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学会の名称について(中間報告)
(『国語学』53巻4号 2002・10・1 p.179-181)
国語学会代表理事 山口佳紀
すでにご承知のとおり、本学会では、学会名称を従来どおり「国語学会」とするか、それとも「日本語学会」と改めるか、問題になっています。理事会では、かねてよりこの問題について審議してまいりましたが、皆様に検討していただくべき理事会原案がまとまりましたので、これまでの経過の説明を兼ねて、ご報告したいと思います。
(一)これまでの経過
(1)現在の学会名である「国語学会」を「日本語学会」と改称すべきではないかという意見は、以前から見られましたが、今期の理事会ではその問題を正式な議題として取り上げ、検討を進めてまいりました。
(ア)『国語学』誌上フォーラム
第52巻2号(2001年6月刊)〜第53巻2号(2002年4月刊)
(イ)大会シンポジウム
「いま「国語学」を問い直す」(2002年度春季大会〈東京都立大学〉)
(ウ)学会ホ−ムページ
「学会名称問題に関する意見欄」の開設(2002年7月8日)
(3)今年度の春季大会時における評議員会では、秋季大会時(2002年11月9日)に臨時評議員会を開き、主としてこの問題について論議することが決定されました。
(二)名称問題の扱いに関する理事会の方針
(1)学会名称の変更という問題は、会則の変更に該当し、会則上は評議員会の決定事項です。したがって、さしあたり11月の臨時評議員会で何を諮るかが問題ですが、そこで理事会原案を全く提示せず、単に議論の場を提供するというのでは、生産的な論議が行われずに終わる恐れがあります。したがって、何らかの形で理事会原案を示す必要があると考えられます。
(2)理事会で考えた原案は、[原案の主文][決定の方法][今後の手順]の三項からなります。これをまず評議員会に示し、[決定の方法]について賛成が得られたら、評議員投票および会員投票にかけるという順序になります。
(3)理事会原案の内容は、以下に示すとおりですが、これを理事会原案として提出することを認めるかどうかについては、理事全9名の投票によって決することにいたしました。この投票は、改称そのものに対する賛否を問うものではなく、この問題に決着をつけるための手続としての下記原案を認めるかどうかを問うものです。その結果は、賛成8名、反対1名で、理事会原案として提出することが決まりました。
(三)理事会の原案
理事会の原案は、以下のとおりです。
(1)[原案の主文]
本学会の名称を創立60周年(2004年)を期して「国語学会」から「日本語学会」に改める。会則の文言も、それに応じて改める。
(2)[決定の方法]
(ア)上記を理事会の原案主文として、評議員投票および会員投票にかける。
(イ)評議員投票は、評議員の現在数の2/3以上の賛成をもって可決とする。もし否決された場合は、今回は見送る。
(ウ)上記で可決された場合には、会員投票にかける。会員投票は、投票総数の過半数の賛成をもって可決とする。その際、会員の投票総数の多寡は問題にしない。もし否決された場合は、今回は見送る。
(3)[今後の手順]
(ア)理事会は、今年度(2002年)秋季大会(徳島大学)の臨時評議員会に[原案の主文][決定の方法][今後の手順]に関する原案を提示する。
(イ)臨時評議員会で[決定の方法]に関する原案が承認された場合には、その後に予定されている臨時総会に報告した上で、来年度(2003年)春季大会(大阪女子大学)以前に、郵便投票によって評議員投票ならびに会員投票を実施する。その結果は、春季評議員会で報告して承認を求め、総会に報告する。
(四)理事会原案に関する説明
上記(三)の各項に関する説明は、以下のとおりです。
(1)[原案の主文]について
「国語学会」は日本語を研究対象とする各種の研究者を糾合する組織として創立され、発展してきたものである。所属する機関や学派などの別を超えて、多様な研究者が交流し、刺激し合うというところに、本学会の特長が認められてきたし、今後もまたそうでなければならない。
ただし、「国語学」という名称がかつて有していた包括性が失われてきた現在、その名を冠した「国語学会」という名称を使い続けることは、本学会の今後の活動にとって、決して有利なことではない。
もともと「国語学」という名称の下で行われた研究も、さまざまな立場や方法を許容するものであって、決して偏狭なものではなく、近世以来の国学的な日本語研究を継承する一方で、世界における最新の言語学的方法をも積極的に導入してきたという歴史をもつ。
しかし、「国語学」という名称は、日本人による研究のみを前提にしているかのように感じられる点、また日本国内だけに視野を限定した研究であるかのように思われやすい点など、本学会で現実に行われている諸研究の実態を十分には反映しなくなってきている。
その点、「日本語学」は、そうした誤解を受けるおそれを免れており、その名を冠する「日本語学会」は、多種多様な研究者を統合する学会として、望ましいものと考えられる。
なお、〈創立60周年(2004年)を期して〉とした理由は、改称が決定したとしても、学会誌の名称をどうするかを含めて、種々の準備が必要であり、また再出発の節目としてふさわしいと考えられるためである。
(2)[決定の方法]について
学会名称の変更という問題は、会則の変更に該当し、会則上は評議員会の決定事項(評議員の現在数の2/3以上の賛成を要する)であるが、問題の重要性を考慮し、評議員投票だけでなく、会員投票にかけるのがよいと考えられる。
(3)[今後の手順]について
『国語学』誌上フォーラム、大会シンポジウム、学会ホ−ムページ「学会名称問題に関する意見欄」の開設等によって、この問題に対する会員の理解や関心が高まっている。また、論点もほぼ出尽くしたかと思われる。この時期に何らかの形で決着をはからないと、決めるべき時機を失することになる。賛否いずれであるにせよ、会員の総意に基づくということであれば、いずれの側の会員にとっても納得しやすいであろう。
以上が、理事会でまとめられた原案の内容です。この問題に関して、何かご意見がありましたら、理事会宛にお寄せくださいますようお願いいたします。
(2002年9月25日掲載)