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新刊紹介 (54巻4号(215号)掲載分)
「新刊書目」の一部について,簡単な紹介をしています。なお,論文集等については,論文リストを添えるなど,雑誌『国語学』掲載分と一部異なる点があります。(価格は本体価格)
- 小池清治・小林賢次・細川英雄・山口佳也編 『日本語表現・文型事典』
- 佐藤武義著 『日本語の語源』
- 乾善彦著 『漢字による日本語書記の史的研究』
- 小林隆・篠崎晃一編 『ガイドブック方言研究』
- テニハ秘伝研究会編 『テニハ秘伝の研究』
- マーク・C.ベイカー著 郡司隆男訳 『言語のレシピ―多様性にひそむ普遍性をもとめて―』
- 小野恭靖編 『近世流行歌謡―本文と各句索引―』
- 加藤重広著 『日本語修飾構造の語用論的研究』
- 崔絢喆著 『日本語の韻律構造』
- 江口正弘著 『語意の解釈がゆれる中古語と中世語の考察』
- 北原保雄監修 佐久間まゆみ編 『朝倉日本語講座7 文章・談話』
- 北原保雄監修 菊地康人編 『朝倉日本語講座8 敬語』
- 小池生夫(主幹)・井出祥子・河野守夫・鈴木博・田中春美・田辺洋二・水谷修(委員)編 『応用言語学事典』
- 飛田良文・ 松井栄一・境田稔信編 『[明治期国語辞書大系]書誌と研究』
小池清治・小林賢次・細川英雄・山口佳也編 『日本語表現・文型事典』
日本語教育に従事している人,あるいはその研究者を中心とし,さらに国語教育・研究者,日本語に興味を持つ人を対象とした事典である。日本語教育で必要となるような表現・文型・文法に関する基本的情報を示す目的で作られている。
配列は項目別,五十音順である。各項目は短いもので1ページ,多くは2ページ,複雑な内容を持つものはさらにページ数が増えるが,ページ単位での記述となっている。巻頭には,分野別の項目一覧が挙げられており,全体像を把握するのに役立つ。
参考までに分野別の項目一覧に沿いながら,どんな項目が立てられているかを見ていくと,「1 構文関係」には「一語文,ウナギ文,形容詞文,存在詞文…」,「2 助動詞関係」には「意思・意向表現,受身表現,打消推量表現…」,「3 助詞関係」には「詠嘆表現,格の表現,勧誘表現…」,「4 補助動詞関係」には「受給表現…」,「5 代名詞関係」には「照応表現…」,「6 副詞関係」には「労り表現,可能性表現…」,「7 接続詞関係」には「言い換え表現,意外表現…」,「8 感動詞関係」には「あいづち表現,応答表現…」,「9 形式名詞関係」には「条件表現,推論・説明…」,「10 レトリック関係」には「言いさし表現,引用表現…」,「11 敬語関係」には「愛称・渾名,謙譲表現…」,「12 言語生活関係」には「授受表現,依頼表現,概数表現…」などがあり,それぞれ,その定義または概略,基本的形式,文型,用法,説明が記されている。
(2002年10月10日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 504ページ 15,000円 ISBN 4-254-51024-1)
佐藤武義著 『日本語の語源』
日常語・歌ことば・漢字を対象に,その語の成立や元の意味,歴史上の変化について,文献に基づいて例を示し,考察したものである。内容は大きく3部にわかれる。「1 身辺の日本語」は日常語である「主婦・よだれ・晴れ着・家庭・アルバイト」など,80語を扱う。最古の例を提示し,語源を探ったり,変化を記述したりする。「2 歌のなかの日本語」は和歌・俳句・詩・川柳・歌謡曲歌詞などに出てくる歌ことば104語をめぐる文章を収めている。「3 漢字で表す日本語」は「山・下・俊・入・乳・市」など漢字一字(155字)を取りあげ,その元の意味,日本語での使われ方や変化について述べる。なお,各項目は,『河北新報』のコラム欄に連載したものが元になっている。したがって,各項目の分量は450字〜600字程度となっている。また,以前にそのコラムを元にした文章が複数の辞典・単行本に所載されたことがある。本書は,それらをまとめたものとなっている。
