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新刊紹介 (『日本語の研究』第8巻2号(通巻249号)掲載分)
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 前新透著,波照間永吉・高嶺方祐・入里照男編著 『竹富方言辞典』
- Hideki Saigo著 "The Japanese Sentence-Final Particles in Talk-in-Interaction"
- Etsuko Yoshida著 "Referring Expressions in English and Japanese: Pattern of use in dialogue processing"
- 小松英雄著 『平安古筆を読み解く―散らし書きの再発見―』
- 中村明(主幹)・佐久間まゆみ・高崎みどり・十重田裕一・半沢幹一・宗像和重編 『日本語文章・文体・表現事典』
- 市川熹著 『対話のことばの科学―プロソディが支えるコミュニケーション―』
- 中島平三監修,松本裕治編 『言語と情報科学』
- 小倉肇著 『日本語音韻史論考』
- 荻野綱男・田野村忠温編 『コーパスとしてのウェブ』
- 金水敏・高山善行・衣畑智秀・岡崎友子著 『文法史』
- 内田聖二著 『語用論の射程―語から談話・テクストへ―』
- 渡辺実著 『国語表現論』
- 簡月真著 真田信治監修 『海外の日本語シリーズ1 台湾に渡った日本語の現在―リンガフランカとしての姿―』
前新透著,波照間永吉・高嶺方祐・入里照男編著『竹富方言辞典』
沖縄県八重山諸島の竹富島の方言を集めた辞典である。沖縄諸島と八重山諸島はかなり離れており,方言が異なっていることが知られているが,同じ方言群にあっても島ごとに方言差があるので,島の言葉を詳細に記述したというところに価値がある。著者が退職後四半世紀をかけて収集したものに教え子や専門家が肉付けをして成り立ったものであるという。まず「口絵(写真),はじめに,凡例」に続き,「竹富方言の音韻・文法概説」(西岡敏・小川晋史)が述べられる。本文編は1,262ページにわたる。見出しが竹富方言の五十音順配列(収録語17,700)で示され,それぞれの語に音声表記(IPA),アクセント(ただし主として2拍語までの判別できているもの)が表記される。次に品詞,共通語による意味記述,竹富方言の例文,その共通語釈が記される。また,必要に応じて沖縄古語,石垣方言,首里方言との対応についての注記がある。付録編では図を使って地理的位置,自然物の名称,集落とその屋号名,家屋配置・家内部の呼称,民具の名称を示す。さらに簡単な「あいさつ・会話例文集」が載っている。索引編(高嶺亨)は共通語から竹富方言を引けるようにしてある。
内容は以下のようになっている。
- はじめに(前新透)
- 竹富方言の音韻・文法概説(西岡敏・小川晋史)
- 本文編
- 付録編
- 索引編(高嶺亨)
- あとがき(前新透)
- 跋(波照間永吉)
(2011年2月22日発行 南山舎刊 B5判横組み 1,552頁 25,000円+税 ISBN 978-4-901427-25-8)
Hideki Saigo著 "The Japanese Sentence-Final Particles in Talk-in-Interaction"
本書の目的は,終助詞「よ」「ね」「よね」の意味機能を考察するために筆者が設定した仮説を検討し,日本語非母語話者の用いる終助詞に不自然さが生じる要因を考察することにある。本書は7章で構成される。1章では本書の目的が示される。2章では関連する先行研究を概観し,問題点の指摘と本研究の位置づけを行う。3章では本書で提示される仮説を実証的に検証する方法(データ収集の方法論,話者の選出方法,データの選択,データ分析法など)を述べる。4章では,2人の日本語母語話者によるスモールトーク(Small talk)から終助詞の使用について分析を行う。5章では仮説の有用性を目標志向型のインタアクション(goal-directed talk-in-interaction)の見地から検討する。6章では日本語母語話者が日本語非母語話者との会話に出現する終助詞の使用例を用いながら,日本語非母語話者の用いる終助詞の不自然さについて考察する。7章では本書で明らかになった点が語用論,研究法,日本語教育などにどのように活用できるかについて言及する。本書はPragramtics and beyond new seriesの205巻として刊行された。
