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新刊紹介 (54巻2号(213号)掲載分)
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 窪薗晴夫/森山卓郎/影山太郎/田守育啓/仁田義雄/寺尾康/金水敏著
シリーズ『もっと知りたい! 日本語』 - 伊藤たかね/西村義樹/大堀寿夫/生越直樹/上田博人編『シリーズ言語科学』
- 小池清治・赤羽根義章著『シリーズ日本語探求法2 文法探求法』
- 犬飼隆著『シリーズ日本語探求法5 文字・表記探求法』
- 北原保雄監修 斎藤倫明著『朝倉日本語講座4 語彙・意味』
- 北原保雄監修 江端義夫著『朝倉日本語講座10 方言』
- 国立国語研究所編『国立国語研究所報告118 学校の中の敬語1 ―アンケート調査編―』
- 文化庁文化部国語課編『世論調査報告書 平成13年度 国語に関する世論調査 日本人の言語能力を考える』
- 国立国語研究所編著『国立国語研究所報告97-5 方言文法全国地図5 第206図〜第270図』
- 斎藤明美著『『交隣須知』の日本語』
- 中井幸比古著『和泉辞典シリーズ12 京都府方言辞典』
- 山口仲美著『光文社新書 犬は「びよ」と鳴いていた ―日本語は擬音語・擬態語が面白い―』
- 日中対照言語学会編『日本語と中国語のアスペクト』
- 藤原与一著『続昭和(→平成)日本語方言の総合的研究 第7巻 日本語史と方言』
- 片岡邦好・井出祥子編『文化・インターアクション・言語』
- 藤原与一著『日本語方言辞書〈別巻〉 ―全国方言会話集成―』
- 神尾昭雄著『続・情報のなわ張り理論』
- 田中章夫著『近代日本語の語彙と語法』
- 飛田良文・浅田秀子著『現代擬音語擬態語用法辞典』
- 河原俊昭編著 岡戸浩子・後藤田遊子・中尾正史・長谷川瑞穂・藤田剛正・松原好次・三好重仁・山本忠行著『世界の言語政策 ―多言語社会と日本人―』
- 米川明彦編著『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』
窪薗晴夫/森山卓郎/影山太郎/田守育啓/仁田義雄/寺尾康/金水敏著
シリーズ『もっと知りたい! 日本語』
「もっと知りたい!日本語」は,シリーズとして,7巻構成で刊行されたものである。
窪薗晴夫著『新語はこうして作られる』は,新語の形成について紹介したものである。合成語,短縮や頭文字語,異分析・混成などによってできる新語,新語の作り方と意味変化,短縮語形成のメカニズム,隠語的な語,短縮の意味的規則・アクセント規則などについて述べる。
森山卓郎著『表現を味わうための日本語文法』は,日本語の表現を文法的に味わおうという試み。日本語を言葉のルールに注目しながら見るという文法的思考の重要性を説く。文法論的修辞論や国語教育につながる内容である。また文法についての簡単な入門書として読むこともできる。
影山太郎著『ケジメのない日本語』は,前置きの長い日本語と結論を先に言う英語,「行く/来る」と「go/come」,「ナル型」と「スル型」などを取り上げている。一見無関係に思える日英のさまざまな発想法・表現法の違いについて,「ケジメ」の有無という観点から説明している。
田守育啓著『オノマトペ 擬音・擬態語をたのしむ』は,オノマトペのいろいろな面を紹介した著作。広告・商品名,文学作品や漫画に用いられている例を観察する。また,創作実験をして,オノマトペらしさのルールを探る。さらに,日本語に見られる音象徴,日英語に共通の音象徴の例をあげる。
仁田義雄著『辞書には書かれていないことばの話』は,ことばが意識に使い分けられることと,その違いに気づいていることとは,話が別であることを述べる。また,文法書があれば,外国人でも,コンピュータでも正しい作文ができるような辞書が理想的であると述べている。
寺尾康著『言い間違いはどうして起こる?』は,誰にでも経験のある言い間違いについて説明したものである。一見,とるにたらない言語現象とおもわれがちな言葉のほころびについて,言葉を話すとき頭のなかで何が起こっているのかという観点からわかりやすく解説している。
金水敏著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』は,「そうじゃ,わしが博士じゃ」,「ごめん遊ばせ,よろしくってよ」などが,いかにも博士やお嬢さまが話しているように感じてしまう言葉づかいを取り上げている。現実には存在しなくても,いかにもそれらしく感じてしまう日本語を役割語と名付け,何のために,このような言葉づかいがあるのかについて述べている。