(2003年1月15日発行 明治書院刊 B6判縦組み 225ページ 1,300円 ISBN 4-625-63316-8)
乾善彦著 『漢字による日本語書記の史的研究』
日本語の書記(文字・表記)史一般を視野に入れつつ,漢字専用時代を主な対象として,漢字に関わるさまざまな問題について考察したものである。方法論の模索に重点を置いて諸論点について検討している。「第1部 文字史の方法」は著者の方法論の提示と理論的立場を記したものである。「第2部 書記の論」には「『万葉集』の「書き様」と万葉用字法研究史」と「宣命書きの成立と展開」の2章を収め,用法としての文字の論が展開される。前者では万葉用字法研究史の再検討を行う。後者は宣命書きの本質を考える論考である。「第3部 漢字の論」は素材としての文字を扱った部で,「文字認識をめぐる諸問題と近世の字体意識」と「新たな漢字の創製と日本的漢字の一用法」の2章を収める。前者では万葉集の同形異字,易林本節用集の同字認識,契沖の規範意識などを扱う。後者では国訓の成立要因,国字の造字原理などについて扱い,日本的な漢字用法の検討とその重要性について述べる。なお,本書は既発表論文に基づくが,一書となすため,解体・改稿・増補が行われている。
(2003年1月30日発行 塙書房刊 A5判縦組み 485ページ 12,000円 ISBN 4-8273-0090-9)
小林隆・篠崎晃一編 『ガイドブック方言研究』
方言研究に関する解説書である。特定の分野に偏らないよう基本的で重要な内容を押さえ,方言研究の全体像を提示しようとしたものである。
目次は以下のようになっている。
- 第1章 方言と方言学の世界(小林隆・篠崎晃一)
- 第2章 方言のしくみ 音韻(佐藤和之)
- 第3章 方言のしくみ アクセント・イントネーション(木部暢子)
- 第4章 方言のしくみ 語彙(高橋顕志)
- 第5章 方言のしくみ 文法〈形態〉(大西拓一郎)
- 第6章 方言のしくみ 文法〈語法・意味〉(井上優)
- 第7章 方言のしくみ 待遇表現(宮治弘明)
- 第8章 方言の分類(小林隆)
- 第9章 方言の歴史(小林隆)
- 第10章 現代の方言(半沢康)
第1章では,方言とは何か,方言の研究分野,方言の調べ方などについて語られる。
第2章〜第7章は各分野別の論である。それぞれの分野に関する「テーマ設定,調査方法,分析方法」について説明している。
第8章は分類論である。総合的分類(東条操によるもの),アクセントによる分類,文法による分類,などが紹介されている。
第9章は方言史について述べる。文献学的方法,方言学的方法(比較方言学と方言地理学)を紹介する。また,方言史のテーマについて,さらに「こそ」についてのケーススタディを展開する。
第10章は社会言語学的な方言研究について述べる。方言の衰退,新方言などに触れ,新しい方言研究の視点について論じている。
(2003年2月23日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 233ページ 1,800円 ISBN 4-89476-183-1)
テニハ秘伝研究会編 『テニハ秘伝の研究』
本書は,平成11年度の国文学研究資料館共同プロジェクトとして和歌・連歌・日本語学の研究者が集まり,研究発表・資料収集・共同討議を行ったものが元になっている。このテーマは各分野において中心的な課題として扱われることが少ないまま放置されてきたようなところがあったが,その状況を変えていこうとする試みである。
章立てを一覧すると,以下のようになっている。
- はじめに テニハ秘伝研究の課題(根上剛士)
- [論文編]
- 姉小路式とは何か(根上剛士)