本書の内容は以下の通り。
- Chapter 1 Introduction
- Chapter 2 Sentence-final interactional particles in Japanese: A reconsideration
- Chapter 3 Methodology
- Chapter 4 The particles in an unmarked talk-in-interaction type
- Chapter 5 The particles in a marked talk-in-interaction type
- Chapter 6 The particles in native/non-native talk-in-interaction
- Chapter 7 Conclusions and implications
- Appendix A Transcription of an unmarked talk-in-interaction type analyzed in Chapter 4
- Appendix B Transcription of a marked talk-in-interaction type analyzed in Chapter 5
- Appendix C Transcription of native/non-native talk-in-interaction analyzed in Chapter 6
(2011年3月発行 John Benjamins Co.刊 A5判横組み 304頁 USD143.00 ISBN 978-90-272-5609-6)
Etsuko Yoshida著 "Referring Expressions in English and Japanese: Pattern of use in dialogue processing"
本書は対話処理(discourse processing)における言及表現(referring expression)に見られる特徴を日本語と英語を例に通言語的に考察したものである。対話に登場するもの(entity)と話題交替または談話構成との関係性,ならびに話題選択と言及表現の出現法の仕方を,centering frameworkという概念を援用しながら論じる。本書は3つの事柄を考察の対象とする。まず英語と日本語の対話を事例として,言及表現を意味論的,語用論的観点から考察する。次に前方照応表現,ならびに指示表現が談話の特定の要素を構成し,または焦点化する方法を論じる。最後に地図タスクコーパス(Map Task Corpus)で用いられる言及表現の選択の仕方,ならびにその出現方法について考察し,話者が会話参加者が共有する条件に反する形で出現する登場人物をどのように判別するのかを明らかにすることを目指す。本書はPragramtics and beyond new seriesの208巻として刊行された。
本書の内容は以下の通り。
- Chapter 1 Introduction
- Chapter 2 Approaches to referring expressions
- Chapter 3 Approaches to deictic expressions
- Chapter 4 Data collection
- Chapter 5 Centering and dialogue
- Chapter 6 Referring expressions and local coherence of discourse
- Chapter 7 Referring expressions and global discourse structure
- Chapter 8 Collaborative nature of referring and structuring in discourse
- Chapter 9 Conclusion
- Appendix A The Samples of English and Japanese Map Task Discourse
- Appendix B Conventions in transcripts
(2011年6月発行 John Benjanmins Pub.Co.刊 A5判横組み 224頁 USD135.00 ISBN 978-90-272-5612-6)
小松英雄著『平安古筆を読み解く―散らし書きの再発見―』
