『日本語学大辞典』について
学会創立70周年記念 日本語学会編『日本語学大辞典』が刊行されました
『日本語学大辞典』編集委員会
1944年に設立された日本語学会(旧称は「国語学会」)は2014年に創立70周年を迎えました。その70周年記念事業として編集を行ってきた『日本語学大辞典』を,このほど刊行しました。
日本語学会編『日本語学大辞典』東京堂出版 2018年10月20日刊行
(内容見本※PDF)
B5判1328頁 定価37,500円
(会員特別価格での販売は2019年3月末日をもって終了しました。)
創立10周年記念の『国語学辞典』(1955年刊),30周年記念の『国語学大辞典』(1980年刊)に続く,本学会編の三つめの辞典です。10周年,30周年,70周年と,間隔が長くなっているのに加えて,編集に費やした年数も,2年,6年,10年と長くなりました。本体部分の紙幅も,A5判990頁,B5判947頁,B5判1043頁と増加しています。これらのことは,私たちの学問が,成熟を遂げてきたことを示すものでしょう。
一方,見出しの数は,順に2270項目,1217項目,そして今回の797項目と減少しています。特に今回の『日本語学大辞典』は,『国語学大辞典』から3分の2に減少しているわけですが,これは,「中項目主義」を徹底したことによるものです。「中項目主義」とは,学問の知見を細切れに示すことになりがちな「小項目主義」に対して,学問の体系の中に研究の成果を位置づけ,相互の関連を説明しやすくする編集方式を指します。例えば,『国語学大辞典』で,「縁語」「掛詞」「序詞」がそれぞれ独立の見出しになっていたものが,『日本語学大辞典』では,「修辞法」の見出しのもとでまとめて解説されており,それぞれの特徴と相互の関係が鮮明になり,さらには和歌以外の修辞法と比べて考えることができるようにもなっています。項目数が減ることで検索の利便性が低下しそうですが,分野別の「分類項目一覧」が整備され,「修辞法」の下位に「縁語」「掛詞」「序詞」などが位置付くことが,明示されています。「分類項目一覧」は,用語の体系を知るにも便利です。
ほかに,『国語学大辞典』に多かった書名項目が大幅に減っています。重要な書籍は非常に多くなっているわけですが,書籍自体を紹介するのではなく,それらの成果も事項の解説の中に取り込んで,現在の学問の水準を明示する方針が採られています。各項目には,豊富な参考文献リストが添えてあり,本辞典の各項目から,研究の先端にアクセスすることができるようになっています。
40年前の国語学にはなかった知見や,近年開拓されたり,日本語学との関連性が意識されるようになったりした,隣接学問分野からも,多くの新規項目が加わっています。例をあげれば,「ダイクシス」「語彙概念構造」「コロケーション」「危機言語」「日本語の国際化」「言語政策」「機械翻訳」「言語類型論」「認知科学」などです。40年前と同じ見出し語でも,ほとんどの項目で内容が一新され,執筆者も交替しています。『日本語学大辞典』の執筆は,当該項目の研究を先導し深化させてきた,日本語学会内外の研究者,409名が行っています。
付録(全244頁)には,「日本語年表」「日英用語対照表」「平仮名字体表」「国際音声記号」「アクセント類別語彙」「方言地図」,そして,詳細な「索引」が付けられています。
日本語学の現在を余すところなく示した『日本語学大辞典』を,どうぞ御活用ください。
(2018年11月20日掲載)
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