- テニハ概念の構築―語学的観点から―(近藤泰弘)
- 連歌系秘伝の伝流(綿抜豊昭)
- 「発句大まはし」のこと(鈴木元)
- 『手爾葉大概抄之抄』をめぐつて―室町期古典学研究の立場から―(武井和人)
- テニハ伝授と余情―つつ留り・かな留りをめぐって―(大谷俊太)
- テニハ秘伝と地下歌学―「かな留め」「つつ留め」を中心に―(西田正宏)
- [資料編]
- テニハ秘伝書研究文献目録(浅田徹)
- テニハ秘伝書伝本目録稿 第一部 和歌系伝書目録(浅田徹)
- テニハ秘伝書伝本目録稿 第二部 連歌系伝書目録(大村敦子)
- テニハに言及する文献一覧 及び語彙別・術語別索引(鈴木順子)
最後の語彙別索引は,たとえば「かな」についての注意がどの文献に出て来るかを引けるようにしようという索引である。術語別索引は,たとえば「いひかけ」というような術語に関する索引である。
(2003年2月25日発行 勉誠出版刊 A5判縦組み 156+左227ページ 12,000円 ISBN 4-585-10090-3)
マーク・C.ベイカー著 郡司隆男訳 『言語のレシピ―多様性にひそむ普遍性をもとめて―』
生成文法言語理論の立場に立つ著者が,たとえ話を用いながら,普遍文法におけるパラメータの概念について説明したものである。
目次は以下のようになっている。
- コード・トーカーの逆説
- アトムの発見
- サンプルとレシピ
- 多総合的言語の焼き方
- 合金と化合物
- 言語の周期表へ向けて
- なぜパラメータ?
1では太平洋戦争における暗号通信兵(コード・トーカー)の話から始め,暗号として使われた言語は他の言語と違わなければ暗号としての役に立たず,他の言語と同じ部分がないと翻訳不可能であることに触れ,各言語には類似点と相違点があるという話を展開する。
2では,言語の類似・相違を説明する概念としてパラメータというものを導入し,化学の元素にたとえながら,その説明をする。
3では,単語が言語の素ではないのかという疑問に対し,サンプルとレシピというたとえによりながら,その疑問に答えようとする。単語は言語についての外延的な見方による基本的単位であり,パラメータはレシピにおける選択肢のようなもので,言語についての内包的な見方による基本的単位であるとする。
4では,モホーク語(東部アメリカ先住民の言語)を例にとり,この語がどのようなパラメータにより構成されているかを検討していく。(なお,この章の中でサピアとウォーフの仮説に触れ,語彙面をはじめとして特に文法面においては,環境が言語に影響を与えるという考えに反対している。)
5では,ここまでの話がひとつのパラメータが違っている言語を例にしてきたと述べ,ここでは2つ以上のパラメータがかかわっていく例を考えていこうとする。
6では,化学の周期表のたとえを使いながら,パラメータ相互の関係,その階層性などについて考えていく。
7では,なぜ,パラメータというものがあるのか,なぜ言語はこのようになっているのか,などについて考察する。自由意思・意図性・先験的知識をパラメータの親戚と呼び,言語の多様性に関わる謎の領域であるとしている。
(2003年2月27日発行 岩波書店刊 B6判横組み 355ページ 3,700円 ISBN 4-00-022730-0)
小野恭靖編 『近世流行歌謡―本文と各句索引―』
近世小唄調(7・7・7・5)の音数律を持つ歌謡が多く収録された流行歌謡集等(計21書)を対象とし,その本文と各句索引を収めたものである。本文編では本文を一定の決まりによって整備している。本文編最後には「収録歌謡集 解題」がある。索引編は5あるいは7で区切った一句を総ルビ五十音順に並べ,本文編のどこにその句が現れるかを記載している。
