日本語学会2015年度秋季大会シンポジウム概要(詳細版)
lastupdate 2015/8/20

「日本語学」をどのように教えるか

 

趣旨

 優れた日本語学者を育成するのは,優れた「日本語学の教育」だと思われます。良い教育ができるか否かに,日本語学会(界)の未来がかかっているといっても,過言ではないでしょう。また,大学や学部・専攻により受講生も多様で,将来,日本語教育・国語教育等の言語教育に携わる学生もいれば,日本語学の専門知識が直接には結びつきにくい職業に就く学生もいます。このような状況から考えると,「日本語学をどのように教えるのか」「何のために日本語学を教え・学ぶのか」等の教育の問題は,関心の高い,重要なテーマであるといえます。しかし,これまで,このようなことを議論する機会は,ほとんどありませんでした。情報を共有する場も,極めて少なかったと思います。

 「どうすれば日本語学の面白さを学生に伝えられるのか」「学生に日本語学を学ぶ意義を分かってもらうには,どのような方法があるのか」「他の先生は,どのような工夫をして授業を行っているのか」,これらのことに興味がある,あるいは議論したいという方も多いのではないでしょうか。

 そこで,本シンポジウムを企画しました。教育経験のある方のみならず,将来,教壇に立つ予定の大学院生の方々にも,是非とも参加してもらいたいシンポジウムです。奮ってのご参加をお待ちしています。

 

アンケートのお礼とシンポジウムの詳細

 春季大会でのアンケートのご協力,本当にありがとうございました。 200 名の方からご回答を頂くことができました。関係者一同,心より感謝申し上げます。私どもは,このアンケートを大切にし,できる限り皆様と「対話」できるようなシンポジウムにしたいと思っています。

 具体的には,次のようなシンポジウムを考えています。

 

1:「学部生の教育」にテーマを絞ります。

 教育に関しては様々なテーマがあると思いますが,今回は「学部生の教育」にテーマを絞りたいと思います。また,「日本語学に強い興味を持っている学生に,どのように教えるのか」ということよりも,「学生にどのように日本語学に興味をもってもらうか」ということに,重点をおきたいと考えています。

 

2:パネリスト全員が,「意義」と「実践」について述べます。

 アンケートの自由記述欄では,「意義」に関するコメントと,「実践」に関するコメントが多く見られました。私どもも,ちょうど,この二つは大切な問題であろうと話し合っていたところです。パネリスト全員が,「日本語学を学ぶことの意義」と,「(教室が見えるような)教育の実践」について述べることで、議論の切っ掛けをつくりたいと考えています。

 

3:「教育の実践」については,参考にすることができる授業の工夫を示します。

 他の方がどのように授業を行っているのか,知りたいところではあります。しかし,教授者の才能やキャラクターに頼った授業では,あまり参考にはならないでしょう。また,「日本語学を教える」といっても,様々な立場があるのも事実です。そこで,立場の違いをこえて参考にすることができる(今後の授業に生かしうる)工夫を,パネリスト全員が,(最低一つは)示すことにしたいと思います。

 

4:共通の質問を設けます。

 アンケートで頂いた次の二つのご質問を,ディスカッションの際に,パネリスト全員に伺いたいと思います。

 

質問1:「学生はこのように教えられたいと思っているのではないか」ということについて,何か考えがあるか。

質問2:大人数を相手にする場合,どのレベルにあわせた授業をするのか,フォローをどうやるか,どの程度労力をさくか。

 

5:国語教育の内容を踏まえつつ日本語学を教えるにはどうすればよいのか,という問題について積極的に言及します。

 アンケート結果をみるかぎり,国語教育を専門とする方は少ないようです。しかし一方で,自由記述欄では,国語教育に関係するコメントが多く見られました。これは,「国語教育を専門とするわけではないが,教員の養成に携わっており関心がある」という状況を示しているのだと思われます。このような現状を踏まえ,パネリストの小田氏の発表では,古典文法教育の意義と実践のみならず,国語教育の内容を踏まえつつ日本語学を教えるにはどうすればよいのかという問題についても,積極的に言及します。

 

6:「方言」を素材とした「日本語学」と「地域研究」の授業実践を提示します。

 日本語学の専門分野の中には,国語教育や日本語教育のように人材養成の具体像が設定しやすい分野と,そうでない分野とがあります。特に後者の場合は,人材養成についての社会的説明責任が問われる時代になってきています。パネリストの日高氏の発表では,「方言」という「社会的に周辺的な存在」を研究対象として扱う立場から,人文・社会科学系の学問領域一般に通じる人材養成の意義について考え,「方言」を素材とした「日本語学」と「地域研究」の授業実践を紹介します。

 

7:「日本語教育」と「日本語学」の融合を目指した授業を提案します。

 日本語教育に携わっている方も多いようです。可能であれば,「日本語教育の現場」と「日本語学の成果」を結び付けるような授業を模索していきたいところです。そこで,パネリストの山内氏の発表では,「日本語教育」と「日本語学」の融合を目指した授業を提案します。新しい角度から,日本語学の教育を検討する切っ掛けになればと思います。

 

8:アンケートのフィードバックを行います。

 教育的な問題を検討するための基礎資料を得るために,アンケートを実施しました。改めてご協力に感謝申し上げます。

 

「大会参加者の中で,大学院生の割合はどのくらいなのか」

「人数別に研究領域をみるとどのようになっているのか」

「担当授業科目で多いものは何か」

「20 代の研究者は,日本語学に関する科目よりも,日本語表現に関する科目を担当することの方が多いのか」

 

等のことも,シンポジウム当日までには,ご回答できるようになっているかと思います。

 

 

皆様のご参加を心よりお待ちしています。

 

 

※開催場所は「山口県教育会館(山口市大手町2-18)」です(山口大学ではありません)。ご注意ください。

 

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