本書は,古筆の「散らし書き」に対する筆者の新解釈を示したものである。平安時代の古筆の中で,方形の1枚の色紙,あるいは2枚をセットにして,1首の和歌を「分かち書きとは違う機能を担わせて」数行に分割して書いたものを本書では「散らし書き」と呼ぶ。「仮名文字の字種や書体,大きさ,濃淡の書き分け,連綿の断続」が,書き手の芸術表現であると同時に和歌の解釈を示している可能性があるとし,従来の解釈への批判を織り交ぜながら新たな視点を提示する。例えば,「色紙の書き手が,和歌の作り手の心の乱れを不規則な連綿に反映させている」,(各行頭の右から左への傾斜について)「虚勢を張ったようなことばづかいと裏腹に,だんだん肩を落としていることを表わしているように」見える,等の可能性が示唆される。冒頭に,本書で解説する寸松庵色紙等カラー図版14点を配し,また必要に応じて本文中にも該当部分の切り抜きを再提することで,読者の理解の一助としている。
本書の内容は以下のようになっている。
- 寸松庵色紙(1) としふれば
- 寸松庵色紙(2) こづたへば
- 寸松庵色紙(3) ん(む)めのかを
- 寸松庵色紙(4) 秋の夜は
- 寸松庵色紙(5) おくやまに
- 寸松庵色紙(6) さきそめし
- 継色紙(1) はなのいろは
- 継色紙(2) めづらしき
- 継色紙(3) あまつかぜ
- 継色紙(4) きみをおきて
- 升色紙(1) かきくもり
- 升色紙(2) かみなゐの
- 升色紙(3) いまははや
- 秋萩帖 あきはぎの
(2011年6月10日発行 二玄社刊 B6判縦組み 284頁 1,800円+税 ISBN 978-4-544-01165-4)
中村明(主幹)・佐久間まゆみ・高崎みどり・十重田裕一・半沢幹一・宗像和重編『日本語文章・文体・表現事典』
文章論・文体論・表現論の分野をまとめて一望できるようにと作られた総合的事典である。全体は10章に分かれる。第1〜4章はそれぞれ「表現」「文章」「文体」「レトリック」の用語解説で,基礎的な用語の解説をしている。第5章は「ジャンル別文体概観」で,新聞の文体,雑誌の文体などのように分けてその説明をしていく。第6章は「文章・文体・表現の基礎知識」で,話しことば・書きことばの特質,文章構成の型,句読点のルールなどの項目が立てられている。第7章「目的・用途別文章作法」には,自分史の書き方,レポートの書き方などの項目が並ぶ。第8章は「近代作家の文体概説と表現鑑賞」で,仮名垣魯文から井上ひさしまで202人を選び,文章を引用してその作家の特質を説明している。第9章「近代の名詩・名歌・名句の表現鑑賞」も主に人物を選び,その有名作品を取り上げて表現鑑賞を行う。第10章「文章論・文体論・表現論の文献解題」は,時枝誠記『文章研究序説』,山本正秀『近代文体発生の史的研究』,谷崎潤一郎『文章読本』など60冊余りを取りあげ,文献の説明をしている。
内容は以下のようになっている。
- 第1章 表現用語の解説
- 第2章 文章用語の解説
- 第3章 文体用語の解説
- 第4章 レトリック用語の解説
- 第5章 ジャンル別文体概観
- 第6章 文章・文体・表現の基礎知識
- 第7章 目的・用途別文章作法
- 第8章 近代作家の文体概説と表現鑑賞
- 第9章 近代の名詩・名歌・名句の表現鑑賞
- 第10章 文章論・文体論・表現論の文献解題
(2011年6月30日発行 朝倉書店刊 B5判縦組み 848頁 19,000円+税 ISBN 978-4-254-51037-9)
市川熹著『対話のことばの科学―プロソディが支えるコミュニケーション―』
著者は工学系の音声情報処理などに携わってきたが,人間がある時間の中で言語を処理していけることには何が関わっているのかに関心を持った。自分の言葉が終わらないうちに相手がそれに合わせて話し始めることができるのはなぜかに興味を持ったからである。また,従来のモデルでは,聞き手が音を認識した後,心内辞書にアクセスしてその音形に当てはまる語を選定すると説明されていたが,そのやり方では実際の対話の場で言葉を処理していけないと考えたからである。本書は,言語・心理・認知などの研究も参考にしながら,実時間対話を可能にする予測のための情報がプロソディの中に存在することを実験に基づいて示したものである。プロソディに予告情報があることを論じるほか,他にどんな要素が内蔵されているかについても考察している。また,プロソディについては,視覚による伝達である手話,触覚による伝達である指点字などの言語にも,音声言語と同じようなプロソディ要素があることを指摘し,最終的にはそれらを包括した対話のモデルを作成している。