(窪薗:2002年7月8日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 166ページ 1,500円)
(森山:2002年7月8日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 204ページ 1,500円)
(影山:2002年9月10日発行 岩波書店刊 B6版縦組み 164ページ 1,500円)
(田守:2002年9月10日発行 岩波書店刊 B6判縦組み 178ページ 1,500円)
(仁田:2002年11月8日発行 岩波書店刊 B6版縦組み 188ページ 1,500円)
(寺尾:2002年11月8日発行 岩波書店刊 B6版縦組み 204ページ 1,500円)
(金水:2003年1月28日発行 岩波書店刊 B6版縦組み 216ページ 1,500円)
伊藤たかね/西村義樹/大堀寿夫/生越直樹/上田博人編『シリーズ言語科学』
『シリーズ言語科学』全5巻は,最新の言語研究の動向を伝える論文集である。全巻とも「序」として各巻の「展望」が記してある。,そこには研究動向のほかに,各論文の要点もまとめられている。各巻の構成は以下のようになっている。
第1巻の伊藤たかね編『文法理論:レキシコンと統語』は,語彙部門と統語部門の接点にかかわるような問題を中心に,様々な立場からの論考を収めている。題目,執筆者は以下の通りである。
- 序 レキシコン研究の展望(伊藤たかね)
- 1 レキシコンと語形成
- 名詞化現象の語彙論的考察(飯田雅代)
- 語彙的複合における複合事象―「出す」「出る」に見られる使役と受動の役割(今泉志奈子・郡司隆男)
- 語彙概念構造の組み替えを伴う統語的複合語―「V+合う」を中心に(由本陽子)
- 形容詞から派生する動詞の自他交替をめぐって(杉岡洋子)
- 2 レキシコンから統語へ
- 非対格構造の他動詞―意味と統語のインターフェイス(影山太郎)
- 日本語の存在・所有文の文法関係について(岸本秀樹)
- 後期古英語散文における文頭の主語・動詞の倒置―古英語散文史の一断面(小川浩)
- 3 レキシコンと計算
- 脳におけるレキシコンと統語の接点(萩原裕子)
- 二重メカニズムモデルと語彙情報の「継承」―英語の名詞化の場合(伊藤たかね)
- 日本語における否定辞・量化子のスコープの決定(矢田部修一)
- Wh節と「も」の動的相互関係(Christopher Tancredi・山品みゆき)
第2巻の西村義樹編『認知言語学1:事象構造』は,認知言語学の観点から事象構造(event structure)を扱ったものである。題目,執筆者は以下の通りである。
- 序 事象構造研究の展望(西村義樹)
- 1 ヴォイス
- 英語中間構文とその周辺―生態心理学の観点から(本多啓)
- フランス語の再帰構文―その認知的一体性(春木仁孝)
- 受影性と受身(坪井栄治郎)
- 英語受動文―通時的視点から(寺沢盾)
- 2 プロトタイプ,スキーマ,意味的制約
- ドイツ語中間構文の認知論的ネットワーク(坂本真樹)
- 英語進行形の概念構造について(友沢宏隆)
- 英語所有格表現の諸相―プロトタイプ理論とスキーマ理論の接点(早瀬尚子)
- 使役移動構文における意味的制約(松本曜)
- 3 文法関係
- 中国語二重主語文の意味と構造(木村英樹)
- 日本語の「に‐が」構文と分裂主語性(熊代敏行)
- 「悲しさ」「さびしさ」はどこにあるのか―形容詞文の事態把握とその中核をめぐって(篠原俊吾)
- 換喩と文法現象(西村義樹)
第3巻の大堀寿夫編『認知言語学2:カテゴリー化』は,認知言語学のカテゴリー化を中心とした最新の知見を提示している。題目,執筆者は以下の通りである。
- 序 カテゴリー化研究の展望(大堀寿夫)
- 1 認知方略としてのカテゴリー化
- 絶対と相対の狭間で―空間指示枠によるコミュニケーション(井上京子)
- 〈液体〉としての言葉―日本語におけるコミュニケーションのメタファー化をめぐって(野村益寛)
- なぞなぞの舞台裏―その理解と認知能力(杉本孝司)
- 2 文法カテゴリーの成立
- 日本語における語彙のカテゴリー化―形容詞と形容動詞の差について(上原聡)
- トートロジとカテゴリ化のダイナミズム(坂原茂)
- 日本語条件文と認知的マッピング(田窪行則・笹栗淳子)
- 動詞の意味特性と動詞形態素の習得―プロトタイプ形成と生得性(白井恭弘)
