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新刊紹介 (『日本語の研究』第9巻3号(通巻254号)掲載分)
2013年7月24日掲載
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『日本語の研究』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 山内洋一郎著『ことばの歴史――語史研究――』
- 今野真二著『ボール表紙本と明治の日本語』
- 川村大著『ラル形述語文の研究』
- 三原健一・仁田義雄編,益岡隆志ほか著『活用論の前線』
- 藁谷隆純著『敬語の研究 源氏物語・宇治拾遺物語・日蓮遺文を中心に』
- 村木新次郎著『ひつじ研究叢書 言語編第101巻 日本語の品詞体系とその周辺』
- 茅島篤編著,岩瀬順一ほか著『日本語表記の新地平 漢字の未来・ローマ字の可能性』
- 澤田治美編『ひつじ意味論講座6 意味とコンテクスト』
- 柏原司郎編著『近世の国語辞書 節用集の付録』
- 古田東朔著,鈴木泰・清水康行・山東功・古田啓編 古田東朔近現代日本語生成史コレクション 第1巻 江戸から東京へ 国語史1
- 札埜和男著『研究叢書427 法廷における方言――「臨床ことぱ学」の立場から――』
- 飛田良文編『国立国語研究所「日本大語誌」構想の記録』
- 高山善行・青木博史・福田嘉一郎編『日本語文法史研究1』
- 迫野虔徳著『方言史と日本語史』
- 今野真二著『日本語学講座 第6巻 明治期の辞書』
- 鶴橋俊宏著『近世語推量表現の研究』
- 岡 智之著『ひつじ研究叢書言語編 第103巻 場所の言語学』
山内洋一郎著『ことばの歴史――語史研究――』
本書は,ことば(単語)の一つ一つの発生・変化・進展・消滅をとらえつつ,ことばの歴史を主題,ことば一つ一つの記事を副題とし,下記の四章にまとめたものである。各時代における言語の中から,それぞれの基本要素としての語(単語)をとり上げ,そのあり方を明らかにしようとする。第一章では,たまゆら/番にをりて/こうずなど,第二章では,はいる/そぼつ/たくさん/くる/はなすなど,第三章では,恋風ならばしなやかに/こまり申候/何せうぞ,くすんで/きさまにて遊ばし候などについて論じる。
- 序章 ことば(単語)の語史を考える
- 第一章 古代語への惜別
- 第二章 中・近世語の混迷
- 第三章 現代の基礎語
- 第四章 中世語さまざま
(2012年10月29日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 336頁 6,400円+税 ISBN:978-4-7924-1422-1)
今野真二著『ボール表紙本と明治の日本語』
和装本から洋装本にきりかわっていく時期の過渡的な本のかたちであるボール表紙本をとおして,明治の日本語を観察する書である。ボール表紙本は,内容は実録小説,人情小説,伝記,翻訳本,「刑法」といった法令書まで多彩なジャンルにわたっている。そのボール表紙本の日本語のありかたはきわめて多様的であり,明治初期の言語資料としての価値は極めて高い。巻末に詳細な「ボール表紙本書誌データ」を収録する。
- 序章 ボール表紙本によって明治期の日本語を観察する
- 第一章 音声・音韻的事象
- 第二章 文法的事象
- 第三章 語彙的事象
- 第四章 表記的事象
- 終章 ボール表紙本の資料性
- ボール表紙本書誌データ
(2012年10月29日発行 港の人刊 280頁 四六判縦組み 3,000円+税 ISBN:978-4-89629-258-9)
川村大著『ラル形述語文の研究』
東京大学大学院人文社会系研究科に提出された学位請求論文(2011年)「古代語ラル形述語文の研究」に第六章を増補し,全体に修正,改稿を施したものである。
受身・自発・可能・尊敬という多様な意味を持つとされる「動詞+レル・ラレル形」について,古代語「動詞ラル形」を主たる対象とし,学史の見直し・精緻な記述を経て多義の構造の本質に迫る。
次の三点を課題として議論を展開する。1.意味面に注目した受身文研究史の全面的見直しと,それに基づいた受身文の本質把握。2.動詞ラル形の諸用法の整理・確認と,各用法の意味・構文面にわたる精密な記述。3.動詞ラル形述語文の多義の構造の統一的把握。
