日本語学会

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「学会運営についてのアンケート」(於山形大会)の集計概要報告

(『国語学』192集 1998・3・31 p.131-133)
〇、
 山形大会を利用して標記のアンケートを実施し、百五十二通の回答がありました。ありがとうございました。回答者は首都圏四四・七%、関西圏二一・七%、その他二八・九%、無回答四・六%でした。地域的な会員の全体像を大略反映しているといえます。在会五年未満一八・四%、十年まで二一・一%、二十年まで二六・三%、二十年以上二九・六%、無回答四・六%だったので、年齢層的には、ベテランの回答がやや多めだったかと思われます。若い人たちは、どう答えるべきか見当がつけにくかったのかもしれません。


一、
 学会の在り方一般については、重点を置くべき活動内容(複数回答可)として、研究発表の場の提供七九・六%、情報の提供・交換六〇・五%、研究の公正な評価五一・三%(以上上位三項)が挙げられていました。また組織(理事会・評議員会など)については、今のままでよい七二・四%、会費は今程度でよい七一・一%、名称も今のままでよい七五・〇%といったところ。大勢は現状承認、特にさしせまって改革の必要はないとする意見の方が多いようです(その中をアンケートに回答して下さり感謝します)。なお、第五第六項参照。


二、
 ただし会員にとってもっとも身近な学会誌については、発行回数今程度でよい八四・二%であったものの、内容については変えたほうがよい五三・九%が、今のままでよい四〇・八%を上まわり、さらなる前進を期待される方が多いようです。具体的には(複数回答可)、投稿論文中心三九・五%、情報欄の充実二四・三%、特集中心一一・八%となっていました。今後の編集委員会での検討が期待されます。もっとも論文の水準は維持されている五七・九%(必ずしも十分でない二五・〇%)、体裁・組み方は今のままでよい七〇・四%、誌名も今のままでよい七三・〇%でした。第一項と同じく、大変革が緊急課題というわけではなさそうです。なお、第七項参照。


三、
 もうひとつ、会員にとって身近な大会については、その内容について、今のままでよい五〇・七%、変えたほうがよい四二・八%でした。学会誌ほどではないにせよ、大会についても今後の大会運営委員会での検討が期待されます。具体的には(複数回答可)、シンポジウムなどの企画を多く二七・〇%、ポスターセッションの設置一六・四%、研究発表をもっと多く一〇・五%などが並んでいました。なお、大会の開催回数は今程度でよい九四・一%、大会開催地は今の方向でよい七三・七%といった回答状況でした。なお第八項参照。


四、
 以上「選択肢つき」の回答を通覧すると、学会誌編集・大会運営について、会員の具体的希望が集中しています。ただし上記のように総体的には、会員の多くは現状に満足しているように察せられます。山形大会の参加者は五百人以上、その中の百五十二人の方が回答して下さったわけですが、サイレントマジョリティーの大部分も、現状を認めて下さっていると認識してよいかと思われます。


五、
 ただし、以下「自由記入」欄を見ていくと、多少とも違う景色が見えてくるような気がします。つまり会員の一部には平和・安定的な現状に満足せず、積極的な改革意見を述べる方があり、注意せねばなりません。
 まず学会名をめぐっては、日本語学会に改名せよというコメントを寄せた方が二十七名あり(
第二項名称変更に賛成の三十四名中、ほとんどがコメントを通じて日本語学会を積極的に支持していることがわかる)、理由としては、国際的な観点(国語はダイクティックで客観的でない、日本語は日本人だけのものではない、外国人の会員が多いなど)、実際に行われている研究発表の内容などが挙げられていました。これに対して一時のブームに乗って国語学→日本語学という安易な変更をしてほしくない、名称変更には賛同しかねるといったコメントも、少数ながらありました(三名)。別に、名のみを変えても仕方がない、名称より学会の方針をまず話し合うべきだというコメントもありました。
 私見になりますが、結局のところ国語学会の対象分野は何か、世界の中央学会をめざすかどうかのスタンス、会員の意識はどのあたりにあるのか、などが問題になると思われます。別に具体的な代替案は示さないものの、国語学という名称はあいまいだ、アナクロだというコメントもありました(各一名)。ともあれ、全体から見れば少数ながら、会名について具体的な意見を持っている方がおられることは、注目しておかねばならないでしょう(関連する会誌名については紹介を省略)。


六、
 組織についてのコメントは、学会が一部の人に私物化されているという印象を受ける、公平公正を心掛けてほしい、評議員候補者のノミネート方式に偏りがあると感じるのはひが目か、役員の選出等が学閥によっているような印象を受けるがもしそうなら改めるべきだ、人事の流動化をはかり常に新鮮な学会運営を心掛けてほしい、などの率直な意見が少数ながら目につきました。
 現行の会則・評議員改選規則はそれなりによく工夫されていると思うのですが、執行部としても常に心に刻んでおくべき話題でしょう。それと同時に、会員の皆様も、学会の運営について常に広い立場から公正を旨として、積極的に御支援下さるようお願いしたいと思います。


七、
 学会誌をめぐっては、論文審査について、審査が厳しすぎるのではないか、編集委員の高齢化をはかってはどうか、といったコメントと同時に、委員会を縮小しそのかわり外部査読の導入を考えよ、不採用に対しては理由を知らせよ、などの意見がありました。また発行回数をふやせ(年六回。投稿者は一日も早い公刊を願っている)、判型を大きく、横組み化は時間の問題か、といったコメントもありました。一方国語学は縦組みがふさわしい、との意見もありました。以下省略に従いますが、編集委員会を中心にして、今後いろいろと検討されることになるでしょう。当然のことながら相反する意見については、コメントした方の思い通りにならないことがありえますから、あらかじめ御了承いただかねばなりません。


八、
 大会については、現在のスケジュール枠は変更できないか、とするコメントが五人の方からありました。講演会の意義を再検討すべきだ、秋の学会の時期を観光シーズンと重ならないようずらすべきだという意見もありました。研究発表については、もっと多くすべきだ、誰にでもわかる発表にしてほしい、というコメントと同時に、若い人の発表が多すぎる、水準の高いものに限るべきだ、並行同時発表は迷惑だ、とのコメントもありました。発表時間を長くすべきだ、という意見とともに、短くすべきだというコメントがあり、またポスターセッションを考えよ、という意見とともに、それは考えものだとする意見もありました。要旨集については、改善すべきだ、各要旨のページ数を制限すべきだ、(他学会と比較して)高価である、というコメントが目につきました。そのほか、四人の方から開催校の負担は極力減らすように工夫せよ、との意見がありました。今後大会運営委員会で知恵をしぼっていくことになりましょう。


九、
 以上でアンケート概要のまとめを終わります。この種のアンケートは有意義ではあるが、相反する意見・希望が続出して執行部を悩ませるのではないか、とのコメントがあって、お心遣いに感謝したいと思います。しかし、やはり会員の皆様の御意向は機会あるごとに伺うべきでしょうし、会員おひとりおひとりも、他の方々がどんな意見を持っておられるのかを知ることも、有意義かと思います。今回紙数の関係からアンケート回答の詳細をすべて御紹介することはできませんでしたが、執行部としては、誠意をもって今後の学会運営の参考にさせていただく所存です。ありがとうございました。今後とも、折にふれて御意見をお寄せ下さい。
 末筆になりましたが、アンケートの準備・整理に尽力して下さった野村大会運営委員長、また結果整理について手伝って下さった石川(田村)真奈美さんに感謝の意を表したいと思います。

   一九九七年十二月八日

代表理事 徳 川 宗 賢 

(原文の縦書きを横書きに改めています)

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