- 助詞への道―漢語の“了”,“得”,“倒”の諸機能をめぐって(Christine Lamarre)
- 意味論的カテゴリーとしてのモダリティ(Heiko Narrog)
- 3 複文カテゴリーの諸相
- 日韓両語の補文構造の認知的基盤(堀江薫)
- 構文理論から見た主要部内在型関係節の意味と機能(小原京子)
- 「交替指示」構文の通時相―統語変化とカテゴリー化 (大堀寿夫)
第4巻の生越直樹編『対照言語学』は,言語間の個別的な異同を論じる研究だけでなく,言語の普遍性と多様性を論じる研究に幅を広げつつある対照言語学の現在の姿を示している。題目,執筆者は以下の通りである。
- 序 対照言語学の展望(生越直樹)
- 1 方法論
- 言語類型論と対照研究(柴谷方良)
- 2 構文の多様性
- 日本語とスペイン語の使役性の比較(上田博人)
- 日本語・朝鮮語における連体修飾表現の使われ方―「きれいな花!」タイプの文を中心に(生越直樹)
- 概念化と構文拡張―中心的与格構文から周辺的与格構文へ(武本雅嗣)
- 3 意味の広がり
- テンス・アスペクトの比較対照―日本語・朝鮮語・中国語(井上優・生越直樹・木村英樹)
- 「も」と“也”―数量強調における相違を中心に(楊凱栄)
- 時間から空間へ?―〈空間的分布を表す時間語彙〉をめぐって(定延利之)
- 指示詞の歴史的・対照言語学的研究―日本語・韓国語・トルコ語(金水敏・岡崎友子・曺美庚)
- 所謂「逆条件」のカテゴリー化をめぐって―日本語と英語の分析から(藤井聖子)
- 「来る」と「行く」の到着するところ(中沢恒子)
第5巻の上田博人編『日本語学と言語教育』は,日本語学・日本語教育・言語教育に関わる様々な論考を収めている。題目,執筆者は以下の通りである。
- 序 日本語学と言語教育の展望(上田博人)
- 1 日本語研究
- 連体形による係り結びの展開(野村剛史)
- 日本語コピュラ文の構造と談話機能(砂川有里子)
- 文法化とアスペクト・テンス(工藤真由美)
- 2 言語学と外国語教育
- バイリンガリズムと言語教育(岡秀夫)
- 音声学と外国語教育(松野和彦)
- コーパスに基づいた外国語作文支援システム(杉浦正利)
- 日常言語の文法性―Becauseの使用をめぐって(田中茂範)
- 音韻変化と粤語研究・広東語教育―周辺韻母の承認を例に(吉川雅之)
- 3 日本語と日本語教育
- 会話に現れる「ノダ」―「談話連結語」の視点から(近藤安月子)
- 複文の類型と日本語教育(前田直子)
- 日本語教室の可能性―「自由会話」の意味(沢田美恵子)
(第1巻:2002年7月17日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 305ページ 4,600円)
(第2巻:2002年9月5日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 317ページ 4,600円)
(第3巻:2002年10月10日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 328ページ 4,600円)
(第4巻:2002年11月20日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 310ページ 4,600円)
(第5巻:2002年12月20日発行 東京大学出版会刊 A5判横組み 300ページ 4,600円)
小池清治・赤羽根義章著『シリーズ日本語探求法2 文法探求法』
犬飼隆著『シリーズ日本語探求法5 文字・表記探求法』
このシリーズは,日本語学の演習での発表,あるいは卒業論文執筆などの人にたいして,探究方法を提示すると言う目的で作られている。すでに,第1巻『現代日本語探究法』,第9巻『方言探究法』が刊行されていている。
第2巻『文法探究法』は,事例研究を通じて文法研究の基礎的態度と方法を示そうとしたものである。章立ては以下のようになっており,各章題目の末尾に付けられた[ ]が扱われている分野となっている。
- 第1章 与謝野晶子は文法を知らなかったのか?[意味・文法・語用]
- 第2章 「言文一致体」は言文一致か?=小説・物語の文法=[文法]
- 第3章 『夢十夜』(漱石)は一つの文章か?[語用作品論]
- 第4章 飛んだのはシャボン玉か,屋根か?[語用文章論]
- 第5章 真に文を終結させるものは何か?=「陳述単語観」について=[文論]
- 第6章 日本語で一番短い文は何か?[文型論1,一語文]