内容は以下のようになっている。
- 第1章 実時間コミュニケーションとプロソディ
- 第2章 対話研究の概要
- 第3章 実時間音声対話を支えるもの
- 第4章 手話(実時間視覚言語)とプロソディ
- 第5章 指点字(実時間触覚言語)とプロソディ
- 第6章 発話者の情報とプロソディ
- 第7章 身体動作・表情とプロソディ
- 第8章 知覚・認知と実時間処理
- 第9章 実時間対話言語のモデル
(2011年6月30日発行 早稲田大学出版部刊 A5判横組み 252頁 5,600円+税 ISBN 978-4-657-11711-3)
中島平三監修,松本裕治編『言語と情報科学』
言語学を中心に関係諸分野との関わりを追うことにより言語学研究の可能性を探ろうとするシリーズ朝倉〈言語の可能性〉の第6巻である。この巻では情報科学との接点を考えるということで,コンピュータによる自然言語処理の研究を紹介する内容となっている。全体は9章からなる。「1.総論」,「2.自然言語処理概要」に続き,「3.文法理論と情報科学」では文法理論と言語処理の関わりを語彙化文法を中心に述べる。「4.語の共起と類似性」では語の共起の強さをはかる手法について扱う。「5.言語資源と言語知識獲得」では,コーパスへの情報付与とその技術を扱い,「6.コーパスと言語学」では言語学研究におけるコーパスの意義とその現状について述べる。「7.談話と計算」は談話処理のための要素間の関係認定処理を紹介する。「8.文書処理」では機械による文書の探索・分類・要約・検索について述べる。「9.可能性」では今後の発展・応用について語る。
内容は以下のようになっている。
- 1. 総論(松本裕治)
- 2. 自然言語処理概要(松本裕治)
- 3. 文法理論と情報科学(宮尾祐介・辻井潤一)
- 4. 語の共起と類似性(相澤彰子・内山清子)
- 5. 言語資源と言語知識獲得(乾健太郎・関根聡)
- 6. コーパスと言語学(前川喜久雄)
- 7. 談話と計算(石崎雅人・飯田龍)
- 8. 文書処理(藤井敦・徳永健伸)
- 9. 可能性(松本裕治)
(2011年7月5日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 224頁 3,800円+税 ISBN 978-4-254-51566-4)
小倉肇著『日本語音韻史論考』
日本語の音韻史に関する既発表論文および新規執筆論文を一書にまとめたものである。全体は2部に分かれる。第1部「日本語音韻史」の第1〜6章は音韻体系の観点から,母音体系,口蓋垂音,合拗音,開拗音の史的考察を行ったものである。第7〜11章はいわゆる語音排列則の観点から音韻史を描く試みであり,サ行子音,ア行の「衣」とヤ行の「江」,「oとwo」「jeとwe」「iとwi」の合流過程などを扱う。第12章は『国語学』161の音韻(史的研究)分野の「展望」であるが,自分の見方を示している点があるということから収録されている。第2部「付論」には,音韻史が直接的なテーマではないが,音韻・語法などの日本語史にかかわる論文を収める。万葉集の「いけるともなし」,宣命に見られる「テシ…助動詞」という構文,「がに」という助詞の歴史,枕草子「雪のいと高う降りたるを」章段の「かうろほうの雪」という語句の解釈(テクスト解析)を扱っている。
内容は以下のようになっている。
- 第1部 日本語音韻史
- 1 上代日本語の母音体系
- 2 オ列甲乙の合流過程―u〜o(1)の音相通現象―
- 【補説】『古事記』における「ホ」の甲乙二類の存在
- 3 上代イ列母音の音的性格
- 4 推古期における口蓋垂音の存在
- 5 合拗音の生成過程
- 6 開拗音の生成過程
- 7 サ行子音の歴史
- 8 「衣」と「江」の合流過程―語音排列則の形成と変化―
- 9 〈大為尓歌〉考―〈阿女都千〉から〈大為尓〉へ
- 10 〈あめつち〉から〈いろは〉へ― 日本語音韻史の観点から―
- 11 「オ(o)」「ヲ(wo)」,「エ(je)」と「ヱ(we)」,「イ(i)」と「ヰ(wi)」の合流過程―w化,合拗音との関わり―
- 12 音韻(史的研究)―昭和63年・平成元年における国語学界の展望―
- 第2部 付論
- 1 「伊家流等毛奈之」
- 2 宣命の構文―「テシ……助動詞」―
- 3 助詞「がに」の歴史―その起源と「がね」「べく」との交渉―
- 4 枕草子「少納言よ かうろほうの雪 いかならん」
