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新刊紹介 (『日本語の研究』第8巻4号(通巻251号)掲載分)
2012年10月3日掲載
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 李光赫著 『日中対照から見る条件表現の諸相』
- 今野真二著 『漢語辞書論攷』
- 青木博史編 『日本語文法の歴史と変化』
- 安田敏朗著 『かれらの日本語―台湾「残留」日本語論』
- 李无未著 『日本漢語音韻学史』
- 藤村逸子・滝沢直宏編 『言語研究の技法―データの収集と分析』
- 橋本ゆかり著 『普遍性と可変性に基づく言語構造の構築メカニズム―用法基盤モデルから見た日本語文法における第一言語と第二言語習得の異同―』
- 吉田妙子著 『日本語動詞テ形のアスペクト』
- ノーム・チョムスキー著・福井直樹編訳 『チョムスキー言語基礎論集』
- 柳慧政(ユ・ヘジョン)著 『依頼談話の日韓対照研究―談話の構造・ストラテジーの観点から』
- 堤良一著 『現代日本語指示詞の総合的研究』
- 塚本秀樹著 『形態論と統語論の相互作用―日本語と朝鮮語の対照言語学的研究』
- 金庚芬(キム・キョンブン)著 『日本語と韓国語の「ほめ」に関する対照研究』
- 堀川智也著 『日本語の「主題」
- 小林芳規著 『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究?V 初期訓讀語體系』
- 矢田勉著 『国語文字・表記史の研究』
- 岡田薫著 『室町時代末期の音韻と表記』
- 小川晋史著 『今帰仁方言アクセントの諸相』
- 藤田耕司・岡ノ谷一夫編 『進化言語学の構築―新しい人間科学を目指して』
- 中井精一著 『都市言語の形成と地域特性』
- 影山太郎編 『属性叙述の世界』
李光赫著『日中対照から見る条件表現の諸相』
日本語の条件文で提起された問題が条件文研究の中でどのように位置づけられるか,また自然言語の条件文研究で提起された問題が日本語の条件文研究でどのように位置づけられるか,という問題意識にもとづく日本語と中国語の対照研究。東北大学に提出された博士学位請求論文をもとにしている。
内容は以下の通り。
- 第I部 序論
- 第1章 日中両語の条件表現における問題点
- 第II部 従来の研究と本論の立場
- 第2章 日本語の条件文の従来の研究
- 第3章 中国語の条件文の従来の研究
- 第III部 各条件形式の日中対照
- 第4章 事態連続を表すト形式
- 第5章 条件文の裏の意味と誘導推論
- 第6章 反事実仮定について
- 第7章 ナラ条件文について
- 第IV部 日中両語の条件表現 共通モデルの構築にむけて
- 第8章 日中両語の条件文の体系
(2011年8月11日発行 風詠社刊 A5判横組み 215頁 3,800円+税 ISBN 978-4-43415-871-1)
今野真二著『漢語辞書論攷』
明治期に陸続と出版された「漢語辞書」について,「辞書」と「漢語」という両面から考察を加えた書。第一章「漢語辞書のとらえかた」では,「和漢の対置」「辞書における摸倣と創意と」「語釈の近さ/遠さ」など,「漢語辞書」に対する著者の考え方・捉え方が提示され,漢語についての整理が試みられている。第二章「漢語辞書の系譜的聯関」では,まず『新令字類』を例にして辞書体資料が漢語辞書に与えた影響と,影響が指摘されている二つの漢語辞書の対照について論じられている。第三章「漢語辞書の改訂増補」では,『校正増補漢語字類』,『新撰字類』,二つの『文明いろは字引』を対象として,漢語辞書の増補改訂について述べられている。第四章「明治期の『節用集』と漢語辞書と」では,これまであまり論じられることがなかった『開化節用集』を採り上げながら,明治期の『節用集』と漢語辞書の関わりについて論じられている。
(2011年10月23日発行 港の人刊 四六判縦組み 296頁 3,000円+税 ISBN 978-4-89629-239-8)
青木博史編『日本語文法の歴史と変化』
編者をリーダーとする国立国語研究所共同研究プロジェクトの研究成果。「古典文献に基づいた実証的な方法論に加え,現代語の理論研究や方言データも視野に入れた幅広い視点から研究を行う」,「各時代語を中心としながらも,一時代の共時的な観察・記述にとどまらなく,歴史変化をダイナミックに描く」,「様々な文法現象を対象とし,どのような記述が歴史変化を「説明」するものとして必要十分であるか,自覚的に取り組んでいく」ことを目指している。