- 第7章 「私はキツネ。」に,留学生はなぜ驚いたのか?[文型論2,ウナギ文]
- 第8章 日本語は語順が自由か?[文型論3,倒置文]
- 第9章 日本語に主語はいらないのか?[文型論4,無主語文]
- 第10章 受動文は,何のために,どのようにして作られ,何を表すのか?[文型論4,受動文]
- 第11章 「今,ごはんを(食べる,食べた,食べている,食べていた)。」はどう違うのか? [語論1―動詞]
- 第12章 「あいにくですが父は留守です。」と「せっかくですが父は留守です。」はどこが違うのか?[語論2,副詞―評価注釈]
- 第13章 「 彼は大男だ。ところが気は小さいかもしれない。」はなぜ不自然なのか?[語論3,接続詞―逆接]
- 第14章 「これが都鳥だ。」の「が」は格助詞か?[辞論1,格助詞・係助詞]
- 第15章 「日照りが続くと/けば/くなら/いたら,水瓶が枯渇するだろう。」はいずれも同じ仮定条件文か?[辞論2,接続助詞―仮定条件]
なお,1〜9章と14章は小池清治執筆,それ以外は赤羽根義章執筆担当となっている。
第5巻『文字・表記探究法』は,事例研究を通じて文字研究に必要な知識と研究分野の全体像を示そうとしたものである。章立ては以下のようになっており,各章題目の末尾に付けられた[ ]が扱われている分野となっている。
- 第1章 「『あ』という文字」と「『あ』という字」は同じことか?[文字と字:文字の本質論1]
- 第2章 漢字は表意文字か,それとも表語文字か?[文字の機能:文字の本質論2]
- 第3章 漢字の部首は形態素か?[文字における言語単位:字素論1]
- 第4章 「於」と「
」は同じ字か?[字体と字形:字素論2]
- 第5章 「无」→「ん」,「?」→「ン」?[音韻と文字との相互関係:字素論3]
- 第6章 「世界中」は「せかいじゅう」か「せかいぢゅう」か?[表音文字の表語機能:字態論1]
- 第7章 「なく」と「鳴く」と「泣く」はどう違うか?[語形と視覚情報:字態論2]
- 第8章 「いち,に,さん」か「イチ,ニ,サン」か?[書記形態と記憶:字態論3]
- 第9章 「きょうはしっている」は「走っている」か「知っている」か?[文字列の分節:統字論1]
- 第10章 「池のある風景」と「池の,ある風景」はどう違うか?[補助符号と句読法:統字論2,書記様態]
- 第11章 横書きと縦書きはどちらが効率的か?[読みのメカニズム:統字論3]
- 第12章 なぜ,「外為」は「外国為替」だとわかるのか?[視覚による意味の伝達:文字の本質論3]
- 第13章 「柳」は「やなぎ」か?[外国語の文字との接触:文字言語史]
- 第14章 漢字は将来使われなくなるか?[国語施策における文字]
- 第15章 文字の研究にどのような術語が必要か?[文字言語研究の理論]
(第2巻:2002年10月1日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 160ページ 2,500円)
(第5巻:2002年9月1日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 156ページ 2,500円)
北原保雄監修 斎藤倫明著『朝倉日本語講座4 語彙・意味』
北原保雄監修 江端義夫著『朝倉日本語講座10 方言』
このシリーズは,その時点における研究の状況・水準に通暁している執筆陣が各分野の一般的かつ基礎的な内容,最新の研究成果,現時点における課題などを平易に解説するもので,全10巻で刊行される。
第4巻は,語彙・意味についてのさまざまな性質を取り扱った巻である。題目,執筆者は以下の通りである。
- 第1章 語彙研究の諸相(田中章夫)
- 第2章 語彙の量的性格(伊藤雅光)
- 第3章 意味の体系(村木新次郎)
- 第4章 語種(西尾寅弥)
- 第5章 語構成原論(斉藤倫明)
- 第6章 位相と位相語(米川明彦)
- 第7章 語義の構造(国広哲弥)
- 第8章 語彙と文法(影山太郎)
- 第9章 語彙と文章(石井正彦)
- 第10章 対照語彙論(玉村文郎)
- 第11章 語彙史(前田富祺)
- 第12章 語彙研究史(湯浅茂雄)
第10巻は,方言についての様々な問題を扱った巻である。題目,執筆者は以下の通りである。
- 第1章 方言の実態と原理(江端義夫)
- 第2章 日本方言の音韻(斉藤孝滋)
- 第3章 方言のアクセント(木部暢子)
- 第4章 方言の文法(日高水穂)
- 第5章 方言の語彙と比喩(町博光)
- 第6章 方言の表現・会話(談話)(久木田恵)