- 第一章 本書の目的と課題
- 第二章 受身文概念の再検討
- 第三章 ラル形述語文の諸用法
- 第四章 ラル形述語文諸用法の統一的把握
- 第五章 見ユ・聞コユ・思ユ(思ホユ)をめぐって
- 第六章 尊敬語補助動詞の待遇対象をめぐって
(2012年11月1日発行 くろしお出版刊 A5判縦組み 448頁 5,400円+税 ISBN:978-4-87424-572-9)
三原健一・仁田義雄編,益岡隆志ほか著『活用論の前線』
日本語学および理論言語学の視点に基づき書かれた論文集である。2011年大阪大学で開催された日本言語学会大会のシンポジウム「活用論の前線」に基づいている。「新たしいパラダイムで活用論を考える」ことを目的とし,各執筆者が各々の方法論で論を展開しているため,活用論には多様な方法があり得ることを実感できる。日本語の活用論が活性化することを意図して編まれた論文集である。仁田義雄氏の退官記念論文集としての意味合いも兼ねる。
- 語と語形と活用形(仁田義雄)
- 日本語動詞の活用・再訪(益岡隆志)
- 動詞の活用論から述語の構造論へ――日本語を例とした拡大活用論の提案――(野田 尚史)
- テ形節の意味と統語(吉永尚)
- 活用形から見る日本語の条件節(三原健一)
- 活用形の形態論,統語論,音韻論,通時(西山國雄)
- 分散形態論を用いた動詞活用の研究に向けて――連用形の分析における形態統語論的問題――(田川拓海)
(2012年11月15日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 230頁 3,400円+税 ISBN:978-4-87424-571-2)
藁谷隆純著『敬語の研究 源氏物語・宇治拾遺物語・日蓮遺文を中心に』
中古・中世の資料を中心に,日本語の敬語の実態をあきらかにしようと試みた書である。場面・人間・心理等の文学的研究の側面からの記述も含めつつ,原典・原文に即した分析・比較・考察という実証的研究によっている。
書名にある『源氏物語』『宇治拾遺物語』「日蓮遺文」を対象とした研究のほか,第四編には近代語を資料とした章も含み,通時的な敬語研究としての側面も持つ。
- 第一編 『源氏物語』の敬語
- 第一章 源氏物語における「三方面への敬語」
- 第二章 源氏物語における受身表現と敬語
- 第三章 源氏物語の女性への敬語
- 第四章 源氏物語の男女への敬語
- 第五章 源氏物語・桐壷巻における敬語の現代語訳について
- 第二編 『宇治拾遺物語』の敬語
- 第一章 宇治拾遺物語における敬語と本文解釈
- 第二章 宇治拾遺物語の会話文における目下への敬語
- 第三章 宇治拾遺物語・児説話の会話文における敬語
- 第四章 宇治拾遺物語の「たてまつる」
- 第五章 「奉る」の解釈と現代語訳について
- 第六章 宇治拾遺物語の標題における敬語
- 第七章 伴大納言への待遇表現
- 第八章 宇治拾遺物語の卑罵表現
- 第九章 宇治拾遺物語の語法
- 第三編 日蓮遺文の敬語
- 第一章 日蓮遺文における「給ふ」・「給はる」
- 第二章 日蓮遺文における「まゐらせ給ふ」
- 第三章 日蓮遺文の「日月星」への敬語
- 第四章 日蓮遺文の語法
- 第四編 他作品の敬語
- 第一章 『和泉式部日記』の敬語
- 第二章 『宝物集』における敬語
- 第三章 『徒然草』における仏法僧への敬語
- 第四章 古代敬語における男女差をめぐって
- 第五章 『文づかひ』における「聞えさせ玉ふ」・「おほとのごもり玉ふ」
- 第六章 『運命論者』における「(男泣きに泣き)給う」
- 第七章 賢治童話における敬語
- 第八章 『みだれ髪』における言語表現
- 第九章 「死にたまふ母」歌における言語表現
(2012年11月18日発行 おうふう刊A5判縦組み 392頁 15,000円+税 ISBN:978-4-273-03702-4)
村木新次郎著『ひつじ研究叢書 言語編第101巻 日本語の品詞体系とその周辺』