(2011年7月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 380頁 13,000円+税 ISBN 978-4-7576-0595-4)
荻野綱男・田野村忠温編『コーパスとしてのウェブ』
日本語研究に必要なIT関連知識とその活用法を解説する「講座 ITと日本語研究」の第6巻である。この巻ではウェブを言語資料体と見た場合,言語研究として有益な結果をどうやって導きだせるか,ウェブ上のデータをどう使えばよいかが記されている。全体は5章からなる。まず,第1章「ウェブ検索概論」(小野正弘)では,ウェブ利用の注意点と,ウェブ検索によるオノマトペや「走る」「駆ける」を扱った類義語の研究の例を挙げる。第2章「ウェブ検索の応用」(岡島昭浩)では,具体的な検索手法(AND検索,ワイルドカードによる検索など)を説明し,ブログなどの検索,検索容易化のための手段について述べる。第3章「ウェブを利用した研究例」(服部匡)では,共起関係の分析,周辺的な用例の発見,語形変異,文法変異,地域による変異の研究を紹介している。第4章「自分のプログラムでウェブにアクセスできると」(小木曽智信)では,データのダウンロード,データ整形,全文検索システム「ひまわり」の利用について述べる。第5章「ウェブと他のコーパスとの比較」(前田広幸)では,他コーパスとの比較によりウェブコーパスの特性を探る。
内容は以下のようになっている。
- 第1章 ウェブ検索概論(小野正弘)
- 第2章 ウェブ検索の応用(岡島昭浩)
- 第3章 ウェブを利用した研究例(服部匡)
- 第4章 自分のプログラムでウェブにアクセスできると(小木曽智信)
- 第5章 ウェブと他のコーパスとの比較(前田広幸)
(2011年7月25日発行 明治書院刊 A5判横組み 218頁 2,400円+税 ISBN 978-4-625-43443-3)
金水敏・高山善行・衣畑智秀・岡崎友子著『文法史』
「シリーズ日本語史」全4巻(音韻史・語彙史・文法史・日本語史のインターフェース)のうち第3巻。形態論,統語論,接辞の意味・機能,代名詞の機能,その他直示・人称に関わる現象,語用論的ルールといった範囲の文法に関する歴史的変化を取り上げる。古代から現代にいたる日本語の用例を挙げながら,日本語文法研究の出発点から現在に至る文法論の発展までを多角的に分析・記述する。第1章第1節「文法はどこにあるか」では,「文法の範囲」「階層的言語観(子供の言語・地域の言語・広域言語)」「日本語への文法理論の適用」について概説し,本書で扱う文法史への導入としている。執筆担当は以下の通り。「第1章 文法史とは何か」(金水),「第2章 述部の構造」(高山),「第3章 統語論」(金水),「第4章 係助詞・副助詞」(衣畑),「5章 直示と人称 5.1 人称に関わる現象の歴史的変化」(金水),「5.2 指示代名詞・指示副詞」(岡崎)。
本書の内容は以下のようになっている。
- 第1章 文法史とは何か
- 1.1 文法はどこにあるか
- 1.2 国文法
- 1.3 生成文法
- 1.4 社会言語学・文法化・歴史語用論
- 1.5 新しい歴史文法研究と今後の展開
- 第2章 述部の構造
- 2.1 活用
- 2.2 テンス・アスペクト
- 2.3 ムード・モダリティ
- 第3章 統語論
- 3.1 はじめに
- 3.2 統語論から見た活用
- 3.3 格と文法役割―「の」「が」「を」
- 3.4 活用と統語構造の変化
- 3.5 準体句およびその周辺の構造
- 3.6 係り結び小史
- 3.7 結論
- 第4章 係助詞・副助詞
- 4.1 はじめに
- 4.2 係助詞・副助詞の生起環境
- 4.3 格助詞との前後接
- 4.4 付加節と係助詞・副助詞
- 4.5 係助詞・副助詞の形成過程
- 第5章 直示と人称
- 5.1 人称に関わる現象の歴史的変化
- 5.2 指示代名詞・指示副詞
(2011年7月28日発行 岩波書店刊 A5判横組み 256頁 3,900円+税 ISBN 978-4-00-028129-4)
内田聖二著『語用論の射程―語から談話・テクストへ―』