- 第7章 全国方言の分布(大西拓一郎)
- 第8章 東西方言の接点(彦坂佳宣)
- 第9章 琉球の方言(猪俣繁久)
- 第10章 方言の習得(友定賢治)
- 第11章 方言のデータベースとコンピュータ言語地図(田原広史)
- 第12章 日本語方言の歴史(小林隆)
- 第13章 方言研究の歴史(沢木幹栄)
このほかには,第1巻『世界の中の日本語』(早田輝洋編),第2巻『文字・書記』(林史典編),第3巻『音声・音韻』(上野善道編),第5巻『文法 I』(北原保雄編),第6巻『文法 II』(尾上圭介編),第7巻『文章・談話』(佐久間まゆみ編),第8巻『敬語』(菊地康人編),第9巻『言語行動』(荻野綱男編)が予定されている。
(2002年10月20日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 304ページ 4,400円)
(2002年10月20日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 265ページ 4,200円)
国立国語研究所編『国立国語研究所報告118 学校の中の敬語1 ―アンケート調査編―』
中高校生が,学校の中で敬語をどのように使っているか,どのように意識しているかについてのアンケート調査をまとめたものである。言語行動研究部第一研究室(当時)が,昭和63年から平成4年にかけて行った調査(アンケート・面接・観察)の一部を報告したものである。対象および実施時期は,山形県の中学校1校と大阪の高校10校には1989年,東京都の中学校21校・高校25校には1990年である。調査項目は,「ふだん,学校で,自分自身のことばづかいが気になるほうですか?」等の言葉遣いの意識について,目上への言い方が変わるかあるいは言葉遣いを目上から注意されたことがあるか等の上下関係と言葉遣いの関係について,意見発表など公的場面で言葉遣いに困ったことがあるか等の場面の意識について,敬語で話すとどんな感じがするか等の敬語を話すことに関する意識についてなどとなっている。
(2002年4月20日発行 三省堂刊 B5判横組み 363ページ 10,000円)
文化庁文化部国語課編『世論調査報告書 平成13年度 国語に関する世論調査 日本人の言語能力を考える』
アンケート調査(標本数3000,有効回収数2190人)の報告書である。調査の概要は,日本語の大切さに関する意識,具体的な言葉の使い方(「鳥肌が立つ」を恐怖の状況で使うか感動の状況で使うか等),言語生活,情報媒体,外来語,日本人の日本語能力,察しの能力,美しい日本語について,日本語の国際化などであり,本書はその回答をグラフなどの形で示している。
(2002年6月25日発行 財務省印刷局刊 A4判横組み 167ページ 1,360円)
国立国語研究所編著『国立国語研究所報告97-5 方言文法全国地図5 第206図〜第270図』
方言文法全国地図第5集は以下の表現を扱ったものである。内容は以下の通りである。
- 義務表現(206-208図)行かなければならない
- 命令表現(209-220図)起きろ,開けろ(それぞれ,きびしく言った時,やさしく言った時)
- 禁止表現(221-226図)行くなよ(それぞれ,きびしく言った時,やさしく言った時),行ってはいけない
- 希望表現(227-231図)行きたいな,行きたくない,行ってもらいたい
- 意志表現(232-234図)行こうと思っている,行くまい
- 勧誘表現(235-236図)行こうよ
- 推量表現(237-240図)行くだろう,行くのだろう,行っただろう,雨だろう
- 様態表現(241-242図)降りそうだ,良さそうだ
- 伝聞表現(243-252図)雨だそうだ,高いそうだ,いたそうだ
- 疑問表現a(253-255図)誰かが,どこかに,いつか
- 疑問表現b(256図)何か
- 疑問表現c(257-258図)誰が行くか
- 反語表現(259-261図)誰がやるものか
- 授受表現(262-266図)もらってやった,やったか,くれ
- あいさつ表現(267-270図)ありがとう
地図のほか,解説の冊子が付いている。なお,第5集からは,1つの項目を複数の地図で表現し,それらを総合図化する。今回から,地図作成の機械化,編集方法の修正などの工夫・変更が行われている。
(2002年6月20日発行 財務省印刷局刊 地図65枚 解説B5判横組み 38,000円)
斎藤明美著『『交隣須知』の日本語』