次の10編の論文と解説からなる。
- 古代の助詞ヨリ類―場所格の格助詞と第1種副助詞―(小柳智一)
- 「受身」と「自発」―万葉集の「(ら)ゆ」「(ら)る」について―(仁科明)
- 推移のヌ(福沢将樹)
- 指示詞系接続語の歴史的変化―中古の「カクテ・サテ」を中心に―(岡?ア友子)
- タメニ構文の変遷―ムの時代から無標の時代へ―(吉田永弘)
- 〜テイルの成立とその発達(福嶋健伸)
- 近代語のアスペクト表現についての一考察─ツツアルを中心に─(竹内史郎)
- 述部における名詞節の構造と変化(青木博史)
- 江戸語の推定表現(岡部嘉幸)
- 名詞キリの形式化と文法化(宮地朝子)
- 解説(江口正)
(2011年11月9日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 264頁 3,000円+税 ISBN:978-4-87424-533-0)
安田敏朗著『かれらの日本語―台湾「残留」日本語論』
「ことばはだれのものか」という問いに「ことばとはわたしのものでしかない」という回答を与えるべく,日本植民地時代の台湾で使用されていた日本語,また植民地支配が終わった後も使用され続けている日本語に対する視線のあり方について考察した書。
以下の8章からなる。
- はじめに―「JAPANデビュー」―
- 第一章 日本語への視線―「かれらの日本語」という問題
- 第二章 「かれらの日本語」発生の前提
- 第三章 「かれらの日本語」の発生
- 第四章 「かれらの日本語」の展開―一九四五年以降の台湾と日本語
- 第五章 「日本語教育史」の再編―「成功」の歴史なのか
- 第六章 「かれらの日本語」,その後―一九九〇年代以降の議論
- おわりに―「わたしたちの日本語」の解体にむけて
(2011年11月30日発行 人文書院刊 四六判縦組み 294頁 2,800円+税 ISBN 978-4-40904-102-4)
李无未著『日本漢語音韻学史』
日本人研究者による漢字音研究(中国語音韻史研究)の歴史を,総合的に整理・紹介する。日本語題は『日本の漢語音韻学史』で,目次および裏表紙の内容紹介にも,日本語訳が付されている。分野としては,中国語学に属する研究を中心に取り上げているが,いわゆる国語学・日本語学の研究者の業績にも,十分な目配りが為されている。日本の漢字音研究の蓄積について,総合的に整理した著作は,これまで日本語で書かれたものも存在しなかったので,事実上,当該分野の唯一の解説書となる。
前篇「日本の漢語音韻学研究の特徴」,中篇「音韻文献と漢語音声史研究」,後篇「対音訳音文献と漢語音声史の研究」の三部からなり,それぞれが,4章・15章・9章に分かれている。中篇第七章「日本の学者の《韻鏡》研究」,第十二章「日本の学者による仏教“声明”と漢語声調の関係に対する研究」,後篇第一章「日本漢字音の時間的段階およびそれを確認する根拠と方法」,第五章「日本学者による漢梵対音と音訳に対する研究」などが,とりわけ日本語学に関連の深い章段である。巻末に「主要参考文献」のリストが付される。
(2011年12月発行 北京・商務印書館刊 A5判横組み 453頁 3,600円+税 ISBN 978-7-100-08581-6)
藤村逸子・滝沢直宏編『言語研究の技法―データの収集と分析』
名古屋大学大学院国際開発研究科・国際コミュニケーション専攻「言語教育と言語情報プログラム」の実施過程で着想・実現された書。コーパスの可能性,心理言語学的実験方法,音声収録・分析の手法など,これからの言語研究において習得すべき分析方法を最新の研究成果と共に紹介している。
次の4部16章からなる。
- 第1部 言葉の使用と言語の仕組みに関する研究と方法
- 第1章 多量の実例の観察に基づく言語現象の研究(藤村逸子)
- 第2章 大規模コーパスに基づくコロケーションの研究(滝沢直宏)
- 第3章 会話コーパスの構築によるコミュニケーション研究(藤村逸子・大曾美恵子・大島デイヴィッド義和)
- 第4章 内省に基づく意味の研究(大島デイヴィッド義和)
- 第2部 第二言語の習得に関する研究と方法
- 第5章 アンケート調査データと多変量解析(木下徹)