伝統的な学校文法や標準化しつつある日本語教育文法を是としない立場から,日本語のあるべき単語認定と品詞体系について提言した書。従来の文法が形式中心で,syntagmaticな側面に傾斜していたことを指摘し,意味・機能を重視し,paradigmaticな側面をとりこむ必要性を説く。形容詞をひろくとらえること,日本語の品詞として,後置詞,従属接続詞をみとめるべきであることなどを主張する。日本語の感動詞や節の類型にも言いおよぶ。
本書は,ひつじ研究叢書 言語編第101巻として刊行された。
- 第1部 日本語の品詞体系をめぐる諸問題
- 第1章 日本語文法研究の主流と傍流――単語と品詞の問題を中心に――
- 第2章 日本語の品詞体系のみなおし――形式重視の文法から意味・機能重視の文法へ――
- 第3章 文の部分と品詞
- 第4章 意味と品詞分類
- 第5章 漢語の品詞性を問う
- 第6章 四字熟語の品詞性を問う
- 第7章 日本語の名詞のみなおし――名詞のようで名詞でないもの――
- 第1章 日本語の形容詞――その機能と範囲――
- 第2章 名詞と形容詞の境界
- 第3章 「がらあき――」「ひとかど――」は,名詞か,形容詞か
- 第4章 第三形容詞とその語構成
- 第5章 第三形容詞とその意味分類
- 第6章 形容詞における単語内部の並列構造と属性化
- 第7章 「神戸な人」という言い方とその周辺
- 第1章 日本語の節の類型
- 第2章 「矢先」と「手前」――「もの・空間」から「つなぎ」へ――
- 第3章 擬似連体節をうける従属接続詞――「かたわら」と「一方(で)」の用法を中心に――
- 第4章 〈とき〉をあらわす従属接続詞――「途端(に)」「拍子に」「やさき(に)」などを例として――
- 第1章 意味・機能にもとづく日本語の感動詞の分類
- 第1章 日独両言語の単語をめぐって
- 第2章 中国語の形容詞が日本語の動詞と対応する中日同形語について
- 第3章 現代日本語の中の四字熟語
- 第4章 コロケーションとは何か
- 第1章 三上章と奥田靖雄――それぞれの軌跡――
- 第2章 日本語文法研究の展望
(2012年11月20日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 496頁 5,600円+税 ISBN:978-4-89476-602-0)
茅島篤編著,岩瀬順一ほか著『日本語表記の新地平 漢字の未来・ローマ字の可能性』
ローマ字上陸以降の歴史をひもとき,日本語表記の目指すべき姿を考える書。世界で最も多様かつ複雑な日本語の文字表記は,グローバル化と高度情報化を迎えた現代においてどのようにあるべきか。国際語としての日本語という観点から,ローマ字による日本語表記の可能性を探る。
- 第1部 日本語表記の可能性
- 江戸時代 東西比較文化の論(杉本つとむ)
- 漢字文化圏から漢語文化圏へ(宮島達夫)
- 常用漢字表(平成22年告示)――字種「俺」を通して見た問題点――(岩淵匡)
- ローマ字日本語の可能性(竹端瞭一)
- 第2部 国語教育とローマ字
- 義務教育への国語ローマ字教育の導入――回顧と展望――(茅島篤)
- ローマ字実験学級占領軍の目に映った日本の言語改革(高取由紀)
- 漢字とローマ字(清水正之)
- 分かち書き「いま」と「むかし」――田中舘愛橘,田丸卓郎,寺田寅彦を読む――(岩瀬順一)
- 第3部 日本語改革のゆくえ
- 上田万年と明治の文字政策(清水康行)
- 田中館愛橘とローマ字(松浦明)
- 第二次大戦下のローマ字運動と石森延男の戦時下の作品(前田均)
- 占領下の国語改革をめぐる言説――国字改革に関する誤解を中心に―― (茅島篤)
- それでも漢字はなくなる(野村雅昭)
(2012年11月27日発行 くろしお出版刊 A5判横組み 330頁 3,800円+税 ISBN:978-4-87424-569-9)
澤田治美編『ひつじ意味論講座6 意味とコンテクスト』
全7巻からなる『ひつじ意味論講座』の第6巻。発話や話し手・聞き手を取り巻く場面的な脈絡・背景であるコンテクストをテーマとした論文集である。言語にとって,特に日本語にとって,コンテクストが重要な役割を果たしていることを,言語学,言語哲学,論理学,心理学という多様な分野からのアプローチによって明らかにする。
- 1.直示とコンテクスト(渡辺伸治)
- 2.言語行為と発話のコンテクスト(久保進)
- 3.コンテクストと前提(加藤重広)
- 4.意味と含み(清塚邦彦)