『交隣須知』の系譜を明らかにし,そこに記された日本語について,例示・検討したものである。韓国語学習書として用いられた『交隣須知』は,増補されながら200年以上にわたり使用されてきた。そのため,そこに書かれた日本語および韓国語は,当時の会話体などを知りうる史的資料となることが期待されるが,言語資料として利用する以前の書誌的問題もあり,従来,あまり研究されてこなかった。本書は諸本を整理し,それらの異同や影響関係を考察し,研究の基礎固めを行っている。後半ではこの資料に見られる日本語を音韻,表記,文法,語彙,地域性などに分け,それらがどのような性格のものなのか,どのような変化をしているのかなどの特徴について述べている。なお,本書は韓国漢陽大学における博士論文の一部に基づくものである。今回詳しく触れられていない韓国語部分については,『交隣須知의系譜와言語』(韓国語版)として別書にまとめられている。
(2002年7月20日発行 至文堂刊 A5判横組み 242ページ 2,400円)
中井幸比古著『和泉辞典シリーズ12 京都府方言辞典』
明治以降に刊行された京都府下の俚言に関する資料を集成し,さらに,著者自身の調査による語彙を補足して,一書と成したものである。従来の俚言集は,府下全域を覆うようなものではなかった。また,全国規模の日本方言大辞典では,微視的網羅性に欠ける点があった。そのため,京都俚言に関する総合的辞典が待たれていたが,本書がそれを果たしたことになる。記述項目は,見出し・品詞・アクセント(ただし,京本来の語と考えられるもののみに対して付す。)・語義・出典などである。巻末に,共通語引き主要俚言索引がある。なお,はしがきの「4 考察」に「各俚言集所収語彙の一致度」がある。各地域方言の近さ,従来の俚言集作成時の参照関係,各地域で取り上げられることが多い語がどのような語であるかなどについて考察している。
(2002年7月30日発行 和泉書院刊 B5判横組み 582ページ 10,000円)
山口仲美著『光文社新書 犬は「びよ」と鳴いていた ―日本語は擬音語・擬態語が面白い―』
擬音語等についての知識を紹介とするとともに,文献上に残る動物の鳴き声を探究したものである。全体は二部構成となっている。第1部「擬音語・擬態語の不思議」では,擬音語等の語構成上の特徴,擬音語等の変遷(誕生〜消滅)について述べ,さらに表現技巧として使用された例を紹介したり,辞典における記述のされ方の現状について述べたりする。第2部「動物の声の不思議」では,『ちんちん千鳥のなく声は―日本人が聴いた鳥の声―』(大修館書店1989年)の著作に続いて,鳥以外の動物,つまり犬・猪・鼠・牛・馬・狐・モモンガ・ツクツクボウシなどの鳴き声が文献上でどのように記されているかということを扱っている。
(2002年8月20日発行 光文社刊 新書判縦組み 272ページ 740円)
日中対照言語学会編『日本語と中国語のアスペクト』
この論集は,日中言語対照研究会(現在は日中対照言語学会)のアスペクト特集大会における研究発表をもとにした論文,12編を収めたものである。
- アスペクト研究の半世紀(鈴木康之)
- 「してくる」の意味・用法(高橋太郎)
- 現代日本語のアスペクチュアリティー体系について(須田義治)
- コムリーのアスペクト論と日本語・中国語のアスペクト体系(讃井唯允)
- 現代漢語形容詞的体範疇論綱*(張国憲)
- “V着(zhe)”再考*(王学群)
- 関於“着”的幾箇問題*(左思民)
- 対“了1”的再認識*(史有為)
- 中国語の前動詞節中の“了”について(劉勲寧)
- 2つの“了”について(高橋弥守彦)
- 四川方言“V過”*(横川伸)
- 動態動詞“過”の言語環境について*(張岩紅)
(2002年8月20日発行 白帝社刊 A5判横組み 275ページ 2,800円)
ホームページ掲載にあたっての注記:
*のついた6つの論文題目は簡体字を含んでいますが、対応する日本の漢字字体になおしています。
藤原与一著『続昭和(→平成)日本語方言の総合的研究 第7巻 日本語史と方言』
『昭和日本語方言の総合的研究』全5巻(春陽堂1978-)に続く,『続昭和日本語方言の総合的研究』(途中から『続昭和(→平成)…』と改称)全7巻(武蔵野書院1986-)の最終巻である。この巻では日本語史と方言の関わりを探る。古語が方言に残ることから,方言を研究することによって日本語史の研究を進めていく方法が考えられるが,本書はそのような立場に立脚し,日本語の歴史の種々相を描こうとする。章立ては以下のようになっている。
- 第1章 昭和平成期方言相と日本語史「近古」