- 第6章 発話プロトコルを使った認知プロセスの研究(山下淳子)
- 第7章 言語習得研究のための学習者コーパス(杉浦正利)
- 第8章 反応時間を使った言語処理過程の研究(山下淳子・杉浦正利)
- 第9章 アイトラッキングを使った言語処理過程の研究(杉浦正利・山下淳子)
- 第10章 脳機能イメージング技術の言語研究への応用(木下徹)
- 第3部 音声データの収集と分析
- 第11章 音声の録音法(加藤高志)
- 第12章 音素を発見する方法(加藤高志)
- 第13章 音声の見方(成田克史)
- 第4部 文字データの電子的処理
- 第14章 言語研究のためのテキスト処理の基礎知識(大名力)
- 第15章 表計算ソフト,正規表現によるテキスト処理(大名力)
- 第16章 漢字の処理と中国語コーパス(笠井直美)
(2011年12月22日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 352頁 3,400円+税 ISBN 978-4-89476-582-5)
橋本ゆかり著『普遍性と可変性に基づく言語構造の構築メカニズム―用法基盤モデルから見た日本語文法における第一言語と第二言語習得の異同―』
「用法基盤モデル」にもとづき,幼児が第二言語を習得する際に固まり表現から言語構造を発達させていくメカニズムを,第一言語の習得と比較しながら明らかにすることを目指した研究。お茶の水女子大学に提出された学位論文をもとにしている。
内容は以下の通り。
- 第1章 本研究の目的と特徴
- 第2章 理論的背景と先行研究―情報処理・「固まり」と用法基盤モデル・日本語の構造
- 第3章 本研究の枠組み
- 第4章 テンス・アスペクト形式の研究―プロセスにおける普遍的部分と可変的部分の追究 動詞形構造構築モデルの仮説提示
- 第5章 否定形式の研究―ボトムアップ的暫定的ルール「スロット付きスキーマ」による動詞形構造構築モデルの検討
- 第6章 可能形式の研究―動詞形構造構築モデルの検討
- 第7章 助詞の研究―動詞形構造構築モデルの拡大適用から文構造構築モデルの仮説提示へ
- 第8章 総括
(2011年12月25日発行 風間書房刊 A5判横組み 288頁 7,000円+税 ISBN 978-4-7599-1898-4)
吉田妙子著『日本語動詞テ形のアスペクト』
日本語動詞の中止形の一つであるテ形のアスペクトについて考察した研究。「テ形接続文の前件と後件の関係とテ形の意味用法などは,テ形の完了アスペクトの故である」,「動詞テ形の作る補助動詞の意味用法は,テの完了あるいは開始のアスペクトが作用している」という観点から,テ形を含む種々の文法形式の意味分析がおこなわれている。
内容は以下の通り。
- 序章 本書の意義と目的
- 第1章 テ形と連用中止形
- 第2章 テ形の用法
- 第3章 補助動詞の文法化とテ形のアスペクト
- 第4章 テアルとテイルの相互交渉と「受身形+テアル」構文の出現条件
- 第5章 テオク・テミル・テシマウのアスペクトとモダリティ
- 第6章 テモラウ構文の統語的制約と非対格性検証能力
- 第7章 日本語授受表現の階層性―その互換性と語用論的制約の考察から―
- 終章
(2012年1月30日発行 晃洋書房刊 A5判横組み 245頁 2,700円+税 ISBN 978-4-7710-2313-0)
ノーム・チョムスキー著・福井直樹編訳『チョムスキー言語基礎論集』
チョムスキーの思想の展開を鳥瞰できるように編まれた日本語版オリジナル編集の選集(英文タイトルはFoundations of Biolinguistics: Selected Writings)。(1)その時代のチョムスキーの考えをなるべく簡潔に,かつ十全に論じたもの,(2)できれば著書の形で出版されていないもの,(3)できれば邦訳が存在しないもの,という3つの観点から選ばれた次の論考が収録されている。本書のためにチョムスキー自身が書き下ろした序,および編訳者による解題を付す。
内容は以下の通り。
- 解題
- 『言語基礎論集』への序(Introduction)
- 言語理論の論理構造(1975) 序論
- 統辞理論の諸相(1965) 第1章 方法論序説
- 言語の知識―その本質,起源,および使用(1986) 第1章 探究の焦点としての言語の知識,第2章 言語という概念
- 変換文法―過去,現在,そして未来(1988)