- 5.関連性理論とコンテクスト(東森勲)
- 6.論理的意味論におけるコンテクスト(野本和幸)
- 7.モダリティとコンテクスト(澤田治美)
- 8.メタファー理解プロセスと意味(中本敬子)
- 9.とりたてとコンテクスト(野田尚史)
- 10.指示表現と結束性(庵功雄)
- 11.感動詞とコンテクスト(冨樫純一)
(2012年11月30日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み240頁 3,200円+税 ISBN:978-4-89476-506-1)
柏原司郎編著『近世の国語辞書 節用集の付録』
節用集の付録に着目し,その辞書の社会とのかかわりを考察する書。整版本として出版された近世の節用集は,商品としての付加価値を高めるために付録が利用された。近世の封建社会に生きた人々の要請が反映された付録を調査することにより,辞書利用者を推定し,言語生活を知る手掛かりとなるという立場からの研究である。
- 第一部 研究篇
- 序章 節用集研究の環境
- 二章 節用集という辞書
- 三章 節用集と非節用集
- 四章 近世節用集の主流
- 五章 付録からみた節用集
- 終章 表記辞書から家宝の書
- 第二部 資料篇
- 刊本節用集の付録事項一覧稿の要項
- ?T 採録の節用集について
- ?U 凡例
- ?V 『国書総目録』の誤記例
- ?W 『亀田次郎旧蔵書目録』の誤記例
- 刊本節用集の付録事項一覧稿
(2012年12月10日発行 おうふう刊 B5判縦組み976頁 40,000円+税 ISBN:978-4-273-03684-3)
古田東朔著,鈴木泰・清水康行・山東功・古田啓編 古田東朔近現代日本語生成史コレクション 第1巻 江戸から東京へ 国語史1
日本語史・日本語学史・国語教育に大きな影響を与え続けてきた,古田東朔の著作集全6巻の第4回配本。本巻では,近世(上方・江戸)語に関する論文と,幕末・明治以降の近代日本語の論考のうち,語彙・談話・文体に関する論文を中心に収録している。
- 1 代名詞遠称「あ」系語と「か」系語の差異
- 2 『東海道四谷怪談』において上方風,東国風両方の言い方をしている人たち
- 3 『東海道四谷怪談』において上方風の言葉遣いをする人たち
- 4 『東海道四谷怪談』において東国風の言葉遣いをする人たち
- 5 『東海道四谷怪談』に見られる打消の助動詞――「ぬ」系のものだけを使っている人たち
- 6 幕末期の武士のことば
- 7 デゴザル体の文章
- 8 『安愚楽鍋』の二,三の語句について
- 9 『安愚楽鍋』の語句管見
- 10 教科書の文章
- 11 明治期小学読本の文章における語法上の特色
- 12 近代敬語の特質
- 13 明治以降の敬語の変遷――国語教科書における
- 14 『智環啓蒙』と『啓蒙智慧之環』
- 15 訳語と翻訳文体
- 16 幕末・明治初期の訳語――『民間格致問答』を中心として
- 17 彼女・おてんば――訳語・外来語雑見
- 18 訳語雑見
- 19 訳語の問題
- 20 幕末期の翻訳草稿二つ
- 21 幕末・明治初期の翻訳文等における「X+アル」
- 22 江戸期における翻訳書の文章形式
- 23 シーボルト文献中の『三国通覧図説(蝦夷)』の蘭訳
- 24 蘭訳『三国通覧図説(蝦夷)』の用語・用字の特徴
(2012年12月10日発行 くろしお出版刊A5判縦組み 432頁 8,500円+税 ISBN:978-4-87424-573-6)
札埜和男著『研究叢書427 法廷における方言――「臨床ことぱ学」の立場から――』
本書は,大阪大学大学院文学研究科へ提出された博士学位論文(2008年)を加筆修正したものである。大阪(関西)方言を研究してきた筆者による,法廷における方言をテーマにした研究である。裁判の傍聴と放送関係者へのインタビューによって得られたデータから,大阪(関西)方言が法廷で果たす機能を心的接触機能・リズム変換機能・カムフラージュ機能・引用機能の4つに整理し,韓国やアメリカの海外事情を交えながら,方言の記録をめぐる問題,法廷で方言を使用する権利の問題,法廷での方言の持つ権力性・権威性や差別・排除の問題について論じる。ことばのフィルターを通して,研究の対象とする人々とことばの関係性やその社会の持つ問題を臨床ことば学の立場から明らかにしようとした。