和歌ならば『国歌大観』などのような索引があるが,歌謡索引は少ない。これには種々の理由があるが,和歌と違って切れ目を入れにくいこと,研究者人口が少ないことなどが主な原因である。本書は,その難点を近世小唄調(7・7・7・5)のような切れ目がはっきりしているものを主な対象とし,ゼミ生の協力を得て解決している。これにより,(ある限られた範囲ではあるが)ある句がどのような歌謡集に収められているのか以前より容易に分かるようになり,類句の検索も便利になった。
参考までに,本書で取りあげられた流行歌謡集等の名称を以下に挙げておく。
- 盤珪『臼引歌』
- 盤珪『麦舂歌』
- 延享五年小哥しやうが集
- おたふく女郎粉引歌
- 主心お婆々粉引歌
- 春遊興
- 絵本倭詩経
- 山家鳥虫歌
- 艶歌選
- 越風石臼歌
- 和河わらんべうた
- 笑本板古猫
- 潮来絶句
- 朝来考
- 江戸いたこほん
- 潮来風
- 新編常陸国誌所収「潮来節」
- 潮来図誌所収「潮来節」
- 音曲神戸節
- 賤が歌袋
- 淡路農歌
(2003年2月28日発行 笠間書院刊 A5判縦組み 350ページ 8,800円 ISBN 4-305-20124-0)
加藤重広著 『日本語修飾構造の語用論的研究』
日本語の修飾について,統語論的な分析に加え語用論的な観点からの分析を行い,その特性・問題点について検討したものである。
章立てを一覧すると,以下のようになっている。
- 第1章 修飾をめぐる問題
- 第2章 形容動詞か名詞か
- 第3章 日本語における関係節構造の成立要件
- 第4章 連用修飾の分類と機能
- 第5章 ゼロ助詞の機能
- 第6章 名詞句と連用成分
- 第7章 連体数量詞と遊離数量詞
- 第8章 修飾機能と実詞の体系
- 第9章 論考を終えるにあたって
まず「はじめに」で統語論・語用論の位置づけやそれに対する著者の基本的立場を述べる。第1章で修飾とは何か,修飾の種類など,論の前提を整理する。第2章では,主に形容動詞をめぐる論を展開する。「〜な」で修飾するのと「〜の」で修飾するのはどのように違うかといったような点に注意しながら,形容動詞の位置づけを考える。第3章では連体修飾構造について扱う。先行研究を批判しながら成立条件を探っていき,意味役割に関連する制限,先行情報,世界知識,解釈のコスト,などの点から説明する。第4章では,いわゆる連用修飾をめぐる諸問題を扱う。動詞連用形の並列と修飾の違いの問題,「〜と」と「〜に」の形での修飾成分における違いなどについて考える。第5章では,あるべき助詞が現れない現象の本質は脱焦点化(その名詞句が最重要情報であるという解釈を回避すること)にあると見る。第6章では,時の名詞,名詞と副詞の連続性,いわゆる助詞の無形化(「彼が出席する」→「彼の出席」等)の問題について検討する。第7章では,連体と連用の違いを見るために,数量詞を検討する。第8章では数量詞以外の連体・連用の交渉を取りあげ,検討している。また,まとめとして,修飾形態の一覧とそれに関わる品詞の新たな分類を提唱している。第9章は述べ残したこと,今後の方向性について述べる。なお,本書は,東京大学大学院人文社会科学研究科に提出され学位認定を受けた博士論文に基づいたものである。
(2003年2月28日発行 ひつじ書房刊 A5判横組み 556ページ 8,000円 ISBN 4-89476-181-5)
崔絢喆著 『日本語の韻律構造』
日本語のアクセント・モーラ・リズムについて,従来の研究を踏まえながら,実験・調査によって,その特徴を探ったものである。日本語母語話者の意識と実際の発話に見られるずれ(たとえば,「高校生」をゆっくり正確に発音するときに現れる意識としてのアクセント「低高高低低低」と,実際の発話での「高高高低低低」のずれ)をいろいろなレベルで扱い,その要因を追究している。
章立てを一覧すると,以下のようになっている。
- 第1章 日本語の音節構造に関する研究
- 第2章 日本語のアクセントに関する研究
- 第3章 日本語のモーラに関する研究
- 第4章 日本語のリズムに関する研究
