日本語学会

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オンラインジャーナル文書提供システムの利用について

代表理事  山口佳紀

 すでにご承知の方もいらっしゃることと思いますが,国立情報学研究所(旧称:学術情報センター)では,〈オンラインジャーナル編集出版システム〉の提供を行っています。本学会では,それを構成する3システムのうち「文書提供システム」を利用するべく,準備を進めています。これは,国語学会の会員がインターネットを利用して電子化された『国語学』を無料で閲覧できるようにするためのものです。以下,それについて説明し,学会員の皆様のご理解を得たいと思います。

 オンラインジャーナルとは,電子化された学術論文誌のことですが,国立情報学研究所では,これについて次の3システムを提供しています。

(1) 編集管理システム =学術論文誌の投稿・査読管理を行うためのシステム。
(2) 文書処理管理システム =学術論文誌を電子化して出版するためのシステム。
(3) 文書提供システム =電子化された学術論文誌を公開・検索するシステム。

 理事会では,上記のシステムを利用することの可否について,情報電子化特別委員会(豊島正之委員長)に検討を依頼したところ,1999年5月に下記のような答申を得ました。

 (ア)
(1)「編集管理システム」・(2)「文書処理管理システム」は利用しない。それは,これらのシステムが論文の全面電子テキスト化を前提としており,『国語学』がこの条件を満たすのは,大変困難であると思われるためである。
 (イ)
(3)「文書提供システム」だけを利用する。これは,誌面をデジタル画像ファイルとして研究所に届けるだけでよいので,学会独自にwwwサービスを行うよりも簡便だからである。

 理事会は,上記の答申に従い,「文書提供システム」を利用することにしましたが,ここで問題になるのは,論文筆者からそれに関する同意が得られるかどうかという点です。すなわち,学会は従来どおり冊子体の『国語学』を発行しますが,それと併行して,『国語学』の電子的複製を行い,これをインターネット上で公開しようとしているわけですから,そのことについて論文筆者の許諾を得る必要があります。その詳細を述べるならば,以下のようになります。

  1. 「投稿規定」に,学会によって論文の電子的複製が行われることを明記し,論文採択の場合には,筆者に採択通知とともに「許諾書」を送って,署名・返送してもらう。
  2. 著作権自体は従来どおり論文筆者にある。これは,あくまでも学会がインターネット上で公開する権利(公衆送信可能化権)をもつという意味である。
    なお,これに付随して,以下のような問題もあります。
  3. このシステムは,学会員の無料閲覧だけを前提としたものであるが,会員以外の閲覧を可能にするシステムとして,同研究所は「電子図書館」(有料と無料とある)を提供している。現在,理事会は「電子図書館」の利用を検討中であるが,会員以外の閲覧を有料とする場合には購読料を学会が取得する。
  4. 将来この電子的複製を基にCD-ROM版を作って頒布するということも考えられるが,それによって生じた収入は学会に帰属するものとする。
  5. バックナンバーの公開についても今後,会員の要求が高まるものと考えられるが,論文筆者による許諾の必要という問題があり,早急には実現できない。この点は,いずれ解決したいと考えている。

 論文は,読まれるために書かれるものですから,より多くの読者が利用しやすいような形にするのがベストであると思われます。これまでの冊子体による『国語学』の発行だけでなく,これをインターネット上で閲覧することが出来れば,読者の利便は格段に高まることが期待されます。ただし,論文筆者の著作権を侵害するようなことは避けるべきであると考えます。

 理事会では,その点を配慮して,編集委員会と相談しながら,上記のような計画を立てました。これについて,会員各位のご了解をいただきたいと思います。また,何かご意見があれば,理事会までお寄せ下さい。

(2000年8月10日)

『国語学』51巻2号(202号) p.191-192 に掲載