- 言語と自然(1995)
- 生物言語学の探究―設計,発達,進化(2007)
(2012年1月27日発行 岩波書店刊 菊判横組み 460頁 6,500円+税 ISBN 978-4-00-022787-2)
柳慧政(ユ・ヘジョン)著『依頼談話の日韓対照研究―談話の構造・ストラテジーの観点から』
2006年に提出された学習院大学審査学位論文を加筆修正したもの。ロールプレイによって得られた日本語・韓国語の依頼談話データ(日本語170件,韓国語192件)を用いて,(1)依頼談話の全体像はいかなるものであるか,どういう構造によって成り立っているのか。(2)「話段」という分析単位を用いることは依頼談話の構造の解明および依頼談話の特徴の把握に有効であるか,(3)依頼者は依頼状況に応じて,目的達成と相手配慮のためにどのようにストラテジーを用いているのか,(4)日本語と韓国語の依頼談話には,類似点及び言語・文化による相違点はあるのか,という4点を明らかにしようとした研究である。依頼をおこなう際の依頼内容の情報提供において,日本語は「情報小出し」を,韓国語は「全情報提示」を重視する傾向があることが指摘されている。
次の8章からなる。
- 第1章 先行研究概観
- 第2章 調査概要
- 第3章 分析の枠組み
- 第4章 「話段」によるデータ分析
- 第5章 日本語と韓国語の依頼談話の構造分析
- 第6章 日本語と韓国語の依頼談話のストラテジー
- 第7章 考察
- 第8章 おわりに
(2012年1月31日発行 笠間書院刊 A5判横組み 300頁 3,200円 ISBN 978-4-305-70528-0)
堤良一著『現代日本語指示詞の総合的研究』
日本語指示詞に関する先行研究を詳細に検証した上で,コ・ソ・アの現場指示用法と文脈指示用法を単一のモデルで簡潔に説明することを目指した研究。大阪大学外国語大学に提出された博士論文をもとにしている。
以下の各章からなる。
- 第1部 記述的考察の部
- 第1章 本書の目的と構成
- 第2章 本書における基本的な立場
- 第3章 文脈指示におけるコ系列指示詞とソ系列指示詞
- 第4章 ソ系列指示詞と変項―「テキスト的意味」を中心に
- 第5章 指定指示と代行指示
- 第6章 テンスを越えて照応する「ソノ/コノ+1項名詞」について
- 第1部のまとめ
- 第2部 モデル構築の部
- 第7章 文脈指示におけるモデル構築
- 第8章 現場指示のソ系列指示詞
- 第9章 指示詞モデルからみたア系列指示詞
- 第10章 文脈指示における指示詞―コ系列指示詞の機能を中心に
- 第11章 談話中に現れるフィラー―アノ(ー)・ソノ(ー)の使い分けについて
- 第2部のまとめ
- 第12章 本研究のまとめ
(2012年2月10日発行 ココ出版刊 A5判横組み 256頁 3,600円+税 ISBN 978-4-904595-17-6)
塚本秀樹著『形態論と統語論の相互作用―日本語と朝鮮語の対照言語学的研究』
日本語と朝鮮語の文法現象に見られる相違が「文法化の進度の違い」,「形態・統語的仕組みの違い」という二つの根本的要因の相違により引き起こされるものであることを明らかにした研究。ひつじ研究叢書(言語編)第95巻。
以下の各章からなる。
- 第1章 序論
- 第2章 これまでの日本語と朝鮮語の対照言語学的研究
- 第3章 日本語における必須補語と副次補語
- 第4章 日本語における格助詞の交替現象
- 第5章 日本語と朝鮮語における数量詞の遊離
- 第6章 日本語における複合格助詞
- 第7章 日本語と朝鮮語における複合格助詞
- 第8章 日本語における複合動詞
- 第9章 日本語と朝鮮語における複合動詞
- 第10章 膠着言語と統語構造
- 第11章 諸言語現象と文法化
- 第12章 諸言語現象と形態・統語的仕組み
- 第13章 品詞と言語現象のかかわり
- 第14章 文法体系における動詞連用形の位置づけ
- 第15章 結論
- 第16章 日朝対照研究と日本語教育
- 第17章 朝鮮語における固有語動詞の受身文
- 第18章 朝鮮語における漢語動詞の受身文
- 日朝対照研究関係 主要参考文献一覧(1993年以前)
- 日朝対照研究関係 主要参考文献一覧(1994年以後)
- 日朝対照研究関係 主要研究教育機関別 博士学位論文一覧
- 用例出典