第1章では,外来語を観察し,日本語の音節構造の特徴を見ていく。第2章では語頭モーラのピッチ制御(上記「高校生」の例)と,アクセントパターンの時間的変化について扱う。後者に関してはNHKアクセント辞典の4つの版を使い,外来語を対象として調査を行い,変化傾向を見るとともにその要因について考えている。第3章は,撥音等の特殊モーラを含む非自立的モーラの自立度を検討する。従来の研究の問題点を踏まえ,結論を出している。第4章は,野球の応援リズム,略語形成など特殊なものから語レベルのリズムに関して,音のまとまりの認知構造を確定する試み。さらに,文レベルのリズムについての検討も行っている。なお,本書は2001年東北大学大学院情報科学研究科に提出された博士学位論文に基づいたものである。
(2003年2月28日発行 風間書房刊 A5判横組み 162ページ 6,500円 ISBN 4-7599-1362-9)
江口正弘著 『語意の解釈がゆれる中古語と中世語の考察』
1963年から2000年の論文まで計14編を集めた既発表論文集である。
章立てを一覧すると,以下のようになっている。
- 第1章 中古語の考察
- 第1節 「こそあれ」考―文型と意味
- 第2節 「もぞ・もこそ」について―その意味の成立についての一考察
- 第3節 中古和文資料における動詞の音便形―源氏物語のイ音便・ウ音便を中心に
- 第4節 落窪物語の動詞について―語彙論的考察
- 第5節 「護身まゐらせ給ふ」の解釈
- 第2章 十六夜日記研究
- 第1節 十六夜日記諸本の仮名遣―室町期以後の定家仮名遣の一断面
- 第2節 十六夜日記の伝本と成立について
- 第3節 松平文庫本「十六夜記」について
- 第4節 時雨亭文庫本『十六夜日記』について
- 第5節 十六夜日記の語彙
- 第3章 キリシタン資料の考察
- 第1節 ルイス・フロイスの日本語表記―HISTORIA DE JAPAM から
- 第2節 『日本関係イエズス会文書』の日本語表記
- 第3節 『天草版平家物語』の「が」と「の」について
- 第4節 『天草版平家物語』の「へ」と「に」について
第1章は「こそあれ」「もぞ・もこそ」の語法や,源氏物語に見られる音便形,落窪物語の語彙論的(計量的)考察,源氏物語若紫の一節についての解釈などを扱う。第2章は十六夜日記の伝本研究,諸本の仮名遣研究,語彙調査の報告である。第3章では,ルイス・フロイスの『HISTORIA DE JAPAM』の固有名詞のローマ字つづりを調査し,四つ仮名の区別をしていないなどの特徴を指摘する。また『日本関係イエズス会文書』についても同様の調査をしている。他に,主格「が」「の」の経緯についての考察や,『天草版平家物語』では覚一本で「に」となっている部分が「へ」となっていることが多いという状況などについて述べている。
(2003年3月1日発行 笠間書院刊 A5判横組み 258ページ 7,800円 ISBN 4-305-10347-8)
北原保雄監修 佐久間まゆみ編 『朝倉日本語講座7 文章・談話』
北原保雄監修 菊地康人編 『朝倉日本語講座8 敬語』
同シリーズの『4 語彙・意味』,『10 方言』(『国語学』54-2参照)に続き,文章・談話を扱った第7巻,敬語を扱った第8巻が刊行された。
第7巻には以下の内容が収められている。
- 第1章 文章・談話の定義と分類(半沢幹一)
- 第2章 文章・談話の重層性(宮地裕)
- 第3章 文章・談話における語彙の意味(森田良行)
- 第4章 文章・談話における連文の成立(長田久男)
- 第5章 文章・談話における「段」の統括機能(佐久間まゆみ)
- 第6章 文章・談話の全体的構造(南不二男)
- 第7章 文章生産の機構モデル小考(林四郎)
- 第8章 文章・談話のスタイル(樺島忠夫)
- 第9章 文章・談話のレトリック(中村明)
- 第10章 テクストの意味と構造(野村真木夫)