本書は和泉書院研究叢書427として発刊された。
- 第1章 本研究の目的・意義・方法など
- 第2章 法廷における大阪(関西)方言の機能
- 第3章 方言の記録をめぐる問題
- 第4章 権力・権威の視座より
- 第5章 言語権・方言権の視座より
- 第6章 臨床ことば学の立場から
- 第7章 本研究の問題点と課題など」。
(2012年12月20日発行 和泉書院刊 A5判横組み 280頁 5,000円+税 ISBN:978-4-7576-0636-4)
飛田良文編『国立国語研究所「日本大語誌」構想の記録』
かつて国立国語研究所が十年以上にわたって推進した,日本語用例辞典『日本大語誌』編纂の構想,その論考・目録・年報などの内部資料を公開する書。
林大「国語辞典覚書」,見坊豪紀「用例辞典編集作業のために」などの論考,用例採集のための「主要文学作品目録」「主要雑誌目録」「ベストセラー目録」を初公開する。また,飛田良文「日本語辞書学の課題」をはじめ,中村幸彦「近世語と現代」,築島裕「理想の国語辞書」など日本語辞典に関する論考を収める。
別冊(A5判)には,当時の研究者が辞典編集準備室の雰囲気を伝える。
- 第一章 「日本大語誌」構想の位置(飛田良文)
- 第二章 「日本大語誌」構想の経緯――『国立国語研究所年報』(昭和52-63年度)
- 第三章 「日本大語誌」構想の内容と編集方針
- 第四章 「日本大語誌」の用例採集法
- 第五章 用例採集の対象と文献目録
- 「日本大語誌」関連論考
- 「日本大語誌」関連資料
- 別冊「日本大語誌」計画作業の思い出(飛田良文編)
(2012年12月25日発行 港の人刊 B5判縦組み 1016頁 32,000円+税 ISBN:978-4-89629-257-2)
高山善行・青木博史・福田嘉一郎編『日本語文法史研究1』
日本語文法の歴史的研究は日本語研究のなかで重要な位置を占めており,その成果は世界的に注目されている。本書は文法史研究の最新の成果を国内・国外に発信する論文集である。文法史の分野で初となる継続刊行の論文集であり,本書は創刊号となる(隔年刊行の予定)。今回は,語構成,構文,モダリティ等の論考10本を収める。巻末付録として,「テーマ解説」「文法史の名著」「文法史関係文献目録」が付されている。
- 被覆形・情態言・形状言・情態性語基(小柳智一)
- 『万葉集』の〜ムカについて(近藤要司)
- 古代語の動作主標識をめぐって――助詞イと石垣法則――(竹内史郎)
- モノゾ文による推量表現の成立(勝又隆)
- 中古語指示副詞「かく」の照応用法――「枕草子」「源氏物語」を資料として――(西田隆政)
- 中古語の非接続叙法体系(福田嘉一郎)
- 日本語の過去表現の構造とその変化(黒木邦彦)
- 引用句派生の例示(岩田美穂)
- モダリティ形式「ラシイ」の成立(山本佐和子)
- クル型複合動詞の史的展開――歴史的観点から見た統語的複合動詞――(青木博史)
- 【テーマ解説】助動詞の相互承接(小田勝)
- 【文法史の名著】阪倉篤義著『日本語表現の流れ』(高山善行)」
- 日本語文法史研究文献目録 2009-2011
(2012年12月28日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 276頁 4,000円+税 ISBN:978-4-89476-638-9)
迫野虔徳著『方言史と日本語史』
本書は迫野虔徳(2011年12月29日逝去)の遺稿集にあたり,新村出賞を受賞した前著『文献方言史研究』(清文堂出版,1998年)に含まれなかった27編の論文を収録する。当初,改訂した既発表論文と書き下ろしの原稿によって刊行する予定だったが,故人の遺志を尊重しつつ,青木博史氏による編集を得て発行された。第一章は東国語を反映した文献を用いて考察された論考,第二章は九州・琉球方言が反映した文献資料の考察と,資料に現れる方言次章の考察,第三章は中央語史をメインに据えた語法研究,第四章は特殊音節の表記について論じたもの,第五章は仮名遣いに関するものがおさめられている。
- 第一章 地方語文献と日本語史
- 第二章 九州・琉球文献資料と方言
- 第三章 中央語史と方言
- 第四章 音韻と表記