(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 500頁 8,500円+税 ISBN 978-4-89476-570-2)
金庚芬(キム・キョンブン)著『日本語と韓国語の「ほめ」に関する対照研究』
日本語と韓国語の会話に見られる「ほめる」言語行動を談話レベルから分析した研究。桜美林大学に提出された博士論文をもとにしている。条件統制した120名(日本語母語話者,韓国語母語話者各60名)の大学生同士の会話をデータとして,「ほめる表現」,「ほめられる具体的な対象」,「ほめられた時の反応」,「ほめの談話の流れ」を質的・量的に分析し,日本語と韓国語の類似点と相違点を明らかにするとともに,その結果をポライトネス理論の観点から考察している。全会話データのCD-ROMを付す。ひつじ研究叢書(言語編)第99巻。
次の7章からなる。
- 第1章 序論
- 第2章 研究の枠組みおよびほめに関する先行研究の概観
- 第3章 日本語と韓国語のほめの会話データ
- 第4章 日本語と韓国語のほめの表現と対象
- 第5章 日本語と韓国語のほめに対する返答
- 第6章 日本語と韓国語の「ほめの談話
- 第7章 まとめ
(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 288頁 6,800円+税 ISBN 978-4-89476-589-4)
堀川智也著『日本語の「主題」』
「主題」を談話上の概念ではなく,〈断裂要件〉と〈意味要件〉を満たす一文中の特定の成分を指すという立場から日本語の「主題」について論じた研究。名詞句Pと後続の伝達主要部分Qが「ハ」で結ばれて意味ある言明になる場合をなるべく広くとり,その場合の前後の意味関係を詳細に検討することを通じて,「○○ハ」の意味的立場の種々相を明らかにすることを目指している。ひつじ研究叢書(言語編)第100巻。
第1章で,「主題」の要件(断裂要件,意味要件),「主題提示」と「対比」の関係,助詞論と主題論の関係,「主題」が談話・テクスト上の概念であるか否かについて論じた後,以下の各章において「主題」に関する詳細な議論が展開されている。
- 第1章 序論
- 第2章 格項目の主題化
- 第3章 格項目以外の主題化
- 第4章 主題として機能する格助詞表示の名詞句
- 第5章 対比でも主題提示でもないハ
- 第6章 モノとコトの関係認定による属性叙述文
- 第7章 狭義主題と広義主題
(2012年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 220頁 5,200円+税 ISBN 978-4-89476-593-1)
小林芳規著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究III 初期訓讀語體系』
「I 敍述の方法」「II 訓點の起源」「III 初期訓讀語體系」の三冊からなる大著『平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究』の第三冊。
以下の各章からなる。
- 第一章 總説
- 第二章 明詮大僧都の訓讀法 平安初期における妙法蓮華經の訓讀法(一)
- 第三章 新薬師寺薬師如來像納入妙法蓮華經の平安初期訓點 平安初期における妙法蓮華經の訓讀法(二)
- 第四章 平安初期の妙法蓮華經諸點本の訓讀法 平安初期における妙法蓮華經の訓讀法(三)
- 第五章 大唐三藏玄奘法師表啓―南都における訓讀法変遷を通して 院政期訓讀法との比較による平安初期訓讀法の特徴(一)
- 第六章 觀彌勒上生兜率天經贊―南都における訓讀法変遷を通して― 院政期訓讀法との比較による平安初期訓讀法の特徴(二)
- 第七章 唐代説話の金剛般若經集驗記―北嶺における訓讀法変遷を通して― 院政期訓讀法との比較による平安初期訓讀法の特徴(三)
- 第八章 平安初期の訓讀語の記述
- 第九章 平安初期訓點資料の類別―假名字體を手掛りに―
- 第十章 平安初期における訓讀語の變移
- 第十一章 平安初期における天台宗の讀解
(2012年2月15日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 878頁 22,000円+税 ISBN 978-4-76293-593-0)
矢田勉著『国語文字・表記史の研究』
