が対象)をもとに,人称代名詞について比較・考察している。第3章「日韓両国語における敬語の比較」では,1999年に合計560名を対象にしたアンケートの結果と考察を述べる。第4章「総合考察」では,対照記述を行い,日韓で差があると思われる点については,その原因を考察している。最後に,第5章「結論」で,8項目のまとめを行っている。
(2001年8月1日発行 白帝社刊 A5判横組み 155ページ 2,400円 ISBN 4-89174-509-6)
日本国語教育学会編『国語教育辞典』
変化する国語科に対応すべく,従来からの国語教育に関する項目に加え,周辺領域・関連諸科学の内容を盛り込んだ辞典である。中項目をアイウエオ順に並べ,それぞれを1ページ(ページ数が必要なものに関しては,2あるいは4ページ)で説明するという体裁をとっている。 なお,目次は,項目を分類・体系化した形にしており,以下のようになっている。(分野8のみ,やや詳しく記す。)
- 分野1 教育課程
- 分野2 話すこと,聞くこと
- 分野3 書くこと
- 分野4 読むこと
- 分野5 言語指導,書写
- 分野6 学力,指導と評価,教材
- 分野7 歴史,思潮
- 分野8 関連諸科学
- 8.1 言語哲学
- 8.1.1 言語観,
- 8.1.2 言語の機能
(以下略)
- 8.2 言語学・国語学
(以下略)
- 8.1 言語哲学
- 分野9 諸外国の言語教育
8.1.1などのレベルの「言語観,言語の機能」などが,辞典の中項目の見出しと対応するという仕組みとなっている。
巻末には教育基本法・指導要領・国語教育史略年表などを付す。
(2001年8月10日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 468ページ 15,000円 ISBN 4-254-51023-3)
井上史雄著『日本語は生き残れるか ―経済言語学の視点から―』
日本語の国際化について社会言語学・経済言語学の観点から論じたものである。章立て・内容は以下のようになっている。
- 序章「言語の国際化と難易度―経済言語学の視点」 ※総論である。「言語」を市場における「財」と捉えると,その流通の度合いは使用価値と難易度に左右される。そのような観点の導入を行う。
- 第1章「日本語の価値変動」
※日本語が海外へ,逆に外国語が日本へ進出する現象について論ずる。 - 第2章「言語の日英戦争」
※世界の言語すみ分け,英語優位の現象について述べる。 - 第3章「第二公用語論は日本語をどう変えるか」
※バイリンガルや公用語について客観的な視点から論ずる。 - 第4章「日本語の難しさ」
※日本語のどの部分が外国人には難しいのか,などについて述べる。 - 第5章「文法と敬語の障壁」
※最近の日本語自体の変化と日本語難易度の変化とのかかわりについて考察する。 - 第6章「日本語表記の国際化」
※漢字・ローマ字について考える。 - 第7章「日本語の未来」
※現状に対するこれまでの考察を踏まえ,将来の予測を試みる。
(2001年8月30日発行 PHP研究所刊 新書判縦組み 207ページ 660円 ISBN 4-569-61727-1)