- 第五章 仮名遣
- 本書と既発表論文との関係
- 著作目録
(2012年12月29日発行 清文堂出版 A5判縦組み 488頁 10,000円+税 ISBN:978-4-7924-1424-5)
今野真二著『日本語学講座 第6巻 明治期の辞書』
単独著者による全10巻予定の講座の第6巻「明治期の辞書」。明治期は,和語・漢語・外来語が多様なかたちで結びつき,日本語の語彙体系を形成していた。漢語辞書,英和・和英辞書,国語辞書など,さまざまな辞書体資料に分析し,明治期の日本語のありかたを描く。
- 序章 辞書体資料について
- 第一章 漢語辞書
- 第二章 和英・英和辞書
- 第三章 国語辞書
- 第四章 さまざまな辞書
(2013年1月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 440頁 3,500円+税 ISBN:978-4-7924-0980-7)
鶴橋俊宏著『近世語推量表現の研究』
推量表現の実態を通時的に考察し,ダロウを中心とした,常体における江戸語の推量表現の全体像を明らかにする書。
ダロウの語誌を中心とした江戸語から東京語への変化を視野に入れた推量表現の通時的・記述的研究である第一部,推量表現の周辺についての研究,また,江戸語資料と言われる資料の「江戸語らしさ」についての考察からなる第二部,江戸語に生じた推量辞の変化が個別的な現象なのかを知るために,駿河国を中心とした近世の方言における推量辞の実態報告となる第三部からなる。
- 第一部 江戸語の推量表現
- 第一章 先行研究・研究資料
- 第二章 宝暦期歌舞伎台帳にみられる推量表現
- 第三章 洒落本の推量表現
- 第四章 咄本の推量表現
- 第五章 人情本の推量表現
- 第六章 滑稽本の推量表現
- 第二部 推量表現の周辺・江戸語の資料について
- 第一章 助動詞ウ・ヨウの命令表現用法
- 第二章 江戸語の比況表現 ミルヨウダ・ミタヨウダについて
- 第三章 洒落本『祇園祭〓(火+兆)燈蔵』に描かれた「お屋敷ことば」
- 第四章 朧月亭有人『春色恋廼染分解』における江戸語について
- 第三部 近世駿河方言資料と推量表現
- 第一章 近世後期駿河方言資料
- 第二章 『東海道中膝栗毛』の駿河方言
- 第三章 その他の滑稽本における駿河方言
- 第四章 『東海道中膝栗毛』におけるベイ・ズ・ウズについて
- 第五章 デアラズ小考
(2013年1月20日発行 清文堂出版刊 A5判縦組み 400頁 11,600円+税 ISBN:978-4-7924-0977-7)
岡 智之著『ひつじ研究叢書言語編 第103巻 場所の言語学』
主体や主語,個物(モノ)を中心にして考える従来の言語学に対し,場所や述語(コト)を重視した言語学の構築を主張した書。第1部理論編では,西田幾多郎の提起した場所の哲学を基礎として,主語論,日本語の論理をめぐる論争に対する見解を述べる。また,認知言語学を場所論の観点から位置づけ,発展させる方 途を模索する。第2部は事例研究として,場所論に基づく「ハ」と「ガ」の規定,格助詞「ニ」「ヲ」「デ」のスキーマとネットワークの提示などを行う。
本書は,ひつじ研究叢書言語編 第103巻として刊行された。
- はじめに
- I 理論編――「場所の哲学」から「場所の言語学」へ――
- 第1章 場所の哲学
- 第2章 言語学における「場所論」の受容
- 第3章 「主語不要論」と「主語必要論」
- 第4章 日本語の論理再考
- 第5章 認知言語学の「場所論」による基礎づけ
- II 事例研究
- 第6章 場所論に基づく「ハ」と「ガ」の規定
- 第7章 場所論に基づく日本語格助詞の体系的研究
- 第8章 ニ格のスキーマとネットワーク
- 第9章 ヲ格のスキーマとネットワーク
- 第10章 デ格のスキーマとネットワーク
- 第11章 場と文の相関の類型再考
- 第12章 日本語諸構文の場所論的再構築に向けて
- 第13章 日本語と英語,中国語,朝鮮語の事態認知の対照
- 第14章 今後の課題と展望
(2013年2月14日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 320頁 6,200円+税 ISBN:978-4-89476-626-6)