複線的,多層的,多段階的という特徴を有する国語文字・表記史を俯瞰的に把握することを試みた研究。「国語文字・表記史が中国語とのバイリンガリズムから脱して独自の道を本格的に歩み始めて以降,西洋的文字文化の洗礼を受けて国語文字・表記史が単線的なものになっていく以前の,国語文字・表記史が最もその特色を顕著にしていた部分」を対象として,平仮名と漢字という現代国語表記の中核をなす文字とその表記法について考察がなされている。
以下の6編34章からなる。
- 第一編 文字・表記史研究の目的・方法・資料
- 第一章 文字・表記史研究の目的
- 第二章 文字表記史研究の術語
- 第三章 書記体の分類と非陳述的書記体
- 第四章 書記教育史としての文字・表記史
- 第二編 文字・表記史の原理
- 第一章 国語文字・表記史の概観
- 第二章 文字・表記史と表記史資料の普遍性・特殊性
- 第三章 仮名表記史の原理
- 第四章 表記史的現象としての表記習慣
- 第五章 文字・表記史と誤記・誤写
- 第三編 平仮名史・平仮名文表記史の研究
- 第一章 平仮名書きの意味
- 第二章 平安・鎌倉時代における平仮名字体の変遷
- 第三章 片仮名資料に見える草体仮名の性格
- 第四章 平仮名書きいろは歌の成立と展開
- 第五章 「平仮名らしさ」の基準とその変遷
- 第六章 定家の表記再考
- 第七章 異体仮名使い分けの発生
- 第八章 異体仮名使い分けの衰退
- 第九章 平仮名表記史資料としての書道伝書
- 第四編 漢字文表記史の研究
- 第一章 漢文和化の原理I――中・近世の文書文体における漢文的要素の和化
- 第二章 漢文和化の原理II――助詞の仮名表記
- 第三章 候文の特質I――「候」字の機能
- 第四章 候文の特質II――倒置記法の簡略化とその原理
- 第五章 国語漢字書記における楷行草
- 第五編 印刷と文字・表記史
- 第一章 印刷時代における国語書記史の原理
- 第二章 近世整版印刷書体における平仮名字形の変化
- 第三章 漢字仮名交り文の成立
- 第四章 漢字仮名交り文要素としての振り仮名
- 第六編 文字意識史と文字研究史
- 第一章 文字研究史再考
- 第二章 鈴屋の文字意識とその実践
- 第三章 気吹舎の文字意識とその実践
- 第四章 近世における漢字研究の方法
- 第五章 近世いろは歌研究史
- 第六章 「倭仮名字反切義解」の成立年代
- 第七章 テキスト意識の展開
(2012年2月16日発行 汲古書院刊 A5判縦組み 840頁 19,000円+税 ISBN 978-4-76293-602-9)
岡田薫著『室町時代末期の音韻と表記』
室町時代末期,天正・文禄・慶長の時代に限定して,特殊音素の音韻とそれに対応する仮名表記について研究したもの。立教大学に提出された学位論文をもとにしている。資料の詳細な調査にもとづき,促音・撥音の表記の用いられ方の法則性,資料が書かれた年代や位相と表記との関係など,表音的表記の傾向が顕著になったとされる室町時代末期の促音・撥音表記の様相が明らかにされている。
以下の5章からなる。
- 第1章 特殊音素の音韻と仮名表記研究の意義
- 第2章 キリシタン資料における特殊音素の仮名表記
- 第3章 消息における特殊音素の仮名表記
- 第4章 軍記物語における特殊音素の仮名表記
- 第5章 室町時代末期の音韻と表記
(2012年2月25日発行 おうふう刊 A5判縦組み 448頁 15,000円+税 ISBN 978-4-273-03639-3)
小川晋史著『今帰仁方言アクセントの諸相』
沖縄本島北部の今帰仁方言のアクセントに関する研究。神戸大学に提出された博士論文をもとにしている。複数の先行研究をふまえたうえで,先行研究による資料と自身のフィールドワークによるデータを使用し,今帰仁方言が昇り核の体系を持つこと,韻律単位がモーラであること,方言内にアクセント型の有標性階層が存在することなどについて,記述と理論の両面から詳細な分析がなされている。
次の7章からなる。巻末にアクセント資料(19種)が付されている。
- 第1章 序論
- 第2章 今帰仁村西部における方言アクセント
- 第3章 『沖縄今帰仁方言辞典』の再分析
- 第4章 フット構成とアクセント付与
- 第5章 今帰仁村における標準語語彙のアクセント
- 第6章 今帰仁方言に至る歴史的変化
- 第7章 結論