関連性理論を背景として多様な現象を分析したものである。英語の例を扱うことが多いが,日本語の例も扱っている。全体は5章からなる。第1章「関連性理論の概要」では,グライス流の語用論との違いを指摘しつつ,関連性理論の基本的な考え方と最近の動向について述べる。第2章「語用論的情報と語彙」では,well ,OK ,of course ,in fact ,のような語あるいは句レベルの談話機能語を分析する。また,それらの語などが理論においてどのような位置づけになるのかを論じる。第3章「ダイクシス」では,場所,人称,時の表現が何を指すのかという問題を語用論の観点から扱う。第4章「メタ表象と言語現象」では,他人が思っていることを自分の頭に思い描くメタ表象の能力が言語現象とどのように関わっているかを扱う。遂行分析の再評価,引用現象の分析,日本語の「たい/たがる」や授与動詞の分析を行っている。第5章「テクストの視点から」では,語用論から見た定冠詞の機能,テクストにおける「サスペンス」や「ひねり」の問題などを論じる。
内容は以下のようになっている。
- イントロダクションにかえて
- 第1章 関連性理論の概要
- 第2章 語用論的情報と語彙
- 第3章 ダイクシス
- 第4章 メタ表象と言語現象
- 第5章 テクストの視点から
- 終わりに
(2011年7月31日発行 研究社刊 A5判横組み 268頁 3,500円+税 ISBN 978-4-327-40159-7)
渡辺実著『国語表現論』
後に単著につながらなかったテーマを扱った既発表論文(あるいは,その論文のある部分を深めたが故に,アイディアはあってもそこを十分に追究しなかったテーマが含まれる既発表論文),自らの関心から出発したテーマではないが頼まれて書くうちにその内容を深めることができたとする文章,さらにエッセイなどをまとめて一書としたものである。塙書房からは『国語構文論』,『国語意味論』に続く著書となる。第1部「言葉にこめられた心を追う」には,近代文章史を扱った論文,太宰治の『走れメロス』の読みを扱った論文,類聚名義抄を扱った論文,蘭学者やヘボンなど近世・近代における日本語への翻訳者を扱った論文,陳述副詞を扱った論文,常用漢字を扱った論文を収める。第2部「思考感情の外化としての言語表現」には,学燈社などの雑誌に載せた文章,光村図書の「中学校国語教育相談室」に載せた文章,表現について書いた文章を載せる。附録「文章表現の楽しみ」には,勤務した大学の新聞や雑報に寄せたエッセイなどを収める。
内容は以下のようになっている。
- 第I部 言葉にこめられた心を追う
- i 文章表現が目ざすもの
- 1 近代文章史が辿った模索と到達の道筋
- 2 救済のメルヘン―『走れメロス(太宰治)』―
- ii 編著者・訳者が心をこめた所
- 3 古辞書の編成に編者の工夫を探る
- 4 蘭通詞・蘭学者の苦心
- 5 J・C・ヘボンの人と業績
- iii 言語使用を支える力
- 6 陳述副詞の機能を産んだもの
- 7 常用漢字の音訓を通して
- i 文章表現が目ざすもの
- 第II部 思考感情の外化としての言語表現
- 8 思考が文章になるまで
- 9 『伊勢物語』の表現をよむ
- 10 現在の描写の中に過去を織り込む
- 11 『枕草子』における自然の発見
- 12 古代の書き手から近代の書き手へ
- 附録 文章表現の楽しみ
(2011年9月1日発行 塙書房刊 A5判縦組み 324頁 7,500円+税 ISBN 978-4-8273-0118-2)
簡月真著 真田信治監修『海外の日本語シリーズ1 台湾に渡った日本語の現在―リンガフランカとしての姿―』
多言語社会である台湾において戦後半世紀以上にわたって日本人がいない状態で限られた場面でリンガフランカとして使われてきた日本語の特徴を,接触言語学の見地から明らかにしようとしたものである。本書は9章で構成される。1章で台湾に日本語が持ち込まれた経緯について,第2章でリンガフランカとしての日本語を取り巻く社会状況について説明を試みる。3章では,リンガフランカとしての日本語の実相を明らかにするための理論的枠組みについて説明を試みる。4章から8章まではその日本語の特徴について,一人称代名詞(4章),否定辞(6章),などが取り上げられる。9章でそれぞれの結果から台湾日本語の特徴とその変容プロセスについて検討がなされる。本書は海外の日本語シリーズ1として刊行された。
本書の内容は以下のとおり。
- はじめに
- 第1章 台湾における日本語の普及
- 第2章 台湾に渡った日本語の現在
- 第3章 研究の理論的枠組みと調査概要
- 第4章 一人称代名詞
- 第5章 可能表現
- 第6章 否定辞
- 第7章 丁寧体
- 第8章 「でしょ」の新用法―<新情報認知要求>―
- 第9章 台湾日本語の特徴およびその変容プロセス
- おわりに
(2011年9月10日発行 明治書院刊 A5判横組み 164頁 2,000円+税 ISBN 978-4-625-43446-4)