- 第11章 談話分析の対照研究(泉子=K=メイナード)
- 第12章 文章・談話の心理学的研究(海保博之・茂呂雄二)
- 第13章 文章・談話研究の歴史と展望(糸井通浩)
第8巻には以下の内容が収められている。
- 第1章 敬語とその主な研究テーマの概観(菊地康人)
- 第2章 「待遇表現」の諸側面と,その広がり―狭くとらえた敬語,広くとらえた敬語―(熊井浩子)
- 第3章 「表現行為」の観点から見た敬語(蒲谷宏)
- 第4章 テキスト・ディスコースを敬語から見る(野田尚史)
- 第5章 敬語の現在を読む(浅松絢子)
- 第6章 敬語の社会差・地域差と対人コミュニケーションの言語問題(吉岡泰夫)
- 第7章 敬語調査から何が引き出せて,何が引き出せないか(尾崎喜光)
- 第8章 文献資料から敬語の何が読みとれて,何が読みとれないか(辛島美絵)
- 第9章 中古の共時態としての敬語,動態としての敬語(森野崇)
- 第10章 謙譲語から見た敬語史,丁寧語から見た敬語史―「尊者定位」から「自己定位」へ―(森山由紀子)
- 第11章 敬語史と現代敬語―付 敬語研究小史―(西田直敏)
- 第12章 外国人から見た敬語(杉山アイシェヌール)
(第7巻:2003年3月1日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 306ページ 4,600円 ISBN 4-254-51517-0)
(第8巻:2003年3月25日発行 朝倉書店刊 A5判横組み 291ページ 4,600円 ISBN 4-254-51518-9)
小池生夫(主幹)・井出祥子・河野守夫・鈴木博・田中春美・田辺洋二・水谷修(委員)編 『応用言語学事典』
応用言語学研究の諸分野を通観した事典である。分野別構成で中項目を中心としている。範囲が広い応用言語学だが,本書では以下に挙げるような項目を扱っており,言語研究者・教育者にとって幅広い視野獲得のために有益である。全体は以下のように大きく13の分野にわけられている。
- 外国語教育学
- 言語獲得・言語習得
- 社会言語学
- 語用論
- 言語接触
- 言語コミュニケーション
- 認知に関する心理と言語
- 心理言語学
- 言語と脳
- コーパス言語学・辞書学
- 教育工学
- 研究と測定
- 日本語・日本語教育
各分野は「1 外国語教育学」を例にとると,さらに「1 英語教育と外国語政策,2 教授法理論,3 指導法,4 学習者要因,5 教師教育,6 シラバス・デザイン,7 早期英語教育,8 ESP」にわけられ,その下に,例えば「2 教授法理論」の場合には,「教授法理論,文法訳読法,ナチュラル・メソッド,直接教授法…」等の項目名が立てられており,それについての説明がなされているという体裁になっている。
(2003年4月25日発行 研究社刊 A5判横組み 972ページ 11,000円 ISBN 4-7674-3020-8)
飛田良文・ 松井栄一・境田稔信編 『[明治期国語辞書大系]書誌と研究』
日本の近代化・西洋化の過程を知るうえで重要な資料でありながら、閲覧・入手が困難なものが多い明治期国語辞書を復刻した同大系の別巻で,第1期の各巻(各辞書)についての書誌を記したものである。併せて研究編として4編の論文を収める。
書誌編には,第1期26巻分の書誌が挙げられている。2ページ程度の長さに,その辞書に関する簡単な説明,書名,編著者,発行,刊行日,構成,配列,底本,比率,備考,などが記述されている。さらに2ページ程度で本文組見本を収載している。
研究編には,「いろは順から五十音順へ」(飛田良文),「和語・混種語の異形の考察」(松井栄一),「明治期国語辞書の版種について」(境田稔信),「『言海』大形本の書誌」(境田稔信)を収めている。
(2003年4月10日発行 大空社刊 A5判縦組み 183ページ 8,500円 ISBN 4-7568-0660-0)