(2012年2月29日発行 ココ出版刊 A5判横組み 280頁 4,800円+税 ISBN 978-4-904595-16-9)
藤田耕司・岡ノ谷一夫編『進化言語学の構築―新しい人間科学を目指して』
人間に固有とされる言語能力の生物学的な意味での起源・進化の実相の解明を目指す進化言語学(evolutionary linguistics)に関するわが国初の専門論文集。
次の3編13章からなる。巻末に「座談会 進化言語学を考える」と「用語解説」を付す。
- 第1章 進化言語学の構築を目指して(藤田耕司・岡ノ谷一夫)
- 言語学編
- 第2章 進化言語学の方法論(池内正幸)
- 第3章 パリ言語学会が禁じた言語起源(山内肇)
- 第4章 統語演算能力と言語能力の進化(藤田耕司)
- 第5章 ブローカ野における階層構造と回帰的計算(遊佐典昭)
- 第6章 行動,認知,社会性に動機づけられた言語(野澤元)
- 生物学編
- 第7章 進化言語学の生物学的構築(岡ノ谷一夫)
- 第8章 言語の進化=生き方の進化という観点から(内田亮子)
- 第9章 言語障害と分子遺伝学から考える言語進化(岩本和也・笠井清登)
- シミュレーション・モデリング編
- 第10章 相互音声模倣による乳幼児の母音獲得の構成的モデル(浅田稔・吉川雄一郎)
- 第11章 われらの脳の言語認識システムが生み出す音楽(東条敏)
- 第12章 言語進化の動的理解(笹原和俊)
- 第13章 繰り返し学習モデルによる文法化の構成論的研究(橋本敬)
(2012年3月12日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 325頁 4,200円+税 ISBN 978-4-89476-594-8)
中井精一著『都市言語の形成と地域特性』
大阪大学に提出された博士学位論文を加筆修正したもの。わが国で最も歴史と文化資本の蓄積した都市社会である近畿中央方言域の待遇表現形式に焦点をあて,その成立と特質,周辺地域への伝播をフィールドワークにより明らかにするとともに,ことばの生成と変容,拡大が都市のもつ「地域特性」とどのように関係しているかについて,社会言語学的方言研究の観点から解明しようとした研究である。全体を通して,方言を「地域特性」との関係において考察する,新たな社会言語学的方言研究の方法を提示することを意図している。
次の6章からなる。
- 第1章 日本のフィールド言語学と都市研究
- 第2章 近畿中央部の地域特性と言語
- 第3章 近畿中央部の主要待遇表現形式に関する史的展開
- 第4章 近畿中央部型待遇表現形式の拡大と都市社会
- 第5章 近畿中央部型待遇表現形式の受容と地域構造
- 第6章 社会言語学的方言研究の発展と都市言語
(2012年3月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 276頁 8,000円+税 ISBN 978-4-7576-0618-0)
影山太郎編『属性叙述の世界』
これまであまり取り上げられてこなかったモノの性質・特性・属性に関わる表現に注目し,標準日本語だけでなく諸方言や外国語も視野に入れ,従来の動詞中心の言語学では見えなかった言語の側面を明らかにすることを意図して編まれた論文集。
次の4部11編の論文を収録する。
- 第I部 全体の展望
- 属性叙述の文法的意義(影山太郎)
- 第II部 主題文と属性叙述
- 日本語コピュラ文の意味と構造(岸本秀樹)
- 評価を絞り込む表現形式(八亀裕美)
- 属性叙述と主題標識―日本語からのアプローチ―(益岡隆志)
- 第III部 属性叙述と時間
- 日本語における属性の事象化と一時性―標準語と方言の差異に着目して―(加藤重広)
- 時間的限定性という観点が提起するもの(工藤眞由美)
- 状態をめぐって(仁田義雄)
- 第IV部 属性叙述と統語構造
- 味覚・嗅覚・聴覚に関する事象と属性(澤田浩子)
- 日本語のいわゆる〈主語から目的語への繰り上げ構文〉(Stephen Wright Horn)
- 中国語の付加詞主語文について(沈力)
- コリャーク語の属性叙述専用形式―項から主題への変換のメカニズム―(呉人惠)
(2012年3月28日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 304頁 3,800円+税 ISBN 978-4-87424-546-0)