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2009年度春季大会の中止について

日本語学会理事会

 5月30日,31日の両日に武庫川女子大学で開催される予定だった本学会の春季大会が中止になったことは,学会のホームページで速報したほか,ハガキ・封書でも皆様に通知をしました。まことに遺憾なことでありました。ここに,改めてその経緯を振り返るとともに,ご迷惑をかけた各位に対するおわびの一端とする次第です。
 この中止の原因が新型インフルエンザの地球規模での流行に伴う国内感染者の発生にあったことはもちろんです。とりわけ,会場校のある阪神地区での感染者の大量発生は大きな衝撃となりました。5月16日以降,同地区では学校・大学の一斉休校の措置がとられ,大規模な催しの実施自粛の要望が自治体から出されました。翌17日には武庫川女子大学も5月24日までの休校を決定しました。同大学の先生方とは,その以前から連絡を取っていましたが,この段階で大会開催の困難さを確認し合いました。翌18日には,理事会として公式に,5月30日,31日の両日の開催とりやめを決定しました。
 その後もなお,期日を延期しての開催の可能性を模索しましたが,常識的な期間内での延期開催も不可能であることを,5月24日の理事会で確認し,大会の完全中止を決定しました。
 中止の理由は,言うまでもなく,まずは会員の安全を一義的に考えたからです。そして,二義的には社会に対してインフルエンザの広がりを防ぐ行動に協力するためです。それにしても,もう少し後で決断をしてもよかったのではないかという声もあります。しかし,会員への対応を考えると,あれがぎりぎりの期限でした。
 それでも,多くの方にご迷惑をかけることになりました。だいぶ前に宿泊とセットになったチケットを申し込まれた方には,キャンセル料を負担していただかなければなりませんでした。会場校の先生方には,1年以上も前からご準備をいただいたことがむだになったことを相済まなく思います。
 それにも増して,発表予定者の方々には,大きな精神的負担を与えることになりました。大会が開催されるのか否かという不安の上に,せっかく発表が認められたのに,そのための努力が無になるのではないかという心配を重ねることになりました。
 そのようなこともあり,理事会としては,予稿集に掲載が決定したことをもって,今回に限り,口頭発表をしたのと同等に見なすことにしました。口頭発表とは,それに値すると認められる研究内容を提示し,かつ口頭による発表を行って,来会者からそれに対する評価を受けることによって完結したものになるはずです。しかし,今回のような場合は,発表者自身の力の及ばないところでの出来事であり,それにより個人の努力を全く評価しないということになるのは,苛酷に過ぎる話です。
 それならば,何とかして予定者に発表の場を与えて,完結させる方途を選ぶべきだということになります。しかし,1か月か2か月程度の延期による大会の開催の可能性はないというのが私たちの結論でした。半年遅らせて秋の大会で発表してもらう案も考えられますが,普段の倍に近い発表の場所を用意しなければなりません。それができたとしても,発表予定者が必ずそのときに登壇できるとは限りません。全員が無理でも残った人はさらに次の大会で,ということになると,別の問題が発生します。
 それは,発表予定者のプライオリティーにかかわることです。応募者が発表を許可された背景には,その独創性が大きな部分を占めています。それは予稿集の刊行により,ある程度の会員の目に触れてしまっています。それをそのまま公的に認めずに半年以上放置することにより,発表予定者にとってきわめて不利益な事態の発生を看過することにもなりかねません。また,逆に,予稿集を手にした会員の側からすれば,その内容に接しながらも公的に利用できないという,これも不都合な状態に置かれることになってしまいます。
 そのようなことを総合的に判断した結果,上のような決定となりました。予稿集の掲載をもって口頭発表したのと同等に見なすということの意味は,以上の検討に基づいたものです。これを「今回に限り」とするのも,その意味からだとお考えください。
 なお,シンポジウムに関しても,それに準じて考えることができますが,若手の研究者が大部分を占める研究発表とは別に扱うこととしました。発題予定者はそれぞれの分野ですでに地歩を占めている方々です。また,同一テーマのシンポジウムを今後の大会で開くことも,可能性としては残っています。
 以上のように,今回の春季大会中止の措置は,いわば私たちの苦渋の判断の結果ということになります。このようなことが今後も頻発するなどということは考えたくありませんが,地震などの自然災害による不慮の事態が大会開催に影響を及ぼす可能性は決して小さいとは言えません。大会という,学会活動における口頭による研究発表の場の持つ意味の重大さを改めてかみしめつつ今後の学会運営を考える上で,今回の措置が捨て石となることを念じるものです。

(2009.6.1,野村雅昭・小林隆 記)

『日本語の研究』5巻3号(238号)pp.164-165に掲載