- 第2章 昭和平成期方言相と日本語史「近世」
- 第3章 日本語史の中の語のアクセント史 ―方言観から出発して―
- 第4章 日本語史点描 ―方言観から出発して―
- 第5章 日本語史展開〈発達〉上での歴史的法則
- 第6章 日本語の将来
(2002年8月20日発行 武蔵野書院刊 A5判横組み 245ページ 8,500円)
片岡邦好・井出祥子編『文化・インターアクション・言語』
この論文集は,20世紀言語学が軽視してきた言語と文化の関わりに注目し,非西欧言語に見られる現象を,情報科学・社会言語学・人類言語学等の手法をもとに論じ,さらに,普遍的と称する西欧語用論理論にたいして,より一般的な仮説・モデルを提示する試みである。英語による論文がほとんどであるが,それらには日本語要旨が付けられている。
- 文化・インターアクション・言語の統合的研究のために―序にかえて―(井出祥子・片岡邦好)
- 言語研究における文化的視座
- The Speaker's Viewpoint and Indexicality in a High Context Culture (Sachiko Ide)
- Honorific Registers (Asif Agha)
- Display Acts in Grounding Negotiations (Yasuhiro Katagiri and Atsushi Shimojima)
- Verbal Nouns in Japanese and Korean: Cognitive Typological Implications (Kaoru Horie)
- Toward an Understanding ‘Sentence’in Spoken Japanese Discourse: Clause-Combining and Online Mechanisms (Tsuyoshi Ono and Shoichi Iwasaki)
- 文化的意味の創造
- Japan in the New York Times: An Intertextual Series as Evidence for Retrieving Indirect Indexicals (Jane H. Hill)
- What's in a Name?: Indexicality and Interaction in Japanese Public Discourse (Scott Saft)
- 日英語における初期語彙習得の相違:指示的対表出的の観点から(桜井千佳子)
- Indexicality and Socialization: Age‐graded Changes of Young Japanese Women's Speech (Makiko Takekuro)
- Emotion, Textual Awareness, and Graphemic Indexicality (Kuniyoshi Kataoka)
(2002年9月5日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 253ページ 2,800円)
藤原与一著『日本語方言辞書〈別巻〉 ―全国方言会話集成―』
全国60カ所程度の地点を訪れ,そこで出会った会話から拾った表現を記録し,そのカードを協力者に検閲してもらっていたものを,活字化したものであるという。調査は昭和20〜30年代に行われたものが多い。生活に密着した生活語を,方法論的に限られていたなかで採集したものである。昭和20年代で「老人にしか使われない語」などとされているものは,現在の調査で拾える可能性はきわめて低いであろう。このような,今となっては忘れられた語などが見られるというのも本書の特色のひとつである。
(2002年9月20日発行 東京堂出版刊 A5判横組み 694ページ 19,000円)
神尾昭雄著『続・情報のなわ張り理論』
本書は,2002年2月に亡くなった著者が2000年にまとめていた原稿を出版したものである。旧著『情報のなわ張り理論』の続編であり,理論のその後の展開,さまざまな言語現象への適用などについて述べられている。第1章「序説」で全体の構成について述べるとともに,なわ張り理論の基本は変わっていないが,技術的に変化してきたので,その点についての内容が展開されると予告する。第2章「情報のなわ張り理論」で理論の前史,内容紹介,変更点について述べる。第3章「情報のなわ張り理論と関連領域」では,証拠性,情報の新・旧,敬語,所有格傾斜,心理文,のだ文,「ね」の性質,呼称,「来る/行く」の問題,久野の視点理論,などの項目が扱われる。第4章「なわ張り理論の意義」では,その社会的意義・言語学的意義について語る。
(2002年9月29日発行 大修館書店刊 A5判横組み 150ページ 1,800円)
田中章夫著『近代日本語の語彙と語法』
これまでに発表した論考を,定年退職を機に一書にまとめたものである。
- 第1章 語彙の構造
- 第2章 語彙調査と基本語彙
- 第3章 語彙論の展開
- 第4章 近代の表記と漢字
- 第5章 標準日本語への動き
- 第6章 近代語法の性格
- 第7章 近代語法の諸相
- 第8章 近代の敬語表現
なお,巻末に関連文献初出一覧がある。
(2002年9月20日発行 東京堂出版刊 A5判縦組み 514ページ 12,000円)
飛田良文・浅田秀子著『現代擬音語擬態語用法辞典』
『現代形容詞用法辞典』(1991),『現代副詞用法辞典』(1994)に続く著作である。前著で副詞を扱った際に,擬音語・擬態語の類を除外していたため,今回の刊行はそれを補完するという意味も持つ。各語の項では用例を挙げ,意味・ニュアンス・暗示内容などを分析した【解説】を載せている。また「同族」表示のもとに関連語を挙げている。巻末索引には収録語のほか,【解説】に記載されていた内容語などが入れてある。また,シンボルマークによるインデックスを利用して,関連する要素を結びつけられるような工夫がなされている。
(2002年9月30日発行 東京堂出版刊 B6判縦組み 694ページ 4,900円)
河原俊昭編著 岡戸浩子・後藤田遊子・中尾正史・長谷川瑞穂・藤田剛正・松原好次・三好重仁・山本忠行著『世界の言語政策 ―多言語社会と日本人―』
世界の各地域の言語政策を(歴史的な視点を加えて)紹介したものである。これからは異文化理解・共存が重要課題になると言われている。近い将来,多言語社会を迎える可能性が高まってきた日本において,その準備をどのようにしておくべきかを考えるため,各地域の言語政策,特に多言語主義に関する歴史・背景・現状を紹介しようという内容である。扱われた地域はアメリカ,モンゴル,フィリピン,ベトナム,ラオス,カンボジア,オーストラリア,ニュージーランド,カナダ,イギリス,アフリカ,南アフリカ共和国など,多彩である。題目・執筆者は以下のようになっている。
- はじめに(河原俊昭)
- 第1章 アメリカの公用語は英語?―多言語社会アメリカの言語論争―(松原好次)
- 第2章 モンゴル国における文字の歴史と民主化後の言語政策(後藤田遊子)
- 第3章 フィリピンの国語政策の歴史―タガログ語からフィリピノ語へ―(河原俊昭)
- 第4章 多民族国家ベトナム,ラオス,カンボジアの言語政策―憲法に見るその理念―(藤田剛正)
- 第5章 オーストラリアの多文化社会とLOTE教育(岡戸浩子)
- 第6章 ニュージーランドにおける多文化共生への模索(岡戸浩子)
- 第7章 カナダの多言語主義の政策と言語教育(長谷川瑞穂)
- 第8章 少数民族言語は生き残れるか?―多言語国家イギリスの言語政策と言語教育―(中尾正史)
- 第9章 2000の言語が話される大陸アフリカにおける言語政策概観(三好重仁)
- 第10章 アフリカーンス語と英語のせめぎ合い―南アフリカ共和国の言語政策史と現状―(山本忠行)
- あとがき(河原俊昭)
(2002年10月1日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 247ページ 2,800円)
米川明彦編著『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』
明治から昭和にかけての新語・流行語を年代順に配列したものである。名称は辞典だが,年代順に配列されているため年鑑・年表風資料のように感じられる。編著者は「はじめに」で,本書の特徴として,三時代にわたる新語・流行語を一書にしたものとしては最初であること,年鑑等の記述を参考にしただけのものではなくできるだけ当時の資料から用例を引いていること,の2点を挙げている。見開き2ページに1年が割り当てられており,その年に流行した数語が挙げられ,その解説が書かれているという体裁である。これに取り上げ得なかったいくつかの語は,〈ことば〉という項目に見出しのみを挙げ,補遺編で簡単な解説を行っている。ほかに,〈できごと〉〈うた〉などの項目があり,当時の歴史的事項,流行歌の情報なども入っている。
(2002年10月10日発行 三省堂刊 A5判縦組み 335ページ 2,200円)